◆映画『マイ・スパイ』の作品情報
- 原題：My Spy
- 監督：ピーター・シーガル
- 脚本：エリック・ホーバー、ジョン・ホーバー
- 製作・出演：ディヴ・バウティスタ
- 出演：クリステン・シャール、パリサ・フィッツ＝ヘンリー他
- 配給：Roadshow Films、アットエンターテインメント
- 公開：2020年1月
- 上映時間：99分
- 製作国：アメリカ
- ジャンル：アクション、コメディ、ファミリー
- 視聴ツール：U-Next、吹替、自室モニター
◆キャスト
- J.J.（ジェイ・ジェイ）：デイヴ・バウティスタ 代表作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』（2014年）
- ソフィー：クロエ・コールマン 代表作『ビッグ・リトル・ライズ』（2017年）
- ボビー：クリステン・シャール 代表作『フライト・オブ・ザ・コンコルズ』（2007年）
- ケン：ケン・チョン 代表作『ハングオーバー！』（2009年）
- マルケス：グレッグ・ブリク 代表作『マイレージ、マイライフ』（2009年）
◆あらすじ（ネタバレなし）
元特殊部隊の経歴を持つCIAエージェント・J.J.は、筋肉と銃には強いが、人の気持ちや空気を読むことがとにかく苦手。ある作戦で“やりすぎた”結果、現場を外され、次なる任務はシカゴでの監視任務に決まります。
監視対象は、違法武器取引に関わる男の元妻ケイトと、その9歳の娘ソフィー。J.J.は相棒の技術担当ボビーとともに、2人が暮らすアパートの隣室に潜入。カメラを設置し、秘密裏に生活を監視し始めます。
しかし、この作戦はあっさり破綻。ソフィーに正体を見破られてしまったJ.J.は、彼女に「スパイの仕事を教えてくれたら黙っていてあげる」と迫られ、しぶしぶ“スパイ訓練”に付き合う羽目になります。
最初はぎこちなかった2人の関係は、やがて信頼と友情を育んでいき、物語は思わぬ方向へと進んでいきます。
◆ネタバレあらすじ
◆考察と感想
最初は単なるドタバタ系のスパイ・コメディかと思っていた。筋肉バカのスパイと、ませた小学生が繰り広げるお約束の掛け合いに、ちょっとしたアクションを添えて終わるのかな、と。けれど、『マイ・スパイ』は想像以上に“人と人とのつながり”を丁寧に描いていた。
主人公J.J.は、元軍人という肩書きだけでは片付けられないほど“壊れて”いたと思う。任務しか知らず、人との距離感も測れない。そんな彼がソフィーと出会って、自分の不器用さや孤独に向き合わされるのは、見ていてちょっと切なかった。ソフィーの方も、強がってはいるけど、心の奥には父を亡くした喪失感があり、それを見抜いたからこそ、J.J.は惹かれていったんじゃないかと感じた。
彼女が「スパイになりたい」と言ったとき、ただの好奇心だけじゃなく、大人と本気で向き合いたいという願いが込められていたように思えた。だからJ.J.も、そのリクエストに戸惑いながら応えたし、次第に彼女を“任務対象”ではなく“対等な相手”として見るようになった。
アクションシーンも悪くなかった。とくに格納庫での終盤の戦闘は、意外と迫力があって驚いた。コメディだからと侮れない演出で、ただのギャグ映画にはしたくないという制作側の気概を感じた。一方で、全体的な構成や展開のテンポは王道で、「先が読める」部分も多かったが、それをマイナスとは思わなかった。むしろ安心して楽しめるエンタメの枠にしっかり収まっていて、家族で観るにはちょうど良いバランスだったと思う。
バウティスタの演技も印象に残った。無表情で無口なのに、どこかチャーミングで、人の優しさに触れて不器用に変わっていく姿がリアルだった。ヒーローというより“人間”としての成長を描いたキャラクターで、どのシーンにも温かみがあった。彼がCIAに戻らず、ソフィーとケイトとの生活を選ぶというラストの決断も納得できたし、むしろこの作品における最も大切なメッセージはそこにあった気がする。
この映画は「強さとは何か」という問いかけをしているようにも感じた。任務を遂行する腕力ではなく、誰かを信じ、守り、寄り添う心の強さ。それをソフィーという少女がJ.J.に教え、彼がそれを受け取ったからこそ、この物語には価値がある。
決して大作ではないし、派手なCGもない。でも、観終わったあとに優しい気持ちになれる映画だった。
◆教訓
強さとは、誰かを守る優しさと同義。任務以上に大切なものがあることを、J.J.とソフィーの関係が教えてくれる。
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