◆【映画】『ツーリスト』(2010年)の作品情報
【監督・脚本】フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
【脚本】クリストファー・マッカリー、ジュリアン・フェロウズ
【原作】ジェローム・サルによる映画『アントニー・ジマー』
【出演】アンジェリーナ・ジョリー、ジョニー・デップほか
【主題歌】ミューズ『スターライト』
【配給】ソニー・ピクチャーズ リリーシング、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
【公開】2010年
【上映時間】103分
【製作国】アメリカ、フランス、イタリア、イギリス
【ジャンル】サスペンス、ミステリー、ラブストーリー
【視聴ツール】U-NEXT、吹替、自室モニター、nwmヘッドフォン
◆キャスト
エリーズ・クリフトン・ウォード:アンジェリーナ・ジョリー
代表作『Mr.&Mrs. スミス』(2005年)
フランク・トゥーペロ:ジョニー・デップ
代表作『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(2003年)
ジョン・アチソン警部:ポール・ベタニー
代表作『ビューティフル・マインド』(2001年)
ジョーンズ主任警部:ティモシー・ダルトン
代表作『007/リビング・デイライツ』(1987年)
レジナルド・ショー:スティーヴン・バーコフ
代表作『ランボー/怒りの脱出』(1985年)
◆あらすじ
パリで暮らす美しい女性エリーズは、謎めいた男アレクサンダー・ピアースの恋人として、ロンドン警視庁の監視下に置かれていました。ピアースは巨額の脱税と犯罪組織からの資金強奪によって国際指名手配されており、整形手術で顔を変えたと考えられています。
ある日、エリーズのもとにピアースから一通の手紙が届きます。そこには、ベネチア行きの列車に乗り、自分と似た体格の男を選んで警察の目をそらすよう指示が書かれていました。
エリーズは列車内で、アメリカから旅行に来ていた数学教師フランク・トゥーペロに目をつけます。突然現れた謎の美女に声をかけられたフランクは、彼女の魅力に引かれるまま行動を共にすることになります。
しかし、その選択によってフランクは、警察だけでなく凶悪な犯罪組織からもピアース本人だと疑われてしまいます。美しいベネチアを舞台に、何も知らない旅行者が危険な追跡劇へ巻き込まれていきます。
ここからネタバレありです
ベネチアに到着したフランクは、エリーズに誘われて高級ホテルの同じ部屋に宿泊します。エリーズは監視する警察にフランクをピアースだと思わせるため、わざと人目につく場所で彼にキスをします。
翌朝、フランクはピアースに金を盗まれた犯罪組織のボス、レジナルド・ショーの部下に襲われます。命からがら逃げたフランクは警察に拘束されますが、買収された刑事によってショーへ引き渡されそうになります。そこへエリーズが現れ、フランクを救出します。
エリーズは彼をアメリカへ帰そうとしますが、彼女に心を奪われたフランクは、ピアースとの待ち合わせ場所である舞踏会へ向かいます。
やがてエリーズはショーに捕まり、隠された金庫を開けるよう脅されます。フランクは彼女を救うため、自分こそがアレクサンダー・ピアースだと名乗り、金庫の暗証番号を入力します。
実はフランクは、整形によって姿を変えた本物のピアースでした。ショー一味が警察に射殺された後、ピアースは盗んだ金の一部を税金として納めます。捜査は終結し、正体を明かした彼はエリーズとともに新たな人生へ旅立つのでした。
◆『ツーリスト』の考察と感想
『ツーリスト』を観てまず感じたのは、この映画は本格的なサスペンスやミステリーとして見るよりも、豪華な俳優と美しい街並みを楽しむための、大人向けの娯楽映画として見た方がしっくりくるということです。
物語だけを取り出して考えると、そこまで複雑ではありません。謎の美女エリーズが、警察の目をそらすため、列車の中で偶然見つけた旅行者フランクを利用します。何も知らないフランクは警察やマフィアに追われ、命まで狙われることになります。そして最後に、ただの数学教師だと思われていたフランクこそが、警察が追っていたアレクサンダー・ピアースだったと明かされます。
この結末は、初めて観た時にはそれなりに驚かされます。ただ、途中からフランクの行動を見ていると、本当に普通の観光客なのかと疑いたくなる場面もあります。屋根の上を逃げ回った時は情けなく見えるのに、危険な場所へ何度も戻ってくる。エリーズに帰国するよう言われても素直に帰らず、彼女の後を追い続けます。普通の男なら、銃を向けられた時点で二度と関わりたくないと思うはずです。それでもフランクはエリーズから離れません。
俺は最初、これを単純に、美女に一目惚れした男の無謀な行動だと思っていました。しかし正体を知った後に振り返ると、すべての言動の意味が変わってきます。おどおどした態度も、頼りなさそうな雰囲気も、どこか間の抜けた受け答えも、周囲を欺くための演技だった可能性があります。
特に面白いのは、フランクがエリーズに対して、初対面の男として近づいていることです。アレクサンダーは整形によって顔を変えているため、エリーズは彼の正体に気づきません。つまり彼は、自分が愛した女性が、姿や名前を失った自分をもう一度愛してくれるのかを確かめていたとも考えられます。
そう考えると、本作は単なる犯罪サスペンスではなく、かなり回りくどい愛情確認の物語にも見えてきます。エリーズが愛しているのは、アレクサンダーという名前なのか、過去の顔なのか、それとも目の前にいる男そのものなのか。フランクは正体を隠したまま彼女に近づき、その答えを確かめようとしていたのではないでしょうか。
ただ、俺としては、アレクサンダーのやり方には少し身勝手さも感じます。エリーズを試すためだったとしても、何も説明しないまま危険に巻き込み、警察やマフィアまで動かしています。しかもフランクという偽の人物を演じながら、自分に恋をさせようとするわけです。ロマンチックといえばロマンチックですが、現実ならかなり面倒な男です。
一方のエリーズも、ただ守られるだけのヒロインではありません。彼女は警察側の人間でありながら、捜査対象であるアレクサンダーを本気で愛してしまっています。任務と愛情の間で揺れながら、彼を裏切ることもできず、完全に警察へ戻ることもできません。表面上はいつも落ち着いていて、自信に満ちた美女ですが、内面ではかなり不安定な立場に置かれています。
アンジェリーナ・ジョリーは、このエリーズという役に非常によく合っていました。列車の中を歩くだけでも周囲の視線を集め、ホテルや舞踏会では、その場の空気を完全に支配しています。普通の人間が同じ行動をすれば不自然に見える場面でも、彼女が演じると「この女性ならやりそうだ」と思わせる説得力があります。
ジョニー・デップも、普段の癖の強い役柄とは少し違い、冴えない旅行者のような雰囲気を出しています。アンジェリーナ・ジョリーの隣に並ぶと、最初はどう見ても釣り合っていないように見えます。その違和感があるからこそ、観客はフランクをアレクサンダーではないと思い込みます。
ただし、正体が明かされた瞬間にすべてが完璧につながるかというと、俺は少し引っかかりました。フランクが本物のアレクサンダーだったなら、あまりにも危険な状況に自分から入りすぎています。ショーの部下に殺されかけ、警察にも捕まり、エリーズまで危険にさらされています。計画としては、かなり無理があります。
そのため、緻密なミステリーとして考えると、粗さはあります。伏線を一つずつ検証して、すべてが合理的につながる作品ではありません。最後のどんでん返しを成立させるために、途中の行動が多少強引になっている部分もあります。
それでも、この映画は理屈だけで評価する作品ではないと思います。パリのカフェ、列車での出会い、ベネチアの運河、高級ホテル、豪華な舞踏会など、画面のどこを見ても絵になります。ストーリーの緊張感よりも、異国の街を旅しているような気分を味わえることが大きな魅力です。
ベネチアという舞台も、この物語によく合っています。入り組んだ水路や古い建物は、人の正体を隠し、追跡者から逃げる物語に向いています。同時に、現実離れした美しさがあるため、犯罪や裏切りの話でありながら、どこか夢の中の出来事のようにも見えます。

momoko
「フランクにはやられたって感じやね。エリーズは、逆にフランクに振り回されてた感があるし。」

yoribou
「アレクサンダー・ピアースは、こんなにヘボい男に変装してまでエリーズの気持ちを確認したかったのかね。疑問は残るね。」
俺は『ツーリスト』を、驚愕の結末を楽しむ映画というよりも、アンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップが作り出す華やかな世界を楽しむ映画だと思いました。サスペンスとしては少し軽く、アクションも控えめです。しかし、この軽さが逆に見やすさにつながっています。
重苦しい犯罪映画ではなく、少し笑えて、少し緊張して、美しい景色と美男美女を眺めながら最後に騙される。そのくらいの気持ちで観ると、かなり楽しめる作品です。
そして二度目に観る時は、フランクの表情や言葉に注目すると印象が変わります。彼が本当に驚いているのか、それとも驚いたふりをしているのか。エリーズを見つめる視線に、初対面以上の感情が含まれていないか。結末を知ってから見直すことで、最初とは違う楽しみ方ができます。
俺の中では、完璧な脚本の映画ではありません。しかし、作品全体に漂う優雅さと、主演二人の存在感は強く残りました。細かな矛盾を気にするよりも、この世界観に身を任せた方が楽しめます。映画だからこそ成立する、豪華で大胆な恋愛ゲームです。
結局、最も観客をだましていたのは、謎めいた美女エリーズではありません。何も知らずに巻き込まれたように見せながら、最初からすべてを動かしていたフランクです。頼りない男を演じながら、最後には金も愛する女性も手に入れる。その正体を隠す演技こそが、この映画最大の仕掛けだったと思います。
◆似ている作品・おすすめ映画2作品
男女の駆け引きと恋愛を軸に、互いの本心や正体を読み合う、スタイリッシュな犯罪映画という点が似ています。
アンジェリーナ・ジョリー演じる謎めいた女性が追われる立場となり、正体をめぐる疑惑と裏切りが物語を動かす点が共通しています。
◆モテ男目線での考察
モテる男という視点で見ると、アレクサンダーは自分の正体や財産を最初から見せず、人間そのものを好きになってもらえるかを確かめています。余裕があり、簡単には本心を見せない点は魅力的です。ただし、相手を危険に巻き込み、愛情を試すやり方は褒められません。本当に余裕のある男なら、相手を試すよりも安心させます。フランクのような親しみやすさと、アレクサンダーの決断力を持ちながら、誠実に向き合える男の方が、現実では間違いなくモテると思います。
◆教訓
人は見た目や肩書だけでは分からず、最後に信じるべきなのは、その人が示した行動です。
◆評価
| 項目 | 点数 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー | 18 / 20 | 謎の美女と普通の旅行者を軸にした展開が分かりやすいです。 警察とマフィアの追跡が物語に緊張感を与えています。 ラストで正体が明かされる展開も印象に残ります。 |
| 演技 | 18 / 20 | アンジェリーナ・ジョリーの優雅で謎めいた雰囲気が際立っています。 ジョニー・デップも頼りない旅行者を自然に演じています。 二人の存在感が作品全体を支えています。 |
| 映像・演出 | 18 / 20 | パリやベネチアの美しい街並みが丁寧に映されています。 高級ホテルや舞踏会の場面も華やかで見応えがあります。 全体を通して上品でスタイリッシュな演出です。 |
| 感情の揺さぶり | 18 / 20 | フランクが危険に巻き込まれていく展開に緊張させられます。 エリーズの揺れる気持ちや恋愛の行方にも引き込まれます。 結末を知った瞬間に、それまでの印象が大きく変わります。 |
| テーマ性 | 18 / 20 | 人は見た目や肩書だけでは判断できないことを描いています。 愛する相手を信じられるかという問いも物語の中心にあります。 正体を隠すことの意味を考えさせられます。 |
| 合計 | 90 / 100 | 『ツーリスト』は、恋愛、犯罪、ミステリーを優雅に組み合わせた娯楽作品です。 主演二人の華やかさと、ベネチアの美しい映像が大きな魅力となっています。 結末を知った後に、もう一度見返したくなる一作です。 |
◆総括
『ツーリスト』は、緻密な犯罪サスペンスというよりも、アンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップの華やかさ、美しいベネチアの景色、そして最後のどんでん返しを楽しむための娯楽作品です。
物語には強引さもありますが、謎めいた美女に振り回される旅行者という構図が分かりやすく、警察とマフィアの追跡も加わることで、最後まで軽快に観ることができます。エリーズの優雅な立ち振る舞いと、フランクの頼りなさそうな雰囲気の対比も、本作ならではの魅力です。
そして結末を知った後では、フランクの表情や行動の意味が大きく変わります。一度目は正体を予想しながら楽しみ、二度目は伏線を探しながら楽しめる作品です。重厚なミステリーを求める人には軽く感じられるかもしれませんが、美しい映像とスター二人の共演を気楽に楽しみたい人には、十分おすすめできる一作です。
美しいベネチアと、二人が仕掛けた秘密を手元に残す。
『ツーリスト』は、アンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップの華やかな共演、美しいベネチアの風景、そして最後に明かされる意外な真相が印象に残る作品です。
映画を観終えた後にパンフレットを読み返すと、キャストや製作スタッフの情報、撮影の背景、劇中写真などから、本編だけでは気づかなかった魅力をもう一度味わえます。
とくに結末を知った後では、フランクの表情やエリーズとのやり取りも違って見えてきます。作品の余韻を残したい人や、主演二人のファンにとって、パンフレットは手元に置いておきたい一冊です。
『ツーリスト』の世界を、映画パンフレットでもう一度振り返ってみてください。

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