【映画】『劇場版 鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』(2025年) 無限城で再び相まみえる宿敵──命を懸けた最終決戦の幕が開く | ネタバレあらすじと感想

アクション

映画『劇場版 鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』作品情報

Kimetsu no Yaiba: Infinity Castle Saga – Part 1 (2025)

2025年公開
上映時間:155分
日本
アクション
ダークファンタジー
視聴:イオンシネマ

監督 外崎春雄
脚本 近藤光
原作 吾峠呼世晴
出演(声優) 花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞 ほか
配給 東宝、アニプレックス
公開 2025年
上映時間 155分
製作国 日本
ジャンル アクション、ダークファンタジー
視聴ツール イオンシネマ

◆キャスト

  • 竈門炭治郎:花江夏樹 代表作『四月は君の嘘』(2014年)
  • 竈門禰豆子:鬼頭明里 代表作『地縛少年花子くん』(2020年)
  • 我妻善逸:下野紘 代表作『進撃の巨人』(2013年)
  • 冨岡義勇:櫻井孝宏 代表作『FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN』(2005年)
  • 猗窩座:石田彰 代表作『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)


◆ネタバレあらすじ

【あらすじ(ネタバレなし)】
時は大正。鬼殺隊と人類を脅かす鬼との最終決戦の舞台は、異空間「無限城」へと移ります。鬼の始祖・鬼舞辻無惨の策略により、柱を含む隊士たちは一斉に無限城へ引きずり込まれます。迷宮のように変化し続ける城内で、仲間たちはそれぞれの宿敵と対峙し、命を懸けた戦いを繰り広げます。炭治郎は水柱・冨岡義勇と共に、かつて炎柱・煉獄杏寿郎を討ち取った上弦の参・猗窩座の前に立ちふさがります。一方、蟲柱・胡蝶しのぶは実姉を殺した上弦の弐・童磨と、我妻善逸はかつての兄弟子であり今は上弦の陸となった獪岳との因縁の戦いに挑みます。空間そのものが敵のように変貌する無限城で、鬼殺隊の絆と覚悟が試される戦いが始まります。

ここからネタバレありです

鬼殺隊は各所で死闘を繰り広げます。胡蝶しのぶは自らの命を賭して童磨に毒を打ち込み、後を託す形で戦場を離れます。善逸は雷の呼吸で獪岳との決着をつけ、己の信念を貫き通します。炭治郎と義勇は猗窩座の強大な力に苦戦しながらも、煉獄の思いを胸に全力で挑みます。戦闘の最中、義勇の痣が発現し戦況が変化、猗窩座はかつての人間だった頃の記憶に引きずられ、再生を拒みながらも渾身の技を放ちます。産屋敷耀哉亡き後、当主となった輝利哉は珠世と愈史郎の協力を得て、無限城の探索と無惨の位置特定を進めます。鬼殺隊全員が無惨討伐という共通の目標に向かい動き出し、戦いはさらに苛烈さを増していきます。無限城は刻一刻と変化し、隊士たちの命を容赦なく削り取っていきます。

◆考察と感想

本作、『劇場版 鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』は、シリーズ全体の中でも特に「宿命の対決」と「人間性の回復不可能性」という二つのテーマが濃く描かれた作品だと感じた。無限城という舞台は、空間が常に変化し続けるため、観客に常時緊張感を強いる。背景がまるで生き物のように蠢き、戦闘の一瞬ごとに視界が変わる。そのため、キャラクターの動きとカメラワークが一体となった没入感が凄まじい。3DCGを背景の基盤に据えながらも手描き作画と融合させるufotableの技術は、ここで一段と進化している。

本作での猗窩座との再会は、炭治郎や義勇にとって単なる敵討ちではなく、「己の信念を試す戦い」だ。煉獄の死を胸に刻む炭治郎は、猗窩座をただの鬼として切り捨てるのではなく、その過去と人間性を見ようとする姿勢を崩さない。この視点が、単なる勧善懲悪に留まらない物語の深みを作っている。一方の義勇は、冷静で感情を表に出さない性格ゆえに、戦闘の中で自身の限界と向き合う展開が印象的だった。痣の発現は彼の精神的な覚悟と連動しており、原作を知っていても映像化された瞬間の衝撃は大きい。

胡蝶しのぶと童磨の戦いも、本作の見どころの一つだ。しのぶが命を懸けた毒攻撃を仕込む場面は、淡々とした語り口の中に凄烈な意志を感じさせる。童磨は冷笑を絶やさないが、その無感情さがかえって不気味さを増していた。ufotableはこの戦闘で、毒が体内を巡る様子や氷のエフェクトを視覚的に演出し、観客に生理的な緊張を与えることに成功している。

善逸と獪岳の対決は、スピード感と因縁の重みが融合したバトルだ。雷の呼吸の音と光の演出は、観客を一瞬で戦場に引き込む。善逸の技は美しいだけでなく、彼の内面の成長を示す象徴でもある。かつて兄弟子であった獪岳との戦いを通して、自らの弱さと怒りを昇華し、雷の呼吸を極める姿は胸を打つ。

映像面では、特にカメラの回り込みや戦闘シーンの立体感が際立っている。無限城という立体的な空間で、床や壁、天井を縦横無尽に駆け回る演出は、通常の舞台設定では不可能な動きを実現している。この空間演出が、戦闘シーンにおける“予測不可能性”を強調し、観客を常に緊張させ続ける。

音楽もまた、本作の没入感を支える重要な要素だ。梶浦由記と椎名豪の楽曲は、戦闘の激しさと静寂の対比を際立たせる。特に猗窩座戦では、力強いパーカッションと弦楽器の旋律が炭治郎たちの呼吸と同期し、観客の心拍数を上げる効果を生んでいる。一方、しのぶの最期に向けた場面では、静謐でありながら底に怒りを秘めた旋律が流れ、彼女の決意を際立たせた。

本作は、三部作の第一章として、物語のクライマックスに向けた大きな布石を打つ役割を果たしている。敵味方問わず主要キャラクターが全力を尽くすため、一瞬も目を離せない展開が続く。ただし、第一章ゆえに決着がつかない戦いも多く、観客の中には「続きが早く観たい」という焦燥感を強く抱くことだろう。この構成は、次章への期待感を煽る意味でも効果的だ。

総じて、『無限城編 第一章 猗窩座再来』は、技術面と物語性の双方でシリーズの到達点を示す作品だ。キャラクターたちが背負ってきた過去、積み重ねてきた関係性が戦闘に深く影響し、それぞれの一撃に重みを与えている。アクション映画としても、ドラマとしても極めて高い完成度を持ち、観客に長く記憶される一本になると断言できる。第二章以降、この熱量がどのように収束し、無惨との最終決戦へつながっていくのか、期待は高まるばかりだ。

◆モテ男視点の考察

この作品、ただのバトルアニメと侮るなかれ。炭治郎や義勇の戦い方は、まさに「守るべき人のために全力を尽くす」姿勢の見本だ。モテる男は強さを見せるだけじゃなく、その強さの理由を相手に感じさせる。本作は、己の信念や仲間を思う心を行動で示すことこそが、人を惹きつける最大の武器だと教えてくれる。

◆教訓・学び

強さは技や力ではなく、守るべき人への揺るがぬ覚悟が一番モテる。

◆評価

項目 点数 コメント
ストーリー 18 / 20 「炭治郎の旅」といえる骨格で、鬼を成敗しつつ鬼が鬼になった理由にも踏み込む語り口。シリーズの核は今後もぶれないだろう。
演技 19 / 20 感情表現は大きめだが、熱量が迫力に直結している。
映像・演出 19 / 20 シリーズ通底の絵の美しさに加え、無限城の立体演出が圧巻。
感情の揺さぶり 19 / 20 王道の涙腺直撃展開。分かっていても胸を突かれる “こうでなくては” の納得感。
オリジナリティ・テーマ性 19 / 20 唯一無二の世界観と人物ドラマ。『鬼滅』だからこそ許容される美学がある。
合計 94 / 100 第一章でまだ終わらないからこその高揚。次章以降に向け期待はさらに高まる。

コメント