【映画】『クロガラス0』(2021年) 正義か、闇か――歌舞伎町で芽生える絆が“クロガラス”誕生へ導く | ネタバレあらすじと感想

サスペンス/スリラー

映画『クロガラス0』レビュー&考察

歌舞伎町の“秩序”と“正義”の境界で揺れる前日譚。

◆作品情報

  • 監督・脚本:小南敏也
  • 出演:崎山つばさ、植田圭輔、徳山秀典、中崎絵梨奈 ほか
  • 配給:エイベックス・ピクチャーズ
  • 公開:2021年
  • 上映時間:70分
  • 製作国:日本
  • ジャンル:クライムサスペンス、アクションドラマ
  • 視聴ツール:Netflix、自室モニター

◆キャスト

  • 神崎黒斗:崎山つばさ 代表作『君は放課後インソムニア』(2023年)
  • 真郷悠哉:植田圭輔 代表作『青の祓魔師』(2012年/舞台版)
  • 兵頭一馬:徳山秀典 代表作『仮面ライダーカブト』(2006年)
  • 佐和子:中崎絵梨奈 代表作『ハニー』(2018年)
  • 加奈井:菅田俊 代表作『アウトレイジ』(2010年)

◆ネタバレあらすじ

映画『クロガラス0』あらすじ

歌舞伎町を舞台に、後に「クロガラス」と呼ばれる存在が誕生するまでの過程を描く本作は、シリーズの原点に迫る前日譚です。警察ですら金で簡単に買収できる無秩序な街・新宿。ここに新人警察官として配属されたのが神崎黒斗(崎山つばさ)です。強い正義感を胸に抱き、街を正そうと奮闘する黒斗ですが、腐敗した組織内で浮いてしまい、同僚や上司からも孤立していきます。そんな彼を支えたのは、熱い志を持つ上司兵頭一馬(徳山秀典)でした。兵頭は黒斗を弟分のように可愛がり、2人は街の秩序を取り戻すために行動を共にするようになります。しかし、待ち受けていたのは決して単純な正義と悪の対立ではなく、複雑に絡み合う利権と裏社会の思惑でした。黒斗の信念と兵頭の覚悟が試される中で、彼らがどのようにして“クロガラス”という存在へとつながっていくのかが描かれます。

ここからネタバレありです

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黒斗は警察内の汚職を目の当たりにしながらも、兵頭と共に街を守ろうと奔走します。しかし、やがて兵頭が抱える過去と裏社会との繋がりが明らかになり、黒斗は正義と現実の狭間で葛藤することになります。兵頭は「正義だけでは街は守れない」と語り、黒斗を裏の世界へ導こうとしますが、黒斗は純粋な理想を捨てきれず、次第に苦しみを深めていきます。そんな折、街を牛耳るフィクサー・加奈井(菅田俊)が黒斗を利用しようと動き出し、黒斗は命を狙われる事態に陥ります。彼を守ろうとする兵頭は裏社会との対立を激化させ、最終的には大きな犠牲を払うこととなります。黒斗はその中で、自らが選ぶべき道を決断し、やがて“クロガラス”としての新たな在り方を受け入れるのです。正義を信じた青年が闇に染まらざるを得なかった経緯が、この前日譚で浮き彫りにされていきます。

◆考察と感想

本作、『クロガラス0』を観て、まず感じたのは「正義ってやっぱり簡単には貫けない」ということだ。警察官になった神崎黒斗は、誰もがうらやむような真っ直ぐさを持っていた。けれど、その正義感は歌舞伎町という街では浮いてしまう。警察組織そのものが腐敗していて、上から下まで利権まみれ。真っ白な志を持って入った青年が、瞬く間に孤立してしまう姿は痛々しかった。俺自身、会社勤めで理想と現実のギャップに何度もぶつかってきたから、この描写は妙にリアルに刺さった。
そんな黒斗を救ったのが兵頭一馬だった。彼は上司としてだけでなく、兄貴分のような存在として黒斗を導いていく。二人の関係は熱いバディもののように見えて、実はそこに含まれているのは「正義を守りたい青年」と「現実を知り尽くした男」のぶつかり合いだったと思う。兵頭は黒斗に寄り添いながらも、「正義だけでは街は守れない」と教える。これは作品全体を貫くテーマでもあり、単なる警察ドラマではなく「人がどう生きるか」を問う物語になっていた。
特に印象的だったのは、街を牛耳る加奈井との対峙だ。加奈井は典型的な悪役というよりも「この街を回すには必要悪」という立ち位置で描かれていた。だから黒斗にとっては絶対に許せない相手なんだけど、兵頭の目線から見ると「完全排除は不可能」という現実がある。そのズレが二人の距離を少しずつ変えていく。ここに人間臭さがあって、単なる勧善懲悪には収まらない深みを与えていた。
また、シリーズを観ている人間としては、「クロガラス」という存在がどうやって生まれたかを知れるのが嬉しい。これまでの作品では既に“解決屋”として暗躍していた黒斗たちが、なぜそうなったのか。そのルーツが描かれることで、過去作のシーンが違う意味で見えてくる。例えば、シリーズ1での黒斗の冷徹さには「正義を貫こうとした結果の痛み」が滲んでいたのだと理解できる。前日譚だからこそ本編を補強する役割をしっかり果たしている。
個人的にもう一つ良かったのは、中崎絵梨奈演じる佐和子の存在だ。彼女は黒斗の心の支えとなる人物だが、決してヒロインらしい華やかさで描かれてはいない。むしろ街の暗さの中に生きる一人の女性として、黒斗の迷いを映し出す鏡のようだった。彼女の一言一言が黒斗の心を揺らし、正義と現実の間で足を止めるきっかけになる。ラストで彼女の存在がどう意味を持ったかはネタバレになるが、黒斗が“クロガラス”としての道を選ぶ要因の一つになったのは間違いない。
映像的には派手なアクションがあるわけじゃないけれど、街の空気感を映し出す撮影が上手かったと思う。ネオンに照らされた歌舞伎町の雑多な風景、警察署の重苦しい雰囲気、狭い路地裏での緊張感あるやり取り。これらがすべて「正義が通用しない街」を体現していた。音楽も重低音が効いていて、不安定な空気を煽ってくる。特に崎山つばさが歌う主題歌は、作品全体の余韻を強めていた。
感想としてまとめると、『クロガラス0』はシリーズファンにとって必見だし、単体でも「正義と現実の葛藤」を描いたドラマとして十分成立している。ただし、スッキリする話ではない。むしろ見終わった後に「正義って結局何なんだろう」と考えさせられる。俺自身、理想と現実の狭間でもがくことは多いし、だからこそ黒斗の苦悩がリアルに響いた。熱血ものを期待して観ると少し裏切られるが、人間の弱さや矛盾を描いているからこそ価値がある。
最終的に黒斗がクロガラスとして生きる決断をするまでのプロセスは、「理想を掲げる若者が現実に折れた」物語ではなく、「現実を受け入れて新しい正義を作った」物語だった。ここに希望を見出せるか、絶望にしか思えないかは観る人次第だろう。俺は「この街にとって必要な存在がクロガラスだった」と受け止めた。だからこそ、シリーズを改めて観返したくなったし、黒斗の目に映る歌舞伎町が前とは違って見えるはずだ。

◆モテ男視点での考察

本作、『クロガラス0』をモテ男目線で見ると、「正義を持ちつつ現実も受け入れる柔軟さ」が鍵だと思った。黒斗のように理想だけで突っ走るのは魅力的だが、周囲から浮いてしまう。兵頭のように現実を知りつつも弟分を大事にする姿勢こそ、信頼を集める男の条件だ。モテる男は単なる強さではなく、相手の弱さを受け入れて導ける余裕を持つこと。この映画は、そんな「頼れる大人の男」の在り方を示していた。

◆教訓

正義感だけでなく現実を受け入れる余裕を持つ男が、最もモテる。

◆評価

項目 点数 コメント
ストーリー 17 / 20 雰囲気は、闇金ウシジマくんのよう。内容は違っていましたが。
演技 18 / 20 主演の崎山くんは、新田真剣佑に似ていると感じた。細いまなざし。
映像・演出 17 / 20 本作はNetflixで視聴上位に上がっていたので観たが、続編もあるので楽しみだ。
感情の揺さぶり 17 / 20 特に無い。
オリジナリティ・テーマ性 16 / 20 オリジナリティやテーマ性はないと思う。
合計 85 / 100 この類の作品は好きである。

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