◆作品情報
| 作品名 | ユナボマー |
|---|---|
| 原題 | Unabomber |
| 監督 | ヤヌス・メッツ |
| 脚本 | サム・チャルセン、ネルソン・グリーヴス |
| 出演 | ジェイコブ・トレンブレイ、ラッセル・クロウ、 シェイリーン・ウッドリー、アナベル・ウォーリス、 アレクサンダー・ルドウィグ、スティーブン・オッグ、 マーク・メンチャカ |
| 公開年 | 2026年 |
| Netflix配信開始 | 2026年9月25日 |
| 上映時間 | 97分 |
| 製作国 | アメリカ |
| ジャンル | 犯罪サスペンス/ヒューマンドラマ |
| 題材 | 実在の連続爆弾犯テッド・カジンスキーと ユナボマー事件に着想を得た物語 |
| 配信 | Netflix |
| 視聴環境 | Netflix/日本語吹替/IRIS OHYAMAモニター/ Edifier M90スピーカー |
◆主な登場人物・キャスト
若きテッド・カジンスキー/ジェイコブ・トレンブレイ
16歳でハーバード大学へ入学した数学の天才。周囲となじめず、自分の才能に自負を持ちながらも、孤独や不安を抱えています。マレー教授の研究に参加したことで、信頼と屈辱が入り交じる関係に踏み込んでいきます。ジェイコブ・トレンブレイの代表作は『ルーム』(2015年)、『ワンダー 君は太陽』(2017年)。
ヘンリー・マレー/ラッセル・クロウ
ハーバード大学の心理学者。テッドの才能や考えに関心を示し、心理実験へ誘います。知的で穏やかな態度と、研究のために相手を追い詰める冷たさが同居する人物です。ラッセル・クロウの代表作は『グラディエーター』(2000年)、『ビューティフル・マインド』(2001年)。
ジョアン・ミラー/シェイリーン・ウッドリー
ユナボマー事件を追うFBI捜査官。犯人の文章に注目し、従来の見立てに疑問を投げかけながら捜査を進めます。本作の捜査パートを担う人物ですが、彼女の行動をそのまま実際の捜査史と受け取らないようにしたいところです。シェイリーン・ウッドリーの代表作は『ファミリー・ツリー』(2011年)、『きっと、星のせいじゃない。』(2014年)。
クリスティアナ・モーガン/アナベル・ウォーリス
マレーの研究パートナー。テッドとマレーの関係を、研究や私生活の側から見せる人物です。アナベル・ウォーリスの代表作は『アナベル 死霊館の人形』(2014年)、『マリグナント 狂暴な悪夢』(2021年)。
◆あらすじ
前半:天才少年が心を開いた相手
1994年、広告会社の幹部トーマス・モッサーの自宅に小包が届きます。開封した箱が爆発し、彼は死亡。FBIは、長年にわたってアメリカ各地で爆弾事件を起こしている「ユナボマー」の捜査を続けていました。
物語は1958年へとさかのぼります。16歳のテッド・カジンスキーは、数学の才能を認められてハーバード大学へ入学。しかし、学問の能力と、人間関係を築く力は同じではありません。年上の学生たちの中で、彼は居場所を見つけられずにいました。
そんなテッドに関心を示したのが、心理学者のヘンリー・マレーです。自分の思想を聞いてもらい、知性を認められる。テッドにとってマレーは、周囲の学生とは違う、話の通じる大人に見えました。
テッドは、自分の信念や価値観について文章を書き、それをもとに討論する研究へ参加します。しかし、その場で待っていたのは、対等な議論ではありませんでした。主張を否定され、人格にまで踏み込んだ言葉を浴びせられる。身体にセンサーを付けられたまま、彼は強い心理的な圧力にさらされます。

一方、1990年代の捜査でジョアン・ミラーが注目したのは、犯人が書いた文章でした。爆弾の部品だけでは見えてこない知性や思想が、言葉には残っている。彼女は文章を手がかりに、犯人像を考え直していきます。
ここからネタバレあり
後半:少年の反撃と、文章が導く逮捕 (ネタバレあり)
実験が続く中で、テッドは、自分がマレーへ打ち明けた個人的な話まで、攻撃の材料として利用されていたことを知ります。理解してくれる相手だと思っていた教授に、内面を観察され、弱点を突かれていた。信頼していた関係は、次第に敵意を含むものへと変わっていきました。

しかし、テッドは一方的に追い詰められるだけではありません。今度はマレーの自尊心や、評価されたいという欲求を読み取り、自分も相手に働きかけ始めます。最後の対峙では、マレーを称賛する手紙の一部を自分が書いていたことを明かし、教授自身も操られていたのだと突きつけます。
その後、マレーのもとへ残された荷物は、後の郵便爆弾を連想させます。しかし、中に入っていたのは『白鯨』でした。印を付けられた一節とともに差し出される本は、テッドが言葉を使って教授へ反撃したことを印象づけます。
数十年後、ユナボマーは、自分の思想をまとめた長文を新聞に掲載するよう要求します。掲載をきっかけに、テッドの弟デヴィッドと妻リンダは、文章の考え方や言い回しが、テッドの書いた手紙に似ていることに気づきます。
身内を疑う苦しさを抱えながら、デヴィッドは情報を提供。ジョアンたちはテッドの文章と声明文を比較し、モンタナ州の小屋で暮らす彼へと近づいていきます。
FBIは小屋へ向かい、テッドを逮捕します。捜索によって犯行につながる証拠が見つかり、長年の捜査は決着を迎えました。大学時代のテッドがマレーのもとを去る場面と、成人したテッドが身柄を拘束される場面。その二つが重ねられ、一人の人物の過去と現在が結びつきます。
捜査を終えたジョアンは、一人になったオフィスで涙を流します。そして最後には、実在のカジンスキー本人の録音音声が使われます。物語の登場人物として見ていた男が、現実に人の命を奪った人物でもある。その距離を、最後にあらためて意識させられる結末です。
◆感想と考察
※この先の感想・考察にも結末のネタバレを含みます。
爆弾よりも、信頼を利用する大人の方が怖い
本作で一番引っかかるのは、マレーが最初から露骨な悪人として登場するわけではないことだ。自分の考えを聞き、才能を認めてくれる。周囲になじめない少年にとって、その態度はありがたいものだったはずだ。
だからこそ、打ち明けた話が後になって攻撃の材料になる場面が重い。知らない相手に罵倒されることもつらいが、信頼していた相手に、自分だけが見せた弱さを使われるのは、別の傷つき方だと思う。
マレーには研究という目的がある。しかし、目的があることと、相手へ何をしてもいいことは違う。彼が落ち着いているほど、テッドとの間にある力の差が目立つ。大声で脅す人物よりも、冷静にこちらを観察する人物の方が逃げ場をなくしていく。その怖さが、この映画の中心にある。
ジェイコブ・トレンブレイが見せる、誇りと未熟さ
テッドは、ただ気弱で傷つきやすい少年として描かれてはいない。自分の頭の良さを分かっているし、相手に負けたくない。人付き合いの不器用さと、知性への強い自負が同時に見える。
その二つをジェイコブ・トレンブレイがうまく演じている。言葉では相手に対抗できても、感情まで整理できるわけではない。認めてほしい気持ちを抱えながら、傷つけられると相手を見下そうとする。学問では突出していても、人との関係ではまだ若いというところが伝わってくる。
ラッセル・クロウの落ち着いた存在感も、この関係を支えている。教授の言葉に重みがあるからこそ、少年が引き寄せられることにも、後で反発することにも説得力が出る。事件の知識より、この二人の間に何が起きるのかを追いたくなる作品だ。
教授をやり込めても、それは傷からの回復ではない
終盤、テッドはマレーの虚栄心を利用していたことを明かす。自分を観察し、操っていた相手も、同じように操ることができた。教授と少年の力関係が、ここで一度ひっくり返る。
ただ、この反撃には、素直に胸がすく感じがしない。信頼を取り戻すのではなく、相手の弱点を見つけ、そこへ攻撃を返す関係になっているからだ。勝ったとしても、人と安心してつながれるようになったわけではない。
テッドが身につけたのは、自分を守る方法なのか、それとも相手を支配する方法なのか。大学を去る姿を見ていると、その区別が曖昧になったように感じる。傷つけられる側から抜け出したことと、傷が癒えたことは同じではない。
「なぜ爆弾魔になったのか」には、まだ距離がある
一方で、映画の大きな問いに十分な答えが出たかというと、そこには物足りなさが残る。心理実験で信頼を裏切られ、社会への怒りが強まる。その流れは理解できても、そこから他人を殺傷する行為を選ぶまでには、まだ大きな隔たりがある。
人を信用できなくなること、社会を拒絶すること、自分の思想を正しいと思い込むこと。どれも暴力と同じではない。テッドがどこで、何を理由に、その境界を越えたのか。そこをもう少し見たかった。
本作は大学時代と捜査の終盤を結びつけるため、その間にある長い人生が圧縮される。数学者としての仕事、社会から離れた暮らし、思想が暴力を伴うものへ変わっていく過程。その厚みが少ない分、心理実験へ説明の重さが集中してしまう。
二つの時間軸は分かりやすいが、捜査の熱は弱め
過去の少年と、現在追われている犯人を交互に見せる構成は、人物を知る入口として分かりやすい。ただ、それぞれの場面が積み重なり始めたところで時間が切り替わるため、緊張が続きにくいところもある。
特に、テッドとマレーの関係には濃い感情があるのに対し、FBI側は、手がかりを拾って逮捕へ向かう流れが中心になる。両方が同じ強さで引っ張るというより、大学パートの方へ関心が偏りやすい。
犯人の文章から人物へ近づく捜査は面白い題材だが、追い詰める過程をじっくり楽しむには駆け足にも感じる。捜査サスペンスとしての勢いを期待すると、やや地味な作品に映ると思う。
『白鯨』は、教授へ向けられた鏡にも見える
最後に残される『白鯨』は、単なる知的な贈り物には見えない。マレーが関心を寄せる作品を使い、その本人へ言葉を返す。テッドは、教授が大切にしているものまで反撃の材料にしている。
『白鯨』に描かれる執着を重ねて考えると、研究に固執する教授への批判として読むことができる。同時に、自分の正しさへ固執していくテッド自身にも、その問いは向いているように思えた。
荷物の中身が爆弾ではないことにも意味がある。この時点のテッドは、言葉によって相手へ働きかけている。だからこそ、後年その手段に爆弾が加わったことの重さが残る。言葉を持っていた人間が、なぜ暴力を必要だと考えるようになったのか。その疑問は、この場面の後にも消えない。
ジョアンの涙は、解決しても消えないものを残す
逮捕で終わる物語なら、事件解決の達成感を強く見せることもできる。しかし、本作はジョアンが一人で涙を流す姿を残す。
その涙を、犯人への同情だけに限定する必要はないと思う。長い捜査の重圧が解けた反応とも、救えなかった被害者を思う感情とも取れる。犯人を捕まえれば、失われた命や、負傷した人の生活が元に戻るわけではない。
一人の少年の過去を理解しようとすることと、その男が奪ったものを忘れないこと。その両方を抱えたまま終わる場面として見ると、単純な勝利のラストにはできなかった理由が伝わってくる。
◆実話と映画の違い
心理実験の経験と、犯行の原因は分けて考えたい
テッド・カジンスキーがハーバード在学中にマレーの心理学研究へ参加したことは、実際の出来事です。ただし、その経験が後の爆弾事件を直接引き起こしたと証明されているわけではありません。映画の構成は二つを強く結びつけますが、それをそのまま確定した因果関係として受け取ることはできません。
孤立した生活、家族との関係、産業社会への敵意、本人の選択も含めて考える必要があります。また、マレーの実験とCIAのMKウルトラ計画との関係も、ここでは断定しません。実験の問題点を考えることと、犯罪の原因を一つに決めることは別の話です。
マレーは、逮捕後に失脚したわけではない
ハーバード大学の紹介によれば、マレーは人格心理学に功績を残した人物で、1962年に名誉教授となり、1988年に亡くなっています。カジンスキーの逮捕は1996年4月3日でした。したがって、元被験者の逮捕によってマレー本人が処分を受けた、という経緯ではありません。
逮捕の手がかりになったのは、本人の文章
FBIの説明では、声明文が公表された後、弟デヴィッドが兄の文章との類似を認め、捜査へ協力しました。過去の文章と声明文の比較が、カジンスキーの特定に重要な役割を果たしています。映画の人物配置や捜査場面には脚色がありますが、文章が犯人へつながったという点は、実際の事件でも重要です。
カジンスキーは1978年から1995年にかけて爆弾事件を起こし、3人を死亡させ、20人以上を負傷させました。彼の過去へ目を向ける作品だからこそ、被害を受けた人がいたという事実も、一緒に受け止めたいところです。

教授に心を開いたのに、その話まで攻撃に使われるのが怖かった。でも、それだけで爆弾事件の理由が全部分かったとは言えないね。

俺もそこが引っかかった。少年の傷は伝わるけれど、人を傷つける側になるまでには、まだ大きな距離がある。二人の心理戦が良い分、その先も見たかったよ。
◆似ている作品・おすすめ映画

【映画】ジョーカー(2019年)
孤独や屈辱を抱えた男が、社会への怒りを募らせ、暴力へ踏み込んでいく心理ドラマ。『ユナボマー』と同じく、犯罪に至る人物の内面と、周囲との関係を掘り下げています。

【映画】7月22日(2018年)
実際のテロ事件を題材に、極端な思想を暴力へ変える犯人と、被害者たちのその後を描く犯罪ドラマ。『ユナボマー』で気になった、思想による犯行の正当化と、奪われた人生の重さを考えさせます。
◆評価
| 評価項目 | 点数 | ひとこと |
|---|---|---|
| ストーリー | 17 / 20 | 心理実験とFBI捜査を重ね、人物の過去と事件の全容へ引き込みます。暴力を選ぶまでの過程には、もう一歩踏み込んでほしさも残ります。 |
| 演技 | 18 / 20 | トレンブレイの繊細さとクロウの重みが、少年と教授の関係に説得力を与えています。 |
| 映像・演出 | 17 / 20 | 二つの時間軸を交差させ、若きテッドと後年の犯人像を結びつける演出が印象的です。静かな対話にも不穏さが漂います。 |
| 感情の揺さぶり | 17 / 20 | 信頼を裏切られる少年の痛みと、教授への反発が重く響きます。逮捕だけでは晴れない感情が、ラストにも残ります。 |
| オリジナリティー・テーマ性 | 17 / 20 | 心理実験を軸に、承認欲求、支配、孤独を掘り下げます。傷つけられた経験と、他人を傷つける責任を考えさせる作品です。 |
| 総合評価 | 86 / 100 | 少年と教授の心理戦を軸に、天才の孤独と暴力への隔たりを考えさせる、静かで見応えのある犯罪サスペンスです。 |
◆キャッチコピー
彼の心を傷つけた実験は、どこまでその後の人生を説明できるのか。
◆総括
『ユナボマー』は、連続爆弾事件の捜査をたどりながら、若きテッドとマレー教授の関係に重心を置いた映画です。自分を理解してくれると思った相手に、内面を攻撃の材料として使われる。その関係の変化には、爆発の場面とは違う怖さがあります。
ただ、少年が受けた傷を知ることと、後年の犯罪を理解することの間には距離が残ります。大学時代の実験を描くだけで、なぜ他人の命を奪う方法を選んだのかまで説明できるわけではありません。そこは映画の物足りなさでもあり、史実について簡単な答えを出せない理由でもあります。
派手な捜査劇を期待すると、やや淡々とした作品です。それでも、才能を認めてほしい少年と、その少年を研究対象として見る大人の関係には見応えがある。傷つけられた過去と、傷つけることを選んだ責任。その二つを切り離さずに考えたくなる犯罪ドラマです。
◆映画の感想を書く時間に、好きな音楽を
映画を観終わったあと、余韻を振り返りながらブログを書く。俺はその時間に、iPad Air 11インチのYouTube Musicで音楽を流し、Edifier M90スピーカーで聴いています。
パソコンでは記事を書いたり、作品情報を調べたりと、いろいろな作業を並行しています。そこで音楽はiPadに任せる。曲を変えたいときも、手元のiPadを触れば済むので、俺にはこの使い分けがしっくりきています。
11インチの画面は、曲やプレイリストを選ぶときにも見やすい。ブログを書く机に、音楽を楽しむためのもう一つの画面がある。俺のiPad Airは、そんな使い方でも活躍しています。
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