◆【映画】『聖女/Mad Sister』(2019年)の作品情報
- 【監督】イム・ギョンテク
- 【脚本】キム・ミン
- 【出演】イ・シヨン、イ・ジュニョク、パク・セワンほか
- 【配給】カルチュア・パブリッシャーズ
- 【製作年】2018年
- 【日本公開】2019年
- 【上映時間】116分
- 【製作国】韓国
- 【ジャンル】姉妹ドラマ、バイオレンス、復讐劇
- 【視聴ツール】U-NEXT、吹替、自室モニター、nwmヘッドフォン
◆登場人物・キャスト
- イネ:イ・シヨン 代表作『神の一手』(2014年)
- ウネ:パク・セワン 代表作『オ・マイ・ゴースト』(2022年)
- ハン・ジョンウ:イ・ジュニョク 代表作『神と共に 第一章:罪と罰』(2017年)
- パク・ヨンチュン議員:チェ・ジノ 代表作『ザ・テロライブ』(2013年)
- チョン社長:キム・ウォネ 代表作『エクストリーム・ジョブ』(2019年)
◆あらすじ
前半:ネタバレなし
元警備員のイネは、暴漢から妹を守った際に過剰防衛と判断され、刑務所で服役していました。刑期を終えた彼女は、知的障害を抱える妹ウネのもとへ戻ります。久しぶりに再会した姉妹は穏やかな時間を過ごしますが、イネの胸には、妹をひとりにしていたことへの不安が消えずに残っていました。
ウネは知的障害を抱えながらも普通の学校へ通っていましたが、そこで待っていたのはいじめでした。本人は姉を心配させまいとして本当のことを隠しており、その優しさがかえって危うさを深めていきます。
ある日、ウネは同級生たちに騙され、危険な犯罪へ巻き込まれてしまいます。帰宅しない妹を心配したイネは、学校や警察へ助けを求めますが、まともに取り合ってもらえません。やがて、ウネが同級生たちによって悪質な男たちへ引き渡されたことを知ったイネは、自ら妹を捜すことを決意します。
ウネがプレゼントしてくれた赤いワンピースとハイヒールを身に着けたイネは、妹の行方を知る者たちを次々と追跡します。元警備員として鍛えた格闘技を駆使し、立ちはだかる男たちを倒しながら真相へ近づいていきます。しかし、捜索を進めるほど、妹が巻き込まれた事件の背後には、想像を超えるほど深く醜い闇が存在していることが明らかになります。
ここからネタバレありです。
後半のネタバレあらすじを読む
イネは、ウネを誘拐した男たちを追う過程で、妹が以前暮らしていた町でも深刻な被害を受けていたことを知ります。コンビニや修理店などの店主たちは、抵抗できないウネを長年にわたり傷つけていました。さらに、その中心には麻薬取引にも関わる悪徳議員パク・ヨンチュンがいました。
イネが服役するきっかけとなった事件も、この議員からウネを守るために起こしたものでした。かつてイネは、ウネを襲おうとした議員を制圧し、片目を失明させていたのです。議員はその復讐のため、姉妹の行方を捜し続けていました。
ウネを連れ去ったジョンウは議員の部下でしたが、過去の罪を後悔し、姉妹を逃がそうとしていました。しかし、裏切りを知られたジョンウは殺され、ウネは再び議員の手に渡ります。イネは麻薬取引の現場へ乗り込み、大勢の手下を相手に激しい戦いを繰り広げます。
議員はウネに大量の薬物を投与し、イネの脇腹をナイフで刺します。それでもイネは立ち上がり、最後の力を振り絞って議員を殴り倒します。妹を救出したイネは、意識のもうろうとしたウネを助手席に乗せ、車を走らせます。イネも大量に出血しており、二人が助かるかどうかは描かれません。白い光の中へ進む姉妹の姿を映し、物語は静かに幕を閉じます。
◆考察と感想
『聖女/Mad Sister』を観て、まず感じたのは、これは単なる復讐アクションではないということだ。赤いワンピースを着た女性が悪党を次々と倒していくため、表面的には爽快なバイオレンス映画に見える。しかし、物語の中心にあるのは、社会から見過ごされ続けた妹と、その妹を守ろうとする姉の孤独である。
主人公イネは強い女性だ。男たちに囲まれてもひるまず、打撃や関節技を使って相手を倒していく。ただ、俺には彼女が無敵のヒーローには見えなかった。むしろ、誰も助けてくれないから、自分が暴力を使うしかなかった女性に見える。学校も警察も、ウネの訴えを真剣に受け止めない。妹が消えても、大人たちは面倒事を避けるように動く。その結果、イネだけが危険な世界へ踏み込んでいくことになる。
ここが、この映画で最も腹が立つ部分だった。悪人が悪いのは当然だが、見て見ぬふりをする周囲の人間にも大きな責任がある。ウネは障害を抱え、危険を判断したり、助けを求めたりすることが難しい人物だ。だからこそ、本来は学校や地域、警察が守るべき存在だった。それなのに、彼女は最も利用しやすい相手として扱われる。弱い人間を守るのではなく、弱いから狙う。その醜さが、この作品では容赦なく描かれていた。
正直に言えば、観ていてかなりしんどい映画だ。ウネが受けた被害は重く、単なるアクション映画の設定として片づけられるものではない。必要以上に刺激的に感じる場面もあり、人によっては不快感のほうが強く残ると思う。俺自身も、ここまで妹を傷つける描写を入れなくても、姉の怒りは十分に伝わったのではないかと感じた。
それでも最後まで観てしまうのは、イネ役のイ・シヨンの存在感が圧倒的だからだ。長い手足を生かした蹴りや、相手の腕を取って極める動きには説得力がある。女性が男を倒すというだけではなく、本当にこの人なら倒せるかもしれないと思わせる身体の強さがあった。赤いワンピースとハイヒールという戦闘には不向きな服装も、現実性より象徴性を優先した演出なのだろう。
あの赤い服は、ウネから姉へ贈られたものだ。つまり、イネは妹の気持ちを身にまとって戦っている。同時に、赤は怒りや血、復讐を連想させる。最初は妹との再会を象徴していた服が、物語が進むにつれて戦闘服へ変わっていく。この見せ方はかなり印象に残った。
一方で、イネの暴力が正義なのかと考えると、簡単には肯定できない。彼女は女子生徒にも容赦せず、関係者を次々と痛めつけていく。観客としては悪人が倒される場面に爽快感を覚えるが、その暴力によってイネ自身も救われているわけではない。妹を取り戻すための手段ではあっても、傷ついた心を元に戻すことはできないのだ。
この映画の復讐には、達成感よりも虚しさがある。悪徳議員を倒しても、ウネが受けた被害は消えない。イネが失った時間も戻らない。最後に姉妹は再会するが、二人とも重傷だ。イネは大量に出血し、ウネも薬物によって意識がもうろうとしている。悪を倒したからすべて解決した、という終わり方にはなっていない。
ラストで、二人が乗った車の前に白い光が広がる場面は、かなり曖昧だ。病院や救いへ向かう光にも見えるし、死を暗示する光にも見える。俺は、あえて生死を断定しなかったのだと思う。重要なのは二人が助かったかどうかよりも、最後に姉妹が一緒にいられたことなのだろう。
ただし、それを美しい結末とは言い切れない。イネは妹を守り抜いたが、社会は最後まで二人を救っていない。結局、姉が命を削って悪人を倒すしかなかった。その意味で、この映画の本当の敵は悪徳議員だけではなく、弱者を放置する社会全体だったのではないだろうか。
また、ジョンウの存在も印象に残った。彼は悪徳議員の部下でありながら、過去の罪を悔やみ、姉妹を守ろうとする。もっと早く行動していれば被害を防げたかもしれないが、権力に逆らえなかった弱さも人間らしい。最後に命を落とすことで罪を償う形になるが、彼の存在によって物語が単純な善悪だけではないものになっていた。
全体としては、アクションの完成度は高く、イ・シヨンの動きを見るだけでも価値がある。ただ、ストーリーは非常に重く、女性や障害者への暴力を強く描いているため、誰にでも勧められる作品ではない。悪党を倒す爽快感を期待して観ると、その背後にある陰惨さに驚くと思う。
俺としては、好きか嫌いかだけで言えば、手放しで好きとは言えない。それでも、強く記憶に残る映画だった。イネの戦いは派手だが、その拳の奥には、誰にも守られなかった妹への愛と、自分がそばにいられなかった後悔がある。だから彼女の怒りは激しく、同時に悲しいのだ。

momoko
「ただただいじめが無くなり、弱いものがきちんと生活できる世界になって欲しいと思う。この作品から得られるものは多いわ。」

yoribou
「俺もそう思う。いじめる人が多数派になればいじめは無くならない。これは、学校に限ったことではないね。社会と範疇を広げても一緒だね。」
『聖女/Mad Sister』という題名の「聖女」とは、清らかで優しい女性という意味ではないのだろう。傷つき、血まみれになりながらも、妹を守るために地獄へ降りていく女性。それが、この作品における聖女なのだと思う。
◆似ている作品・おすすめ映画2作品

復讐に燃える女性主人公が、激しい格闘と銃撃で敵を倒していく韓国バイオレンス・アクションという点が似ています。

大切な女性を傷つけた者たちを追い、女性主人公が裏社会へ単身乗り込んで復讐する展開が共通しています。
モテ男目線での考察
モテる男というのは、女性を守ると口で言うだけではなく、その人が出している小さなSOSに気づける男だと思います。ウネのように自分の苦しみをうまく言葉にできない人もいます。そんな相手に無理に踏み込まず、普段との違いを感じ取り、安心して話せる空気を作ることが大切です。イネの強さは妹を守る行動力ですが、現実の男に必要なのは、問題が起きる前に違和感へ気づく優しさです。
◆教訓
大切な人の異変に気づいたら、思い込みで判断せず、まず話を聞いて行動することが大切です。
◆評価
| 項目 | 点数 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー | 19 / 20 | 妹を救うため、姉が犯罪組織を追い詰める重厚な復讐劇です。 |
| 演技 | 19 / 20 | イ・シヨンが怒りと悲しみを、迫力あるアクションで表現しています。 |
| 映像・演出 | 20 / 20 | 赤いドレスを生かした格闘やカーチェイスが鮮烈に描かれます。 |
| 感情の揺さぶり | 20 / 20 | 妹が受けた被害と姉の怒りが、強い衝撃とやるせなさを残します。 |
| テーマ性 | 19 / 20 | 姉妹の絆と、弱者を見捨てる社会の冷酷さを描いています。 |
| 合計 | 97 / 100 | 姉妹愛と復讐を激しいアクションで描いた韓国映画です。重くつらい内容ながら、イ・シヨンの身体を張った格闘と、妹を救おうとする執念に最後まで引き込まれます。 |
◆総括
『聖女/Mad Sister』は、妹を救うために姉がたった一人で闇社会へ乗り込んでいく、激しい復讐アクションです。赤いワンピースとハイヒールで敵を次々となぎ倒すイネの姿は強烈で、イ・シヨンの身体能力を生かした格闘シーンには圧倒されます。
その一方で、物語の内容は非常に重く、弱い立場の人間が周囲から見過ごされ、利用されていく残酷さが容赦なく描かれています。悪人を倒す爽快感はありますが、妹が受けた傷や姉妹が失った時間まで取り戻せるわけではありません。そのため、単純にすっきり終われる作品ではなく、怒りとやるせなさが強く残ります。
ストーリーの重さから誰にでも勧められる作品ではありませんが、妹を守ろうとするイネの執念と、最後まで諦めない姿には強く引き込まれます。女性主人公による本格的な格闘アクションや、復讐の先に残る虚しさまで描いた作品を観たい人には、忘れがたい一本です。
※本ページにはプロモーションが含まれています。
映画を観終えた直後の感情を、そのまま文章に残したい。
『聖女/Mad Sister』のように、怒りや悲しさ、やるせなさが強く残る映画は、時間がたつほど最初に感じた熱が薄れていきます。 だから俺は、鑑賞後すぐにパソコンへ向かい、その時に感じたことを文章にしています。
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