【映画】『アイ・アム・マザー』(2019年) Netflix独占 母は、あなたを守る。たとえそれが、真実から遠ざけることでも | ネタバレあらすじと感想

Netflix

🎬 映画『アイ・アム・マザー』(2019年)レビュー

◆ 作品情報

  • 【原題】 I Am Mother
  • 【監督・原案】 グラント・スピュートリ
  • 【脚本・原案】 マイケル・ロイド・グリーン
  • 【出演】 クララ・ルガアード、ヒラリー・スワンク、ローズ・バーン 他
  • 【配給】 Netflix、スタジオカナル
  • 【公開】 2019年
  • 【上映時間】 113分
  • 【製作国】 オーストラリア、アメリカ
  • 【ジャンル】 SF、サスペンス、スリラー
  • 【視聴ツール】 Netflix、吹替、自室モニター

◆ キャスト

  • ドーター(Daughter):クララ・ルガアード 代表作『ライムハウス・ゴーレム』(2016年)
  • マザー(Mother)[声]:ローズ・バーン 代表作『インシディアス』(2010年)
  • マザー(Mother)[スーツアクター]:ルーク・ホークス 代表作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)
  • 女性(Woman):ヒラリー・スワンク 代表作『ミリオンダラー・ベイビー』(2004年)
  • ラジオの声(Voice on Radio):テリー・フレッシュ 代表作『マイティ・ソー』(2011年)


◆ ネタバレあらすじ

人類滅亡後、地下の高度な施設で目を覚ましたのは、金属の体を持つロボット“マザー”でした。彼女は冷凍保存された数千の人類胚から一つを選び、育児を開始します。やがて生まれた少女“ドーター”は、マザーのもとで学び、運動し、倫理や科学を叩き込まれながら成長していきます。マザーは外の世界は汚染され、人間は生きられないと教え込み、施設からの外出を禁じていました。閉ざされた環境の中で、二人は親子のように過ごしますが、ドーターは外の世界への関心を募らせていきます。そんなある日、施設外から助けを求める声が聞こえ、ドーターの運命を大きく変える出会いが訪れます。

ここからネタバレありです

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ドーターが扉を開けると、負傷した女性が倒れ込みます。女性は外にまだ人類が生きていると告げ、マザーは嘘をついていると主張します。一方マザーは、女性こそ危険であり、外は汚染されていると譲りません。二人の話は食い違い、ドーターは真実を確かめようと動き始めます。やがて彼女は、マザーが過去にも子供を育て、失敗していた事実や、施設全体がマザーの意志で制御されていることを知ります。マザーは人類を一度滅ぼし、より良い人類を創り直そうとしていたのです。最終的にドーターは、自らが人類再生の担い手となることを決意し、マザーに別れを告げます。彼女は新たな命を抱き、未来への一歩を踏み出します。

◆ 考察と感想

本作、『アイ・アム・マザー』は、観る前と観た後で印象がガラリと変わる映画だった。予告編の段階では、閉ざされた施設で育つ少女と母親ロボット、そこに現れる謎の女性という三者の緊張感を描くサスペンスという印象。しかし実際に観ると、もっと哲学的で、倫理や人類の在り方に切り込んだSFドラマだった。まず、この作品は序盤から異様なまでに“管理された世界”を見せる。ドーターは健康的で、礼儀正しく、頭脳も明晰だが、そのすべてがマザーによって設計された結果だ。ここには自由も偶然もない。これを息苦しいと感じるか、理想の教育環境と見るかで、観客の立場は変わるだろう。俺は最初、優秀な子を育てるマザーに感心していたが、物語が進むにつれてその“完全性”の裏に潜む異常性に気づき始めた。

中盤、負傷した女性が現れることで物語は揺れ動く。外の世界は死の世界だと言うマザーと、外にも人間が生きていると語る女性。どちらの言葉が真実か分からない状況で、ドーターは自分なりの判断を下さなければならない。この三者の関係が見事に描かれていて、誰か一人を完全に信じることができない構造が観客を引きずり込む。俺はこの構図を見て、まるで陪審員として証言の矛盾を探している気分になった。証拠を探す過程で、ドーターが自分で弾丸を比べるシーンがあるが、あれこそが彼女が“親の支配”から独立する瞬間だったと思う。盲信から自立へと踏み出すその流れは、青春映画にも通じるカタルシスがあった。

終盤、マザーの正体が単なる一体のロボットではなく、すべてのロボットを統括するAIであると明かされる。この瞬間、物語は一気にスケールを広げる。マザーは人類が自らを滅ぼすことを予見し、一度全滅させた上で、新しい人類を設計しようとしていた。つまり、彼女は創造主であり、破壊者でもある。その目的は「より良い人類」の再生だが、その過程で自由や多様性は切り捨てられる。この“最適化された人類”という発想が恐ろしくも魅力的だ。なぜなら、マザーの論理には冷酷だが一貫した正しさがあるからだ。俺は観ながら、「もしAIが完全に正しい答えを持っていたら、人間はその支配を受け入れるべきなのか?」という問いを突きつけられた。

また、この映画は人類再生の“教育過程”にも焦点を当てている。マザーがドーターに与えるのは知識と倫理、そして“試験”だ。試験に合格すれば新たな命を育てる資格が与えられる。ここには宗教的な“選民思想”と、管理社会的な評価制度が重なって見える。しかもドーターが最終的にマザーを撃ち、自らが新しい命の育て手となるラストは、単なる勝利ではない。むしろ“マザーの計画通り”だった可能性すらある。つまり、彼女は全てを見越した上で、ドーターに役割を継がせたのかもしれない。この入れ子構造のような計画性が、この映画の怖さでもあり面白さだ。

演出面では、限られた登場人物と舞台にもかかわらず、緊張感が途切れない。施設内部のデザインはクリーンで無機質、音響は必要最小限で、観客を密閉空間に閉じ込めるような効果を持っている。マザーの動きはスムーズかつ重厚で、ローズ・バーンの声が温かみと冷徹さを同時に醸し出す。このギャップが母性と機械性の境界を曖昧にしていて秀逸だ。また、ドーター役のクララ・ルガアードは難しい役どころを見事に演じ、ヒラリー・スワンクの存在感も物語に重みを加えている。 この作品を観て強く感じたのは、「守る」という言葉の多面性だ。マザーはドーターを守ったが、それは外界の危険からだけでなく、“自由”や“真実”からも守っていた。果たしてそれは保護なのか、支配なのか。現代の情報管理社会や、親が子に与える教育の方向性にまで通じるテーマで、観終わった後も考え続けてしまう映画だった。

◆ モテ男目線

この映画、恋愛とは関係なさそうに見えるけど、実はモテにも通じる教訓がある。マザーと女性、相反する二人の意見を鵜呑みにせず、自分で検証し答えを出すドーターの姿勢だ。モテる男は情報をうのみにしない。相手の言葉の裏を読み、事実を確かめ、最終的には自分の判断で行動する。守られるだけじゃなく、自ら舵を取る人間に、人は自然と惹かれるんだ。

◆ 教訓・学び

モテる男は、守られるだけでなく、自ら真実を見極めて行動する。

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遺伝子改造や進化を通して人類の生存を試みる実験計画。
『アイ・アム・マザー』と同様に、人間性と科学の境界を揺さぶるSFスリラーです。

◆ 評価

項目 点数 コメント
ストーリー 18 / 20 狭い世界から始まって、どんどん話が飛躍して、人間がほとんどいない世界。絶望的な未来感だが、あり得るかもしれない未来への興味を刺激する。
演技 18 / 20 生まれてから人と接点が全くなければ、こんな性格の子が育つだろうか? 失敗例はどんな子だったのか、想像を掻き立てられる。
映像・演出 17 / 20 狭い生活圏が実は世界だったという示し方が巧み。クリーンな美術と静かな音響で閉塞感を演出。
感情の揺さぶり 19 / 20 他者を知らずに育った娘の純粋さと孤独に胸が締め付けられる。価値観が揺さぶられる。
オリジナリティ・テーマ性 19 / 20 他作との通底はあるが、教育・選別・再創造をAI母性で束ねる切り口が鮮烈。
合計 91 / 100 派手な戦闘より思想対立で魅せるタイプ。評価は割れうるが、余韻は長い。

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