映画『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)レビュー
暴力と正義の境界線を抉る、魂を削るクライムサスペンス。
◆映画『孤狼の血 LEVEL2』の作品情報
- 【監督】 白石和彌
- 【脚本】 池上純哉
- 【原作】 柚月裕子『孤狼の血』シリーズ
- 【出演】 松坂桃李、鈴木亮平、寺島進、宇梶剛士、かたせ梨乃、吉田鋼太郎 他
- 【配給】 「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会
- 【公開】 2021年
- 【上映時間】 139分
- 【製作国】 日本
- 【ジャンル】 犯罪ドラマ、サスペンス、アクション、バイオレンス
- 【視聴ツール】 Amazon Prime、自室モニター、HUAWEI
◆キャスト
- 日岡秀一:松坂桃李 代表作『新聞記者』(2019年)
- 上林成浩:鈴木亮平 代表作『俺物語!!』(2015年)
- 瀬島孝之:村上虹郎 代表作『二重生活』(2016年)
- 近田幸太:早乙女太一 代表作『BLEACH』(2018年)
- 真緒:西野七瀬 代表作『あさひなぐ』(2017年)
◆あらすじ
舞台は、暴力と腐敗が渦巻く広島・呉原。前作の激闘から数年、警察と暴力団の勢力図は一見落ち着きを見せていた。だが、その裏では新たな火種が静かに燃え始めていた。暴力団抗争の末に命を落とした大上章吾の意志を受け継ぎ、刑事・日岡秀一(松坂桃李)は若くして暴力団取締り係のトップに立つ。警察内部でも一目置かれる存在となった彼は、非情な決断と手腕で街の秩序を保っていた。
一方、刑務所から凶悪犯・上林成浩(鈴木亮平)が出所。彼の復讐心と支配欲が、再び呉原の街を血に染めていく。暴力、忠誠、裏切りが交錯し、誰が正義で誰が悪なのかが曖昧になる中、日岡は己の信念を試されていく。刑事としての正義と、人間としての情の狭間で揺れる彼の姿は、やがて「大上の幻影」と重なり、運命の歯車を大きく回し始める——。
※ここからネタバレ有りです。
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上林(鈴木亮平)は出所後すぐに勢力を再結成し、街を再び恐怖で支配しようと動き出す。警察の取り締まりも彼の冷酷な策略の前に翻弄され、日岡(松坂桃李)の正義感は徐々に追い詰められていく。上林は自らに逆らう者を容赦なく排除し、警察関係者にまでその魔手を伸ばす。
そんな中、日岡の部下たちは「正義とは何か」を見失い、警察内部にも腐敗と裏切りが広がっていく。大上の教えを胸に行動する日岡だが、彼自身も次第に暴力の連鎖に飲み込まれていく。上林との対峙は、もはや法の枠を超えた“生と死の決着”。
激しい銃撃戦と心理戦の果てに、日岡は一つの覚悟を決める——自らの手で呉原を終わらせるために。血で染まった正義の果てに残るのは、救いか、それともさらなる孤独か。『孤狼の血 LEVEL2』は、暴力に取り憑かれた男たちの宿命を、濃密なリアリズムで描き切る衝撃の続編である。
◆考察と感想
本作、『孤狼の血 LEVEL2』を観終えた後、最初に思ったのは「松坂桃李、ここまでやるか」という衝撃だった。前作の役所広司演じる大上の存在感があまりにも強烈だったから、その後を引き継ぐのは誰がやっても難しいと思っていた。だが松坂は、あの“孤狼”の魂を確実に受け取り、別の形で進化させていた。彼の演じる日岡は、もはや正義の刑事ではない。暴力に飲まれながらも秩序を守ろうとする、ある種の“モンスター”になっていた。
序盤から漂う空気は重く、画面の湿度が異様に高い。街全体が腐りかけた肉のように、どこを切っても濁った血が流れ出すような不穏さ。音、色、光、全てが暴力の余韻を孕んでいる。監督・白石和彌の手腕はここでも冴え渡っていて、カメラの動きや間の取り方が徹底的に“人間の獣性”を浮かび上がらせる。特に鈴木亮平演じる上林の存在は圧倒的だ。出所直後から漂う異様な静けさ、目の奥の狂気、そして爆発する暴力性。彼が一度笑えば、次の瞬間には誰かの命が終わる。そんな緊張感が全編にみなぎっていた。鈴木亮平はこの作品で完全に“人間を超えた狂気”を体現していたと思う。
一方で、日岡が辿る道はまるで大上の再来だった。最初は秩序を守る側の人間だった彼が、次第に裏社会と地続きになり、最後には誰よりも“汚れた正義”を振りかざす存在になる。警察という組織も、暴力団も、結局は権力を握るために同じ手段を使っている。その境界を超えた瞬間、彼はもう“刑事”ではなく“支配者”になってしまう。だが、日岡の目に浮かぶのは恐怖でも快楽でもなく、迷いだ。彼は暴力の中でしか秩序を保てない世界に絶望している。それでも足を止めない。その姿が痛々しくも美しい。
映画全体のトーンは「正義とは何か」「人はどこまで堕ちられるか」というテーマを徹底して突きつけてくる。観ていて決して心地よくはない。むしろ、観客の倫理観を揺さぶるような不快さがある。だがその不快さこそが、この作品の真骨頂だと思う。綺麗事を語らず、現実の汚れた構造をそのまま見せることで、逆に“人間の尊厳”というものを浮かび上がらせている。
印象的だったのは、街を歩く日岡の背中だ。大上の影を追いながらも、彼はもはや誰の背中も見ていない。孤独と責任を背負い、全てを一人で抱え込もうとする。彼の無言の横顔に、「正義を貫くとはこういうことなのか」と考えさせられた。正義は誰かに評価されるためのものではない。自分が信じる道を、誰に罵られても歩き続けること。その結果、破滅しても構わないという覚悟。
終盤の銃撃戦や拷問の描写は、観る者の神経を削るほど生々しい。暴力の連鎖が止まらないことを象徴するように、血と汗と涙が混じる。だが、そこには“快楽的な暴力”ではなく“宿命としての暴力”があった。白石監督は暴力を美化せず、逃れられない現実として描く。だからこそ、痛みが真実として響いてくる。
エンドロールを迎えたとき、俺は深いため息をついた。胸の奥に残ったのは、虚しさでもなく、怒りでもなく、奇妙な安堵だった。日岡という男は、暴力の中に自分なりの秩序を見出した。たとえそれが正しいとは言えなくても、彼は“自分の正義”を貫いたのだ。その姿に俺は妙に救われた気がした。
この作品は、単なる続編ではない。前作の“継承”であり、“堕落”でもある。大上というカリスマを失った世界で、正義はどんな形で生き続けるのか。『孤狼の血 LEVEL2』は、その問いへの壮絶な回答だった。暴力の果てに残るものが何であれ、そこに生きようとする人間の熱だけは、確かに焼き付いていた。
◆モテ男視点の考察
この映画でモテる男を語るなら、やはり“信念を貫く覚悟”だ。日岡のように綺麗じゃない正義でも、自分のルールを守る姿勢は本能的に惹かれる。中途半端に優しいだけの男より、血を流してでも守る信念がある男に女は弱い。強さの裏に孤独が見えるとき、そこに色気が生まれる。モテとは清潔感でも金でもなく、「俺は俺でありたい」という芯の太さだ。暴力ではなく覚悟の男。それが本物のモテる“孤狼”だと思う。
◆教訓・学び:
モテる男は、正義も恋も“綺麗ごと抜き”で貫く覚悟を持っている。

momoko「鈴木亮平ってすごい!」

yoribou「そうだね。あんだけ良い人の役だとホントまんま良い人だと思うのにね。この上林はすごかった…」
◆似ているテイストの作品
-
『PLAN75』(2022年/日本)
高齢者の“生”を制度として切り捨てる社会の冷徹さを描いたディストピアドラマ。
法と正義が人の尊厳を奪うという構図は、『孤狼の血 LEVEL2』の「正義の堕落」と共鳴し、静かな暴力を感じさせる。 -
『オールド・ガード2』(2025年/アメリカ)
不死の戦士たちが己の信念と暴力の意味を問うアクション大作。
仲間を守るためなら汚れ役も辞さない姿勢は、日岡の覚悟と重なり、“暴力の中にある正義”というテーマで強く響き合う。
◆評価
項目 | 点数 | コメント |
---|---|---|
ストーリー | 19 / 20 | 暴力と正義の境界を問う構成が見事で、日岡と上林の対立が一貫した緊張感を生み出していた。人間の「業」を描く骨太な脚本。 |
演技 | 19 / 20 | 松坂桃李の鬼気迫る演技と、鈴木亮平の狂気の存在感がぶつかり合う。脇を固める村上虹郎や早乙女太一の演技も濃密で圧巻。 |
映像・演出 | 18 / 20 | 広島・呉原の退廃的な街並みと陰鬱な光が暴力の匂いを漂わせる。白石和彌監督らしい生々しい演出が観る者を容赦なく呑み込む。 |
感情の揺さぶり | 17 / 20 | 救いのない世界の中で、それでも正義を貫こうとする日岡の姿に胸を打たれる。大上の幻影と向き合う姿は哀しみを帯びた美しさ。 |
オリジナリティ・テーマ性 | 17 / 20 | 警察×極道という定番構図を超え、「正義の腐敗」と「暴力の連鎖」を現代的に再定義。シリーズを越えた重厚なテーマ性を感じた。 |
合計 | 90 / 100 | 暴力に支配された世界で正義を貫く男たちの葛藤を、圧倒的な演技と演出で描いた日本映画の金字塔。 |
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