映画『リボルバー・リリー』(2023年)レビューと考察
「命を懸けても、守りたいものがある。」――大正の闇を切り裂く元女スパイの覚悟。
📄 作品情報
- 原題:Revolver LILY.
- 監督・脚本:行定 勲
- 脚本:小林達夫
- 原作:長浦京
- 出演:綾瀬はるか、長谷川博己、羽村仁成、シシドカフカ、古川琴音、豊川悦司 他
- 配給:東映
- 公開:2023年
- 上映時間:139分
- 製作国:日本
- ジャンル:アクション、サスペンス、歴史ドラマ
- 視聴ツール:Netflix、自室モニター
🎭 キャスト(主要5名)
- 小曾根百合(リリー):綾瀬はるか 代表作『海街diary』(2015年)
- 瀬良賢治:長谷川博己 代表作『シン・ゴジラ』(2016年)
- 村田幸雄(少年):羽村仁成 代表作『滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie』(2020年)
- 山本五十六:佐藤二朗 代表作『銀魂』(2017年)
- 竹中平馬:吹越満 代表作『クライマーズ・ハイ』(2008年)
📝 あらすじ
時代は大正12年、関東大震災直後の東京です。人々はまだ混乱から立ち直れず、街には政財界や軍部の思惑が交錯し、不穏な空気が広がっていました。その裏社会に生きていたのが、かつて伝説の女スパイと呼ばれた小曾根百合――通称「リリー」です。
彼女は表向きには洋装店を営み、華やかさと知性を兼ね備えた存在として暮らしていましたが、過去の影からは逃れられず、常に危うい均衡の上で生きていました。
そんな彼女の前に現れたのは、陸軍の極秘情報を握る少年・村田幸雄です。幸雄は命を狙われ、逃げ場を失いながらも必死に生き延びようとしていました。リリーは偶然出会った彼を守るため、再び銃を手に取ることを決意します。
やがて、彼女の周囲には軍部、裏社会、そして過去の仲間までもが絡み合い、複雑な陰謀が浮かび上がってきます。美しい装いの裏に冷徹な決断を秘めたリリーの生き様は、激動の時代とともに壮絶な戦いへと進んでいくのです。
血と硝煙に包まれる中、彼女が最後に選ぶのは復讐なのか、それとも未来を守ることなのか――その答えは彼女自身の心に託されていくのです。
ここからネタバレ有りです
ネタバレあらすじを開く
少年・幸雄は陸軍の極秘資金「2000万円」の行方を握る存在でした。その秘密を知った軍部は国家転覆を狙う勢力と手を組み、彼を抹殺しようと執拗に追跡を続けます。リリーは彼を守るため、かつての仲間や宿敵と対峙することになり、封印していた過去の戦闘能力を再び解き放つのです。
物語が進むにつれて、軍部内部の陰謀や国家の未来を揺るがす裏切りが明らかになります。リリーは孤立無援の中で数多の刺客に立ち向かい、街の闇を舞台に熾烈な銃撃戦を繰り広げます。その戦いの中で、彼女にとって少年を守ることは単なる任務ではなく、喪失した過去を取り戻す唯一の意味へと変わっていきます。
命を懸けた戦いの果てに、リリーは敵対勢力を撃退し、少年を未来へ送り出すことに成功します。しかしその代償はあまりにも大きく、リリー自身の運命は血に染まった結末へと収束していくのです。
このラストは、彼女が選んだ生き方そのものであり、守るために戦い抜いた姿が観客の胸に深い余韻を残すのです。
🔎 考察と感想(俺目線)
『リボルバー・リリー』を観てまず驚かされるのは、そのスケール感と美術・衣装への徹底したこだわりだ。大正という時代を舞台にしながらも、単なる時代劇ではなくアクション映画として成立させているのは稀有だと思う。綾瀬はるか演じる小曾根百合は、ただのヒロインではなく、銃を手にすることで自己を証明する女性。彼女の存在がこの映画を特別なものにしている。
物語冒頭の東京の描写は、震災直後の不安定な空気を生々しく伝えてくる。街がまだ復興しきれない中で、裏社会や軍部の思惑が絡み合う。その舞台設定が、リリーの過去と現在を引き寄せ、必然的に彼女を戦いに駆り立てる。観客はすぐに「この戦いは個人の復讐劇であると同時に、時代と社会を映す鏡でもある」と気づく。
そして、リリーが守ろうとする少年・村田幸雄の存在。彼は単なる助けを必要とする弱者ではない。軍の極秘情報を握ることで、時代の渦に巻き込まれた象徴そのものだ。リリーが彼を守ることは、ただの慈悲ではなく、彼女自身が過去の亡霊を断ち切り、未来へ希望を託す行為に等しい。その姿勢にこそ、映画全体のテーマ「命を懸けても守りたいものがある」が凝縮されている。
アクションシーンに関しては、銃撃戦や肉弾戦の迫力が素晴らしい。派手な爆発やCG頼みではなく、実写ならではの重量感と迫力を重視している。リリーが銃を構えた瞬間、画面から伝わる緊張感は観客を一気に引き込む。特に屋内での銃撃戦や追跡シーンは、息を呑むほどの臨場感があった。まるで観客自身が撃たれるかのような錯覚すら覚える。
また、綾瀬はるかの演技は従来のイメージを一変させるものだった。彼女の持つ清楚さや柔らかさはそのままに、冷徹な判断力と肉体的な強さを併せ持つキャラクターを見事に体現している。微笑みの奥に潜む影や、銃を撃つ瞬間の鋭さは、役者としての幅広さを証明するものだった。
一方で、物語のテンポに関してはやや賛否が分かれるかもしれない。序盤から中盤にかけて多くの人物が登場し、陰謀や裏切りが複雑に絡み合うため、観客が状況を把握するのに少し時間がかかる。しかし、それもまたリリーが背負っている「過去の重み」や「時代の混沌」を観客に追体験させる狙いなのだと考えれば納得できる。
さらに興味深いのは、映画が単なるアクション娯楽に留まらず、女性の生き方を強烈に提示している点だ。男社会で生き延びるために銃を取るリリーは、決して男性的な強さの模倣ではなく、女性であることを武器にしている。衣装や仕草の美しさの中に、強靭な意思を宿している。これは近年のアクション映画における女性像の中でも、特に完成度が高いと感じた。
ラストシーンについては賛否両論あるが、個人的には余韻を残す形で良かったと思う。勝利と喪失が同時に訪れる結末は、リリーというキャラクターの本質を的確に描いていた。彼女が少年を守り抜いたことで未来は開かれたが、自身は過去とともに血に染まった運命を受け入れる。そこにこそ、この映画が持つ「強さとは何か」「生きるとは何か」という問いが集約されている。
総じて『リボルバー・リリー』は、アクション映画としても人間ドラマとしても見応えのある作品だった。日本映画がここまで骨太なガンアクションを成立させたこと自体が驚きであり、同時に綾瀬はるかという女優の新たな可能性を切り開いた作品でもある。観終わったあとに残るのは、ただの興奮ではなく、胸の奥深くに刺さるような余韻。映画を通して「守りたいもののために生きる」ことの尊さを改めて感じさせられた。
💡 モテ男目線の一言考察
この映画を観て「リリーのように守る強さを持ちたい」と思った男は多いはずだ。モテる男というのは外見の華やかさだけでなく、大切なもののために命を張れる覚悟を持っている。リリーが少年を守る姿勢は、男としての理想像を逆説的に突きつけてくる。女性から見れば頼れる存在であり、男性から見れば憧れの強さ。つまり、この映画は“モテ”を体現した生き方そのものを示しているのだ。

momoko
「リリーの強さに女性として憧れたわ。」

yoribou
「俺は長谷川博己のくさい演技が癖になると思った。
それとこの作品って最高だね。」
📌 教訓
モテる男とは、愛する人を守るために迷わず行動できる存在である。
◆評価
項目 | 点数 | コメント |
---|---|---|
ストーリー | 19 / 20 | タイトルからは想像できないくらい面白かった。邦画で、歴史もので久しぶりにハマってしまった。 |
演技 | 19 / 20 | このキャストは、超豪華。あれ?と思っても慣れてきたら快感レベルの役者魂。 |
映像・演出 | 20 / 20 | 歴史ものの難しさ=時代物の実在感。細部の所作・美術の配慮が随所に見える。 |
感情の揺さぶり | 19 / 20 | 感情移入しまくった。 |
オリジナリティ・テーマ性 | 20 / 20 | この作品は、絶対オンリーワン。 |
合計 | 97 / 100 | うまくできている。感動もの。 |
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