【映画】『サユリ』(2024年)ネタバレあらすじ・考察・感想|命を濃くして恐怖を押し返す“家ホラー×怨霊バトル”
本記事は、映画『サユリ』(2024年)の作品情報、キャスト、ネタバレあらすじ、俺目線の考察&感想、もて男目線の学び、似ている作品、評価、総括までをまとめたレビューです。
ホラー/怨霊/エクソシズム/復讐劇の要素を軸に、「怖いのに背筋が伸びる」作品のポイントを押さえて解説します。
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◆【映画】『サユリ』(2024年)の作品情報
- 【監督・脚本】白石晃士
- 【脚本】安里麻里
- 【原作】押切蓮介
- 【出演】南出凌嘉、近藤華、きたろう、根岸季衣他
- 【配給】ショウゲート
- 【公開】2024年
- 【上映時間】108分
- 【製作国】日本
- 【ジャンル】ホラー、エクソシズム、復讐劇
- 【視聴ツール】Netflix、自室モニター、WI-1000XM2
◆キャスト
- 神木則雄:南出凌嘉 代表作『君の膵臓をたべたい』(2017年)
- 住田奈緒:近藤華 代表作『サーチライト-遊星散歩-』(2023年)
- 神木春枝:根岸季衣 代表作『ウホッホ探険隊』(1986年)
- 神木昭雄:梶原善 代表作『マスカレード・ホテル』(2019年)
- 九条小百合:久保遥 代表作『ミスミソウ』(2018年)
◆ネタバレあらすじ
中古の一軒家に引っ越してきた神木家は、念願のマイホームに胸を弾ませますが、家の中にはどこか冷えた気配が漂います。中学三年の長男・則雄は、弟の俊や姉の径子と新生活を始めるものの、夜になると電気が落ちたり、テレビが勝手についたりと、説明のつかない出来事が増えていきます。祖父母との同居も始まり、認知症気味の祖母・春枝は時折、吹き抜けの上を睨むようなしぐさを見せます。学校では霊感のある同級生・住田が則雄の疲れを見抜き、「その家には気を付けて」と忠告します。近所の住民も意味深に家の噂を口にしますが、家族はローンや生活の現実に背中を押され、簡単に引き返せません。やがて、鏡や暗がりに太った女や少女の影がちらつき、眠れない夜が続きます。胸が痛みますね。
ここからネタバレありです。
ネタバレあらすじ(開く)
引っ越し後の異変は加速し、家族は次々と悲劇に見舞われます。背後にいたのは、この家に憑りついた九条小百合の怨念でした。則雄と祖母・春枝だけが生き残り、痴呆のはずの春枝は突如覚醒します。春枝は「命を濃くする」ために、掃除、食事、睡眠、ランニング、太極拳、そして大声で笑うことを則雄に叩き込み、怨霊に対抗する生命力を鍛えます。庭を掘ると小百合の遺品と頭蓋骨が出土し、彼女が家族に殺されていた事実が浮かびます。春枝は九条家の家族を引きずり出し、怨霊を呼び出して真実と怒りをぶつけます。小百合は住田を取り込みますが、則雄は「好きだ」という感情を武器に手を伸ばし、住田を引き戻します。最後は、母の後悔と抱擁が小百合を少女の姿に戻し、神木家の亡き者たちも見届ける中で怨念は鎮まります。事件後、九条家側の死は心筋梗塞などとして処理され、春枝は罪に問われません。家は取り壊され、則雄と春枝はアパートへ移り、住田とも交流を続けます。春枝は再び痴呆に戻りつつも、合言葉のように「何かあったら婆ちゃんを呼べ」と残します。
◆🎬 『サユリ』(2024年)考察と感想

本作は、いわゆる“家ホラー”のフォーマットで始まる。中古住宅、不可解な現象、家族の不和、そして霊感を持つ同級生の警告。だが、俺が面白いと思ったのはそこではない。物語が中盤で一気に反転し、「怨霊に怯える話」から「怨霊に立ち向かう話」へ変貌する瞬間だ。ここで本作は凡百のJホラーとは決定的に違う位置に立つ。
まず前半は徹底的に“弱さ”を描く。父・昭雄はローンへの不安を抱え、母は生活に追われ、姉は思春期の揺らぎを抱え、祖父は老い、祖母は認知症。家庭という最小単位の共同体が、目に見えない不安でひび割れていく。そこに九条小百合の怨念が入り込む。だが、怨霊は万能ではない。彼女は“弱い心”にしか付け込めない存在として描かれる。ここが重要だ。霊そのものより、人間の内側の揺らぎこそが本当の恐怖なのだ。

そして祖母・春枝の覚醒。ここで映画はジャンルを飛び越える。太極拳、掃除、ランニング、笑い声。普通のホラーなら退魔師や呪術が出てくるところを、本作は“生活”を武器にする。命を濃くする、という言葉は一見荒唐無稽だが、俺には妙に腑に落ちた。人は疲れ、弱り、閉じこもるときに闇に飲み込まれる。逆に、よく食べ、よく寝て、身体を動かし、部屋を整え、笑うとき、心は前を向く。これはスピリチュアルではなく、生存戦略だ。
庭から掘り出される頭蓋骨は、物理的な“罪の証拠”だ。同時に、隠してきた過去は必ず表に出るというメタファーでもある。九条家の歪んだ家族関係、虐待、見て見ぬふり、加担。小百合は怪物になったのではない。怪物にされたのだ。だからこそ彼女の怒りは純粋で、恐ろしい。
終盤、則雄が「好きだ」と叫ぶ場面。俺はあそこに、この映画の核心を見る。武器は愛情だ、という陳腐な言い回しではない。好きだと言い切る覚悟だ。恐怖の中で、自分の感情をはっきり言葉にする。それは生きる意思表示だ。怨霊に対抗するのは、特別な能力ではなく、自分が何を守りたいのかを明確にすることだと示している。
春枝という存在も象徴的だ。痴呆と覚醒を行き来する彼女は、生と死、理性と本能の境界に立つ存在だ。若者ではなく“老い”が最強の戦士になる構図も痛快だ。老いは衰えではなく、濃縮された経験だと言わんばかりである。
俺が一番好きなのは、エンディングの静けさだ。家は壊され、事件は曖昧に処理される。だが則雄は前を向く。トラウマは消えない。しかし、命を濃くするという教えは残る。ホラーの皮を被った、再生の物語だと俺は思う。
総じて『サユリ』は、「怖い」より「立ち上がる」映画だ。恐怖を消すことはできない。だが、恐怖に対する姿勢は選べる。白石晃士作品の中でも異色でありながら、本質的には“人間賛歌”だと感じた。俺はこの開き直りの強さを高く評価する。
もて男目線での考察
この映画が教えるのは、弱っているときほど姿勢が出るということだ。逃げるか、整えるか。則雄は恐怖の中で「好きだ」と言い切った。感情をはっきり伝える男は強い。さらに、部屋を整え、身体を鍛え、生活を立て直す姿勢はそのまま魅力になる。結局、命を濃くする男は、恋も人生も引き寄せるのだ。
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◆教訓、学び
恐怖や不安に飲まれず、生活を整え、想いをはっきり言葉にできる男こそが“命が濃く”、結果として一番モテる。
◆似ているテイストの作品
『来る』(2018年)
家族の崩壊と“見えないもの”の侵食が同じ温度で迫る邦画ホラー。
後半に向けて退魔・対決モードへギアチェンジする構造が、『サユリ』の「怨霊vs生命力」展開と重なる。
『事故物件 怖い間取り』(2020年)
住まいそのものが呪いの器になる“家ホラー”の王道。
「引っ越した家が原因で日常が壊れていく」恐怖の立ち上がりが、『サユリ』の中古住宅パートと同系統のゾクッと感を持つ。
◆評価
| 項目 | 点数 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー | 16 / 20 | 中古の一軒家に引っ越しただけなのに、日常が少しずつ崩れていく“家ホラー”の導入が強い。 そこから一気に「怨霊に怯える話」→「怨霊に立ち向かう話」へ反転し、ホラーの枠を突き破るのが本作の快感だ。 ただ後半の展開が振り切れているぶん、前半の不穏さをじっくり味わう余裕は減り、好みが分かれる部分もある。 |
| 演技 | 17 / 20 | 南出凌嘉は“普通の少年”の弱さと、そこから踏ん張る強さの移行が自然で、観ていて応援したくなる芯がある。 そして根岸季衣の春枝が圧倒的だ。覚醒後の生命力と胆力の説得力が凄く、画面の空気を一気に支配する。 近藤華も霊感持ちの不安と優しさのバランスが良く、則雄との距離感が物語の救いになっている。 |
| 映像・演出 | 17 / 20 | 暗闇、鏡、テレビ、吹き抜け――“家”という閉鎖空間の嫌なポイントを的確に突いて、恐怖を積み上げる演出が上手い。 後半はアクションと怪物的なビジュアルが前に出て、ホラーの怖さだけでなく見せ物としての勢いが増す。 ただし振り切り演出ゆえ、怖さの質が前半と変わるので、「じっとりした恐怖」を求める人には別物に映るかもしれない。 |
| 感情の揺さぶり | 16 / 20 | いちばん刺さるのは、怪異そのものよりも、家族が壊れていく速度だ。逃げたいのに逃げられない現実が残酷で、胃が重くなる。 それでも春枝の覚醒以降、「恐怖に勝つ方法は生きることだ」という方向に感情を引っ張り上げてくれるのが良い。 ただショック展開が続くパートは息つく間が少なく、喪失の余韻を噛みしめる前に次へ進む印象もある。 |
| テーマ性 | 17 / 20 | テーマは「呪い」ではなく、弱った心に入り込む“負の連鎖”だと思う。ローン、疲労、孤立、不安――そこに怨念が食い込む構造がリアルだ。 そして「命を濃くする」という言葉が、本作を単なるホラーから“生き方の物語”へ押し上げている。 掃除、食事、睡眠、運動、笑い、言葉。結局、日常を立て直すことが最強の結界だと突きつけるのが面白い。 |
| 合計 | 83 / 100 | 家ホラーとしての不穏さから、祖母・春枝の覚醒で一気に“怨霊バトル”へ変貌する異色作だ。 怖さを煽るだけで終わらず、「命を濃くする=生活を整え、生きる力を上げる」という逆転の思想が気持ちいい。 後半の振り切りは好みが分かれるが、俺はこの開き直りが好きで、観終わったあとに妙に背筋が伸びた。 恐怖の中でも、笑って、動いて、守りたいものを言葉にできる奴が最後に勝つ――それを体感させる一本だ。 |
◆総括
『サユリ』は、いわゆる“家ホラー”の型から始まりながら、最終的には「恐怖にどう向き合うか」という生き方の物語へと着地する異色作だ。
前半は、怨霊に侵食されていく家庭の崩壊をじわじわと描く。
ローン、不安、孤立、疲労――人間の“弱った部分”に怪異が入り込む構造は、単なるオカルトではなく心理的リアリズムを帯びている。
しかし本作の真価は後半にある。
祖母・春枝の覚醒によって物語は反転する。
恐怖から逃げるのではなく、
- 家を掃除する
- 光を入れる
- 体を動かす
- よく食べ、よく寝る
- 大声で笑う
という“生活そのもの”を武器に、怨念へ立ち向かう。
これは退魔ではない。生きる力で押し返すという宣言だ。
そしてクライマックスで則雄が「好きだ」と叫ぶ場面。
あれは単なる恋愛感情ではない。
恐怖の中で、自分の守りたいものをはっきり言葉にする覚悟の表明だ。
つまり本作の核心はこうだ。
弱った心は喰われる。だが、命を濃くすれば、闇は押し返せる。
ホラーでありながら、観終わったあとに背筋が伸びる。
恐怖の描写は強烈だが、最終的に残るのは絶望ではなく“姿勢”だ。
『サユリ』は、恐怖を消す物語ではなく、恐怖に負けない人間を描いた物語である。


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