「英雄か、犯罪者か。」
【監督・脚本】オリバー・ストーン
【脚本】キーラン・フィッツジェラルド
【原作】ルーク・ハーディング『スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実』、アナトリー・クチェレナ『Time of the Octopus』
【出演】ジョセフ・ゴードン=レヴィット、シャイリーン・ウッドリーほか
【配給】オープン・ロード・フィルムズ、ショウゲート
【公開】2016年
【上映時間】134分
【製作国】フランス、ドイツ、アメリカ
【ジャンル】伝記/政治サスペンス/ヒューマンドラマ
【視聴環境】U-NEXT、吹替、自室モニター、nwmヘッドホン
◆キャスト
- エドワード・スノーデン:ジョセフ・ゴードン=レヴィット 代表作『インセプション』(2010年)
- リンゼイ・ミルズ:シャイリーン・ウッドリー 代表作『きっと、星のせいじゃない。』(2014年)
- ローラ・ポイトラス:メリッサ・レオ 代表作『ザ・ファイター』(2010年)
- グレン・グリーンウォルド:ザカリー・クイント 代表作『スター・トレック』(2009年)
- ハンク・フォレスター:ニコラス・ケイジ 代表作『ナショナル・トレジャー』(2004年)
◆あらすじ
前半:ネタバレなし
2013年、香港のホテル。元CIA職員でNSA(アメリカ国家安全保障局)の契約技術者だったエドワード・スノーデンは、
ドキュメンタリー作家ローラ・ポイトラスや新聞記者たちと極秘に接触します。
彼が持ち込んだのは、アメリカ政府がテロ対策の名目で行っていた大規模な情報収集に関する機密資料でした。
かつてスノーデンは、国のために働きたいという強い思いから陸軍に入隊します。
しかし訓練中の負傷によって除隊を余儀なくされ、その後、卓越したコンピューター技術を評価されてCIAに採用されます。
そこで彼は恋人リンゼイ・ミルズと生活を共にしながら、日本をはじめ各地の重要な任務に携わっていきます。

仕事を続けるうち、スノーデンは政府機関が世界中のメール、通話、インターネット通信などを収集し、
一般市民までも監視できる巨大なシステムを運用していることを知ります。
当初は国家を守るための仕事だと信じていましたが、次第に
「安全保障のためなら、個人のプライバシーをどこまで侵害してよいのか」という疑問を抱くようになります。

国家への忠誠と自らの良心。その狭間で苦悩するスノーデンは、
やがて自分の人生そのものを大きく変える決断を迫られます。
ここからネタバレありです。
ネタバレあらすじを読む
ハワイでNSA関連の仕事に就いたスノーデンは、政府による監視がテロ容疑者だけではなく、
世界中の一般市民にまで及んでいる現実を目の当たりにします。
携帯電話やパソコンを通じて本人が知らないまま私生活にアクセスできる仕組みを知り、
国家の行為に強い疑問を抱きます。
さらに仕事を通じて、通信情報の収集だけではなく、ドローン攻撃や海外での監視活動など、
自分が想像していた以上に巨大な情報網が存在することを知ります。
国家を守るために働いてきたスノーデンにとって、それは自らの信念を根本から揺さぶるものでした。
やがてスノーデンは、この事実を世間に知らせなければならないと決意します。
職場の混乱に乗じて監視プログラムに関する機密データをコピーし、
マイクロSDカードに保存します。
そして、それをルービックキューブの中に隠して施設から持ち出すことに成功します。
その後香港へ渡った彼は、ローラ・ポイトラスやジャーナリストのグレン・グリーンウォルドらに資料を提供します。
NSAが大量の通信記録を収集していた事実は新聞やインターネットを通じて世界中に報道され、
巨大な政治問題へと発展していきます。
スノーデン自身も実名と顔を公表し、自分が情報提供者であることを明らかにします。
その結果、アメリカ政府から訴追され、帰国できない立場となります。
香港を離れた彼は最終的にロシアへ渡り、そこで生活することになります。
物語の終盤では、俳優のジョセフ・ゴードン=レヴィットから実在するエドワード・スノーデン本人へと映像が切り替わります。
映画として観ていた物語が現実の事件へとつながり、彼が実際に大きな代償を払って告発した人物であることを改めて実感させます。
リンゼイも後にロシアへ移り、二人が再び共に生活していることが示されて物語は幕を閉じます。
◆考察と感想
『スノーデン』を観て一番強く感じたのは、「便利な社会」と「監視される社会」は、
実はほとんど同じ場所に存在しているのではないか、という怖さだった。
俺たちは毎日スマホを持ち歩き、検索をして、メールを送り、SNSに写真を載せ、位置情報まで使っている。
昔だったら考えられないほど便利になった。
でも、その便利さは、自分の情報をどこかに渡しているから成り立っている部分もある。
この映画を観ていると、その当たり前の事実が急に気持ち悪く感じてくる。
スノーデンが知ったのは、NSAをはじめとするアメリカの情報機関が、
テロ対策という名目のもとで膨大な通信情報を収集しているという現実だった。
しかも監視の対象は、明確な犯罪者やテロリストだけではない。
一般人のメールや通話、インターネット上の活動にもアクセスできる可能性がある。
俺が怖いと思ったのは、ここに登場する人間が、分かりやすい悪人ばかりではないところだ。
彼らの多くは「国を守るため」「テロを防ぐため」という理屈で仕事をしている。
実際、テロを防ぐための情報収集そのものを全部否定することもできないと思う。
もし事前に通信を監視することで大勢の命を救えるのであれば、
国家がある程度の情報収集を行う必要性は理解できる。
問題は、どこまでやっていいのかということだ。
一人の犯罪者を追跡するために通信記録を見るのと、
何億人という人間の情報を最初から集めておくのでは意味がまったく違う。
映画を観ながら俺は、「安全のため」という言葉ほど便利なものはないと思った。
安全のため。
国家のため。
国民を守るため。
そう言われてしまえば、多くのことが正当化できてしまう。
そして一度作られた監視システムは、本当に正しい目的にだけ使われ続けるのか。
今の担当者が善人だったとしても、10年後、20年後もそうだとは限らない。
俺はそこが一番恐ろしいと思った。
スノーデン自身も、最初から反政府的な人間だったわけではない。むしろ逆だ。
軍隊に入り、CIAで働き、国家に貢献したいという意識の強い人間として描かれている。
だからこそ、この物語は面白い。
最初から政府を信用していない人間が内部告発したのであれば、それほど意外ではない。
でも彼は、自分が信じていた組織の内部に入り、その仕組みを理解した結果として疑問を持つようになる。
これはかなり苦しいと思う。
自分が信じていたものを否定するというのは簡単ではない。
さらに彼の場合、ただ会社を辞めれば済む話ではない。
自分が知ってしまった事実を公表すれば、仕事どころか、恋人や家族との生活、自由、
場合によっては人生そのものまで失う可能性がある。
普通なら黙るだろう。
少なくとも俺なら、自分が同じ立場に立ったとき、本当にスノーデンと同じことができるか自信はない。
だからこそ、彼を単純に「英雄」と言い切ることにも少し抵抗がある一方で、
その覚悟には圧倒される。
国家機密を持ち出したという事実だけを見れば犯罪になる。
しかし、その機密の中身が国民に知らせるべき重大な問題だったとすれば、ではどうすればよかったのか。
正式な内部手続きを踏めば解決したのか。
上司に相談すれば止められたのか。
政治家に訴えれば変わったのか。
映画を観る限り、そんな簡単な話ではないように思える。
スノーデンの行動が正しかったかどうかよりも、この映画が突きつけてくるのは、
「もし法律そのものや国家の行動がおかしいと思ったとき、人間は何を基準に行動するのか」
という問題なのだと思う。
法律か。
組織への忠誠か。
自分の良心か。
俺は最終的には、自分の良心というものは絶対に捨ててはいけないと思う。
もちろん、自分が正しいと思えば何をしてもいいという話ではない。
ただ、組織の中にいるからという理由だけで思考を停止してしまうことの方が怖い。
もう一つ印象に残ったのが、リンゼイとの関係だ。
この映画は国家機密やNSAの監視という巨大なテーマを扱っているが、同時に一組の男女の話でもある。
スノーデンが秘密を抱えるほど、リンゼイとの距離は広がっていく。
彼女からすれば理由が分からない。
急に神経質になる。
写真を嫌がる。
仕事のことを話さない。
体調まで悪くなる。
それでもスノーデンは機密だから説明できない。
この辺りを見ていて、秘密というものは、それ自体が人間関係を壊していくのだと思った。
そして皮肉なのは、国民のプライバシーを侵害する監視システムに苦しんでいるスノーデン自身もまた、
その秘密によって恋人との普通の生活を失っていくことだ。
ラストで実際のエドワード・スノーデン本人が登場する演出も強烈だった。
それまで映画として観ていたものが、突然現実とつながる。
「ああ、この人は本当にいるんだ」と改めて感じさせられる。
『スノーデン』は派手なアクション映画ではない。
でも俺にとっては、下手なホラー映画より怖い作品だった。
なぜなら、怪物も幽霊も出てこないからだ。
出てくるのはパソコン、スマートフォン、カメラ、インターネット。
全部、俺たちが毎日使っているものだ。
だからこそ怖い。
映画を観終わったあと、「自分には隠すものなんてないから監視されても別にいい」と
簡単に言ってはいけない気がした。
隠し事があるかどうかと、プライバシーを持つ権利は別の話だからだ。
俺はこの映画を、スノーデンが英雄なのか犯罪者なのかを決める作品というより、
「便利さと引き換えに、俺たちはどこまで自分の自由を差し出しているのか」
を考えさせる映画として観た。
そして、その問いは2013年だけの話ではない。
スマホもSNSもクラウドもAIも当たり前になった今だからこそ、
むしろ以前より重くなっているように感じた。

momoko
「中国は特に個人の監視は、かなりやっているかも知れないけど、アメリカもそうなのね。対外的にも対内的にもって感じ。」

yoribou
「この作品がこんな内容だったなんて忘れてた。監視が厳しいのは韓国としか頭に入っていなかったから、かなりな違和感が有ったよ。」
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◆もて男目線で考察
もて男目線で見ると、スノーデンの最大の問題は、正義感が強すぎるあまり一人ですべてを背負ってしまうところです。
リンゼイからすれば、彼が何を抱えているのか分からないまま距離だけを取られるのですから辛いでしょう。
男は「心配させたくないから黙る」と考えがちですが、女性側からすれば、何も話してくれないことの方が不安だったりします。
全部を話せない状況でも、「君を信用していないわけではない」と伝えることはできます。
仕事でも恋愛でも、本当に強い男とは一人で抱え込む男ではなく、大切な相手との信頼を失わない男なのだと思います。
◆教訓
正義とは、組織や国家にただ従うことではなく、自分の良心に従って行動する覚悟を持つことです。
◆評価
| 項目 | 点数 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー | 18 / 20 | 国家機密を知ったスノーデンが、内部告発へ 踏み切るまでの葛藤を緊張感たっぷりに描いています。 |
| 演技 | 19 / 20 | ジョセフ・ゴードン=レヴィットが、スノー デン本人を思わせる落ち着いた演技を見せ ます。 |
| 映像・演出 | 19 / 20 | 監視システムや情報収集の怖さを、視覚的に も分かりやすく緊迫感のある演出で見せて います。 |
| 感情の揺さぶり | 19 / 20 | 仕事、恋人、自由を失う覚悟で告発する姿 には、自分ならどうするかを考えさせられ ます。 |
| テーマ性 | 19 / 20 | 国家の安全と個人のプライバシー、正義と は何かという重い問題を真正面から問いか けます。 |
| 合計 | 94 / 100 | 監視社会の恐ろしさと、一人の人間が信念 を貫く覚悟を描いた、今だからこそ観る 価値のある社会派サスペンスです。 |
◆総括
『スノーデン』は、一人の天才技術者による内部告発を描いた作品でありながら、
決して遠い世界の出来事には感じられない映画です。
スマートフォンやパソコンを使い、常にインターネットにつながって生活している現代では、
「誰かに見られているかもしれない」という問題は、私たちにも無関係ではありません。
国家の安全を守るための監視は必要なのか。
それとも、どのような理由があっても個人のプライバシーを侵害してはいけないのか。
本作は簡単な答えを出すのではなく、その境界線を観る側に考えさせます。
そして何より印象に残るのは、スノーデンがすべてを失う覚悟で、
自分が正しいと信じた行動を選んだことです。
彼を英雄と見るか犯罪者と見るかは、人によって意見が分かれるでしょう。
それでも、自分の立場や生活を守るために見て見ぬふりをするのではなく、
巨大な組織を相手に声を上げた覚悟は簡単に真似できるものではありません。
派手なアクションを中心とした作品ではありませんが、
普段使っているスマートフォンやパソコンを見る目が少し変わるほどの怖さがあります。
実際に起きた出来事を基にしているからこそ重みがあり、
観終わったあとにも「自由とは何なのか」「プライバシーとは誰のものなのか」という問いが残り続ける作品です。

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