【映画】『リトル・シングス』(2021年)スパルマは真犯人?赤い髪留めの意味と結末を考察|ネタバレあらすじ・感想

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◆作品情報

『リトル・シングス』は、過去に深い傷を抱えた元敏腕刑事と、将来を期待される若き刑事が、ロサンゼルスで発生した連続殺人事件を追うクライムサスペンスです。デンゼル・ワシントン、ラミ・マレック、ジャレッド・レトという実力派俳優が共演し、証拠のない容疑者をめぐる緊迫した心理戦と、捜査に取りつかれていく刑事たちの姿を描いています。

原題 The Little Things
監督・脚本・製作 ジョン・リー・ハンコック
キャスト デンゼル・ワシントン、ラミ・マレック、
ジャレッド・レトほか
配給 ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ
公開 2021年
上映時間 127分
製作国 アメリカ
ジャンル クライム/サスペンス/心理スリラー
視聴環境 U-NEXT/日本語吹替/自室モニター/nwmヘッドホン

◆キャスト

  • ジョー・“ディーク”・ディーコン保安官:デンゼル・ワシントン
    代表作『トレーニング デイ』(2001年)
  • ジム・バクスター刑事:ラミ・マレック
    代表作『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)
  • アルバート・スパルマ:ジャレッド・レト
    代表作『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013年)
  • サル・リゾリ刑事:クリス・バウアー
    代表作『フェイス/オフ』(1997年)
  • フロー・ダニガン:マイケル・ハイアット
    代表作『ナイトクローラー』(2014年)

◆あらすじ

ネタバレなしのあらすじ

1990年、カリフォルニア州カーン郡で保安官代理を務めるジョー・“ディーク”・ディーコンは、証拠品を届けるため、かつて刑事として働いていたロサンゼルス市警を訪れます。ディークは以前、数々の事件を解決した敏腕刑事でしたが、ある連続殺人事件の捜査をきっかけに心身を壊し、現在の職場へ移っていました。

ロサンゼルスでは、若い女性ばかりを狙った連続殺人事件が発生していました。捜査を指揮するのは、将来を期待されているジム・バクスター刑事です。ディークの鋭い観察力に気づいたバクスターは、彼に捜査への協力を求めます。当初は距離を置こうとしていたディークでしたが、現在の事件が自分の過去と深く結びついていると感じ、再び犯人を追い始めます。

捜査に行き詰まるディークたち
被害者は真実を語れず、残された手がかりも乏しい。捜査はじわじわと行き詰まっていく

やがて二人は、電器店で働くアルバート・スパルマという男に目をつけます。スパルマは不気味な言動を繰り返し、事件に異常な関心を示しますが、犯行を証明する決定的な証拠は見つかりません。捜査が進むほど、バクスターは事件にのめり込み、ディークもまた封印していた過去の罪悪感に苦しめられていきます。二人は犯人へ近づいているように見えますが、その執着はやがて、取り返しのつかない事態を招いてしまいます。

ここからネタバレありです。

ネタバレあらすじ・結末を開く

ディークとバクスターはスパルマを取り調べますが、彼は二人を挑発するばかりで、自白も決定的な証拠も得られません。焦った二人は、正式な令状を得ないままスパルマの部屋を調べます。しかし、発見されたのは事件を扱った新聞記事や警察無線を聞く装置だけで、被害者との直接的なつながりを示す物はありませんでした。

スパルマに翻弄されるディークとバクスター
スパルマはのらりくらりと追及をかわし、刑事たちの焦りと疑念をじわじわ膨らませていく

その後、スパルマはバクスターに、行方不明になったロンダの遺体が埋められている場所を教えると持ちかけます。二人は郊外の荒れ地へ向かい、バクスターは指示された場所を掘り続けます。しかし遺体は見つからず、スパルマは場所を次々と変え、バクスターをからかい続けます。

さらにスパルマは、バクスターの妻や娘の存在にまで触れて挑発します。怒りと焦りで平静を失ったバクスターは、持っていたシャベルでスパルマを殴り、殺してしまいます。

遅れて到着したディークは、バクスターを守るためにスパルマの遺体を荒れ地へ埋めます。さらにスパルマの部屋から持ち物を運び出し、車も処分して、彼が自ら失踪したように見せかけます。

実はディークも、過去の連続殺人事件を捜査していた際、暗闇から突然現れた被害女性を犯人と誤認して射殺していました。鑑識官のフローや当時の仲間たちは、ディークを守るために死因を偽装し、その事実を隠していたのです。

事件後、休職したバクスターのもとへ、ディークから赤い髪留めが届きます。それは、行方不明となったロンダが最後に身につけていたとされる物でした。バクスターは、それを見てスパルマが犯人だったのだと信じ、わずかに安堵します。

しかし最後に、ディークが新品の髪留めセットから赤い一本を抜き取っていたことが判明します。つまり、スパルマが真犯人だった証拠は最後まで見つかっていません。赤い髪留めは、バクスターを罪悪感から救うために、ディークが用意した嘘だったのです。

◆考察と感想

『リトル・シングス』を観終えて最初に残ったのは、「結局、スパルマは犯人だったのか」という疑問ではなく、「人は罪悪感を抱えたまま、どうやって生きていくのか」という重たい感覚だった。本作は連続殺人犯を追う刑事映画の形を取りながら、実際には犯人当てよりも、捜査に取りつかれた二人の刑事が壊れていく姿を描いている。だから、明快な答えを期待すると肩透かしを食らうかもしれない。しかし俺は、この答えを出さない終わり方こそが、本作の一番怖いところだと思った。

デンゼル・ワシントン演じるディークは、最初からどこか疲れている。優秀な刑事だった面影は残っているが、現在の彼には覇気がなく、過去から逃げるように田舎の保安官代理として働いている。ところがロサンゼルスへ戻り、かつて追っていた事件と似た連続殺人が起きていると知った瞬間、眠っていた刑事の勘が再び目を覚ます。現場に残された小さな違和感を見逃さず、被害者の生活を想像し、犯人の行動を読み取っていく。その姿は確かに格好いい。しかし同時に、ディークが事件を解決したいのではなく、過去の自分を救いたいだけなのではないかとも感じた。

ディークは以前の捜査で、暗闇から現れた被害女性を犯人と誤認して射殺していた。しかも、その事実は仲間によって隠蔽されている。つまり彼は、正義を守る刑事でありながら、人を殺し、その責任から逃げ続けてきた人物でもある。事件に執着した結果、家庭も仕事も健康も失った彼は、犯人を捕まえれば自分の罪も少しは軽くなると考えていたのかもしれない。しかし事件は解決せず、彼だけが過去に取り残された。

ラミ・マレック演じるバクスターは、そんなディークの過去を繰り返す存在として描かれている。若く、優秀で、家族にも恵まれ、周囲から将来を期待されている。登場時の彼には自信があり、事件も冷静に処理できるように見える。だが、被害者を救いたいという使命感が、次第に犯人を捕まえなければならないという執着へ変わっていく。証拠がないのにスパルマを犯人だと決めつけ、正規の手続きを無視し、彼の言葉に振り回されていく姿は、過去のディークそのものだった。

ジャレッド・レト演じるスパルマは、本当に不気味だった。見た目も言動も怪しく、事件の記事を集め、警察無線を盗み聞きし、刑事たちを挑発して楽しんでいる。観ている側も「こいつが犯人に違いない」と思わされる。しかし、実際には決定的な証拠が何一つ出てこない。彼は殺人犯だった可能性もあるが、単に犯罪事件と警察の反応を楽しむ異常な犯罪マニアだった可能性もある。本作は、その境界を最後まで明らかにしない。

特に怖いのは、荒れ地でスパルマがバクスターに穴を掘らせる場面だ。スパルマはロンダの遺体が埋まっていると語るが、場所を何度も変え、バクスターをからかい続ける。あの場面では、真実がどこにあるのかはもはや重要ではなくなっている。バクスターは犯人を見つけたいのではなく、自分がスパルマを犯人だと信じたことを証明したくなっている。そこへ家族への挑発が加わり、彼はついにシャベルでスパルマを殴り殺してしまう。

ここで立場が完全に逆転する。犯人を追っていた刑事が殺人者となり、過去に同じ過ちを犯したディークが、その罪を隠す側へ回る。ディークはバクスターを救うため、スパルマの遺体を埋め、部屋の物を処分し、車まで消してしまう。正義を守るはずの人間が、仲間を守るために証拠を隠滅する。この行動は到底正しいとは言えない。しかしディークには、バクスターがこれからどのように壊れていくのかが分かっていた。なぜなら、それは自分が歩いてきた道だからだ。

そして本作最大のポイントが、ラストの赤い髪留めである。休職したバクスターのもとへ、ディークから赤い髪留めが届く。行方不明のロンダが身につけていた物と同じ髪留めを見たバクスターは、スパルマが犯人だったのだと受け取る。つまり、自分が殺した相手は無実ではなかったと信じることができる。しかし直後、ディークが新品の髪留めセットから赤い一本を抜き取っていたことが明かされる。

ディークは真実を届けたのではない。バクスターが生きていくために必要な嘘を届けたのである。この行動を優しさと見るか、さらなる隠蔽と見るかで、印象は大きく変わる。俺は、あれは優しさであると同時に、非常に残酷な行為でもあると思った。バクスターは救われたように見えるが、実際には偽りの答えを与えられただけだ。そしてディーク自身も、バクスターを救うことで過去の自分を救おうとしている。結局、二人とも真実には向き合えていない。

タイトルの「リトル・シングス」は、事件を解くための小さな証拠を意味するだけではない。人間を壊すのもまた、小さなことの積み重ねなのだと思う。わずかな違和感、見逃した証拠、一度の判断ミス、抑えられなかった怒り、そして罪を軽くするための小さな嘘。それらが重なり、ディークとバクスターの人生を大きく変えてしまう。

派手な展開や爽快な解決を求める作品ではない。テンポもゆっくりで、犯人すら判明しないため、観る人によっては消化不良に感じるだろう。俺自身も、途中まではスパルマとの頭脳戦がもっと激しくなり、最後には決定的な証拠が出ると思っていた。しかし、そうならなかったからこそ、観終わったあとも「本当にあれでよかったのか」と考え続けてしまった。

デンゼル・ワシントンの静かな重さ、ラミ・マレックの少しずつ崩れていく表情、そしてジャレッド・レトの気味の悪さ。この三人の演技がなければ、ここまで緊張感のある作品にはならなかったと思う。特にスパルマは、犯人かどうか分からないのに、存在しているだけで場の空気を不穏に変えていた。

俺にとって『リトル・シングス』は、連続殺人事件を解決する映画ではなく、答えが見つからなかったとき、人間は何を信じて生きるのかを描いた映画だった。真実が人を救うとは限らない。だが、嘘によって救われた心が本当に救われたと言えるのか。本作は最後までその答えを出さない。だからこそ、赤い髪留めが燃えるラストは、事件の結末以上に重く心に残った。

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momoko
「権力側にいる警察が実は正義ではない怖さ。何を信じて日々を過ごせばいいか。パリッとした警察服を着た人が悪事を犯していて、市民はぬれぎぬを被る一方って、他の作品でも出てくるシチュエーションということは、アメリカでは、そうした疑心暗鬼があるってことね。」

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yoribou
「そうなると、アメリカが銃社会でないとやってられないのが、正当化されるってことだね。本来の自由国家はこういう仕組みで作られるのかも。」

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◆モテ男目線で考察

モテる男は、相手を救うためであっても、安易に嘘をつきません。ディークがバクスターへ送った赤い髪留めは、苦しみを軽くする優しさにも見えますが、真実と向き合う機会を奪ったとも言えます。人間関係でも、相手を安心させるための嘘は一時的には役立ちます。しかし、後から発覚すれば信頼まで失わせてしまいます。本当に余裕のある男は、相手の痛みを勝手に消そうとせず、その苦しみに寄り添いながら、一緒に現実を受け止めます。守ることと隠すことは、似ているようでまったく違うのです。

◆教訓

正義への執着は、真実を見失った瞬間に、人を救う力から人を壊す凶器へ変わります。

◆評価

項目 点数 コメント
ストーリー 18 / 20 犯人を追う捜査と、刑事たちの過去や
罪悪感が重なる展開に引き込まれます。
演技 19 / 20 デンゼル・ワシントンら三人の緊張感
ある演技が、物語の不穏さを高めています。
映像・演出 18 / 20 暗い街並みや静かな間を生かし、事件
に取りつかれていく刑事たちを描いています。
感情の揺さぶり 18 / 20 真相が分からないまま残される
罪悪感と、救いのない結末が重く心に残り
ます。
テーマ性 18 / 20 正義への執着や隠蔽、真実と人を救う
嘘の境界を深く問いかけています。
合計 91 / 100 犯人探しの爽快感よりも、
捜査に取りつかれた刑事たちの罪と後悔を
描く心理サスペンスです。
答えを明かさない結末と、赤い髪留めに込
められた嘘が強い余韻を残します。

◆総括

『リトル・シングス』は、連続殺人事件の真相を追う刑事サスペンスでありながら、実際には「罪悪感を抱えた人間が、どのように
壊れていくのか」を描いた重い作品です。スパルマが本当に犯人だったのかは最後まで明かされず、観る側にも判断を委ねる構成に
なっています。

デンゼル・ワシントン、ラミ・マレック、ジャレッド・レトの三人が生み出す緊張感は見応えがあり、特にスパルマの不気味な存在
感は、決定的な証拠がないにもかかわらず、彼を犯人だと思わせるほど強烈でした。

一方で、事件が明確に解決する展開を期待すると、物足りなさを感じるかもしれません。しかし本作が描きたかったのは、犯人逮捕
の爽快感ではなく、正義への執着が人を狂わせ、たった一度の過ちが人生を変えてしまう怖さなのでしょう。

ラストの赤い髪留めは、バクスターを救うための優しい嘘であると同時に、新たな隠蔽でもあります。真実を知ることが救いになる
とは限りません。しかし、嘘によって得た救いを本当の救いと呼べるのでしょうか。明快な答えを示さないからこそ、観終わったあと
まで考えさせられる、余韻の深い心理サスペンスでした。

※本ページにはプロモーションが含まれています。

暗い場面の“小さな違和感”まで、しっかり見逃さない。

『リトル・シングス』は、人物の視線や表情、暗い室内に残されたわずかな手がかりなど、細かな映像から緊張感を味わう作品です。画面が小さかったり、暗部が見づらかったりすると、本作ならではの不穏な空気を十分に楽しめないことがあります。

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