- 【監督・脚本】ビョン・ソンヒョン
- 【脚本】イ・ジンソン
- 【出演】スル・ギョング、ホンギョン、リュ・スンボム、山田孝之 他
- 【配給】Netflix
- 【公開】2025年
- 【上映時間】136分
- 【製作国】韓国
- 【ジャンル】ブラックコメディ/ハイジャック・サスペンス/政治風刺ドラマ
- 【視聴ツール】Netflix、吹替、自室モニター、Anker Soundcore AeroClip
- ノーバディ(誰々):ソル・ギョング 代表作『キングメーカー 大統領を作った男』(2022年)
- ソ・ゴミョン中尉:ホン・ギョン 代表作『D.P. −脱走兵追跡官−』(2021年)
- パク・サンヒョン(KCIA長官):リュ・スンボム 代表作『ベテラン』(2015年)
- 伝次(デンジ/ハイジャック犯リーダー):笠松将 代表作『宮本から君へ』(2019年)
- 石田真一(運輸政務次官):山田孝之 代表作『闇金ウシジマくん』(2012年)
●あらすじ(ネタバレなし)
1970年、日本の羽田空港を飛び立った「ジャパニーズ・ライド351便」は、離陸直後に日本の極左組織・赤軍派の若者たちにハイジャックされます。彼らの目的は、飛行機を北朝鮮の平壌へ向かわせ、革命の英雄として名を残すことでした。
一方、この国際的事件を察知した韓国・中央情報部は、日本に恩を売り、自国の政治的立場を強めるチャンスとして動き出します。中心となるのは、正体不明のフィクサー「ノーバディ」と、米軍式レーダーの資格を持つ数少ないエリート管制官ソ・ゴミョン中尉。
韓国側が打つ奇策は、金浦空港を“即席の平壌”に偽装し、ハイジャック犯を着陸させるという前代未聞の作戦でした。
機内では緊張と混乱が渦巻き、地上では官僚たちの思惑が交錯しながら、史上最も奇妙な救出作戦が幕を開けます。
●あらすじ(ネタバレあり)
ここからネタバレありです。(クリックで開く)
韓国側は強引に主導権を握り、ソ・ゴミョンが北朝鮮の管制官を装って無線を奪い、飛行機を金浦空港へ誘導します。地上ではノーバディの指揮で、俳優や兵士を総動員し、空港全体を「平壌風」に急造。しかしハイジャック犯たちは、アメリカ軍人の姿や流れる音楽などから違和感を覚え、偽装は破綻。再び膠着状態になります。
リーダー格のデンジは、仲間の腹を刺し「正午までに平壌へ飛ばなければ自爆する」と宣言し、状況は最悪のカウントダウンへ。官僚たちが責任逃れに必死になる中、ノーバディとソは日本の石田政務次官に「人質として残り、乗客を解放する」という決断を促します。石田は覚悟を決め、人質たちは救出され、飛行機は石田とハイジャック犯を乗せたまま北朝鮮へ向かいます。
事件後、ノーバディはソに真実を明かします。犯人の武器はほとんど偽物で殺意はなかったこと、そして韓国政府は自らの関与を完全に隠し、すべてを“偶然の着陸”として処理したこと。ソは命がけの働きをしたにもかかわらず功績を隠され、与えられたのは小さな時計と新しい名前だけ。歴史に名を残すことなく、“ノーバディ”として消えていきました。
この物語は、国家が作る「都合の良いニュース」と、その裏で犠牲になる影の英雄たちの切なさを鋭く描き、深い余韻を残して終わります。
●俺目線の考察と感想
『グッドニュース』は、ハイジャック事件という血なまぐさい題材を扱いながら、驚くほど軽やかに、そして痛烈に政治の「滑稽さ」と「怖さ」を描いた映画だと感じた。まず、俺が強く惹かれたのは、この作品が“実話の裏側”をあえて笑いに変えようとする大胆さだ。普通ならシリアス一辺倒になる題材だが、監督のピョン・ソンヒョンはその常識をまったく信用していない。むしろ、「人の命がかかった国家的事件でも、裏ではこんなに情けない駆け引きが行われていたかもしれない」と観客に突きつける。このブラックユーモアの姿勢こそ、この映画の魅力だと思う。

笠松演じるデンジがハイジャック犯のリーダー。一言一言に、韓国側に緊張が走る。
特に印象に残ったのは、ソル・ギョング演じる“ノーバディ”の存在感。何を考えているのか読めない、飄々としているくせに、決して無能ではなく、むしろ圧倒的な頭脳と胆力を持っている。彼が笑っているのか怒っているのか、善人なのか悪人なのか、最後まで判断できない。この曖昧さがリアリティを生んでいて、実際の国家の裏側にいる“影のフィクサー”という人物像を象徴しているように思えた。どれほど犠牲を払っても、彼は歴史に名前を残さない。それがこの映画の一番の皮肉であり、胸に残る苦味だ。
対して、ホン・ギョン演じるソ・ゴミョン中尉の物語は、個人的にもっとも胸を打った。彼は若いエリートで、アメリカの管制官資格まで持つ有能な青年だが、彼の“優秀さ”は、国家にとっては便利な使い捨ての部品に過ぎなかった。命を張って作戦を成功させても、政治的な都合で功績を隠され、最後に与えられるのは安っぽい時計一つ。あの瞬間、俺は彼の虚しさが痛いほど伝わってきて、映画でありながら、実話の残酷さを突きつけられた気がした。
作中で描かれる官僚たちの右往左往した姿は滑稽だが、それが笑っていられないほどリアルだ。誰も責任を取りたがらず、判断を他人に押し付け、失敗だけを恐れる。結局、現場で命を投げ出しているのはいつも“下の人間”。これは1970年の話でありながら、俺たちが生きている現代とも何ひとつ変わらない構造だ。監督が本当に描きたかったのは、この普遍的な権力の腐敗なのだろう。

運輸政務次官の石田を演じる山田孝之。真面目な性格が吉と出るか凶と出るか。
そして、この映画を真にブラックコメディとして成立させているのが、数々の“本当に起きたこと”だ。空港を即席で北朝鮮に偽装し、俳優を動員し、地図帳を犯人に渡し、無線を奪い合い、政務次官が身代わりとして機に残る。普通なら「そんな馬鹿な」と笑い飛ばす場面が、実際に起きた歴史の一部だという事実が、この映画の狂気を強烈にしている。だからこそ、観客は笑いながらも背筋が冷たくなる。歴史の不条理を、そのままの形でブラックユーモアに変換しているのだ。
個人的には後半のテンポが緩むという批評にも頷ける部分はあるが、むしろその“だれ”が、この映画のテーマと噛み合っているとも思った。前半のドタバタ劇から一転、後半はソ・ゴミョンが政治の闇に飲み込まれていく静かな悲劇として描かれている。この落差が重く響く。最初は単なる巻き込まれ型の青年だった彼が、最後には「真実が消される側の人間」になってしまう。その変化が胸に迫った。
結局、『グッドニュース』というタイトルそのものが皮肉だ。世に表向きに発表される「グッドニュース」の裏には、必ず誰かの涙と犠牲がある。歴史とは、表に出る者の物語だけでは語れない。表舞台から消された“ノーバディ”たちの存在が、初めて歴史を形作るのだと、この映画は静かに語っていた。
●もて男的考察
『グッドニュース』を観て感じたのは、モテる男は“見えないところで動く覚悟”があるということだ。ノーバディもゴミョンも、自分の名前が残らなくてもやるべきことをやった。自己犠牲じゃなくて“信念の行動”。これは周りから自然と信頼が集まる男の条件だ。目立とうとする奴より、黙って結果を出す男が結局一番強いし、モテる。映画はそれを教えてくれる。
ただのレビューで終わらせない。“男前にビシッと決める”映画知識を身につける場——シネマログ。
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本当にモテる男とは、名誉よりも「誰も見ていない場所で正しい行動を選べる覚悟を持つ人間だ」。
似ているテイストの作品
- 『非常宣言』(2022年/韓国)
航空機テロと国家の危機管理がテーマで、政府の混乱や責任逃れ、官僚の保身など『グッドニュース』とほぼ同じ構造を持つ。
上空と地上の“二重の緊迫感”がシンクロし、政治の闇を描くという意味でも最も近い一本。 - 『ホテル・ムンバイ』(2018年/オーストラリア)
実際のテロ事件を基にしつつ、現場の混乱・政府の後手対応・市民の犠牲を描く点が共通。
極限状況での“人間と国家の本性”というテーマが『グッドニュース』の空気と強く重なる。
| 項目 | 点数 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー | 17 / 20 | 実在事件をベースに、国家の嘘と混乱をブラックコメディとして描く構成が見事。 前半のドタバタと後半の重さの対比が効いており、歴史の裏側にある“誰も語らない真実”へ自然と導かれる。 |
| 演技 | 18 / 20 | ソル・ギョングの不気味なフィクサー像、ホン・ギョンの追い詰められていく若い管制官の繊細な変化が圧巻。 日本勢も全員存在感が強く、特に笠松将と山田孝之の緊張感ある演技は物語を大きく支えている。 |
| 映像・演出 | 18 / 20 | 金浦空港を“偽の平壌”に作り上げる大胆な美術と、無線の奪い合いを描く管制シーンの演出が非常にスリリング。 コメディとシリアスを滑らかに切り替える監督の手腕が光り、全編に緊張感と異様なリアリティが漂う。 |
| 感情の揺さぶり | 17 / 20 | ゴミョンが国家に使い潰されていく過程は胸が痛く、ノーバディとの関係性も人間的な嘘や哀しみが滲む。 結末の“報われない英雄”という構造が強烈な虚無感を呼び、観終わった後もしばらく余韻が残る。 |
| オリジナリティ・テーマ性 | 18 / 20 | 史実の異常な出来事をブラックユーモアで再構築し、政治・官僚制の腐敗を鋭く風刺。 “ニュースとは誰のための物語か”というテーマが全編を貫き、歴史の裏側にいるノーバディたちへの視線が新鮮。 |
| 合計 | 95 / 100 | 史実の狂気をブラックコメディとして大胆に描き切った快作。 国家の嘘と影で消される英雄を描くテーマ性は鋭く、緊張・笑い・虚無が絶妙に混ざり合う。 韓国映画らしい厚みと国際色豊かなキャストの化学反応が光り、2025年作品の中でも突出した完成度。 |
『グッドニュース』(2025年)は、単なるハイジャック映画でも、歴史再現ドラマでもない。
これは、“国家が作り上げる物語”と“その裏で消される人間”を描いた皮肉と痛烈さの塊のような作品だ。
史実の狂気じみた出来事をブラックコメディとして再構築しつつ、緊張感・悲哀・虚無までを一気に飲み込んでしまう演出はさすが韓国映画。その一方、日本人が関わる事件を扱いながら、日韓双方のキャラクターを丁寧に描き、人間の弱さと滑稽さを等しく見つめる姿勢にも好感が持てる。
特に“ノーバディ”と“ソ・ゴミョン”の物語は、笑えるようで笑えない。
彼らは国家のために命懸けで動いたにもかかわらず、歴史には一行も名前が残らない。真実は捻じ曲げられ、都合の良い“グッドニュース”が作られ、人々はそれを疑いもせず消費していく。
この構造は1970年の話でありながら、現代そのものだ。
誰もが成果や栄光だけを見て、裏にある犠牲や矛盾を見ようとしない。だからこそ、この映画が放つメッセージは痛いほどリアルで、決して他人事ではない。
最後まで観終えたとき、胸に残るのは派手なアクションや政治劇よりも、“歴史の裏側にいた名もなき人たちへの敬意”だ。
彼らがいなければ、何ひとつ「グッドニュース」になどならなかったという事実が、静かに響き続ける。
総じて、本作は「笑いながら震える」極上の政治風刺であり、2025年を代表する一本だ。
観客に問いかける。「あなたが信じているニュースは、本当に誰のためのものか?」と。

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