- 原題:The Last Voyage of the Demeter
- 監督:アンドレ・ウーヴレダル
- 脚本:ブラギ・F・シャット、ステファン・ルツォヴィッツキー、ザック・オルケウィッツ
- 原案:ブラギ・シャット・Jr
- 原作:ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』ほか
- 出演:コーリー・ホーキンズ、アシュリン・フランチオーシ 他
- 配給:ユニバーサル・ピクチャーズ、東宝東和
- 公開:2023年8月
- 上映時間:119分
- 製作国:アメリカ
- ジャンル:ホラー、ファンタジー、スリラー
- 視聴方法:Netflix(吹替/自室モニター)
キャスト
- クレメンス医師:コーリー・ホーキンズ(『ストレート・アウタ・コンプトン』)
- アナ:アシュリン・フランチオージ(『ナイチンゲール』)
- キャプテン・エリオット:リーアム・カニンガム(『ゲーム・オブ・スローンズ』)
- ウォイチェク:デヴィッド・ダストマルチャン(『ザ・スーサイド・スクワッド』)
- ドラキュラ:ハビエル・ボテット(『ママ』)
ネタバレあらすじ
舞台は1897年、トランシルヴァニアからロンドンへ向かう貨物船「デメテル号」。医師クレメンスは知的で冷静な人物として描かれ、船医として乗船します。積み込まれた木箱の中身は誰にも明かされていませんが、航海が進むにつれて家畜の死や不可解な現象が続発。クルーたちの間に不安と不信が広がり始めます。
ある夜、船内で衰弱しきった女性・アナを発見。彼女は吸血鬼に血を吸われ、木箱に閉じ込められていたことが明らかになります。アナはドラキュラの存在とその危険性を語りますが、すでに何人もの乗組員が失踪し、船は呪われた状況に陥っていきます。
考察と感想
本作『デメテル号最期の航海』は、ブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』の一章を膨らませたスピンオフ的作品でありながら、単体のホラー映画としても高い完成度を誇っている。特筆すべきは、舞台設定の秀逸さだ。閉ざされた空間での“逃げ場のなさ”が、観客に強烈な緊張感を与える。海上という孤立した環境は、逃走や救援の余地が一切ない分、恐怖の密度が増す。
また、吸血鬼ドラキュラの造形も印象的だった。これまでの作品で描かれることが多かった“魅惑的な紳士”像とは異なり、ここでは一切言葉を発さず、姿もほとんど見せない純然たる怪物として描かれている。その禍々しさは、まさに人智を超えた存在であり、人間の理解を拒絶する“古代的恐怖”そのものである。
演技陣も素晴らしく、とくにクレメンス役のコーリー・ホーキンズは、冷静で知的な医師という役柄を丁寧に演じきった。彼の理知的な語り口が、物語全体に説得力とリアリティを与えている。また、アシュリン・フランチオージ演じるアナの悲しみと覚悟も、作品に深みをもたらしている。
最後に、映画が投げかける問い──「本当の恐怖とは何か?」──が胸に残る。単に命を脅かす存在ではなく、誰にも信じてもらえない孤独や、逃げ場のない閉鎖空間における心理的圧迫こそが真の恐怖ではないか。この“密室型ホラー”の文脈で、ドラキュラはただの敵ではなく、“内なる闇”の象徴にも見えてくる。
教訓・学び
未知の脅威を侮らず、備えと覚悟を怠ってはならない。
◆評価
項目 | 点数 | コメント |
---|---|---|
ストーリー | 17 / 20 | 航海という閉鎖空間で次々と人が消えていく構成が秀逸。ドラキュラの恐怖を徐々に浮かび上がらせる展開に緊張感が持続し、終盤まで惹きつけられる。 |
演技 | 18 / 20 | コーリー・ホーキンズの冷静な知性と、アシュリン・フランチオージの悲哀を帯びた表情が見事。極限状況の恐怖をリアルに体現していた。 |
映像・演出 | 18 / 20 | 暗闇とランプの明かりだけで構成される映像美が圧巻。波の音と船の軋みを活かした音演出も、静寂の中の恐怖を際立たせている。 |
感情の揺さぶり | 17 / 20 | 絶望の中で人間らしさを失わずに抗うキャラクターたちの姿に胸を打たれる。特にアナの最期は静かな悲しみと余韻を残す。 |
オリジナリティ・テーマ性 | 16 / 20 | 古典の一章を拡張するという発想は新鮮。ドラキュラを“語らない怪物”として描く選択が、恐怖の原点回帰を感じさせる。 |
合計 | 86 / 100 | 古典ホラーを海上密室劇に再構築した秀作。怪物の姿よりも“見えない恐怖”を丁寧に描いたことで、静かな戦慄が長く残る。 |
ホラーの後は、心と体をリセットしよう
怖い映画を観た後は、何も考えず、寝るに限ります。
船のきしみや風の音がまだ耳に残るような夜でも、ぐっすり眠れるように──
首と頭をやさしく支える快眠まくらで、心を落ち着かせましょう。
💤 恐怖を見届けたら、安らぎの眠りで心をリセット。#yoribou.com
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