【映画】『サブスタンス』(2024年) 美と若さを渇望する元スター、禁断の薬が生む“もう一人の自分”が狂気と破滅へ導く―― | ネタバレあらすじと感想

ホラー

映画『サブスタンス』レビュー(2024)

若さと美を渇望する人間の欲望が、肉体ホラーとして暴走する。

◆ 作品情報

  • 原題:The Substance
  • 監督・脚本・製作:コラリー・ファルジャ
  • 出演:デミ・ムーア、マーガレット・クアリー、デニス・クエイド 他
  • 配給:Mubi、Metropolitan Filmexport、ギャガ
  • 公開:2024年
  • 上映時間:142分
  • 製作国:フランス、イギリス、アメリカ
  • ジャンル:ホラー、スリラー、SF
  • 視聴ツール:U-NEXT、吹替、自室モニター

◆ キャスト

  • エリザベス・スパークル / モンストロ・エリサスー:デミ・ムーア 代表作『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990年)
  • スー:マーガレット・クアリー 代表作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)
  • ハーヴェイ:デニス・クエイド 代表作『オーロラの彼方へ』(2000年)
  • フレッド:エドワード・ハミルトン=クラーク 代表作『ザ・クラウン』(2016年~)
  • オリバー:ゴア・エイブラムス 代表作『Hacks』(2021年~)


◆ あらすじ

『サブスタンス』(2024年)は、ハリウッドの光と影、そして「若さと美」に取り憑かれた人間の欲望を描くSFホラースリラーです。かつては一世を風靡したスター女優エリザベス・スパークルは、50歳を迎えた誕生日に、長年出演していたエアロビクス番組を突如降板させられます。輝きを失った彼女の心は深く傷つき、自己価値を見失っていきます。そんな中、エリザベスの前に現れるのが「サブスタンス」と呼ばれる謎めいた薬。使用すれば、若さ、美貌、完璧な自分を取り戻せると囁かれるその禁断の薬に、彼女は心を揺さぶられます。業界から見捨てられ、孤独と絶望に沈むエリザベスにとって、それは最後の希望の光のように見えました。しかし、その一歩を踏み出した瞬間から、彼女の人生は想像を絶する狂気と恐怖へと転落していくのです。美と若さを追い求めることは果たして幸福をもたらすのか、それとも破滅を呼び寄せるのか――本作は観客に鋭い問いを突きつけます。

ここからネタバレありです

ネタバレあらすじを開く

エリザベスは「サブスタンス」を注射し、やがて自らの背中から若く美しい分身スーを生み出します。スーはエリザベスの記憶と能力を備えつつ、若さと魅力で瞬く間にスターの座を獲得。業界で重用され、名声と快楽に溺れていきます。一方、エリザベスはスーとの入れ替わりを繰り返すうちに、自らの老化と醜さを突きつけられ、次第に孤独と自己嫌悪に陥ります。二人は週ごとの交換を前提に存在しますが、やがて対立し、スーはエリザベスを見下し始めます。さらに安定液の過剰抽出により、エリザベスの肉体は衰弱。スーは業者に頼るも、エリザベスを犠牲にしなければならない状況に追い込まれます。やがてスーは暴走し、残された薬を注射して怪物「モンストロ・エリサスー」へと変貌。大晦日の番組に乱入し惨劇を引き起こします。やがて肉体は崩壊し、最後に浮かんだエリザベスの顔はウォーク・オブ・フェームの星に重なり、幻の喝采を浴びながら絶命します。美と若さを渇望した代償は、あまりにも凄惨な最期でした。

◆ 考察と感想

本作、『サブスタンス』を観て、最初に思ったのは「こんなにグロくて痛々しいのに、なぜか目をそらせない」ってことだったんだ。ホラーって普通はビクッとさせるか、ゾワッとくるか、あるいは「うわ、気持ち悪い!」で距離を取ることが多いんだけど、この映画は違った。エリザベスの姿に自分の不安とか焦りとかが投影されすぎて、どこか居心地悪いのに見続けてしまうんだよね。

物語の根っこにあるのは「老い」と「価値」。年齢を理由に見捨てられることの残酷さは、業界モノとして描かれているけど、実は日常に転がっている現実なんだ。職場でも恋愛でも、ちょっとした衰えや変化で人の評価は簡単に揺らぐ。エリザベスが薬に手を伸ばしたのは、決して非現実的な選択じゃない。むしろ「やる人いるだろ」ってリアルさがある。

スーが登場した時のインパクトは強烈だった。若い頃の自分がそのまま蘇ったような存在に、「もし手に入れられるなら…」って観客自身も頭の片隅で考えちゃうんだよ。だけど、映画はすぐにその甘美な幻想をぶち壊してくる。週ごとに入れ替えなきゃならない設定や、安定液を抽出する残酷なルール。まるで「若さを保つには、必ず代償を払う」ってメッセージを形にしたようで、妙に説得力があった。

それにしても、スーが自由を満喫していく姿は、観ていて羨ましい半面、恐ろしくもあったな。夜の街を駆け抜け、称賛を浴び、ハーヴェイに抜擢される。人が欲する承認欲求や快楽を体現していて、眩しいのに危うい。エリザベスとの対比が鮮やかすぎて、「じゃあ自分はどっち側なのか?」ってつい考えさせられるんだ。正直、俺はエリザベスの側に近い。自分を卑下したり、過食したり、引きこもりたくなる気持ちは分かる。だから余計に、彼女の転落が人ごとに思えなかった。

クライマックスの「モンストロ・エリサスー」は、もうカオスそのものだったね。臓器や顔が貼り付いた異形の姿で大晦日の番組に乱入していくくだりは、ホラーの枠を突き抜けて風刺劇みたいな痛烈さがあった。観客が絶句して混乱するシーンは笑ってしまった部分もある。だって、これって要するに「みんなが求めていた若さと美の偶像が、グロテスクな化け物でした」って皮肉じゃないか。人々がそれでも拍手している幻覚を見て微笑むエリザベスの顔は、悲しいのにどこか滑稽で、胸に引っかかる。

この映画の怖さは、血や臓器のグロテスクさ以上に、「人が人をどう評価するか」にあるんだと思う。若さや見た目に頼らないと生き残れない、そんなシビアな現実を突きつけてくる。エリザベスが最後に血痕となって消される描写なんて、あまりに虚しいけど、それが社会の無情さの象徴に見えて仕方がなかった。

それでもね、不思議と全編を通して「ただの絶望」だけじゃなかったんだ。作品全体がどこかブラックユーモアに包まれていて、監督の皮肉めいた笑いが漂っていた。血まみれの怪物がスタジオを暴れ回るシーンなんて、正直めちゃくちゃ笑える要素もあるし、痛烈な風刺が効いている。だからこそ観終わった後にズシッとくるんだけど、妙にスッキリもするんだ。

振り返ってみると、『サブスタンス』は「美と若さ」に取り憑かれる人間の哀れさを描いているんだけど、同時に「それでも手を伸ばしたくなる気持ち」を観客に共有させるのが上手い映画だったな。俺自身も、もしそんな薬があったら…なんて少し考えてしまった。きっと誰もが心のどこかで同じことを思うだろう。だからこそ、この映画はただのホラーにとどまらず、俺たち自身の欲望を映す鏡になっていたんだ。

◆ モテ男目線の考察

『サブスタンス』を観て思ったのは、美しさや若さに縋る姿って、モテとは真逆だってことだ。魅力って結局「自分をどう受け入れてるか」で決まる。エリザベスはそれを見失ったから破滅した。モテ男は、年齢を重ねても堂々としてる。シワも白髪も「味」として楽しめる余裕こそが、人を惹きつけるんだ。

◆ 教訓・学び

若さや見た目に縋らず、年齢を重ねた自分を堂々と受け入れることがモテにつながる。

◆ あわせて観てほしい

あわせて観てほしい:映画『タイタン』(2018年)の紹介はこちら
人類存続のため兵士が改造されるも、その進化は制御不能な代償を伴う。
『サブスタンス』の“美と若さを求めた果ての崩壊”と通じ合うSFボディホラー。

あわせて観てほしい:映画『FREAKS 能力者たち』(2020年)の紹介はこちら
超能力を持つ少女が閉ざされた世界で育ち、やがて外の真実と対峙するSFスリラー。
『サブスタンス』同様、“特異な力を得た存在の孤独と恐怖”を描き出す。

◆ 評価

項目 点数 コメント
ストーリー 19 / 20 醜態を皆にさらすところの時間が妙に長かった。恐らく一番見せたいところだったと思う。
演技 19 / 20 デミ・ムーアの演技は格別だった。
映像・演出 19 / 20 現実離れした世界の連続を見事に本作品にうまくまとめられていた。
感情の揺さぶり 19 / 20 美への恐ろしいまでの執着心は一般人には分からないものだと思う。自己肯定感がなくなれば、誰しも生きていられないが、本作品は的を突いていた。
オリジナリティ・テーマ性 20 / 20 オリジナリティもテーマ性も十二分にあった。デミ・ムーア、マーガレット・クアリーとも最高だった。
合計 96 / 100 本作で、女性は二名とも全てを出して望んでいるのを切に感じた。

※ 点数セルは改行を防ぐため white-space: nowrap; を指定。モバイルでは横スクロール可。

オープンイヤー型イヤホン



Soundcore AeroClip系 オープンイヤー型イヤホン

家族の声やインターホンを拾いつつ視聴。あなたの過去記事とも相性◎。


Amazonで見る

コメント