【映画】 『事故物件 歪んだ家』(2022年) 引っ越した先は過去の惨劇を抱えた家――逃れられぬ恐怖が一家を蝕む | ネタバレあらすじと感想

ホラー

静寂の郊外、一軒家が抱える「歪み」が、家族の心を少しずつ侵食していく。韓国サイコスリラーの持久戦的な恐怖を味わう一本。

◆映画『事故物件 歪んだ家』の作品情報

【原題】 Harriet
【監督・脚本】 カン・ドンホン
【脚本・原案】 キム・ジェファン
【出演】 ソ・ヨンヒ、キム・ミンジェ、キム・ボミン、チョ・スヒャン、パク・ヒョックォン 他
【配給】 「事故物件 歪んだ家」上映委員会
【公開】 2022年
【上映時間】 91分
【製作国】 韓国
【ジャンル】 ホラー、サイコスリラー
【視聴ツール】 Amazon Prime(吹替・自室モニター)

◆キャスト

  • ミョンヘ:ソ・ヨンヒ — 代表作『チェイサー』(2008年)
  • ヒョンミン:キム・ミンジェ — 代表作『アジアの天使』(2021年)
  • ヒウ:キム・ボミン — 『事故物件 歪んだ家』以外の代表作情報は限定的
  • 謎の女:チョ・スヒャン — 代表作情報は目立った公的資料少なめ
  • (役名不詳):パク・ヒョックォン — 端役として出演(資料上、代表作の特定は難航)


◆映画『事故物件 歪んだ家』(2022年)あらすじ

『事故物件 歪んだ家』は、韓国の人気ホラー作家チョン・ゴンウの小説を映画化したサイコスリラーです。物語は、心の病を抱える妻ミョンヘを気遣った元作家のヒョンミンが、彼女と二人の子どもを連れて人里離れた一軒家へ引っ越すところから始まります。都会の喧騒から離れ、静かな暮らしを求めて選んだ新居でしたが、そこで不穏な出来事が次々と起こり始めます。物音がする倉庫、鏡に映る見知らぬ影、そして家の中に漂う得体の知れない気配。最初は偶然や気のせいに思えた現象も、次第に家族を追い詰めていくようになります。特に妻のミョンヘは日に日に衰弱し、不安定な精神状態に拍車がかかっていきます。ヒョンミンは妻を支えながらも、この家に何かしら暗い過去があるのではないかと疑念を抱くようになります。家族に忍び寄る不吉な影と、次第に狂気へと傾く日常。観客は「この家は本当に呪われているのか?」という問いを抱きながら、物語に引き込まれていきます。

ネタバレあり(クリックで展開)

やがてヒョンミンは、この家で過去に起きた惨劇を知ることになります。6年前、最初に住んだ一家では父親と息子が不可解な死を遂げ、その後入居した別の一家も子どもと共に心中をしたというのです。庭の奥にある古い倉庫には鍵がかけられており、ミョンヘがその中へ足を踏み入れたことを境に彼女の様子は激変します。弱々しかったはずの彼女が、突然自信に満ちた言動を取り始め、食欲や外見への執着も増していくのです。その変貌は夫や子どもたちを困惑させ、家族の関係は急速に崩れていきます。ヒョンミンは妻の変化と家の呪いとの関連を疑い、真相を追及しますが、やがて自身も精神の均衡を失っていきます。不可解な現象と人間の心の闇が複雑に絡み合い、物語は観る者に「家族を蝕むのは超自然的な力なのか、それとも人間の心そのものなのか」という問いを突きつけます。結末は一筋縄ではいかず、観客の想像力をかき立てる余韻を残すのです。

◆考察と感想

本作は、韓国ホラーに特有の社会性と心理劇を併せ持った作品。閉鎖的で人目の届かない郊外の一軒家という舞台が、家族内の不安と歪みを増幅する「隔離空間」として機能している点が巧みです。ミョンヘの変貌は怪異解釈にも心理解釈にも開かれており、観客に不気味な曖昧さを与え続けます。

夫ヒョンミンの無力感は、父親役割への期待と限界の間で揺れる現代的な葛藤を体現。恐怖描写はジャンプスケアを抑え、鏡・物音・不可解な挙動など想像を煽る演出でじわじわ圧を高めます。恐怖の源を明示し過ぎない姿勢は『哭声』『コンジアム』系譜に連なり、解釈の余地を残すことで余韻を強化しています。

「家」が安定と抑圧の二面性を持つ象徴として機能し、外観の美しさと内部の崩壊のコントラストが“理想と現実のねじれ”を強調。終幕まで「呪いか、心の歪みか」の揺らぎを保つため、鑑賞後もしつこく思考を促す余韻が残ります。消費型で終わらない、考察が似合う心理ホラーです。

◆モテ男視点

『事故物件 歪んだ家』を観ると、恐怖と同時に「人を支える力」の大切さを思い知る。愛する人が弱っている時、ただ守るだけでは足りない。時に恐怖の渦に巻き込まれながらも冷静に相手を信じ、立ち向かう姿勢が本当の強さだ。女性は頼れる男に惹かれる。だからこそ、この映画は単なるホラーではなく、「男らしさとは何か」を突きつける。恐怖を糧に魅力を増す男になりたいと思わせる一本だ。

◆教訓・学び

恐怖に呑まれず冷静に支える姿勢こそが、女性に最も頼もしさと魅力を感じさせる。

◆評価

項目 点数 コメント
ストーリー 18 / 20 序盤から静かに不穏さを積み上げ、観客をじわじわと追い込む構成が秀逸。ただ、後半はやや説明不足で置いてけぼり感も残る。
演技 15 / 20 主演のソ・ヨンヒは精神の揺らぎを丁寧に体現し迫力十分。ただし脇役の掘り下げは浅く、家族全体の葛藤が薄まった印象も。
映像・演出 14 / 20 暗がりや鏡を用いた演出が恐怖を煽る一方で、目新しさは少なめ。ホラー慣れした観客には既視感も否めない。
感情の揺さぶり 13 / 20 家族の崩壊に胸が痛むが、感情移入できるのは妻と夫に限られる。子どもたちの描写がもっと深ければ、より切実さが増したはず。
テーマ性 17 / 20 「家」という空間が人間心理を歪ませるテーマは独自性がある。社会的背景と結びつければさらに深みが出たかもしれない。
合計 77 / 100 全体として緊張感あるホラーに仕上がっており、心理劇としても楽しめる。だが「結局どういう話だったのか」という余韻が強く、賛否が分かれるタイプの作品だ。

一言コメント:静かな不穏がじわじわ効く——解釈の余白が好きなら刺さる。

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momoko「上映時間が短いのであっという間にあの変な世界から逃れられた(-_-😉。」

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yoribou「こんなに怖くないけどね‥。」

コメント