【映画】『ファンタジーアイランド』(2020年) 夢が叶う島──その願いが、最悪の悪夢に変わる。真実にたどり着けるか、生きて帰れるか | ネタバレあらすじと感想

ホラー

  • 原題:The Last Voyage of the Demeter
  • 監督:アンドレ・ウーヴレダル
  • 脚本:ブラギ・F・シャット、ステファン・ルツォヴィッツキー、ザック・オルケウィッツ
  • 原案:ブラギ・シャット・Jr
  • 原作:ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』ほか
  • 出演:コーリー・ホーキンズ、アシュリン・フランチオーシ 他
  • 配給:ユニバーサル・ピクチャーズ、東宝東和
  • 公開:2023年8月
  • 上映時間:119分
  • 製作国:アメリカ
  • ジャンル:ホラー、ファンタジー、スリラー
  • 視聴方法:Netflix(吹替/自室モニター)

キャスト

  • クレメンス医師:コーリー・ホーキンズ(『ストレート・アウタ・コンプトン』)
  • アナ:アシュリン・フランチオージ(『ナイチンゲール』)
  • キャプテン・エリオット:リーアム・カニンガム(『ゲーム・オブ・スローンズ』)
  • ウォイチェク:デヴィッド・ダストマルチャン(『ザ・スーサイド・スクワッド』)
  • ドラキュラ:ハビエル・ボテット(『ママ』)

ネタバレあらすじ

舞台は1897年、トランシルヴァニアからロンドンへ向かう貨物船「デメテル号」。医師クレメンスは知的で冷静な人物として描かれ、船医として乗船します。積み込まれた木箱の中身は誰にも明かされていませんが、航海が進むにつれて家畜の死や不可解な現象が続発。クルーたちの間に不安と不信が広がり始めます。

ある夜、船内で衰弱しきった女性・アナを発見。彼女は吸血鬼に血を吸われ、木箱に閉じ込められていたことが明らかになります。アナはドラキュラの存在とその危険性を語りますが、すでに何人もの乗組員が失踪し、船は呪われた状況に陥っていきます。

考察と感想

『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』は、原作小説の断片から生まれた独自のホラー作品として、閉所的サスペンスの恐怖を存分に味わわせてくれる。船という隔離された空間で繰り広げられる恐怖体験は、観客に強い没入感を与え、まるで自身もクルーの一員として戦慄する感覚に陥る。夜の海、きしむ木材、遠くで響く叫び声──演出の細部まで練られており、音響と映像が見事に融合している。

吸血鬼ドラキュラの造形も、過去の作品とは一線を画す。もはや言葉を介する存在ではなく、暗闇から現れる死そのものであり、人間の形を保ちながらも“理不尽な暴力”を象徴する存在だ。その不気味さは、単なるホラーを超えた“原初的な恐れ”にまで達しており、鑑賞後も長く記憶に残る。

登場人物たちは皆、過去に傷を抱えており、それが船内の閉鎖空間において増幅されていく。クレメンスは黒人としての差別の歴史を背負いながらも、人道と理性を貫く存在として描かれる。アナは希望と呪いの狭間に生きるキャラクターであり、彼女の存在がこの物語に“救い”の可能性を提示している点は非常に意義深い。

そして、物語のラスト。ドラキュラがなお生き延び、文明社会に紛れて活動を続ける余韻の残し方は、古典ホラーの伝統を受け継ぎながらも、現代の恐怖にも接続している。「恐怖は終わらない」という感覚が、観る者の中に長く残り、ただの娯楽では終わらない印象をもたらす作品だった。

教訓・学び

自然は人間の過ちを映す鏡であり、軽率な行動は思わぬ形で命を脅かす。




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