◆映画『来る』の作品情報
- 【監督】 中島哲也
- 【脚本】 岩井秀人、門間宣裕
- 【出演】 妻夫木聡、黒木華、岡田准一、小松菜奈、松たか子他
- 【配給】 東宝
- 【公開】 2018年
- 【上映時間】 138分
- 【製作国】 日本
- 【ジャンル】 ホラー、サスペンス、社会派ドラマ
- 【視聴ツール】 U-NEXT、自室モニター、Anker Soundcore AeroClip
◆キャスト
- 田原秀樹:妻夫木聡 代表作『怒り』(2016年)
- 田原香奈:黒木華 代表作『浅田家!』(2020年)
- 野崎和浩:岡田准一 代表作『永遠の0』(2013年)
- 比嘉真琴:小松菜奈 代表作『恋は雨上がりのように』(2018年)
- 比嘉琴子:松たか子 代表作『告白』(2010年)
◆ネタバレあらすじ
◆あらすじ
田原秀樹(妻夫木聡)は、婚約者の香奈(黒木華)と結婚を控え、祖父の十三回忌で初めて香奈を実家へ連れていきます。親戚の視線や田舎特有の風習に戸惑う香奈を気遣うこともなく、秀樹はその場を取り繕うばかり。そんな彼の態度から、完璧に見えた男の浅はかさが徐々に浮かび上がります。やがて二人は結婚し、娘・知紗が誕生。新築マンションを購入し、SNSでは理想の家庭をアピール。仕事も順調で、誰が見ても幸せな家庭――しかし、それは虚構の幸福でした。ある日、秀樹の勤務先に「知紗さんの件で」と言い残した謎の来訪者が現れ、直後に同僚が謎の死を遂げます。家では物が勝手に動き、子どもの笑い声が響くなど怪異が続発。恐怖を感じた秀樹は、霊感を持つライター・野崎(岡田准一)と霊媒師の真琴(小松菜奈)に助けを求めますが、彼らでさえ“それ”の正体を掴めず、田原家の周囲には底知れぬ闇が広がっていきます――。
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秀樹の怪死から1年後。シングルマザーとなった香奈は心身ともに疲れ果て、娘の知紗にまで苛立ちをぶつけてしまう日々を送っていました。そんな中、真琴が再び田原家を訪れ、霊的な異変がまだ続いていることを察知します。彼女の姉であり日本最強の霊媒師・琴子(松たか子)が加わると、全国の祓い師たちが集結し、前代未聞の除霊作戦が始まります。しかし“それ”の力は圧倒的で、次々と仲間たちが倒れていく中、ついに真実が明かされます――“それ”を呼び寄せていたのは、幼い知紗自身だったのです。両親からの愛情を得られず孤独の中で育った知紗は、無意識のうちに“それ”と心を通わせていたのでした。琴子は自らを犠牲にして“それ”を封じ込め、真琴は知紗を抱きしめながら涙を流します。血と光が交錯するラスト、知紗の穏やかな寝顔が映し出され、物語は静かに幕を閉じます。『来る』は、恐怖を通して「家族の歪み」と「人間の孤独」を突きつける、現代的社会派ホラーの傑作です。
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◆考察と感想
この映画、ただのホラーじゃない。正直、最初は「有名俳優が豪華に出てるお祓い映画かな?」くらいに思って観た。でも終わった瞬間、「これは今の日本社会そのものじゃないか」と背筋がゾワッとした。怖いのは幽霊じゃなくて、俺たち自身なんだよね。
物語の中心にいる田原秀樹。妻夫木聡が演じるこの男が本当にリアルで痛い。SNSでイクメンアピール、仕事も家庭も完璧に見せようとするけど、中身は空っぽ。人からよく見られることが幸福の証だと信じて疑わない。正直、身に覚えのある男も多いはず。俺もその一人だと思う。誰かに認められたいって気持ちは誰でもあるけど、それを「生きてる実感」と勘違いすると、途端に人生が歪み出す。秀樹はその象徴だった。
一方の妻・香奈(黒木華)も同じように虚無を抱えている。最初は「よくいる大人しい妻」って印象だったけど、彼女が見せる笑顔の裏にあるドス黒さが段々と露わになっていく。夫婦って、見た目だけでは分からない地獄があるんだなと感じた。表面上の幸せを演じることが、どれだけ人を壊すのか。この映画はそのリアリティを容赦なく突きつけてくる。
中島哲也監督の演出は、恐怖と同時に社会風刺が効きすぎていて本当に巧い。結婚式のシーンでの違和感、マンションのCMみたいな幸福演出、そして除霊シーンの大袈裟な宗教バトル。すべてが現代人の「幸福の嘘」を笑ってるように見えた。あの眩しすぎる照明の下で、みんなが笑顔を作ってる。だけど誰も本当には笑ってない。まるで俺たちの現実を鏡に映してるようだった。
そして映画後半、“それ”という存在が実は娘・知紗の心の闇から生まれていたという展開。ここで一気に物語が反転する。つまりこの映画の怪異は、超常現象なんかじゃなくて、人間の孤独が形になったもの。愛されなかった子どもの魂が世界を呪ってる。これ、めちゃくちゃ重いテーマだと思う。知紗の純粋さと残酷さが表裏一体になっていて、人間の根源的な恐ろしさを見せつけてくる。

印象的だったのは「痛み」という言葉。野崎(岡田准一)が刺されたあとに語る「痛みがあるということは、生きているということ」。これがこの映画の核心だと思う。誰かに愛されなくても、苦しくても、痛みを感じることこそが「生きてる証」なんだと。この台詞が出た瞬間、ただのホラーが一気に人生の寓話になった。

琴子(松たか子)の存在も忘れられない。最強の霊媒師でありながら、どこか飄々としていて、酒を飲み、スマホゲームをし、時に神のように冷徹。彼女の「清めにファブリーズ」というシーン、笑ったけど本質的にはすごく皮肉。信仰や霊力という神聖なものすら、今や日常の延長線にある。人間が霊をも商品化してしまった現代社会への痛烈なメッセージを感じた。
そして最終決戦。琴子と無数のシャーマンが“それ”に挑む場面は、圧巻のエンタメ性でありながら、まるで日本社会の「罪の浄化」を象徴しているようにも見えた。全員が痛みを引き受ける覚悟で戦ってる。だけど結局、誰も完全には救われない。琴子は命を懸け、真琴は涙を流し、野崎は痛みを抱えて生きる。恐怖の中に“希望”のようなものが見えるのが、この映画の凄みだと思う。
観終わって感じたのは、「俺たちは何を幸せと思い込んでるのか?」という問い。SNSでの承認、家族の形、他人の視線。それらは全部“それ”を呼ぶ原因かもしれない。現代人が幸福の仮面を被りすぎた結果、心の底から生まれた“それ”=孤独や嫉妬や虚しさが、もう抑えられないところまできている。『来る』は、そんな時代の警鐘を鳴らす映画だった。
ホラーとしても社会劇としても異常な完成度。だけど一番怖いのは、観た後に自分の中にも“それ”がいる気がしてくること。中島哲也監督、マジで容赦ない。人間をここまで丸裸にするなんて、恐怖というより暴力的なまでのリアリズムだと思う。
◆考察(モテ男目線)
『来る』を観て感じたのは、“人を愛する勇気”の大切さ。秀樹も香奈も、自分をよく見せようとして本音を隠した。その結果、愛を失った。モテる男って、実は正直で不器用なやつなんだよ。弱さも痛みも見せられる人間のほうが、結局信頼される。完璧を演じるほど孤独になる。愛されたいなら、怖くても「本当の自分」で勝負すること。それが“それ”を呼ばない唯一の方法だと思う。
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◆教訓、学び
◆似ているテイストの作品
- 
      『楽園』(2019年/日本)
 事件を通して人間の孤独や社会の歪みを浮き彫りにする社会派サスペンス。
 表面上の幸福の裏にある心の闇を描く点で、『来る』の“虚構の家族像”と深く共鳴する。
- 
      『892 ~命をかけた叫び~』(2022年/アメリカ)
 社会の理不尽さに押し潰されながらも声を上げる男の人間ドラマ。
 現実社会の「見えない恐怖」や人間の弱さを浮かび上がらせる点で、『来る』と同じ魂の痛みを共有している。
◆評価
| 項目 | 点数 | コメント | 
|---|---|---|
| ストーリー | 19 / 20 | 家族の崩壊と霊的恐怖を交錯させる構成が秀逸。前半のリアルな家庭描写から、後半の霊的クライマックスへの流れが見事で、社会派ホラーとしての完成度が高い。 | 
| 演技 | 20 / 20 | 妻夫木聡の「空虚な笑顔」と黒木華の「崩れていく母性」は圧巻。松たか子の静かな狂気、岡田准一の内に秘めた優しさなど、全キャストが異常な熱量で演じ切っている。 | 
| 映像・演出 | 19 / 20 | 幸福の光を逆手に取るライティングが巧妙。眩しさの裏に潜む不気味さを演出し、“それ”の不在こそが恐怖になる映像設計。中島哲也監督らしい美と狂気の融合が際立つ。 | 
| 感情の揺さぶり | 18 / 20 | ただの恐怖映画では終わらない。ラストの「痛み=生の証」というメッセージが観る者の胸を締め付ける。親子の愛と孤独、そして人間の弱さに涙する構成。 | 
| オリジナリティ・テーマ性 | 19 / 20 | “幽霊=心の闇”という比喩が深く、ホラーの枠を超えて現代社会の「承認欲求」や「空虚な幸福」を批判する哲学的テーマ性を備えている。まさに現代人の鏡。 | 
| 合計 | 95 / 100 | 恐怖の正体は、人の心にある“空っぽな幸福”。虚構の笑顔の裏で壊れていく家族を通し、現代人の孤独をえぐり出した社会派ホラーの傑作。 | 
主演は岡田准一。圧倒的な演技力で物語を支えている。
◆総括
『来る』(2018年)は、恐怖をエンターテインメントとして消費させるのではなく、観る者の「心の奥」にまで踏み込んでくる異色の社会派ホラーです。中島哲也監督の映像演出は、ホラーの枠を超えて“現代日本の病理”を描き出すための装置として機能しています。幽霊が怖いのではなく、人間の空虚さ、承認欲求、そして「幸せを演じる」ことへの執着こそが、真の恐怖として浮かび上がる構成が見事です。
妻夫木聡演じる田原秀樹は、“理想の家庭”を演じることで自分の存在を保とうとする現代人の象徴。黒木華演じる香奈は、母親としての愛と自己嫌悪の間で崩壊していく女性像をリアルに体現します。さらに松たか子の圧倒的な存在感が、理屈を超えた「人間の業」を浮かび上がらせる。どのキャラクターも“それ”という怪異を通して、自らの弱さや罪と向き合うことを強いられているのです。
終盤の大規模な除霊シーンは、一見するとスケールの大きなバトルホラー。しかしその実態は、人間が自分の「痛み」とどう折り合いをつけるかを描いた、極めて哲学的な場面でもあります。「痛みがあるということは、生きているということ」というセリフに集約されるように、この作品は“恐怖”を“生”へと転化する稀有な映画です。
現代社会では、SNSや他者の評価によって自分の価値を測る風潮が強まり、誰もが知らぬ間に「虚構の幸福」を演じています。『来る』は、そうした時代の中で忘れられた「本当の痛み」「本当の生き方」を思い出させる鏡のような映画です。観たあと、自分の中にも“それ”が潜んでいる気がしてならない――そんな不気味な余韻こそ、本作最大の魅力と言えるでしょう。
つまり『来る』は、“ホラーの形を借りた人間の懺悔録”であり、恐怖と痛みを通して「生きていることの意味」を問いかける傑作。 見終わったあとに残るのは絶望ではなく、「それでも人を想う力」を信じたくなる希望の欠片です。
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