- 監督・脚本:飯塚健
- 脚本:加藤良太
- 原作:東野圭吾
- 出演:重岡大毅、中条あやみ、岡山天音、西野七瀬、堀田真由 ほか
- 配給:ハピネットファントム・スタジオ
- 公開:2024年1月
- 上映時間:109分
- 製作国:日本
- ジャンル:サスペンス、ミステリー
- 視聴方法:Netflix(自室モニター視聴)
キャスト
- 久我和幸:重岡大毅(『禁じられた遊び』(2022年))
- 中西貴子:中条あやみ(『雪の華』(2019年))
- 田所義雄:岡山天音(『愛がなんだ』(2019年))
- 元村由梨江:西野七瀬(『あさひなぐ』(2017年))
- 笠原温子:堀田真由(『かぐや様は告らせたい』(2019年))
ネタバレあらすじ
※この先、物語の核心に触れる内容があります(クリックで表示)
実は、このオーディションは架空のもので、真の目的は数年前に起きた劇団関係者の不審死事件の再調査でした。
参加者の一人・久我和幸は、かつてその事件の被害者と関わりがあり、真相を明らかにするために劇団に近づいていたのです。
俳優たちは一人また一人と姿を消していきますが、それは主催側による演出でもあり、彼らのリアクションを試す目的でもありました。
だが、誰かがルールを破り、真実を暴こうと動き出していたのです。久我は演技と現実が交錯する中で、かつての事件の犯人がこの場に紛れ込んでいると確信します。
疑心暗鬼の末に明らかになる真犯人──それは意外な人物であり、劇団の秘密を守るために口を閉ざしていた人間でした。
クライマックスでは久我と犯人が激しく対峙し、事件の全貌が白日のもとに晒されます。
事件の真相を突き止めた久我は、静かに山荘を去っていきますが、その表情には複雑な思いが浮かんでいました。
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考察と感想
この作品はサスペンスとミステリーの枠にとどまらず、人間関係の機微や「演じること」の意味までも問いかけてくる。閉ざされた空間で繰り広げられる心理戦という構図は東野圭吾作品らしいが、映像化によってより視覚的な緊張感が強調されていたように思う。
特に印象的だったのは、演技と現実の境界が曖昧になる描写だ。誰がどこまで演技で、どこから本音なのか、観ている自分自身も騙されてしまう。真犯人が明かされる展開にしても、ただのどんでん返しではなく、物語全体に伏線が丁寧に仕込まれており、再鑑賞したくなる構成だった。
登場人物たちは皆、何かしらのトラウマや秘密を抱えていて、そのことが行動原理になっていた。だからこそ、彼らの言動には必然性があり、最後まで緊張感が途切れない。演技力を競うオーディションの中に、過去と向き合う場が重なっていく様は見応えがあった。
主演の重岡大毅は、最初はやや頼りない印象だったが、物語が進むにつれて芯の強さが見えてくる演技が秀逸だった。彼が演じた久我の感情の起伏がしっかり伝わってきて、観客として感情移入しやすかった。
また、劇中で消えていくキャラクターたちが単なる「駒」にされていない点も好感が持てた。彼らにもそれぞれの背景が用意されており、観る側としては自然と疑いの目を向けるが、最後にはその多層的な描き方に納得させられる。
全体として非常に完成度の高い作品だった。原作を知らずに観ても十分楽しめるし、知っていればより深く味わえる。映像化による緊張感、音響の演出、キャストの熱演、それぞれがしっかりと噛み合っていて、観終わったあとに「良いものを観た」と思わせてくれる一本だった。
◆評価
| 項目 | 点数 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー | 17 / 20 | 密室×大雪×疑心暗鬼という古典ミステリーの緊張感が強く、心理描写も丁寧。誰が嘘をついているのか分からなくなる構造が効いている。 |
| 演技 | 18 / 20 | 北川景子の抑えた感情演技と、大森南朋の不穏さが軸となり、全体の空気を支配。筒井道隆の静かな圧も物語に深みを与えていた。 |
| 映像・演出 | 17 / 20 | 雪山の閉塞感とロッジ内の寒々しい空気を生かした画作りが秀逸。細やかなカット割りで不安と緊張を途切れさせない。 |
| 感情の揺さぶり | 16 / 20 | 登場人物に対する疑いが次々に生まれ、観客の感情も揺さぶられるが、終盤の真相に向かう部分はやや平坦に感じるところも。 |
| オリジナリティ・テーマ性 | 17 / 20 | 原作の骨格を残しつつ、現代的な心理サスペンスとして再構成。復讐・罪・孤独といったテーマを静かに提示する。 |
| 合計 | 85 / 100 | 心理戦・密室劇として高水準。強めの緊張感が最後まで続く一方、好みが分かれる“静のサスペンス”に仕上がっている。 |
教訓・学び
疑う心と信じる心、その狭間で人は試される。


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