【映画】『正体』(2024年) 逃げる死刑囚は怪物か、それとも真実の証人か――衝撃のサスペンス | ネタバレあらすじと感想

サスペンス/スリラー

映画『正体』(2024年)レビュー

サスペンス
社会派ドラマ
PG12

◆映画『正体』の作品情報

  • 【英題】
  • The True Identity
  • 【監督】
  • 藤井道人
  • 【脚本】
  • 小寺和久、藤井道人
  • 【原作】
  • 染井為人「正体」
  • 【出演】
  • 横浜流星、吉岡里帆、森本慎太郎、山田杏奈、山田孝之 他
  • 【配給】
  • 松竹
  • 【公開】
  • 2024年
  • 【上映時間】
  • 120分
  • 【製作国】
  • 日本
  • 【ジャンル】
  • サスペンス、ドラマ
  • 【視聴ツール】
  • Netflix、自室モニター、HUAWEI

◆キャスト

  • 鏑木慶一(死刑囚・逃亡者):横浜流星
    代表作『春に散る』(2023年)、『ヴィレッジ』(2023年)
  • 安藤沙耶香:吉岡里帆
    代表作『ハケンアニメ!』(2022年)、『見えない目撃者』(2019年)
  • 野々村和也:森本慎太郎
    代表作『Gメン』(2023年)、『すずめの戸締まり』(2022年/声の出演)
  • 酒井舞:山田杏奈
    代表作『ゴールデンカムイ』(2024年)、『ミスミソウ』(2018年)
  • 又貫征吾(刑事):山田孝之
    代表作『電車男』(2005年)、『唄う六人の女』(2023年)


◆映画『正体』(2024年)あらすじ

◆ネタバレなし

日本中を震撼させた凶悪事件の犯人として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木慶一が物語の中心です。判決確定から間もなく、彼は脱走という前代未聞の行動に出ます。逃走を続ける鏑木は、日本各地で新たな生活を始めるかのように潜伏し、そこで出会った人々と交流を重ねていきます。彼の存在は、人々の心に奇妙な痕跡を残し、語られる姿はまるで別人のように異なっていました。追跡を担当する刑事・又貫は、潜伏先で出会った人々を一人ひとり取り調べることで、鏑木の“正体”に迫ろうとします。追う側と追われる側、それぞれの思惑が交錯する中、物語は「彼は本当に冷酷な殺人犯なのか」という根本的な問いを観客に投げかけます。真実にたどり着くまでの緊張感と心理戦が、スクリーンを通して観る者を強く引き込みます。

ここからネタバレありです

◆ネタバレあり

鏑木は逃亡中、それぞれの潜伏先で別人のように振る舞い、沙耶香や和也、舞といった人々に信頼を寄せられる存在となります。しかし彼の過去を知らない彼らは、やがて警察の取り調べによって“彼が死刑囚”であることを知り、困惑と衝撃を受けます。刑事・又貫は、鏑木が単なる逃亡者ではなく、確固たる目的を持って逃げていると気づきます。その真相は、鏑木が過去の事件において自らの冤罪を証明しようとしていたことでした。彼は姿を変えて逃げ続ける中で、事件の鍵を握る人々に接触し、断片的に真実を集めていたのです。最終的に浮かび上がるのは、鏑木が犯人ではなかった可能性、そして国家権力や司法制度の矛盾というテーマです。物語は観客に「正義とは何か」「人は他者をどう信じるべきか」という問いを残し、衝撃のラストを迎えます。

◆考察と感想

映画『正体』を観終えてまず感じたのは、これは単なる逃亡サスペンスではなく、人の内面と社会の仕組みを鋭くえぐり出す心理劇だということだ。死刑囚として逮捕され、凶悪犯とされながらも、逃走を続ける鏑木は一貫して「怪物」とも「救い主」とも捉えられる二面性を持っていた。観客として俺が揺さぶられたのは、その二面性が人との関わりを通じて浮き彫りになっていく過程だ。

潜伏先で出会う沙耶香や和也、舞といった人々は、鏑木をそれぞれ違った人物像として記憶していた。ある者は頼りがいのある青年として、ある者は孤独を癒やしてくれる存在として、またある者は危険な影を持つ謎の男として。人の見方がこれほどまでに主観的で、他者の本質を一面的にしか捉えられないことを、この映画は鮮やかに示していた。俺自身、普段の人間関係の中で「相手がどんな人物か」を決めつけていることが多いと自覚させられた。結局、俺たちは他人をその人の一部しか知らないままに「正体」を語っているにすぎないのだ。

また、藤井道人監督の演出は、鏑木を一方的に悪人として描くことを避け、彼の視線や仕草に人間的な温度を残していた。横浜流星の演技も秀逸で、視線一つで人物像が変化して見えるほどの幅を持たせていた。観ている俺は、次の場面でどんな顔を見せるのか緊張しながらも、その魅力に引き込まれ続けた。彼が死刑囚という立場であることを忘れそうになる瞬間があり、その危うさこそがこの映画の緊張感を支えているのだと思う。

刑事・又貫を演じた山田孝之も圧巻だった。彼は鏑木を追う役目でありながら、ただの追跡者に留まらない。鏑木を追い詰めることで、自分自身の正義や信念を試されているようにも見える。逃げる者と追う者、その関係は単純な善悪ではなく、互いの存在によって輪郭がはっきりしていく。まるで表裏一体の関係だ。ここにも監督の人間観察の鋭さを感じた。

さらに考えさせられたのは、「冤罪」というテーマだ。物語の核心に迫るにつれ、鏑木が本当に罪を犯したのか、それとも国家権力や司法の歪みによって不当に裁かれたのかという疑念が浮かび上がる。もし彼が冤罪であれば、死刑制度そのものへの問いかけにもつながる。藤井監督は明確な答えを提示せず、観客一人ひとりに「正義は誰のためにあるのか」と突きつけてくる。俺はスクリーンを前にして、自分の中にある司法への信頼と疑念を同時に刺激され続けた。

吉岡里帆、森本慎太郎、山田杏奈といった共演陣も、それぞれの立場から「鏑木という存在」を語ることで物語を多層的にしていた。彼らの証言を通して観客は鏑木像を積み上げていくのだが、その像はどこまでいっても一枚岩にはならない。人は見る角度によっていくらでも印象が変わる、その真理を彼らの演技が支えていた。とくに吉岡里帆の役柄は、鏑木に心を許す瞬間があり、観客として俺もつい同じ気持ちを抱いてしまった。その錯覚が後から強烈な裏切りのように響いてくる。

物語終盤にかけて、鏑木の逃走の真の目的が明らかになると、映画全体の見え方が変わる。それまでは「逃亡劇」として楽しんでいたのが、次第に「彼の戦い」に変わっていく。俺が強く感じたのは、人間は極限状況に追い込まれたときこそ、本当の“正体”をさらけ出すということだ。鏑木は逃亡を続けることで、むしろ自分が誰であるかを証明しようとしていた。逃げる行為は、彼にとって自己証明の手段だったのだ。

映画『正体』は、ただスリルを味わう作品ではなく、観る者に「人を信じるとは何か」「正義は誰が決めるのか」という大きな問いを投げかける。観終えた後もその余韻は長く続き、俺はしばらく席を立てなかった。エンターテインメント性と社会性、その両方を兼ね備えた稀有な作品だと断言できる。

◆モテ男目線での考察

鏑木が各地で人々に受け入れられたのは、彼が「相手に寄り添う姿勢」を持っていたからだ。たとえ過去にどんなレッテルを貼られていても、人は目の前で誠実に向き合ってくれる相手に心を許す。これは恋愛や人間関係でも同じで、外見や肩書きよりも「その場でどう接するか」が信頼を生む。モテ男になるには、相手を安心させる空気をつくることが何より大切だと、この映画は教えてくれる。

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momoko
「冤罪の問題は永遠のテーマなのかな?多分、掘り起こしたら沢山あるんだろうね。」

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yoribou
「けど、ここまで逃げられるのってないだろうね。最後にあんな形で判決を受けるのもなかなか無いだろうね。」

◆教訓・学び

人は肩書きや過去よりも、その瞬間に示す誠実さで惹かれる──モテる鍵は“今どう向き合うか”だ。

◆似ているテイストの作品

◆評価

項目 点数 コメント
ストーリー 19 / 20 逃亡劇と人間ドラマが緻密に絡み合い、冤罪や死刑制度を問いかける社会派サスペンスとして強い説得力を持っていた。
演技 20 / 20 横浜流星の多面的な演技は圧巻で、山田孝之との対峙も重厚。吉岡里帆ら共演陣も存在感を放ち、全体を底上げしていた。
映像・演出 18 / 20 逃走シーンの緊張感や光と影を使った映像美は藤井監督らしい。やや説明的に感じる場面もあったが、全体的に引き込まれる。
感情の揺さぶり 19 / 20 鏑木に出会った人々の証言が積み重なるたびに「彼は誰なのか」と揺さぶられ、終盤では真実への衝撃と余韻が残った。
オリジナリティ・テーマ性 19 / 20 死刑囚の逃亡劇を題材にしながら、人間の多面性と司法制度の矛盾を描く斬新さがあり、社会派映画としての意義も高かった。
合計 95 / 100 緊張感ある逃亡劇と人間の尊厳を問うテーマが融合し、エンタメ性と社会性を兼ね備えた傑作だった。


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