◆【映画】『フライト』(2012年)の作品情報
| 監督 | ロバート・ゼメキス |
|---|---|
| 脚本 | ジョン・ゲイティンズ |
| 出演 | デンゼル・ワシントン、ケリー・ライリー、 ドン・チードル、ジョン・グッドマンほか |
| 配給 | パラマウント映画 |
| 公開 | 2012年 |
| 上映時間 | 139分 |
| 製作国 | アメリカ |
| ジャンル | ヒューマンドラマ、サスペンス、航空映画 |
| 視聴環境 | U-NEXT、吹替、自室モニター、nwmヘッドフォン |
◆キャスト
- ウィップ・ウィトカー:デンゼル・ワシントン
代表作『トレーニング デイ』(2001年) - ヒュー・ラング:ドン・チードル
代表作『ホテル・ルワンダ』(2004年) - ニコール・マッゲン:ケリー・ライリー
代表作『シャーロック・ホームズ』(2009年) - ハーリン・メイズ:ジョン・グッドマン
代表作『モンスターズ・インク』(2001年) - チャーリー・アンダーソン:ブルース・グリーンウッド
代表作『スター・トレック』(2009年)
◆あらすじ
ネタバレなしのあらすじ
旅客機の機長ウィップ・ウィトカーは、豊富な経験と優れた操縦技術を持つベテランパイロットです。しかし私生活では酒や薬物に依存し、フライト当日も万全とはいえない状態で操縦席に座っていました。悪天候のなか、オーランドからアトランタへ向けて離陸した旅客機は、激しい乱気流を抜けたあと、突如として制御不能に陥ります。
急降下を続ける機体を立て直すため、ウィップは常識では考えられない背面飛行を決断します。機体を反転させて降下を抑え、最終的には野原への胴体着陸を成功させました。乗客・乗員の多くが生還し、ウィップは「奇跡のパイロット」として英雄視されます。
ところが事故後の血液検査によって、ウィップの体内からアルコールと薬物が検出されます。事故の原因は機体の故障なのか、それとも機長の飲酒や薬物使用なのか。英雄から犯罪者へ転落する可能性に直面したウィップは、敏腕弁護士や旧友の支援を受けながら事故調査に臨みます。
本作は航空事故の真相を追うだけではなく、依存症と嘘に支配された男が、自分自身の弱さと向き合えるのかを描くヒューマンドラマです。
ここからネタバレありです。
ネタバレあらすじと結末を開く
事故調査によって、旅客機の急降下は機体の昇降舵を動かす装置の故障が原因だったことが判明します。複数のパイロットが同じ状況をシミュレーターで試しますが、ウィップのように多くの乗客を救うことはできませんでした。つまり、彼の卓越した操縦技術が大惨事を防いだことは事実でした。
一方で、ウィップがフライト中にウォッカを飲み、前夜からコカインを使用していたことも事実です。弁護士ヒューは検査結果を無効にし、死亡した客室乗務員トリーナが酒を飲んだことにすれば、ウィップを刑務所から救えると考えます。しかしウィップは酒をやめられず、薬物依存症のニコールとの関係も壊してしまいます。
公聴会の前日、関係者はウィップをホテルの部屋に隔離し、酒から遠ざけます。ところが隣室の冷蔵庫に大量の酒を見つけたウィップは誘惑に負け、翌朝には泥酔して倒れていました。ハーリンが持ってきたコカインで無理やり目を覚まし、ウィップは公聴会へ向かいます。
公聴会では飲酒を否定し続けますが、最後に「トリーナがウォッカを飲んだと思うか」と質問されます。亡くなった彼女へ罪を着せることに耐えられなくなったウィップは、ついに自分が酒を飲んだと告白します。
その結果、ウィップは収監されますが、刑務所では酒を断ち、自分の人生を正直に語れるようになっていました。彼は身体の自由を失ったことで、初めて嘘と依存症から解放されたのです。
◆考察と感想
俺目線で考える『フライト』
『フライト』を観る前は、正直なところ、飛行機事故を題材にした航空サスペンスだと思っていました。実際、冒頭の墜落シーンはかなり強烈です。旅客機が突然制御不能になり、機体を背面飛行させて落下を抑える展開は、観ているこちらまで身体に力が入ります。ウィップの判断力と操縦技術は疑いようがなく、あの状況で多くの命を救ったという一点だけを見れば、間違いなく英雄です。
ただ、この映画が本当に描いているのは、事故そのものではありません。事故をきっかけに、ひとりの男が長年隠してきた依存症と嘘が、逃げ場のないところまで追い詰められていく話です。ウィップは優秀なパイロットですが、人間としてはかなり危うい。勤務前にコカインを使い、操縦中にも酒を飲み、それでも自分は正常だと思い込んでいます。周囲が酒をやめろと言っても聞かず、問題が起きるたびに他人や状況のせいにします。
俺がこの映画で一番怖いと思ったのは、ウィップが明らかに壊れているのに、自分だけは壊れていないと思っているところです。依存症というのは、単に酒をたくさん飲むことではなく、自分で自分を制御できなくなっている事実を認められない状態なのだと思います。彼は何度も酒を捨て、何度もやめると誓います。それでも次の場面ではまた飲んでいる。その繰り返しには、意思の弱さだけでは説明できない深さがあります。
特に印象に残ったのは、公聴会前夜のホテルの場面です。関係者はウィップを酒から隔離するため、部屋を徹底的に管理します。ところが偶然、隣室へ続く扉が開いており、その先には酒の入った冷蔵庫があります。ウィップは一度、小瓶を手に取りながらも元へ戻します。この瞬間だけを見ると、彼は誘惑に勝ったように見えます。しかし次の瞬間には、もう酒を飲んでいる。この場面には、依存症の恐ろしさが凝縮されています。

momoko
「この期に及んでも、依存症ってこんな感じ?怖いな。」

yoribou
「僕も結構似ているかもね。お酒が目の前にチラついたらもう駄目だよ。」
普通の映画なら、主人公がここで踏みとどまり、公聴会で堂々と無実を主張する展開になりそうです。しかし『フライト』は、そんな都合のよい再生を描きません。ウィップは最後の最後まで酒に負け、さらにコカインで無理やり目を覚まして公聴会へ向かいます。見た目だけは整い、受け答えもできますが、中身は完全に崩れています。彼を守ろうとした友人や弁護士の努力も、本人の依存症の前では無力でした。
それでも、公聴会の最後にウィップは初めて本当の意味で自分の意思を示します。亡くなったトリーナに酒の責任を押しつければ、彼は罪を免れることができました。弁護士もその筋書きを用意し、あとは嘘をつくだけでした。しかしウィップは、死者にまで自分の罪を背負わせることができませんでした。そして「私が飲んだ」と告白します。
この告白によって、彼は英雄の立場も、自由も、パイロットとしての人生も失います。普通に考えれば、最悪の結末です。それでも俺には、この瞬間こそウィップが初めて自分の人生を取り戻したように見えました。それまでの彼は、自由に酒を飲み、好き勝手に生きているようで、実際には依存症に支配されていました。刑務所に入ったことで身体の自由は失いましたが、酒と嘘からは解放されます。
「いつから嘘をついていたのか」と問われたウィップが、「ずっとだ」と認める姿は重いです。彼は事故についてだけ嘘をついていたのではありません。自分は大丈夫だ、自分は酒をやめられる、自分は悪くないという嘘を、長年自分自身につき続けていました。だからこそ最後の告白は、事故の責任を認める以上に、自分の人生そのものを認める行為だったのだと思います。
また、この映画は「優れた能力を持つ人間なら、人格の欠点は許されるのか」という問題も投げかけています。ウィップが操縦していなければ、乗客の多くは亡くなっていた可能性があります。一方で、彼が勤務中に酒を飲んでいたことは絶対に許されません。命を救った英雄であることと、重大な規則違反を犯した人間であることは、同時に成立します。
俺は、ウィップを完全な悪人だとは思いません。しかし、命を救ったからといって、飲酒や薬物使用が帳消しになるとも思いません。この割り切れなさが、本作の面白さです。正義か悪か、英雄か犯罪者かという単純な二択ではなく、人間は善いことも悪いこともする存在だと突きつけてきます。
ニコールの存在も重要でした。彼女も薬物依存に苦しんでいますが、自助グループへ参加し、少しずつ生活を立て直そうとします。対してウィップは、自分には助けが必要だと認めようとしません。ふたりは似た者同士に見えますが、依存症との向き合い方は正反対です。ニコールが彼のもとを去ったのは、冷たいからではなく、自分まで再び壊れてしまうことを理解していたからでしょう。
デンゼル・ワシントンの演技も見事でした。ウィップは堂々としていて、話し方にも自信があります。そのため、明らかに問題のある行動をしていても、一瞬だけ彼の言い分が正しいように感じてしまいます。優秀さ、傲慢さ、弱さ、孤独が同時に見える人物であり、単純に嫌いになれないのです。
『フライト』は、派手な航空事故で観客を引き込みながら、その後はひとりの男の内面へ深く入っていく作品でした。墜落したのは飛行機だけではなく、ウィップが築いてきた虚像でもあります。そしてすべてを失ったあと、彼はようやく地面に足をつけます。
俺にとって本作の結末は、破滅ではなく再出発です。人間は、失敗しないことよりも、自分の失敗を認めることの方が難しい。どれだけ周囲が助けても、本人が自分の問題を認めない限り、本当の意味では救われません。ウィップは刑務所に入って初めて、自分に正直になれました。自由とは、好きなことを好きなだけすることではなく、自分を支配しているものから解放されることなのだと感じました。
◆映画好きの愛用品
『フライト』は、迫力ある航空事故だけでなく、ウィップが自分の弱さや嘘と向き合っていく姿が強く残る作品でした。
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モテ男目線で考える『フライト』
モテる男は、能力だけで自分を大きく見せません。ウィップは操縦技術では一流でしたが、弱さを隠すために酒と嘘へ逃げ続けました。本当に魅力のある男は、失敗を認め、必要なときには助けを求められる人です。最後に彼が真実を話した姿には、見栄よりも誠実さを選ぶ強さがありました。女性に信頼されるのは、完璧な男ではなく、自分の欠点と向き合い、言葉と行動に責任を持てる男だと思います。
◆教訓
どれほど優れた能力を持っていても、自分の弱さと過ちを認めなければ、本当の自由や再生にはたどり着けません。
◆評価
/ 20
/ 20
/ 20
揺さぶり
/ 20
/ 20
/ 100
◆総括
『フライト』は、迫力ある航空事故を入口にしながら、実際にはアルコール依存症と嘘に支配された男の再生を描いたヒューマンドラマです。
ウィップは、卓越した操縦技術で多くの命を救った英雄である一方、勤務中に酒を飲み、薬物にも依存していた危険な人物でもあります。本作の魅力は、彼を単純な善人や悪人として描かず、人間の矛盾や弱さを正面から見せているところにあります。
特に印象に残るのは、すべてを失うと分かっていながら、最後に真実を告白する場面です。ウィップは刑務所へ入ることになりますが、その瞬間に初めて酒と嘘から解放されます。自由を失ったことで、本当の意味で自由になったという結末は重く、強い余韻を残します。
航空サスペンスとしての緊張感だけでなく、依存症、責任、家族との関係、自分に正直に生きる難しさまで描いた作品です。デンゼル・ワシントンの演技も圧倒的で、英雄か犯罪者かという単純な答えでは割り切れない人間ドラマとして、長く記憶に残る一本でした。
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『フライト』は、航空事故の緊迫感だけでなく、ホテルの冷蔵庫や公聴会前夜など、暗さを生かした場面が印象に残る作品です。
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