映画『マイホームヒーロー』(2024年)レビュー&考察
◆作品情報
監督 | 青山貴洋 |
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脚本 | 船橋勧 |
原作 | 山川直輝、朝基まさし |
出演 | 佐々木蔵之介、齋藤飛鳥、高橋恭平、木村多江 他 |
配給 | ワーナー・ブラザース映画 |
公開 | 2024年 |
上映時間 | 117分 |
製作国 | 日本 |
ジャンル | サスペンス、クライム、ヒューマンドラマ |
視聴ツール | Amazon Prime、自室モニター、Huawei |
◆キャスト
- 鳥栖哲雄:佐々木蔵之介 代表作『間宮兄弟』(2006年)
- 鳥栖歌仙:木村多江 代表作『ぐるりのこと。』(2008年)
- 鳥栖零花:齋藤飛鳥 代表作『映像研には手を出すな!』(2020年)
- 間島恭一:高橋恭平(なにわ男子) 代表作『なのに、千輝くんが甘すぎる。』(2023年)
- 志野寛治:津田寛治 代表作『模倣犯』(2002年)
◆あらすじ
かつて、家族を守るために一線を越えた男がいた。鳥栖哲雄――平凡な会社員でありながら、娘を救うために裏社会と対峙し、血塗られた選択を重ねた父親です。あの事件から7年、哲雄と妻・歌仙は静かな暮らしを取り戻したかに見えました。
娘の零花は大学を卒業し、今では警察官として働いています。家族の未来に希望を抱きながら、それぞれが新しい日常を築いていました。しかし、過去は決して消え去ることはありません。
ある日、かつて裏社会を揺るがせた「10億円」の行方をめぐり、新たな火種が浮かび上がります。封印されたはずの事件が再び人々の欲望を呼び覚まし、哲雄たちを容赦なく巻き込んでいくのです。
正義の側に立つ零花と、罪を背負った父・哲雄。家族を守るための選択は、再び彼らの絆を揺さぶります。本作は、父と娘がそれぞれの立場から真実に向き合い、避けられぬ運命に挑むサスペンスドラマです。
ここからネタバレありです
ネタバレあらすじを開く
零花は新米警官として、裏社会の資金洗浄を追う捜査に携わる中で、父・哲雄が過去に関わった「10億円」とのつながりを知ることになります。金を追うのは裏社会の残党だけではなく、警察内部にもその行方に目を光らせる者たちがいました。
一方、哲雄は表向きは穏やかな生活を送っていたものの、過去の罪が再び暴かれる危機に直面します。家族を守るために選んだ行動は、7年経った今もなお重くのしかかっていました。そして、その金に関わる者たちの動きが激化するにつれ、彼の秘密は少しずつ露わになっていきます。
物語は、正義のために追及する娘と、家族を守るために嘘を重ねる父という、相反する立場を描きながら進みます。零花が真実に迫れば迫るほど、父の罪へと近づいてしまう。愛か、正義か――10億円の行方をめぐる攻防の中で、家族の絆は試され、衝撃の結末へと突き進んでいきます。
◆考察と感想
本作、映画『マイホームヒーロー』を観終えて、まず胸に残ったのは「父と娘の立場の逆転」だ。ドラマ版での哲雄は、娘を守るために裏社会へと手を染めた父親として描かれていた。しかし劇場版では7年の歳月が流れ、娘・零花は警官となり、法と正義の側に立つ人間として父に向き合う。ここに強烈なアイロニーがある。父が犯した罪を隠し続けることが、果たして家族の幸福につながるのか。あるいは真実を明かすことこそが救いなのか。観客は哲雄と零花の間に生じる葛藤を通じて、「愛と正義の矛盾」に向き合わされる。
物語の中心にあるのは「10億円のゆくえ」であり、それはただの金額ではなく、人間の欲望と記憶の象徴だと感じた。金を追う裏社会の残党、そして正義の執行者である警察、それぞれが10億円をめぐって動き出す。その中で哲雄の過去が少しずつ剥き出しにされ、家族が再び追い込まれていく。観客としては、10億円の存在が物語を推進させる「マクガフィン」のように見える一方、哲雄と零花の関係性を照らし出す鏡のようにも映った。金の価値よりも、その背後にある「家族を守りたい」という動機の方が、作品における核心なのだ。
哲雄の描かれ方も印象的だった。彼は年齢を重ね、表向きは落ち着いた生活をしている。しかし心の奥には、あの日の選択が消えることなく残っている。その罪の重さは、彼に冷徹さを与えると同時に、守るべきものへの執着を強めている。佐々木蔵之介の演技はその二面性を巧みに表現していた。平凡な父親の顔と、冷静に嘘を積み上げる男の顔。その切り替えが実にリアルで、観る者を不安にさせる。
一方の零花は、警官という立場に就いたことで、父親にとって「守るべき存在」から「真実を突きつける存在」へと変わっている。齋藤飛鳥の眼差しは、娘の純粋さと警察官としての使命感を絶妙に混ぜ合わせ、父との対立をより鮮烈にしていた。彼女が父を疑う瞬間、その視線には愛情と義務の板挟みがはっきりと刻まれていて、胸を締め付けられる。
映画全体を通して感じたのは、「嘘の持続性」に対する問いかけだ。人はどこまで嘘をつき続けられるのか。そしてその嘘が家族を守ることになるのか。哲雄は7年もの間、嘘の上に家庭を築いてきた。しかし10億円という存在がその基盤を揺さぶる。観客としては「この嘘はどこまで通用するのか」とハラハラしながらも、「本当に守るべきは何なのか」を考えさせられる。
また、裏社会の人間たちの描かれ方も興味深い。単なる悪役ではなく、それぞれに動機や信念を持っている。金を追う者、復讐を狙う者、真実を暴こうとする者。多層的な動きが入り乱れることで、物語は単純な父と娘の対立を超えて「社会全体の縮図」となっている。そこに監督の意図を感じた。つまり、マイホームという最小単位の平穏が、外部の力によっていかに容易く崩れ去るかを示しているのだ。
個人的にもっとも刺さったのは、「父の愛は正義か」という問いだ。哲雄の行動は一貫して家族を守るためだが、それが社会的に見れば犯罪であり、許されざる行為だ。観客は彼を応援しながらも、同時に恐怖する。なぜなら「もし自分が同じ立場ならどうするか」と問われているように感じるからだ。倫理と愛情、その境界を曖昧にする物語構造は、極めてスリリングであると同時に普遍的だと思う。
映像演出も、7年という時の経過を丁寧に描いていた。家族の暮らしぶり、街の変化、そして哲雄の表情の重み。過去と現在を対比させることで、嘘を背負い続けることの苦しさを浮き彫りにしていた。
総じて、本作は「父と娘」「愛と正義」「嘘と真実」という相反するテーマをぶつけ合わせ、観客に深い問いを残す映画だった。サスペンスとしての緊張感はもちろん、ヒューマンドラマとしての深みも兼ね備えており、非常に見応えがあった。俺自身は観終えて、「嘘を抱えたまま生きること」と「真実を告げて失うこと」のどちらが幸せなのか、ずっと頭を離れなかった。それこそが本作の狙いであり、観る者に突きつけられる最大のテーマだと思う。
◆モテ男の考察
モテ男目線で考えると、この映画は「守るべきものの優先順位」を突きつけてくる。モテる男は嘘で繕うより、正直さと信頼を武器にする。哲雄のように嘘を重ねて家族を守るのは切実だが、長期的には破綻する。大事なのは愛を形にする覚悟と、真実を共有できる強さだ。モテ男は「守る=隠す」ではなく「守る=支える」と置き換える。父と娘のすれ違いは、結局「言葉足らず」から来ている。誠実に語ること、それが人を惹きつける最大の力だ。
◆評価
項目 | 点数 | コメント |
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ストーリー | 17 / 20 | 本作品は、ドラマを観ていないとちょっとストーリーが分からないところがある。少しは道案内してくれるが… |
演技 | 18 / 20 | 佐々木蔵之介は演技はうまいが、ちょっと顔が怖い。男前だとは思うが、痩せすぎ? |
映像・演出 | 17 / 20 | ご都合主義のところがいろいろあるのは、原作が漫画なので仕方が無いとは思う。 |
感情の揺さぶり | 17 / 20 | あまり感情を動かされるところはなかった。 |
オリジナリティ・テーマ性 | 16 / 20 | オリジナリティやテーマ性は無いが、娯楽性は高いと思うので楽しめた。 |
合計 | 85 / 100 | ドラマは観ていないので、観ることで本作をより完璧に考察できるようになると思う。 |
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