【映画】『愚行録』(2017年) 「幸せな家族」を殺したのは誰か──記憶と嘘が交錯する、衝撃の心理ミステリー | ネタバレあらすじと感想

サスペンス/スリラー

【映画】『愚行録』(2017年)
「幸せな家族」を殺したのは誰か──
記憶と嘘が交錯する、衝撃の心理ミステリー

| ネタバレあらすじと感想 |

◆映画『愚行録』の作品情報
【監督】石川慶
【脚本】向井康介
【原作】貫井徳郎『愚行録』
【出演】妻夫木聡、満島ひかり、小出恵介、臼田あさ美、市川由衣 他
【配給】ワーナー・ブラザース映画、オフィス北野
【公開】2017年
【上映時間】120分
【製作国】日本
【ジャンル】サスペンス、心理ミステリー、社会派ドラマ
【視聴ツール】Amazon Prime、自室モニター

◆キャスト
・田中:妻夫木聡 代表作『悪人』(2010年)
・田中光子:満島ひかり 代表作『愛のむきだし』(2009年)
・宮村淳子:小出恵介 代表作『キサラギ』(2007年)
・稲村恵美子:臼田あさ美 代表作『南瓜とマヨネーズ』(2017年)
・山本志津香:市川由衣 代表作『海猿 ウミザル』(2004年)

📝 あらすじ(ネタバレなし)

ある日、とある住宅街で起きた一家惨殺事件──世間では「理想的な家族」と称された田向一家が、何者かによって無残に殺害されました。事件から1年が経ち、記者・田中(妻夫木聡)は当時の関係者に取材を始めます。被害者の父親はエリートサラリーマン、母親は美しい良妻賢母として周囲に評判でしたが、田中が関係者の証言を集めていくうちに、その“理想像”に徐々に綻びが見えてきます。

取材対象者は皆、田向夫婦についてそれぞれ異なる印象を語り、証言の食い違いが新たな疑念を呼び起こします。さらに田中自身の家庭には、ある暗い影が落ちており、精神病院に入院している妹・光子(満島ひかり)との会話もまた、物語に重層的な深みを加えていきます。

誰が、何のために「幸せな家族」を殺したのか──真実を探る旅が、静かに、しかし確実に狂気に近づいていきます。

⚠️ ここからネタバレありです

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田中が掘り下げていく証言の裏側には、田向夫妻の「理想の夫婦」像がいかに周囲への虚飾で彩られていたかが浮かび上がってきます。夫はエリートというよりも傲慢な人物であり、妻は見た目と違って他人を見下すような態度を取っていたことが明らかになります。彼らの周囲では嫉妬、見栄、階級意識が渦巻いており、それぞれの証言者たちもまた、自分に都合のいいように過去を語っていたことが見えてきます。

やがて田中の妹・光子が入院中の病室で語り始めた過去の記憶が、事件の真相に直結していることが明らかになります。実は、田中自身がこの事件に深く関わっていたという衝撃の展開が待ち受けており、真犯人像が揺れ動く中で、観客は「愚行」とは何か、「真実」とは何かを問われることになります。物語は、誰もが自分を正当化し、他人を断罪しようとする人間の業を静かにあぶり出して終焉を迎えます。

🎥 考察と感想

本作、『愚行録』を観終えて、まず感じたのは、これは単なるミステリーじゃなく、「人間の本性を暴く拷問装置」みたいな映画だったということだ。冒頭から最後まで流れるのは不穏な空気で、音楽も控えめ、登場人物も感情を爆発させることなく淡々としてる。けれどその中にある“言葉のズレ”や“違和感”が、観る者の神経をじわじわ蝕んでくる。

記者・田中が取材を通して田向一家の真相に迫っていく過程は、まるでパズルを埋めるような面白さがある。ただ、それはスリルというより、どこまで人間の醜さを暴けるかという「倫理なき暴露」のような快楽に近い。誰もが「自分は正しい」と思って語るけど、よく見るとそこには嫉妬、劣等感、マウント、階級意識がびっしりと張り付いてる。

満島ひかりが演じる妹・光子の存在がまた異様だった。彼女は精神を病んでいるが、狂気の中でこそ真実が語られるという皮肉がある。兄妹の会話はまるで“もう一つの事件”のようで、観客は少しずつ、記者・田中の内側にも別の闇があることに気づかされる。この兄妹が象徴するのは、“愚行”が決して特別な誰かのものじゃないということ。むしろ、誰の中にもある。

演出も、空気を詰まらせるようなカメラワークと、色味を抑えた画面が絶妙だった。特に、証言者たちの語りが回想とリンクする場面では、過去と現在が交錯し、観る側も“何が真実なのか”を見失っていく。これは、「誰かの目を通した過去は必ず歪む」という前提に立った構成で、だからこそラストの衝撃が効いてくる。

結局、真相は明らかになるようで、ならない。明確な結末を期待するタイプの観客にはモヤモヤが残るかもしれないが、俺にとってはそれが逆にリアルだった。人間の愚かさって、結局「誰かを陥れてでも、自分の物語を守りたい」っていう欲望の集積で、それを見せられた気がした。

この映画は、一見すると他人事のように見えるが、よくよく振り返ると、俺たち自身もまた、誰かに“記録”されているかもしれないという恐怖に襲われる。言い訳や嘘、無意識のマウント、見栄──そういう日常の“愚行”がどれだけあるか。それを思い知らされる作品だった。観たあとにじわじわ効いてくる、まさに“毒のような一本”だ。

💘 モテるという観点での考察

『愚行録』の登場人物たちは、他人を評価する目にばかり意識が向いていた。「学歴」「年収」「容姿」など、外的なラベルで他人を判断し、自分の価値を高めようとしていた。でも、モテる男ってのは、そういう他人目線で動かない。自分のスタンスを持ち、他人に振り回されず、言葉と行動に誠実さがある。愚行とは、外面ばかり整えて内面を磨かないことの代償。モテる男は、まず自分の愚行を認め、他人の“本質”を見抜く目を持っているべきなんだと思う。

📘 教訓・学び

モテるとは──他人の評価に振り回されず、愚行を直視できる誠実さを持つことだ。

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