【映画】『フライトプラン』(2005年)レビュー
サスペンス/ミステリー/スリラー|機内という“完全なる密室”で母は真実を探し続ける。
◆映画『フライトプラン』の作品情報
- 【英題】Flightplan
- 【監督】ロベルト・シュヴェンケ
- 【脚本】ピーター・A・ダウリング
- 【出演】ジョディ・フォスター 他
- 【配給】ブエナ・ビスタ・ピクチャーズ、ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)
- 【公開】2005年
- 【上映時間】98分
- 【製作国】アメリカ
- 【ジャンル】サスペンス、ミステリー、スリラー
- 【視聴ツール】Netflix、自室モニター、HUAWEI
◆キャスト
- カイル・プラット:ジョディ・フォスター 代表作『羊たちの沈黙』(1991年)
- ジーン・カーソン:ピーター・サースガード 代表作『ジャーヘッド』(2005年)
- マーカス・リッチ:ショーン・ビーン 代表作『ロード・オブ・ザ・リング』(2001年)
- ステファニー:ケイト・ビーハン 代表作『サイレント・ヒル』(2006年)
- ジュリア・プラット:マーリーン・ローストン 代表作『フライトプラン』(2005年)
◆あらすじ
前半:ネタバレなし
ベルリンで夫を亡くした航空機設計士のカイル・プラットは、6歳の娘ジュリアと亡き夫の棺とともに、自らが設計に関わった最新鋭の旅客機に乗り込み、ニューヨークへの帰路につきます。悲しみを抱えながらも、娘と新たな生活を歩もうと決意するカイル。しかし、離陸から数時間後に仮眠から目覚めると、隣に座っていたはずのジュリアの姿が忽然と消えていました。客室乗務員や機長に必死に訴えますが、乗客の誰もジュリアを見ておらず、搭乗記録にも娘の名前は存在しないと告げられてしまいます。愛する我が子の失踪なのか、あるいは夫の死に動揺するカイル自身の妄想なのか。高度1万メートルの密室で、必死の訴えを続ける彼女は次第に狂気じみた母親とみなされ、周囲から孤立していきます。それでもカイルは母親としての直感と航空機設計士としての知識を頼りに、真実を突き止めようと奮闘し続けます。
ここからネタバレありです
▼ 詳細あらすじを読む
カイルは娘が必ず生きていると信じ、機内の隅々まで捜索を続けます。しかし精神的に不安定と見なされ、航空保安官カーソンに拘束されてしまいます。そんな中、窓に残されたジュリアの落書きを発見したことで、彼女の確信は強まりました。設計士としての知識を駆使し、機体構造を調べたカイルは、娘が貨物室や機械室に隠されている事実にたどり着きます。実はカーソンこそが事件の黒幕であり、棺には爆弾の起爆装置が隠されていました。カーソンは共犯のCAステファニーと結託し、ジュリアを拉致してカイルを精神的に追い詰め、彼女をハイジャック犯に仕立てようとしていたのです。やがて飛行機が着陸すると、カイルは爆破寸前の機内に戻り、ジュリアを救出します。そして逆にカーソンを爆炎に巻き込み、自らの潔白を証明しました。娘を抱き締めるカイルの姿には、母の強さと愛情が鮮やかに刻まれていました。
◆考察と感想
本作、『フライトプラン』を改めて観ると、2005年という時代背景の中で「航空機」という密室空間を舞台にしたサスペンスの巧妙さに驚かされる。映画の冒頭から、夫を亡くしたばかりのカイルが娘を連れて帰国するという重苦しい雰囲気が漂っていて、観る側も自然と不安定な心情に引き込まれる。ここで既に、主人公の精神状態に疑いを差し挟む余地が準備されているんだよな。
離陸後に娘が忽然と姿を消すという展開は、密室トリックのような感覚を観客に与える。しかも周囲の乗客や乗務員までもが「そんな娘は存在しなかった」と言い切る。ここで俺は「これは母親の妄想なのか?」「実際に娘は生きているのか?」という二つの可能性の間で揺さぶられた。母親の直感を信じたい気持ちと、理性的に考えれば幻覚や精神的錯乱だと納得してしまいそうな自分が同居する。観客自身が疑念を持たされることで、カイルと同じ孤独を体感するわけだ。
映画の中盤までは、この「カイル=不安定な母親」というレッテルを観客自身も貼りかける。しかし彼女が窓に残されたジュリアの落書きを発見する場面で、俺の中の天秤は一気に傾いた。やっぱり娘は生きている、この母親は狂っていない、と。ここから一気にサスペンスは加速し、観客の目線も完全にカイルに寄り添う形になる。
カーソン保安官が黒幕だと判明する瞬間は、驚きよりも「やっぱり」という納得感が強かった。なぜなら、彼の言動には序盤からどこか冷静すぎる違和感があったからだ。頼れる味方であるはずの立場が、実は最も危険な敵に変わる構図は、この作品の肝だと思う。そしてその動機が「棺に爆弾を仕込み身代金を奪う」という現実的かつ恐ろしい計画だったことに、当時のテロやハイジャックへの不安を強烈に思い出させられた。
母親の愛情というテーマは、単なるサスペンスの仕掛けを超えて胸に迫る。誰も信じてくれなくても「娘は生きている」と信じ抜いた母の直感は、理性や論理を超えた力を持っていた。最後に眠る娘を抱きかかえるカイルの姿は、戦い抜いた母の証であり、同時に彼女自身がようやく心の平穏を取り戻した瞬間でもあるんだよな。
映像的には機内の狭い空間を徹底的に活かしている。通路、ラウンジ、貨物室、機械室。観客が普段目にしない飛行機の内部が次々と登場し、その閉塞感が物語の緊張感を高める。これは監督の演出センスが大きい。音楽もジェームズ・ホーナーらしい不穏で緊張感を増すスコアで、観客の感情を操作するように鳴り響く。
この映画を観ながら俺が感じたのは、「母親という存在の強さ」だけではない。周囲に理解されなくても信じるべきものを信じ抜くことが、自分の人生を切り開くということだ。社会の中で孤立しても、自分の直感や信念を貫くことの意味を強く思わされた。結局、理屈ではなく「自分が信じる人や事実」を最後まで守れるかどうかが人間の本質なんだと思う。『フライトプラン』は賛否両論ある作品だ。批評家の間では「結末がご都合主義だ」とか「後半の展開が荒唐無稽だ」と指摘されることも多い。でも俺はむしろ、この映画の価値はそこにはないと思う。大切なのは、観客が「母の愛を信じたい」と思わされる過程だ。論理的に破綻している部分があったとしても、母の直感の正しさを描き切ったことこそが本作の魅力だと俺は感じる。改めて振り返ると、この映画はジョディ・フォスターという女優の存在感に完全に支えられていた。彼女がいなければ、この物語は薄っぺらなB級サスペンスで終わっていたはずだ。だが、彼女が母親役を演じるだけで物語に重厚さが生まれ、観客が最後まで彼女を信じたくなる力が加わった。俺にとって『フライトプラン』は、論理を超えて「信じること」の大切さを突きつけてくる一本だった。
◆モテ男目線
『フライトプラン』は、女性の強さを象徴する映画ですが、男にとっても学べる部分が多いです。誰も信じてくれなくても、自分の大切な人を信じ抜く姿勢は、周囲から見れば頑固に映っても本質的には魅力につながります。恋愛においても同じで、相手の言葉や気持ちを最後まで信じる男は安心感を与え、結果的に信頼と好意を勝ち取るのです。モテる男は強さよりも「信じる力」で心を掴むのだと思います。
◆教訓・学び
大切な人を最後まで信じ抜く姿勢こそが、男を最もモテさせる力になる。
◆似ているテイストの作品
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『892 ~命をかけた叫び~』(2022年/アメリカ)
銀行に立てこもり、自らの存在を必死に訴える男の姿を描いた社会派サスペンス。
誰からも理解されず孤立しながら真実を証明しようとする構図は、『フライトプラン』のカイルの戦いと重なり、強烈な共感を呼び起こす。 -
『事故物件 歪んだ家』(2022年/韓国)
新居で一家が理不尽な恐怖に追い詰められていく密室ホラー。
閉ざされた空間で孤立する心理的緊張は、『フライトプラン』の機内サスペンスと響き合い、観客を同じ閉塞感に巻き込んでいく。
Anker Soundcore Liberty 5
ウルトラノイズキャンセリング搭載で映画の没入感が格段に向上。
機内サスペンス『フライトプラン』の緊張感も、自宅でリアルに体験できます。
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