【映画】『LOU ルー』(2022年) Netflix独占配信 | 優しさでは守れない夜がある。母になれなかった女の、最後の決断 | ネタバレあらすじと感想

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◆映画『LOU/ルー』(2022年)の作品情報

  • 【原題】Lou
  • 【監督】アンナ・フォースター
  • 【脚本】マギー・コーン、ジャック・スタンレー
  • 【出演】アリソン・ジャネイ、ジャーニー・スモレット 他
  • 【公開】2022年
  • 【上映時間】107分
  • 【製作国】アメリカ
  • 【ジャンル】アクション/スリラー
  • 【視聴環境】Netflix(吹替)/自室モニター/WI-1000XM2

◆キャスト

  • ルー・アデル:アリソン・ジャネイ(代表作『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』2017)
  • ハンナ・ドーソン:ジャーニー・スモレット(代表作『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』2020)
  • フィリップ:ローガン・マーシャル=グリーン(代表作『アップグレード』2019)
  • ヴィー:リドリー・A・ベイトマン(代表作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』2019)
  • ランキン保安官:マット・クレイヴン(代表作『クリムゾン・タイド』1995)


◆ネタバレあらすじ

嵐が近づくワシントン州の離島で、初老の女性ルーは愛犬と静かに暮らしています。
人付き合いを避け、隣家に住むシングルマザーのハンナと幼い娘ヴィーにも素っ気ない態度を貫いています。
町はフェリー停止の予報に慌ただしく、保安官ランキンも巡回に追われます。
そんな中、ハンナの家が停電し、ヴィーが忽然と姿を消します。
家には不穏な痕跡と挑発的なメッセージが残り、ハンナは恐怖と焦りで正常な判断ができません。
電話も車も使えず、暴風雨で足跡も消えていく。
にもかかわらずルーは迷いなく装備を整え、森へ入る決断をします。
追跡が進むほど、ルーの観察眼、罠の読み、近接戦の手際は「ただの隠遁者」では説明できません。
母として娘を取り戻したいハンナの執念と、過去を背負って感情を封じたルーの冷徹さがぶつかり合いながら、
救出劇は島の静けさを引き裂く真相へ向かいます。
道中、二人は互いの弱さも強さも露わになります。
ハンナは恐怖で足が止まりそうになり、ルーは他人を励ます言葉を持ちません。
それでも「今できること」だけを積み上げ、風雨の中で手がかりを拾い、誘拐犯の目的を推測していきます。
その先で、決して小さくない代償が待ちます。必見です。

ここからネタバレありです。

ネタバレあり:結末までの詳細(開く)

誘拐犯はハンナの元夫フィリップで、既に死んだはずの男でした。
ルーは追跡の途中で元工作員としての技量を露わにし、フィリップの仲間を排除しながら目的地を絞り込みます。
やがてルーとフィリップが母子であることが判明します。
過去、ルーは極秘任務の最中に息子を危険に巻き込み、救出も「任務優先」で遅れたため、
フィリップは深い心的外傷を抱えたまま成長しました。
フィリップは娘ヴィーを道具にして家族心中を図り、灯台で対決が起きます。
ハンナの機転でヴィーは逃げ、ルーは爆発物を無力化して時間を稼ぎますが、
ルーとフィリップを抹消したい組織のヘリが接近します。
ルーは息子を抱きしめ謝罪し、銃撃の中で海へ沈みます。
後日ハンナは遺産を受け取りますが、
フェリーのデッキに左手の傷と銅のブレスレットを持つ女性が現れ、生存が示唆されます。
ルーは「母親に向かない人間もいる」と言い切り、
血縁でも優しくはなれない自分を認めます。
それでも彼女のやり方でハンナとヴィーを守り、
世界に残した歪みの後始末を果たそうとします。
ラストの生存描写は、贖罪で終わらず“再出発”を選んだ余韻として効きます。
孤独ではなく、選んだ生き方だと伝わります。強く。


◆俺の考察&感想(ネタバレあり)

この映画を観てまず思ったのは、「これはアクション映画の顔をした、かなり冷酷な人間ドラマだ」ということだ。

誘拐、嵐, 追跡、銃、格闘。要素だけ並べれば量産型のサバイバル・スリラーに見える。だが中身はまったく違う。本作の核心は、“母になれなかった女”が、自分の人生と世界に対してどう責任を取るか、という一点に集約されている。

ルーは最初から異質だ。孤島で犬と暮らし、人を避け、身辺整理を始め、死を覚悟している。その時点で彼女は「これから戦う主人公」ではなく、「すでに終わろうとしている人間」として描かれている。ここが重要だ。彼女は守るために生きているのではなく、清算するために生き残ってきた人間なのだ。

だから、隣家の少女ヴィーが誘拐されたとき、ルーが動く理由はヒロイズムではない。正義感でもない。ましてや母性でもない。
“自分が作った地獄が、また子どもを巻き込んだ”
それを見過ごせなかっただけだ。

感情を表に出さないルーと、娘を探すのに必死のハンナ
感情を表に出さないルーと、娘を探すのに必死のハンナ

フィリップという息子の存在が明かされた瞬間、映画の構造が一段深くなる。彼は単なるDV男でも、狂った元兵士でもない。ルーの「任務優先」という選択の、時間差で噴き出した結果だ。

ルーは息子を愛していなかったわけではない。ただ、彼女は自分が“育てる人間ではない”ことを知っていた。その自覚が、皮肉にも息子を壊した。

言葉が少ないルーは何を考えていて、何をしようとしているのか
言葉が少ないルーは何を考えていて、何をしようとしているのか

ここで出てくる
「母親に向かない人間だっている」
という台詞は、この映画の魂だと思う。これは言い訳ではないし、逃げでもない。自分の限界を直視した、極めて残酷で誠実な自己分析だ。

多くの映画では、母は最後に“取り戻す”。どれだけ離れていても、どれだけ傷ついていても、母性は万能薬のように機能する。だが本作はそれを否定する。
母性は才能だ。向き不向きがある。
そして、向いていない人間が無理に母になった時、最も傷つくのは子どもだ。

ルーはフィリップを救えなかった。救おうともしなかった、と言っていい。だから彼女は、息子を「止める」ことでしか責任を取れない地点に立っている。

ラストの海岸での死闘は、親子喧嘩ではない。和解でもない。あれは後始末だ。
抱きしめて謝り、そして撃たれる。
あまりに冷たく、あまりに静かな決着だ。

それでも、この映画が救いで終わるのは、ルーが“死なかった”からではない。
彼女が、もう一度「生き方を選び直した」からだ。

フェリーのラストシーンで示される生存は、ご褒美ではない。逃避でもない。
名前を捨て、過去を捨て、母にも祖母にもならず、それでも誰かを遠くから見守るという生き方を選んだ証だ。

ルーは孤独ではない。
孤立を選んだだけだ。
それは敗北ではなく、自己理解の果てにある選択だと、俺は思う。

この映画が静かに突きつけてくるのは、「愛している」と「守れる」は別物だという現実だ。そして、優しくなれなくても、責任は取れるという事実だ。
派手な爆発より、その冷たさの方がずっと重く、後に残る。

◆モテ男の考察&感想

この映画が教えるのは、「優しさ=正解」じゃないってことだ。
ルーは甘えさせないし、寄り添いもしない。でも逃げない。壊した原因から目を逸らさず、最後まで責任を引き受ける。その姿勢が一番“色気”がある。
モテる男も同じだ。好かれようとする優しさより、逃げない覚悟の方が信頼を生む。
感情ではなく、行動で守れるか。
『LOU ルー』は、その覚悟を突きつけてくる映画だ。

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◆教訓、学び

好かれようとする優しさより、壊した原因から逃げずに責任を取れる覚悟のほうが、男は圧倒的にモテる。

◆似ているテイストの作品



  • 『ドント・ブリーズ2』(2021年)



    孤立した環境で生きる倫理的に欠陥を抱えた強者が、
    「守る」という行為の是非を問われるサバイバル・スリラー。
    善悪では割り切れない主人公像と、身内が引き金になる暴力の構図が
    『LOU/ルー』と非常に近い。


  • 『アジョシ』(2010年)



    過去に傷を持つ孤独な大人が、たった一人の子どもを救うために動く救出劇。
    感情を表に出さない主人公が、行動だけで責任を示す点は
    ルーの在り方と強く重なる。

◆評価

項目 点数 コメント
ストーリー 18 / 20 誘拐救出のスリラーとして一直線に走りつつ、
物語の芯に「母性の神話」を置かないのが強い。
“身内”が敵になることで、正義よりも贖罪と責任が前に出る。
ドンデン返しに頼らず、因果で追い詰めていく構成が巧い。
後味は爽快ではなく、静かに刺さるタイプだ。
演技 18 / 20 ルー役のアリソン・ジャネイは、
無愛想さと“底にある情”を同時に成立させている。
ハンナ役も、怒りと恐怖と母としての執念が生々しい。
フィリップは「優しさ」と「不安定さ」の切り替えが怖く、
家族劇の地獄度を一段上げている。
映像・演出 18 / 20 嵐の暗さ、泥、風、濡れた手触りが画面に残る。
追跡の緊張感は派手な見せ方より“現場感”で押してくる。
近接戦も美しく盛らず、痛みと実用の動きが中心だ。
ロケーションの閉塞感が、物語の逃げ場のなさと噛み合う。
渋い演出だが、作品の温度に合っている。
感情の揺さぶり 18 / 20 大泣きさせる演出ではなく、
“取り返しがつかない”種類の痛みを積み上げてくる。
母と息子の関係が修復されないまま進むのが逆にリアルだ。
守る側の正しさが、救いと一致しない瞬間が多い。
観終わって残るのは達成感より、鈍い苦さだ。
テーマ性 18 / 20 テーマは「母性ではなく、責任で人を守れるのか」。
“母親に向かない人間もいる”という言葉が核になっている。
愛の物語に逃げず、能力と罪と後始末で最後まで押し切る。
正しさよりも、引き受ける覚悟を問う視線が一貫している。
だからこそ後味が綺麗すぎない。
合計 90 / 100
救出スリラーの形を借りて、
「母性神話」を切り捨てた贖罪のドラマを叩きつける一本。
優しさよりも、逃げずに責任を取る強さが描かれる。
派手な爽快感ではなく、静かな痛みと覚悟が残る。
観後に“自分ならどう償うか”を考えさせられる。

◆総括

本作のポイントを一言でまとめるなら、
「母性ではなく、責任で人を守る物語」だ。

まず、この映画は“救出アクション”の皮を被っているが、主役はヒーロー性でも爽快感でもない。
描かれるのは、過去に下した選択の後始末を引き受ける覚悟だ。

ルーは人を愛せない。優しくもない。
だが、自分が生んだ歪みから目を逸らさない。
その一点で、彼女は強い。

重要なのは、本作が母性を肯定しないことだ。
「母は子を無条件に愛する」「最後は愛がすべてを救う」
そうした物語の常套句を、この映画は真正面から否定する。

母親に向かない人間はいる。
愛せないことは罪かもしれないが、逃げることはもっと罪だ――
その冷酷な視線が、全編を貫いている。

また、息子フィリップは“悪役”でありながら、単なる加害者ではない。
彼はルーの任務優先主義が生んだ、時間差の被害者でもある。
だからこの物語には、分かりやすい正義も勧善懲悪も存在しない。
あるのは、因果と責任だけだ。

アクションや演出も同様に抑制的で、痛みや疲労が画面に残る。
勝ってもスカッとしない。救っても報われない。
それでも、やるべきことから逃げない人間の姿が、静かに胸を打つ。

ラストで示される“生存”も、希望の回収ではない。
それは再挑戦ではなく、再出発だ。

母にも祖母にもならず、名前も捨て、
それでも誰かを守る場所に立ち続けるという選択。
その孤独を引き受けた時、ルーはようやく自由になる。

『LOU/ルー』は、
「優しさがなくても、人は守れるのか」
「愛せなくても、責任は取れるのか」
という問いを、最後まで誤魔化さずに投げかけてくる。

観終わったあとに残るのはカタルシスではなく、
自分ならどう生きるかを考えさせられる重さだ。
それこそが、この映画の最大の価値だと思う。

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