【映画】『秘かな企み』(2019年) 夫か、偽りか。目覚めた瞬間から始まる終わらない悪夢 | ネタバレあらすじと感想

Netflix

映画『秘かな企み』(2019年)レビュー/あらすじ・考察・評価

記憶喪失×偽りの夫。愛を装った執着が、静かな郊外を悪夢に変える。

作品情報

原題 Secret Obsession
監督・脚本 ピーター・サリヴァン
脚本 クレイグ・ウェンマン
出演 ブレンダ・ソング、マイク・ヴォーゲル、デニス・ヘイスバート ほか
配給 Netflix
公開 2019年
上映時間 97分
製作国 アメリカ
ジャンル スリラー、サイコサスペンス
視聴ツール Netflix(吹替)/自室モニター

キャスト

  • ジェニファー・アレン・ウィリアムズ:ブレンダ・ソング
    代表作『ステップ・アップ2: ザ・ストリート』(2008年)
  • ラッセル・ウィリアムズ/ライアン・ギャリティ:マイク・ヴォーゲル
    代表作『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008年)
  • フランク・ペイジ刑事:デニス・ヘイスバート
    代表作『24 -TWENTY FOUR-』(2001年~)
  • 看護師長:アシュレイ・スコット
    代表作『バード・オブ・プレイ』(2002年)
  • ジム・カーン:ポール・スローン
    代表作『アメリカン・ピエロ』(2008年)

映画『秘かな企み』(2019年)のあらすじ

雨の降る夜、車道を必死に走る一人の女性が不審者に追われ、やがて車にはねられてしまう。目を覚ました彼女は病院のベッドの上。自分の名前や過去を思い出せない。そこへ「ラッセル」と名乗る男性が現れ、「君は僕の妻ジェニファーだ」と告げる。幸せそうな家族写真を示されるも記憶は戻らず、不安を抱えたまま退院。ラッセルの自宅での静かな日常はどこか不自然で、彼の言動には微妙な違和感が漂う。やがてフランク刑事の捜査によって、ジェニファーの過去に潜む秘密とラッセルの素性への疑念が浮かび上がっていく。記憶が断片的に戻り始めたとき、想像以上に危険な真実が待ち受けていた。

ここからネタバレありです

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退院後、ラッセルと暮らし始めたジェニファーは、家中の写真が不自然に差し替えられていることに気づく。彼は彼女の行動を過剰に監視し、外部との接触を遮断。フランク刑事は現場付近で目撃されたトラックからラッセルを追い、正体が「ライアン・ギャリティ」という別人だと突き止める。かつて職場で問題を起こし解雇された男だった。ジェニファーも家族写真の偽造を発見し逃走を試みるが、ライアンに見つかり拘束される。ライアンは「君だけがふさわしい」と執着を募らせるが、ジェニファーはわずかな隙を突いて反撃。フランクの介入もあり、命懸けの攻防の末、歪んだ“愛”は崩れ去っていく。

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momoko「上映時間は短いのに面白かったわ。」

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yoribou「映画は先入観を持ったら駄目よ。最高な作品だね。」

考察と感想

本作、映画『秘かな企み』(2019年、原題:Secret Obsession)は、記憶喪失という古典的な題材を軸に据えたサイコスリラーだ。雨の夜の事故、献身的に見える夫、そして記憶が戻らない妻。観客はジェニファーと同じ視点で物語を追体験することになる。記憶喪失の主人公は物語装置として便利で、観客は彼女と共に「何が本当で何が嘘なのか」を探っていくことになる。この点で本作は観客を引き込む仕掛けを持っている。

まず注目すべきは、序盤の展開のスピード感だ。冒頭からヒロインが不審者に追われ、車に轢かれて病院に運ばれる。この短い間に観客は「なぜ彼女は狙われているのか」「追ってきた男は誰なのか」といった疑問を抱く。通常のサスペンスであれば、じわじわと不安を積み重ねるが、本作は開始直後から事件を提示して、緊張感を高めている。この強引な始まり方はB級スリラーの匂いを放ちつつも、観客の注意を掴む効果は十分だといえる。

一方で、物語が進むにつれてラッセル(実はライアン)の言動に矛盾が浮かび上がる。彼は「夫」として振る舞いながら、些細な行動に支配欲や苛立ちを隠せない。ジェニファーが記憶を取り戻さないことに焦りを見せ、また外部との接触を徹底的に遮断しようとする姿勢は、観客に「これは異常だ」と確信させる。本来であれば、ここで緊張感が高まり続けるはずだが、本作の弱点は、演出や脚本がステレオタイプにとどまっている点だ。監禁部屋、偽造された写真、監視の目といった要素は、他のスリラー映画でも繰り返し使われてきた。新鮮味という意味ではやや乏しく、既視感が強い。

それでも面白さが皆無かといえばそうではない。ジェニファーを演じるブレンダ・ソングは、ディズニー作品出身のイメージを脱ぎ捨て、被害者としての恐怖と抵抗心を表現している。彼女の演技がなければ、本作はさらに凡庸になっていただろう。特に監禁されながらも脱出の糸口を探るシーンでは、恐怖と希望が入り混じった表情が印象的だった。

もうひとつ評価できる点は、刑事フランクの存在だ。彼自身が過去の失敗から立ち直ろうとする背景を持ち、ジェニファーの事件に執念を燃やす。彼の調査パートはサスペンス的な進行役として機能しており、ジェニファーの行動と並行して物語を二重に動かしている。観客は「彼女がどうやって逃げるのか」と同時に「刑事はいつ真相にたどり着くのか」という二つの緊張を追うことになる。

ただし、本作がNetflixで公開された2019年当時、批評家からは厳しい評価を受けた。ストーリーの単調さや既成概念的な演出が批判されたのも頷ける。確かに、どんでん返しや心理的な深掘りは控えめで、観客が予想する展開から大きく外れることはない。しかし、その「読めてしまう展開」を逆に楽しむ余地もある。安心して突っ込みながら観られる類型的スリラーとして、本作は気軽に消費できるタイプの娯楽作品だと位置づけられる。

考察としては、本作が描こうとしたテーマは「愛の歪みと執着」だろう。ライアンは本物の夫ではないが、「彼女を自分のものにしたい」という強烈な執念に突き動かされる。彼の動機は極端で理解不能だが、現実世界でもストーカーやDVに通じる病的な愛の形としてリアリティを持つ。観客は彼の異常性を恐怖として感じながらも、人間が抱える孤独や執着心の裏側を垣間見ることになる。

総合的に言えば、『秘かな企み』は映画史に残る傑作ではないが、サイコスリラーの定番要素を詰め込んだ作品として一定の役割を果たしている。深みを求めると物足りないが、夜更けに軽くスリルを味わいたいときに向いている。ジェニファーの恐怖と勇気、刑事の執念、そしてライアンの狂気。この三者のバランスによって最後まで飽きずに観られるのは事実だ。Netflixが量産するオリジナル作品の中でも、手堅く「怖さ」と「安っぽさ」の両方を提供してくれる一本だと言える。

モテ男の考察

この映画をモテ視点で捉えると、教訓は明快だ。愛は相手を縛るものではなく、信頼で築かれるものだということだ。ライアンのように「自分だけを見てほしい」と執着すれば、愛は恐怖に変わる。モテる男はむしろ逆で、相手の自由を尊重し、安心感を与えることで自然に信頼を勝ち取る。ジェニファーが最後に見せた強さは、真に愛される女性が自分を守る姿でもある。モテる男はその強さを理解し、受け入れる包容力を持つべきなのだ。

教訓・学び

モテる男は愛を縛らず、相手の自由と安心を尊重することで信頼を勝ち取る。

評価

項目 点数 コメント
ストーリー 19 / 20 短い作品だが起伏が明快。緊迫感と必要要素がきちんと揃っている。
演技 19 / 20 キャストは総じて好演。とくにブレンダ・ソングの恐怖と抵抗の表現が効いている。
映像・演出 18 / 20 尺は短いが構成は巧み。Netflix配信向けのテンポで見やすい。
感情の揺さぶり 19 / 20 被害者視点の恐怖が最後まで持続。手に汗握る展開が続く。
オリジナリティ・テーマ性 19 / 20 題材はありがちだが、執着と支配というテーマは現代的で通底する。
合計 94 / 100 粗探しをしても決定的な欠点は少ない、手堅いサイコスリラー。
一言コメント:深掘りは浅いが、夜更けにサクッとヒヤリとしたい人には最適。

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