◆映画『愛なのに』の作品情報
【監督・脚本】城定秀夫
【脚本】今泉力哉
【出演】瀬戸康史、さとうほなみ、河合優実、中島歩 他
【配給】SPOTTEN PRODUCTIONS
【公開】2022年
【上映時間】107分
【製作国】日本
【ジャンル】人間ドラマ、ラブコメディー、ラブロマンス
【視聴ツール】Amazon Prime、自室モニター
◆キャスト
- 多田浩司:瀬戸康史 代表作『ルパンの娘 劇場版』(2021年)
- 佐伯一花:さとうほなみ 代表作『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020年)
- 矢野岬:河合優実 代表作『PLAN 75』(2022年)
- 若田亮介:中島歩 代表作『偶然と想像』(2021年)
- 熊本美樹:向里祐香 代表作『福田村事件』(2023年)
◆あらすじ(ネタバレなし)
古本屋を営む多田浩司は、目立たないながらも穏やかで静かな日常を送っていました。古書の香りとともに流れる時間の中で、彼は特に誰かと深く関わることもなく、自分のペースで人生を歩んでいたのです。そんなある日、彼の店に通っていた女子高生・矢野岬が、一冊の本を万引きしてしまいます。驚きつつも、彼女を咎めることなく話を聞いた多田に対して、岬は思いがけない言葉を告げます。「前からあなたのことが好きだった。結婚してほしい」――あまりに唐突な告白に戸惑いを隠せない多田ですが、それを機に、彼の静かな生活に波紋が広がっていきます。
この作品は、そんな一風変わったプロポーズをきっかけに展開する恋愛群像劇です。年齢や立場を超えて交錯する複数の男女の関係が、奇妙でいてどこか愛おしい形で描かれていきます。それぞれのキャラクターが抱える不器用な思いと、ままならない愛情の形が丁寧に紡がれていき、観る者の胸にじんわりと響いてきます。
▼ ここからネタバレありです
実は岬の告白は気まぐれなものではなく、彼女なりの本気でした。しかし年齢差や立場の違いもあって、多田はその思いに応えることができず、彼女との距離を取るようになります。その一方で、多田の元恋人である佐伯一花が現れ、未練の残る関係が再び揺れ動きます。一花には実は既婚者との関係があり、複雑な恋愛事情を抱えていたのです。
また、多田の友人である若田と、その恋人・美樹との関係も絡み合い、登場人物たちはそれぞれが「愛」だと思い込んでいた感情と向き合うことになります。誰かを想う気持ちはあるのに、すれ違いと誤解が重なり合い、思い通りにならない恋が展開していきます。やがて岬は多田のもとを離れ、新たな道を歩み始めます。そして多田もまた、自分なりに愛と向き合い、一歩を踏み出していくのです。本作は、「愛するとは何か」「想うことと繋がることの違い」を問いかける、静かで切ない群像ラブストーリーとなっています。
◆考察と感想
この映画、見たあとに何とも言えない感情が残った。すごく派手な展開があるわけじゃないのに、登場人物たちの心の揺れや温度がじわじわと染みてくる。序盤でいきなり女子高生に「結婚してください」と求婚される展開には正直びっくりしたけど、それ以上に驚いたのは、そこから物語がどんどん静かに深く掘り下げられていくことだった。言葉にできないような感情や、誰にも見せないような本音が描かれていて、そこにリアリティがあった。
特に印象的だったのは、多田という男の“鈍感さ”だ。彼は傷つけるつもりはないのに、気づかないことで人を遠ざけてしまう。岬の思いを受け止めることもできず、一花との関係にもきちんと向き合えない。優しさと曖昧さが紙一重で、それが逆に人を苦しめる。でも、多田ってたぶん、誰にでもいそうな普通の人間で、だからこそ共感できてしまった。俺自身も、気づかないうちに人を不安にさせたり、期待させてしまったりすることがある。その無意識さに向き合うことの難しさと痛さを、この映画は突きつけてくる。
一花や岬、美樹といった女性キャラクターもまた魅力的だった。一花は過去に囚われながらも新しい関係を求め、美樹は恋人への不信感と愛情の間で揺れる。それぞれが「愛」を信じたいと思いながらも、うまく表現できずにいる。その不器用さが、どのキャラクターにも通じていて、全体的にどこかもどかしい雰囲気が漂っている。でも、そのもどかしさこそが現実であり、人が人を想うときに避けて通れない感情なんだと思う。
演出としては、無言の時間が多かったのが印象的だった。セリフで説明しすぎず、空気や表情、間合いで関係性を見せていく。それがこの作品の強さだと思う。観る側が登場人物の気持ちを“感じ取る”という体験を求められるから、観終わったあとに自分自身の感情を整理したくなる。それってすごく映画的な体験だ。
タイトルの『愛なのに』という言葉も深い。「愛してるはずなのに、うまくいかない」「愛を伝えたのに、通じない」。この“なのに”には、どうしようもない葛藤が詰まっている。人間関係の難しさって、そこに尽きるんじゃないかと思う。正しさや理屈じゃなくて、感情のズレやタイミングの問題で、物事は複雑になっていく。それをまるごと描いているこの映画は、地味だけど深く心に残る作品だった。
◆考察(モテ目線)
この映画、モテたい男が観ると学べるのは「優しさの伝え方」だ。好かれても気づかず、過去に未練があっても曖昧にする。多田のような対応では、女性の信頼も熱も冷めてしまう。モテる男は、ちゃんと向き合い、言葉にする。「言わなくても伝わる」は通用しない。
◆教訓・学び
モテる人は、「優しさ」だけでなく、「想いを言葉にして伝える勇気」を持っている。
項目 | 点数(20点満点) | コメント |
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ストーリー | 15 / 20 | 特に何かが起きるでもないが頭に残る作品。 |
演技 | 19 / 20 | 皆うまいな。 |
映像・演出 | 15 / 20 | |
感情の揺さぶり | 18 / 20 | この作品中も事実。結構ドロドロですね。 |
オリジナリティ・テーマ性 | 17 / 20 | なかなか古本屋さんが舞台ってのはない。新鮮。 |
合計 | 84 / 100 | 「面白かったと言う残像だけが残った、 |
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