映画『それでも夜は訪れる』(2025年)レビューと考察
ヒューマンドラマ × サスペンス|108分|Netflix
📄 作品情報
タイトル | それでも夜は訪れる |
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監督 | ベンジャミン・カロン |
脚本 | サラ・コンラット |
原作 | ウィリー・ヴローティン |
出演 | ヴァネッサ・カービー、ジェニファー・ジェイソン・リー 他 |
配給 / 配信 | Netflix |
公開 | 2025年 |
上映時間 | 108分 |
製作国 | アメリカ、イギリス |
ジャンル | ヒューマンドラマ、サスペンス |
視聴ツール | Netflix、吹替、自室モニター |
🎭 キャスト
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Lynette(リネット):ヴァネッサ・カービー
代表作:『Pieces of a Woman』(2020年)/『Mission: Impossible – Fallout』(2018年) -
Doreen(ドリーン):ジェニファー・ジェイソン・リー
代表作:『The Hateful Eight』(2015年)、『Road to Perdition』(2002年) -
Kenny(ケニー):ザック・ゴッツァーゲン
代表作:『The Peanut Butter Falcon』(2019年) -
Cody(コーディ):ステファン・ジェイムズ
代表作:『Race』(2016年)※ジェシー・オーウェンス役 -
Scott(スコット):ランドール・パーク
代表作:『Fresh Off the Boat』(2015–2020年/TV)、『Ant‑Man and the Wasp』(2018年)
📝 あらすじ
アメリカ・ポートランドの片隅で生きるリネットは、古びた自宅に母親と知的障害を抱える弟と暮らしています。街は再開発の波に飲み込まれ、土地や家賃は高騰し、低所得層は居場所を失いつつあります。昼は中古車販売の清掃員として、夜はウェイトレスとして働き詰めのリネットは、何とか家を守り家族を支えようと必死でした。彼女にとって、家は単なる建物ではなく、自分の尊厳や希望そのものを意味していたのです。ところが、家を買い取るための頭金をわずかに用意した矢先、不動産業者から提示された期限はたった二日。しかも金額は、彼女が考えていた以上に膨大なものでした。限られた時間の中で、街を駆け巡り、借金や取引を必死に探し続けるリネット。心身を削る焦燥の一夜が始まり、彼女は信頼と裏切りの狭間で揺さぶられます。果たして、この街に居場所を残すことができるのでしょうか。
ここからネタバレありです
ネタバレあらすじを開く
リネットは不動産の頭金を集めるため、知人や裏社会にまで頼り、昼夜を問わず奔走します。しかし協力を約束した人々は次々と裏切り、金は逃げるように失われていきます。頼みの綱であった恋人も信用できず、母親からは「諦めろ」と突き放され、孤立感は極限に達しました。やがてリネットは、違法取引に足を踏み入れざるを得なくなり、銃を手に金を奪うという危険な選択に追い込まれます。その夜、彼女は罪と恐怖に震えながらも、家族を守るために行動を続けました。最終的に金を掴んだものの、代償はあまりに大きく、彼女の心と人間関係は深く傷つきます。夜明けと共に迎えたのは勝利ではなく、絶望と諦念の入り混じった現実でした。リネットは自らの選択がもたらした孤独と重圧を受け止めながら、それでも夜は訪れ、新しい一日が始まるのです。
🔎 考察と感想
本作、映画『それでも夜は訪れる』を観終えたあと、胸の奥に残ったのは不快感と共鳴の入り混じった複雑な感情だった。俺は観客としてこの物語に引き込まれながら、同時にリネットの焦燥と疲弊を自分ごとのように感じていた。物語の舞台は、急速に変わりゆくアメリカの都市、再開発の名の下で住む場所を奪われていく人々の現実だ。映画は決して誇張されたディストピアではなく、むしろ今そこにある現実を突きつけてくる。リネットが必死に守ろうとする家は、単なる不動産の価値ではなく、自分と家族の居場所、つまり生きる意味そのものだった。俺自身、都会での暮らしの中で、家賃や生活費に追われ、居場所を守ることの難しさを痛感したことがある。だからこそ、リネットがあの夜に走り回る姿は、心の奥をえぐるほどリアルに響いたのだ。
この作品の秀逸さは、単なる社会派ドラマの枠に収まらないところにある。サスペンスとしての緊張感が張り巡らされ、観ている俺は常に「次に何が起こるのか」と息を詰める。取引が破談に終わるたび、裏切られるたび、リネットの表情はますます硬直し、観客の俺も胃の奥が重くなる。社会の仕組みは彼女のような弱者を救わない。それどころか利用し、追い詰めていく。資本主義の冷酷な仕組みが、こうも容赦なく人間の尊厳を削っていくのかと痛感した。俺はその残酷さに怒りを覚えながらも、どこかで「これは遠い国の話ではない」とも思わされた。格差や再開発、非正規雇用の不安定さは、日本社会においても決して他人事ではないのだから。
役者陣の演技も圧巻だった。特にヴァネッサ・カービー演じるリネットの表情には、台詞以上の言葉が宿っていた。彼女の目の動き、声の震え、歩き方ひとつひとつが「時間がない」「信じられるものがない」という切迫感を観客に伝えてくる。俺はそのリアルさに息を呑んだ。ジェニファー・ジェイソン・リー演じる母親は冷徹に見えるが、その裏に諦念や疲弊が滲み出ていて、単純に「冷たい親」とは言い切れない深みを持っていた。人は生き延びるために、時に最も近しい存在すら突き放さなければならない。その残酷な真実を見せつけられたようで、観終わったあとも心に鉛のように重く残った。
ストーリー終盤、リネットが銃を手にする展開は衝撃だった。彼女が本当に犯罪に手を染めるのか、最後の一線を超えるのかという問いは、観客の俺に「人は生きるためにどこまで手を汚せるのか」という普遍的なテーマを突きつけてくる。彼女の行動は許されないものだ。しかし同時に、彼女をそこまで追い詰めた社会構造こそが罪深いのではないかとも感じた。俺は画面を見つめながら「もし自分が同じ状況だったら?」と何度も考えてしまった。安全な場所から彼女を裁くことは容易いが、実際に絶望的な状況に放り込まれたとき、人は清廉でいられるのだろうか。映画はその問いに答えを出さず、観客に委ねる。だからこそ、観終わったあとも心の中で議論が続くのだ。
この映画のラストシーンは、決して救いに満ちてはいなかった。夜が明けても、彼女の問題は解決していない。手にした金は代償によって汚され、家族との関係も壊れてしまった。それでも夜は訪れる、というタイトルが示す通り、時間は無情に進み、朝は必ず来る。そこに希望を見出すのか、それとも虚無を感じるのかは観客次第だ。俺は虚無感と共に、奇妙な安堵も覚えた。人生は選択の連続で、結果がどうであれ、次の日は必ず始まる。その残酷さを描きながら、映画は「生きることの持続」を観客に実感させる。俺は観終えたあとしばらく立ち上がれず、ただリネットの姿を反芻し続けた。作品のテーマは重いが、その重みを引き受ける価値がある。なぜなら、この映画は俺たちが日常の中で見て見ぬふりをしている現実を直視させてくれるからだ。
観賞後、俺は「希望とは何か」を考えざるを得なかった。希望とは成功や救済を意味するのではない。たとえ傷つき、裏切られ、罪を背負っても、それでも夜は訪れ、朝は来る。その事実を受け入れながら一歩を踏み出すことが希望なのだと、この映画は教えてくれたのだ。俺にとって本作は、ただの社会派スリラーではなく、自分自身の生き方を問い直す鏡だった。
💡 モテ男の考察
この映画を観て思ったのは、「強さ」とは格好つけることじゃなく、泥だらけになっても守りたいものを守る覚悟だということだ。リネットの必死さは、表面的な余裕よりも何倍も魅力的に映った。俺がモテる秘訣をひとつ挙げるなら、困難から逃げない姿勢を見せること。女性はその背中に誠実さと覚悟を読み取る。本作は、男が学ぶべき“真のカッコよさ”を突きつけてくる。
🎯 教訓・学び
どんな逆境でも逃げずに立ち向かう覚悟こそ、女性から最も信頼されモテにつながる真の魅力だ。
⭐ 評価
項目 | 点数 | コメント |
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ストーリー | 19 / 20 | どんどんダメになっていく姿を観たと言う強烈なイメージ。堕落の仕方がすさまじすぎる。 |
演技 | 19 / 20 | リネットを演じたヴァネッサ・カービーの落ちぶれ方が凄い。 |
映像・演出 | 18 / 20 | あまりこんなに一人を追っかけて作品すべてを終えてしまうという作風の映画は無いかと思う。 |
感情の揺さぶり | 18 / 20 | ショッキングな場面の連続で、普通はここまで追い込まれたら死ぬかもと言う状況。感情はブレブレだった。 |
オリジナリティ・テーマ性 | 17 / 20 | オリジナリティ、テーマ性と言う、本作から教訓を得ると言うのは余りないかもしれない。 |
合計 | 91 / 100 | いかにもNetflix独占作品と言う目に見えない雰囲気は有った。見応えは有ったかと思う。 |

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