【映画】『ゲット・アウト』(2017年)レビュー
| 【原題】 | Get Out |
|---|---|
| 【監督・脚本・製作】 | ジョーダン・ピール |
| 【出演】 | ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ 他 |
| 【配給】 | ユニバーサル・ピクチャーズ、東宝東和 |
| 【公開】 | 2017年 |
| 【上映時間】 | 103分 |
| 【製作国】 | アメリカ、日本 |
| 【ジャンル】 | ホラー、サイコスリラー |
| 【視聴ツール】 | U-NEXT、吹替、自室モニター、Anker Soundcore AeroClip |
- クリス・ワシントン:ダニエル・カルーヤ 代表作『ブラックパンサー』(2018年)
- ローズ・アーミテージ:アリソン・ウィリアムズ 代表作『ガールズ』(2012–2017年)
- ミッシー・アーミテージ:キャサリン・キーナー 代表作『マルコヴィッチの穴』(1999年)
- ディーン・アーミテージ:ブラッドリー・ウィットフォード 代表作『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015年)
- ロッド・ウィリアムス:リル・レル・ハウリー 代表作『フリー・ガイ』(2021年)
アフリカ系アメリカ人の青年クリスは、白人の恋人ローズの実家へ初めて挨拶に行くことになります。ローズは「家族は人種を気にしない」と断言しますが、彼女が一瞬だけ見せた動揺が、どこか気になるところでもあります。
実家へ向かう途中、車が鹿をはねてしまい、事故現場に来た警官はクリスに対してだけ横柄な態度を取ります。ローズは警官を強く非難しますが、クリスはその場を荒立てたくないと冷静に振る舞います。
アーミテージ家に着くと、家族は彼を温かく迎えますが、屋敷で働く黒人の使用人ジョージナとウォルターの不自然な笑顔や、どこか“無表情な明るさ”にクリスは違和感を覚えます。
翌日行われるパーティーでは白人の招待客が集まり、クリスの体格や文化的背景について妙に踏み込んだ質問ばかりを投げかけてきます。差別的というより、彼らがクリスを“観察対象”のように扱っていることが、逆に彼の居心地を悪くしていきます。
そんな中、クリスは一人の黒人男性ローガンと出会いますが、その振る舞いは黒人らしさが完全に消えた“奇妙な白人のような態度”でした。クリスが誤ってフラッシュを焚いてしまうと、ローガンは突然取り乱し、「Get out(逃げろ)」と叫びながらクリスに掴みかかります。クリスは、この家で何かがおかしいと強く感じ始めるのです。
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クリスが外出している間、屋敷では“クリスの身体を出品した”秘密のオークションが行われていました。盲目の画商ハドソンが落札し、クリスの身体に自分の意識を移植する準備が進められていました。
アーミテージ家は、脳神経外科医の父ディーンを中心に、“黒人の身体に白人の意識を移植する”「凝固法」という恐るべき技術を代々受け継いでいたのです。使用人のジョージナとウォルターの中身は、ローズの祖父母でした。
ローズは理想的な彼女を演じながら、何人もの黒人男性を家に連れてきた“狩人”でした。ミッシーは催眠術で逃げられないよう心理を支配し、ディーンが手術を行うという家族ぐるみのビジネスだったのです。
逃げようとしたクリスは催眠で動けなくされますが、わずかな隙を突いて脱出し、家族との死闘を繰り広げます。ジェレミー、ミッシー、ディーンを次々と倒し、外へ逃げ出しますが、ローズとウォルターが追いかけてきます。
しかしクリスのスマホのフラッシュでウォルターの本来の意識が戻り、ローズを撃ったのち自ら命を絶ちます。最後にローズが助けを求めますが、そこへ現れたのは警察ではなく、クリスの親友ロッドでした。
クリスはロッドと共に悪夢の屋敷から離れ、物語は救いのあるエンディングを迎えます。
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●俺目線の考察と感想
『ゲット・アウト』を観てまず感じたのは、これは単なるホラーではなく“居心地の悪さ”そのものを恐怖に昇華した作品だということだ。血が流れる恐怖よりも、笑顔の下にある違和感、歓迎の裏に潜む支配欲。ジョーダン・ピールはその空気の“薄い膜”を的確に描き、観客にじわじわと圧迫感を与えてくる。これが本作の最大の魅力だと感じた。
この映画の恐ろしさは、悪意が真正面から向かってこない点にある。アーミテージ家も、その周囲の白人たちも、「自分たちは黒人を差別しない」と信じて疑わない。むしろ自分たちは“理解ある人間だ”という意識を持っている。父のディーンが「オバマを三選させたい」と口にした瞬間、観客は「ああ、これが善意を装った地獄の始まりだ」と気づかされる。つまり、彼らは“自分たちが正しい”と確信したまま、人種の身体を商品として扱っている。その矛盾こそが、この映画の皮肉であり鋭さである。
ク リスの視点は観客そのものであり、彼が体験する「微妙な不快感」が積み重なり、やがて巨大な真実へと繋がっていく。この構成が非常に巧みで、パーティーシーンにおける白人たちの質問一つひとつが“好奇心なのか差別なのか”曖昧な位置に置かれているのが良い。悪気なく体格を褒め、黒人としての経験を尋ね、まるで彼を“サンプル”として扱っているような会話。それらがクリスを追い詰めると同時に、観客にも少しずつ疑念を植えつける。これが本作の構造上の強みだ。


そして、ローズの存在だ。観客は前半、彼女だけは味方だと信じて疑わない。それはクリスと同じ心理だ。しかし、クローゼットの中の写真が明かす真実によって、一瞬で全ての信頼が崩れる。ローズは「愛のふり」と「正しさのふり」を完璧に演じており、その冷酷さは物語全体の残酷さを象徴している。彼女の“善良な笑顔”こそ、この映画最大のホラーだ。ホラー映画でここまで心理的な裏切りを味わわせるキャラクターは珍しい。
ミッシーの催眠の場面も忘れがたい。ティーカップをカチカチと鳴らす行為は、支配のリズムそのものであり、観客の神経を不快に震わせる。クリスが沈んでいく「サンクン・プレイス」は、社会的に声を奪われた黒人の象徴として機能しており、ただの演出ではなく深い意味を持っている。ジョーダン・ピールの象徴性の使い方は極めて上手い。
さらに物語後半、クリスが反撃に転じる展開は、ホラー映画的なカタルシスの一つの到達点だと感じた。弱者の立場に追い込まれ続けた主人公が、自身のトラウマを乗り越え、命を賭けて脱出を試みる姿は力強く、観客はそこに強い共感を覚える。ローズが助けを乞う場面でも、クリスの手が止まらないのは、「許し」より「生存」が優先される当然の感情だ。
最後にロッドが登場し、クリスを救出するエンディングは、重苦しい物語にわずかな光をもたらす。元々は逮捕されるバッドエンドの予定だったが、救いを残したことで、作品のメッセージがより観客に届きやすくなったと感じる。この映画は恐怖であり風刺であり、そして強烈な社会批評だが、最終的には“生き延びることができる”という希望があることで、ただ陰鬱なだけの作品では終わらない。
総じて『ゲット・アウト』は、表面的にはホラーの形を借りながら、実際には「人種」「善意」「支配」「身体の所有」といったテーマを鋭く抉る問題作である。それでいてエンタメとしても一級品。観客の居心地の悪さを最大限利用し、それをクライマックスの恐怖と怒りへと繋げる構成は見事の一言。このジャンルに新しい基準を作った傑作だと思う。
●もて男的考察
『ゲット・アウト』のポイントは、“優しさのフリをする人間ほど怖い”ということだ。これは恋愛にもそのまま当てはまる。表向きの好意や気遣いだけでは、本質は見抜けない。だからこそ、相手の行動より「違和感」を大事にすべきだ。クリスのように小さなサインを見逃さなければ、恋愛でも人間関係でも、危険な相手に深入りせずに済む。つまりこの映画は、“人を見る目を鍛える映画”でもあるのだ。
相手の“優しさ”より、ふとした違和感を信じて距離を取れる男が、本当に自分を守れる。
◆似ているテイストの作品
- 『アス』(2019年/アメリカ)
『ゲット・アウト』と同じジョーダン・ピール監督による作品で、“普通の家庭の裏側に潜むもう一つの自分”という社会風刺と恐怖の融合が特徴。
違和感が少しずつ“確信”に変わる構造や、寓話的な恐怖の見せ方は本作と最も近いテイスト。 - 『ビバリウム』(2019年/アイルランド)
一見“理想の住宅地”が、実は異常な監視社会だったという閉塞感ホラー。
笑顔の裏に潜む不気味さや、逃げられない空間でじわじわ精神を削られる感覚が『ゲット・アウト』と共鳴する。
| 項目 | 点数 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー | 18 / 20 | 日常の“違和感”を少しずつ恐怖に変えていく構成が秀逸で、観客を主人公クリスの視点に強く引き込む作りになっている。 人種問題を題材にしつつ、ホラーとしての緊張と社会風刺を高いレベルで両立させた脚本が光る。 |
| 演技 | 18 / 20 | ダニエル・カルーヤの“目の演技”は圧巻で、抑えた恐怖と内側の怒りを繊細に体現している。 アリソン・ウィリアムズの二面性、使用人たちの不穏な笑顔など、全員の演技が作品全体の不気味さを支えている。 |
| 映像・演出 | 18 / 20 | 美しい住宅街と整った家族像を“恐怖の舞台”に変える演出が見事。 サンクン・プレイスの落下シーンや、静寂を使った間の取り方など、監督デビュー作とは思えない完成度を誇る。 |
| 感情の揺さぶり | 19 / 20 | 序盤の違和感、中盤の恐怖、終盤の解放に向けたカタルシスと、感情の起伏が非常に強い作品。 信頼していた恋人に裏切られる絶望感や、逃げ場のない空間での恐怖が強烈に刺さる。 |
| オリジナリティ・テーマ性 | 19 / 20 | “リベラルな白人の善意”をホラーの形で批判する視点は極めてユニーク。 人種・身体・支配というテーマをエンタメに昇華し、社会風刺としても高い完成度を持つ。 |
| 合計 | 95 / 100 | 社会風刺と心理ホラーを高次元で融合させた、新時代のホラー映画。 小さな違和感が“確信”へ変わる緊張感、裏切りの衝撃、そして主人公の解放に向けたカタルシスが見事に共存している。 ホラーとしても批評性のある作品としても突出した完成度で、2010年代を代表する一本。 |
『ゲット・アウト』は、“ホラーの皮をかぶった社会批評”という唯一無二の立ち位置を獲得した作品である。恐怖の源は怪物でも幽霊でもなく、笑顔で「君の味方だよ」と言ってくる“善良な白人”の中に潜む支配欲や無自覚な偏見だ。その“他人の善意の押しつけ”がどれほど恐ろしく、どれほど人を追いつめるかを、ジョーダン・ピール監督は徹底して映像化した。
作品の魅力は、序盤の微細な違和感が、中盤で不安に変わり、終盤では圧倒的恐怖として爆発する構造にある。隠れたサインが徐々に意味を帯び、観客はクリスと同じ速度で真相に近づいていく。この“観客を巻き込む語り口”こそ、本作が高く評価される理由だ。
また、キャストの演技も作品の強度を上げている。特にダニエル・カルーヤの感情の押し殺し方、アリソン・ウィリアムズの仮面のような笑顔、そしてジョージナとウォルターの不気味な演技は、日常の中に潜む“狂気の静けさ”を鮮やかに表現している。
人種問題という極めて重いテーマを扱いながら、エンタメとしても一流の緊張感とカタルシスを両立させた点も見事だ。“リベラルの崩壊”という鋭い視点、支配と身体の所有というテーマ、そして逃げ出す瞬間の爆発的解放感――そのすべてが緊密に結びついている。
総じて『ゲット・アウト』は、単に怖いだけではなく、「この世界に潜む構造的な違和感」に目を向けさせる作品である。ホラーとして革新的であり、社会風刺として鋭く、そして物語としても抜群に面白い。2010年代以降のホラー映画の中でも頂点級の完成度を持つ一本だと言える。
『ゲット・アウト』では、ティーカップを使った奇妙な催眠術がとても印象的でした。
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