映画『ぼくらのふしだら』(2024年)レビューと考察
◆作品情報
【監督・脚本】小林大介
【原作】大見武士
【出演】田野優花、かれしちゃん、植村颯太、木村葉月 他
【配給】フルモテルモ
【公開】2024年
【上映時間】74分
【製作国】日本
【ジャンル】エロティックホラー、青春ダークファンタジー
【視聴ツール】Amazon Prime、自室モニター
◆キャスト
- 結城美菜実(ゆうき みなみ):田野 優花
代表作:『13月の女の子』(映画/2020年) - ササヤキ:かれしちゃん
代表作:–(本作が映画初出演) - 鏑木信一(かぶらぎ しんいち):植村 颯太
代表作:ABEMA「今日、好きになりました。」(番組/年不明) - 木村葉月:木村 葉月
代表作:–(詳しい代表作の記載なし) - 石川翔鈴(いしかわ しょうりん):石川 翔鈴
代表作:–(詳しい代表作の記載なし)
◆あらすじ
高校3年生の結城美菜実は、自分に自信を持てず劣等感に苛まれる日々を送っている。母を亡くし、酒に溺れる父と2人暮らしをしている彼女にとって、唯一の希望は大学進学によって親元を離れることだった。しかし、そのためには圧倒的に時間が足りないと感じていた。そんなある日、美菜実の前に「ササヤキ」と名乗る人ならざる存在が現れる。ササヤキは彼女に「時間を止める能力」を与えるのだった。突如として手に入れた力によって、美菜実は勉強に集中できるようになり、成績も上昇。学校では注目を浴び、これまでの生活に彩りが生まれていく。けれどもその力には、ある大きな代償が伴っていた――。
ここからネタバレありです。
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ササヤキが与えた時間停止能力の代償は、美菜実の「性欲の暴走」だった。時間を止めるたびに彼女の太腿には見えない「カウンター」が刻まれ、その数値が上がるほど理性を失い、抑えきれない衝動に駆られるようになる。やがて彼女は幼なじみの鏑木信一を頼り、性欲のはけ口として彼を利用し始める。信一は美菜実を想っているが「最後まではできない」と拒み、二人の関係は不安定なバランスのまま続いていく。
一方で、美菜実は時間停止の力によって成績を上げ、学内で存在感を増していく。しかし、抑制不能な欲望と力への依存は彼女の心を蝕み、ササヤキに翻弄される日々へと変貌する。能力を返す選択肢も与えられていたが、美菜実は返却を拒み続け、自らの力に執着してしまうのだった。最終的に物語は「性欲」という荒唐無稽な要素をも必然へと結び付け、彼女の行く末には想像以上に切実で恐ろしい結末が待ち受ける。
◆考察と感想
映画『ぼくらのふしだら』を観終えて感じたのは、「思った以上にきっちりまとまっていた」ということだ。予告を観たときには、時間停止と性欲暴走というあまりにも突飛な設定に、どうやって収束させるのか疑問だった。半分はネタとして楽しむ気持ちで鑑賞したのだが、実際には意外なほどストーリーが整理され、最後まで付き合える作品になっていた。特に「性欲の高まり」という無茶な要素が、終盤で主人公の心の闇とリンクしていく展開には説得力があった。
主人公の結城美菜実は、典型的な劣等感を抱えた高校3年生だ。母を失い、父は酒に溺れ、成績も芳しくなく、未来への希望を持てずにいる。彼女が本当に欲しかったのは「時間」だった。そこに現れた謎の存在ササヤキが、時間を止める能力を与える。しかし、その代償は「性欲の暴走」だ。重要なのは、美菜実がただ翻弄されるだけではなく、力を返す選択肢がありながら自ら使い続けるという点だ。つまり彼女は被害者ではなく、欲望と劣等感に絡め取られて自ら堕ちていく存在なのだ。
幼なじみの鏑木信一は、美菜実に好意を寄せながらも肉体関係を最後まで受け入れない。その拒絶は不誠実ではなく、恐れと誠実さの入り混じった態度で、彼なりの誠意を感じさせる。美菜実にとって信一は欲望処理の道具であると同時に、人間的な最後のつながりでもあった。この関係が持つ危ういバランスが、物語に緊張感を与えていたのだと思う。
ササヤキの「最も望むものと、最も不要なものを同時に与える」という設定は、人間の欲望の本質を突いている。何かを強く欲すれば、必ず代償を伴う。ササヤキは悪魔のようでありながら、むしろ人間そのものを映し出す存在だ。異形の怪物ではなく人間的な外見にしたことで、日常に潜む不気味さが強調され、作品全体がリアリティを保ったのは正解だった。
ラストについては多く語れないが、突飛な設定をそれなりに収束させていた点は高く評価したい。完璧に巧妙ではないにせよ、観客を納得させる着地点を見せてくれた。観終えた後、「意外とちゃんと作られていた」という余韻を残してくれる作品だった。
総じて『ぼくらのふしだら』は、予告で抱いた「B級っぽいバカ映画」という印象を裏切る良作だった。もちろん好みは分かれるし、上映規模が小さいため広く知れ渡ることはないだろう。しかし、思春期特有の欲望や劣等感を寓話的に描き切った点で、隠れた収穫となる映画だと感じた。
モテ男視点での考察
この映画が示すのは、欲望に支配される人間の弱さだ。主人公は性欲と力に依存し、結局は自らを追い詰める。モテる男はその逆で、自分の衝動を制御し、相手の弱さに寄り添える存在だ。欲望に流される姿は一瞬の刺激にはなるが、長期的には魅力を失う。真にモテる男は、冷静さと誠実さで相手を支えられる余裕を持っている。結局、抑制こそが最大の色気だとこの映画は教えてくれる。
◆教訓
モテる男は、ユーモアで笑わせつつも命を懸けて守る覚悟を示す。
◆評価
項目 | 点数 | コメント |
---|---|---|
ストーリー | 18 / 20 | 短いなりにストーリーは練られていると感じた。 |
演技 | 17 / 20 | 悪役は悪役の顔をしていると言う学園ものを体現していた。 |
映像・演出 | 17 / 20 | 世間が狭すぎて、作品が安く見えたのが残念。 |
感情の揺さぶり | 17 / 20 | 思ったより上出来な作品だと感じた。 |
オリジナリティ・テーマ性 | 18 / 20 | 原作がしっかりしているのか、テーマが底辺にちゃんと流れている感じがした。 |
合計 | 87 / 100 | 原作はもっと描いている世界は広いんだと思う。それでも、ちゃんと観た感が有った。リメイクすれば、もっと素晴らしいものになるかも。 |
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