【映画】『ニューオーダー』(2020年)ネタバレあらすじ・感想|胸糞すぎる結末と新たな秩序の意味

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◆『ニューオーダー』(2020年)の作品情報

監督・脚本 ミシェル・フランコ
出演 ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド、ディエゴ・ボネータほか
配給 クロックワークス
公開 2020年
上映時間 86分
製作国 メキシコ・フランス
ジャンル 社会派ディストピア・スリラー
視聴環境 U-NEXT、吹替、自室モニター、nwmヘッドフォン

◆キャスト

  • マリアン:ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド
    代表作『母という名の女』(2017年)
  • ダニエル:ディエゴ・ボネータ
    代表作『モンスターハンター』(2020年)
  • マルタ:モニカ・デル・カルメン
    代表作『うるう年の秘め事』(2010年)
  • クリスチャン:フェルナンド・クアウトレ
    代表作『ヒロイコ』(2023年)
  • ロランド:エリヒオ・メレンデス
    代表作『エリ』(2013年)

◆あらすじ

メキシコの裕福な家庭に生まれたマリアンは、家族や政財界の名士たちに囲まれ、豪邸で華やかな結婚式を迎えていました。しかし、屋敷の外では貧富の格差に怒る人々の抗議運動が激しさを増し、街の各所で道路封鎖や衝突が起きていました。蛇口から緑色の水が流れ、招待客が予定どおり到着できないなど、不穏な兆候が祝いの席にも忍び寄ります。

そんななか、かつて屋敷で働いていた男性が、重い病気を患う妻の治療費を借りるために訪ねてきます。家族が十分な金額を渡さないまま男性を帰したことを気にしたマリアンは、元使用人のクリスチャンに頼み、結婚式を抜け出して彼の家へ向かいます。

ところが、街はすでに暴徒による略奪と殺戮が広がる危険な状態でした。さらに武装した集団がマリアンの屋敷へ侵入し、結婚式は一瞬にして惨劇へと変わります。暴動を鎮圧するために軍が出動しますが、人々を守るはずの兵士たちもまた、無条件に信頼できる存在ではありません。古い秩序が崩壊していくなか、マリアンは想像を絶する暴力と新たな支配体制に巻き込まれていきます。

ここからネタバレありです。

ネタバレあらすじを開く

マリアンが屋敷を離れた直後、暴徒たちは結婚式場へ押し入り、招待客を殺害しながら金品を奪います。一方、マリアンはクリスチャンの母・マルタの家に避難しますが、軍の兵士に発見され、ほかの市民とともに拘束されます。軍は暴動を鎮圧して秩序を回復するどころか、通信を遮断し、市民を連行して拷問や性的暴行を加える恐怖政治を始めていました。


拘束され、心身ともに追い詰められたマリアン
暴行を受けて憔悴するマリアン。しかし、彼女の苦しみに手を差し伸べる者はいない

監禁されたマリアンは、軍内部の兵士たちによって身代金目的の人質にされます。兵士たちはマリアンの家族だけでなく、彼女を救おうとするクリスチャンとマルタにも金を要求します。親子は金を集めて何度も兵士に渡しますが、マリアンは解放されません。


額に管理番号を書かれた人質たち
額には人質を管理するための番号が書かれ、いつ命を奪われるか分からない恐怖が続いた

やがてマリアンの家族が軍上層部との人脈を使ったことで、兵士たちによる誘拐と恐喝が発覚します。しかし、軍の司令官は事件を公表せず、組織の不祥事を隠す道を選びます。関与した兵士たちは口封じのために処刑され、救出されたはずのマリアンも真相を語らせないために殺害されます。

さらに軍は、誘拐と殺人の罪をクリスチャンとマルタになすりつけます。クリスチャンは殺害され、マルタはマリアンを誘拐した主犯として公開処刑されました。その様子をマリアンの家族や軍の権力者たちが見つめるなか、社会には軍を中心とする新しい秩序が築かれます。しかし、格差も腐敗も消えておらず、支配する者が入れ替わっただけでした。

◆考察と感想

『ニューオーダー』を観終わって最初に残ったのは、怒りよりも強い疲労感だった。誰かが正義を貫いて状況を変えるわけでもなく、善良な人間が報われるわけでもない。暴動を起こした側も、金持ちの側も、軍の側も、それぞれが自分の欲望や保身のために動き、最後には権力を持った者だけが都合のいい物語を作って生き残る。ここまで救いのない映画は、観ていて本当にしんどい。

最初は、貧富の差に怒った民衆が上流階級を襲う話だと思っていた。豪邸では結婚式が開かれ、着飾った人々が酒を飲み、すぐ近くでは貧しい人たちが病院代すら払えずに苦しんでいる。この対比だけを見ると、映画は富裕層への報復劇を描くのかと思わせる。しかし実際は、そんな単純な構図では終わらない。

屋敷に侵入した暴徒たちは、格差を是正するために行動しているようには見えない。ただ金品を奪い、人を殺し、積み重なった憎しみを暴力で吐き出しているだけだった。もちろん、彼らがそこまで追い詰められた背景には社会の不平等がある。しかし、だからといって殺人や略奪が正当化されるわけではない。弱者が力を持った瞬間に善人になるわけではなく、置かれた立場が変われば、同じように他人を踏みつける側にもなり得る。その冷たい現実を突きつけられた。

さらに恐ろしかったのは、暴徒よりも軍だった。街が混乱している間は、軍の登場によって状況が落ち着くのではないかという期待が少しだけ生まれる。しかし、その軍こそが最も組織的で、最も残酷な存在だった。兵士たちは市民を拘束し、暴力を振るい、人質を使って金を奪う。そこには法も倫理もなく、制服と武器を持っているというだけで、何をしても許される状態になっている。

暴徒による暴力は感情的で無秩序だが、軍による暴力は計算され、仕組みとして行われる。その違いが本作の一番怖い部分だと思う。暴徒ならば、いずれ鎮圧される可能性がある。しかし、国家権力そのものが腐敗した場合、助けを求める場所がなくなる。警察も軍も報道も権力者に支配され、被害者は最初から存在しなかったことにされてしまう。

マリアンは、この映画の中では比較的良心を持った人物だった。元使用人の妻が病気だと知り、結婚式を抜け出してまで金を届けようとする。金持ちの家庭に育ちながら、他人の苦しみを見て見ぬふりができなかった。普通の映画ならば、その善意が誰かを救い、最後には本人も助かる流れになりそうだ。しかし『ニューオーダー』では、その善意こそが彼女を地獄へ向かわせるきっかけになる。

だからといって、マリアンが何もしなければよかったとは思わない。彼女の行動が間違っていたのではなく、善意が通用しない社会になっていたことが問題なのだ。誰かを助けようとした人間が損をし、他人を利用した人間が生き残る。そんな世界では、正しく生きる意味すら失われてしまう。

クリスチャンと母親のマルタも、本当に気の毒だった。二人はマリアンを助けようとし、兵士の要求に従って金を集め続ける。それでもマリアンは戻らず、最後にはすべての罪を着せられる。軍にとって彼らは、真相を隠すために都合のいい存在だった。身分が低く、権力も人脈もなく、死んでも社会に大きな影響を与えない。だからこそ、犯人に仕立て上げられたのだろう。

終盤で描かれる公開処刑は、この映画のテーマを最も分かりやすく表している。軍は真犯人を処罰したのではなく、民衆に納得させるための犯人を作った。大切なのは真実ではなく、社会が再び秩序を取り戻したように見せることだった。軍は自分たちの犯罪を隠し、犠牲者を加害者に変え、新しい支配体制を完成させる。

題名の「ニューオーダー」とは、新しくて正しい社会という意味ではない。古い秩序が壊れたあとに、さらに暴力的な秩序が生まれたという皮肉だと思う。富裕層が支配する社会から、軍が支配する社会へ変わっただけで、弱い者が犠牲になる構造は何も変わっていない。むしろ、以前よりも露骨で逃げ場のない社会になっている。

俺がこの映画を胸糞悪いと感じたのは、残酷な場面が多いからだけではない。現実でも起こり得ると思えてしまうからだ。大きな混乱が起きたとき、人々が本当に求めるのは自由よりも安全かもしれない。そして、安全を約束する強い権力者が現れれば、多少の人権侵害には目をつぶってしまう。その結果、権力はさらに強くなり、気づいたときには誰も逆らえなくなる。

暴動、格差、軍事支配、情報統制、冤罪。映画の中で起きる出来事は極端ではあるが、完全な空想には見えない。社会の不満が限界まで積み上がれば、昨日までの常識が一日で崩れることもある。だからこそ、本作は単なるパニック映画ではなく、今の社会に対する警告にも見えた。

ただ、作品としては説明がかなり少ない。暴動がどのように始まり、軍がどの時点で国家を掌握したのかは詳しく語られない。登場人物の感情も深く描写されず、出来事が淡々と進んでいく。そのため、人物に感情移入するというより、崩壊していく社会を冷たい映像で見せられている感覚に近かった。

この突き放した演出は好みが分かれると思う。俺も観ている途中では、もう少し人物の背景や状況を説明してほしいと感じた。しかし、観終わって考えると、説明不足だからこそ混乱と恐怖が強く伝わった部分もある。当事者たちも何が起きているのか分からないまま、突然日常を奪われている。観客にも同じ感覚を与える狙いだったのかもしれない。

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momoko
「こんなに絶望的な映画ってないと思う。誰も一般人は不幸にはなっても幸せにはならないもんね。」

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yoribou
「このポスター結構観るけど、ホラー映画より悲惨だね。地獄絵図そのもの。」

何度も観たい映画ではない。娯楽としてスッキリできる作品でもなく、観たあとには嫌な気持ちが長く残る。それでも、権力と格差、秩序と暴力について考えさせる力は強い。善人が報われず、悪人が裁かれず、真実さえも権力によって書き換えられる。その徹底した救いのなさこそが、『ニューオーダー』という映画の最大の魅力であり、最大の苦しさだった。

秩序が崩れた世界で、最後に残るのは人間の本性。

『ニューオーダー』で印象的だったのは、貧富の格差から始まった暴動が、やがて軍による新たな支配へと変わっていく姿でした。

誰が正しいのかではなく、力を持った者が真実まで作り替えてしまう。その救いのなさが、観終わったあとにも重く残ります。

もし本作のように、格差や社会への不満が暴力へ変わり、秩序そのものが崩れていく映画が好きなら、このあと紹介する次の2作品もおすすめです。

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◆似ている作品・おすすめ映画2作品

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【映画】パラサイト 半地下の家族(2019年)

貧富の格差と富裕層への反発を描き、階級間の緊張が取り返しのつかない暴力へ変わっていく点が似ています。

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ジョーカー
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格差と社会への不満が積み重なり、個人の絶望が暴動へ波及して社会秩序が崩れていく点が似ています。

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◆モテ男目線で考察

モテる男なら、マリアンのような女性の優しさを「お人よし」で片づけず、その行動力まで見ていると思う。ただし、善意だけで危険な場所へ向かわせるのではなく、状況を冷静に判断して守ることも必要だ。本作では、金や地位を持つ男たちが誰一人として彼女を守れなかった。結局、本当に頼れる男とは、見栄を張る人ではなく、危険を察知し、相手を安全な場所へ導ける人なのだと感じた。

◆教訓

秩序が崩れたとき、善意や正しさだけでは人を守れず、権力を監視する仕組みこそが社会を支えます。

◆評価

項目 点数 コメント
ストーリー 18 / 20 暴動から軍事支配へ転じる救いのない
展開に引き込まれます。
演技 18 / 20 混乱と恐怖にのみ込まれる人々の姿が
生々しく伝わります。
映像・演出 18 / 20 説明を抑えた冷たい演出が、社会崩壊
の恐怖を強めています。
感情の揺さぶり 18 / 20 善良な人物ほど犠牲になる展開に、
強い怒りと無力感が残ります。
テーマ性 19 / 20 格差、暴力、権力の腐敗を
容赦なく突きつける作品です。
合計 91 / 100 『ニューオーダー』は、社会の混乱に乗じて
新たな支配が生まれる恐怖を描いた社会派
スリラーです。
救いのない結末ながら、格差と権力につい
て強く考えさせられます。

◆総括

『ニューオーダー』は、貧富の格差から始まった暴動が、軍による新たな支配へと変わっていく過程を容赦なく描いた社会派スリラーです。

本作で最も恐ろしいのは、秩序が崩壊したことではありません。混乱を収めるはずの権力が暴力を独占し、都合の悪い真実を隠し、罪のない人間を犠牲にして新しい秩序を作り上げてしまうことです。

マリアンやクリスチャンたちの善意は報われず、最後まで権力を持たない者だけが踏みにじられます。観終わったあとに爽快感はなく、強い怒りと無力感が残りますが、それこそが本作の狙いなのでしょう。

説明を抑えた演出や救いのない結末は好みが分かれますが、格差社会、暴力、情報操作、権力の腐敗について考えさせる力は非常に強い作品です。何度も観たい映画ではありませんが、一度観たら簡単には忘れられない、胸糞の悪さを含めて完成度の高い良作でした。

※本ページにはプロモーションが含まれています。

重たい映画ほど、身体まで疲れさせない椅子で観たい。

『ニューオーダー』のように、緊張感が途切れず、観終わったあとまで考え込んでしまう作品は、気づけば長時間同じ姿勢で画面を見続けています。

映画鑑賞だけでなく、感想を書いたり、ブログを整えたりする時間まで含めると、椅子の座り心地は想像以上に大切です。腰や背中に負担がかかる椅子では、作品に集中する前に身体が疲れてしまいます。

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