【映画】『母性』(2022年) 愛したかった。信じたかった。母と娘、すれ違う心の闇を描く衝撃の心理ドラマ | ネタバレあらすじと感想

サスペンス/スリラー

◆映画『母性』の作品情報

【監督】廣木隆一
【脚本】堀泉杏
【出演】戸田恵梨香、長野芽郁、大地真央、高畑淳子、三浦誠己 他
【配給】ワーナー・ブラザース映画
【公開】2022年
【上映時間】115分
【製作国】日本
【ジャンル】心理サスペンス、ヒューマンドラマ、ミステリー
【視聴ツール】Amazon Prime、自室モニター

◆キャスト

  • ルミ子(母):戸田恵梨香 代表作『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』(2010年)
  • 清佳(娘):永野芽郁 代表作『そして、バトンは渡された』(2021年)
  • 清佳の祖母:高畑淳子 代表作『あん』(2015年)
  • 教師:山下リオ 代表作『あのこは貴族』(2021年)
  • 清佳の父:三浦誠己 代表作『ヤクザと家族 The Family』(2021年)

◆ネタバレあらすじ

女子高生・清佳(きよか)の同級生が自宅のベランダから転落し、命を落とします。事件か事故か、あるいは自殺か。その渦中にいた清佳と、彼女の母・ルミ子は、警察からの聴取を受けることになります。ルミ子は「娘を愛してきた」と語り、清佳も「母に守られてきた」と主張しますが、ふたりの証言はどこか食い違っており、違和感を残します。
物語は、母と娘、それぞれの語りによって展開されます。華やかで美しいがどこか冷たい母・ルミ子と、そんな母に疑念を抱きながらも、愛を求め続ける娘・清佳。ふたりの視点は交互に重なり、ひとつの「真実」が徐々に浮かび上がっていきます。
この映画は、「母性」とは何かを深く問いかけます。無償の愛は本当に存在するのか。母としての使命感と、女としての感情は両立できるのか。観る者の心を静かに、そして鋭く揺さぶる心理サスペンスです。

ここからネタバレあり(後半)

事件の真相は、清佳の同級生が母親の目の前で転落死したというもの。しかしその直前、清佳が彼女をベランダに呼び出していたことが判明します。ルミ子は娘を守ろうとし、清佳は“事故だった”と証言するが、その証言は次第に変化していきます。
物語が進むにつれて、母・ルミ子の語りは「清佳を愛していた」という理想の姿を描きますが、娘・清佳の語りはその実態を静かに否定します。母は娘を「自分の理想通りの存在」に育てようとし、その過程で感情的な圧力や無関心すら与えていたことが露わになります。
クライマックスでは、ふたりの視点が真っ向からぶつかり合い、それぞれの“真実”が完全に食い違っていたことが明らかになります。愛ゆえか、エゴゆえか、すれ違いの果てに崩れていった母娘の関係。その結末は観る者に、愛とは何かを突きつけます。

◆考察と感想

この映画『母性』を観終えたとき、正直、言葉を失った。静かで淡々と進んでいく映像なのに、心のどこかをずっと掴まれていたような感覚だった。湊かなえ原作の“語りのズレ”を丁寧に映像化していて、特に母と娘、それぞれの語りがまったく違う真実を形づくっていく構成は圧巻だった。戸田恵梨香演じるルミ子は一見完璧な母親のように見えるが、どこか作り物めいた優しさが滲み出ていて、観ている側も信用していいのか揺さぶられる。そして永野芽郁の清佳は、そのルミ子の“母性”に対して疑念を抱きつつも、なお母に認められたいという痛ましいほどの感情がにじみ出ていた。
「母親って、勝手に娘を理想の型にはめようとするよな」と俺は思った。たとえ悪意がなかったとしても、それが結果的に娘の生きづらさを作ってしまっていることに、ルミ子は気づけなかった。清佳は清佳で、その愛のかたちが本物かどうかを確かめる手段を持っていなかった。その切なさが、物語全体に影のように漂っていて、観終えたあともしばらく抜けなかった。
俺が個人的にぐっときたのは、「母の語り」のあとの「娘の語り」で一気に世界が反転する構造だ。これは観客に対しても“どちらの視点を信じたか”を問うている。最初はルミ子が正しいと感じていたのに、清佳の目線を通すと、ルミ子の言葉が薄っぺらく、あるいは歪んだものに見えてくる。この感覚の変化は、まさに湊かなえ作品の真骨頂だし、それを映像でここまで明確にやってのけた演出もすごい。
それにしても、「母性」という言葉は、ときに凶器にもなるんだと痛感した。優しさや包容力といった理想像が、逆に娘を縛りつける。「母親なんだからこうすべき」と信じて疑わない社会や本人の思い込みが、無意識に子どもを追い詰めてしまう構造に胸が苦しくなった。ルミ子にとっての“愛”が本当に清佳のためだったのか、それとも自己満足だったのか。その問いは、映画が終わってもなお、答えが出ないままだ。

💡 もて男目線の考察

この映画が教えてくれるのは、“見せかけの愛”と“本物の理解”の違いだ。モテる男って、表面の優しさじゃなく、相手の感情の奥に気づけるやつなんだよな。母性の名の下で気づけなかった心の叫び――それを観て、俺は思った。「相手が欲しい愛は、こっちの理想とは違う」。それが、響く男の器なんだよ。

🎓 教訓・学び

自分の想いを押しつけるんじゃなく、相手の心の形に合わせて愛せる男が、ほんとうにモテる。

項目 点数 コメント
ストーリー 18 / 20 原作がしっかりしているせいか、ストーリーには深みがあった。
演技 19 / 20 戸田恵梨香、長野芽郁だもん、そりゃあ良いでしょ。
映像・演出 16 / 20 新しめの作品なだけに、映像はイイ。それが狙いなんだけど…
感情の揺さぶり 18 / 20 人の悪い性質の性格を目の当たりにした。血を皆深く考えていて、付いていけない。
オリジナリティ・テーマ性 17 / 20 こうした作品を観ると、結婚する人が減りそう。面倒なお家騒動。
合計 88 / 100 戸田恵梨香のやつれた姿が際立って良かった。長野芽郁は、大事に育てられた感じが出ていて、違和感なく本作品に浸かった。

コメント