◆ドラマ『顔』(2024年)の作品情報
- 【ジャンル】テレビドラマ
- 【原作】松本清張
- 【脚本】浅野妙子
- 【演出】藤田明二
- 【出演】後藤久美子、武井咲、緒形直人、平泉成、陣内孝則 他
- 【製作】テレビ朝日、東映
- 【放送】2024年
- 【上映時間】125分
- 【製作国】日本
- 【ジャンル詳細】社会派サスペンス、心理サスペンス
- 【視聴ツール】Netflix/自室モニター/WI-1000XM2
◆キャスト
- 井野聖良:武井咲 代表作『るろうに剣心』(2012年)
- 石岡弓子:後藤久美子 代表作『男はつらいよ 寅次郎の青春』(1992年)
- 進藤薫:上川隆也 代表作『遺留捜査』(2011年)
- 岩城昌義:緒形直人 代表作『優駿 ORACIÓN』(1988年)
- 森尾亘:前田拳太郎 代表作『仮面ライダーリバイス』(2021年)
◆ネタバレあらすじ
【ネタバレなし|概略(前半)】
覆面で活動する人気アーティスト・井野聖良は、圧倒的な歌声と存在感で注目を集めながらも、決して素顔を明かそうとはしません。理由はただ一つ、過去に犯した罪が「顔が売れること」によって暴かれてしまう恐怖があるからです。
一方、人権派弁護士として活動する石岡弓子は、娘が巻き込まれたSNSトラブルに心を痛めながら、ある事件をきっかけに聖良と出会います。
互いに孤独と不安を抱えた二人は、次第に距離を縮めていきますが、弓子はかつて山中で起きた転落死事件の“唯一の目撃者”でもありました。
未解決事件を追う刑事、真実を暴こうとするネット社会、そして拡散され続ける情報。
現代ならではの「顔が知られる恐怖」が、聖良の心を追い詰めていきます。
成功と破滅が背中合わせに存在する世界で、二人はそれぞれ守りたいものと向き合うことになります。
ここからネタバレありです。
▼ネタバレあり(開く)
【ネタバレあり|詳細(後半)】
聖良は過去に交際相手であった俳優・森尾亘から暴力や支配を受け、別れ話の末に山へ誘い出します。
激しい口論の末、衝動的に刃物を手にし、森尾を刺したことで事件は起こりました。
致命傷を負った森尾は崖から転落し死亡しますが、その現場を弓子に目撃されていたのです。
聖良は事件を隠しながら覆面アーティストとして再出発し、成功を重ねます。
しかし露出が増えるほど不安は増し、弓子の存在が頭から離れなくなります。
弓子もまた、娘を守りたい思いと、弁護士として真実を隠せない葛藤に揺れ続けます。
やがて刑事の捜査が進み、テレビ収録という最も注目される場で、聖良は追い詰められます。
弓子はついに目撃者として証言する決断を下し、聖良は逮捕されます。
それでも弓子は「あなたを弁護します」と告げ、罪と向き合いながら生き直す道を示します。
顔を隠して生きてきた聖良が、最後に“本当の顔”を受け入れる姿が、静かな余韻を残して物語は幕を閉じます。
◆俺の考察&感想
このドラマ版『顔』(2024年)は、松本清張原作の中でも特に「時代と共犯関係にある物語」だと感じた。
昭和に書かれた原作が、令和のSNS社会にここまで自然に接続されること自体が、まず恐ろしい。
テーマは一貫して「顔=社会に晒される自己」だ。
成功とは祝福ではなく、監視の開始である、という冷酷な命題を、このドラマは徹底して突きつけてくる。
武井咲演じる井野聖良は、覆面アーティストとして脚光を浴びる存在だが、
彼女にとって“顔が売れる”ことは死刑宣告に近い。
普通、成功とは自由を意味する。
しかし本作では逆だ。
成功するほど行動は制限され、言葉は慎重になり、過去は掘り返される。
ここが非常に現代的だ。
SNS時代において、人は一度でも表舞台に立てば、
過去の言動や人間関係、傷や罪までもが無限に再生される。
聖良は犯罪者である前に、現代社会の犠牲者でもある。

一方で、本作が甘くないのは、聖良を「可哀想な被害者」だけに留めない点だ。
彼女は確かに被害を受けた存在だが、同時に加害者でもある。
その二面性を曖昧にせず、視聴者に突き返してくる構造が見事だ。
観ている側は、彼女に同情しながらも、
どこかで「それでも殺していい理由にはならない」と感じてしまう。
この矛盾した感情こそが、本作の核心だ。

後藤久美子演じる石岡弓子の存在も極めて重要だ。
彼女は“正義の側”に立つ弁護士でありながら、
同時に母親であり、一人の弱い人間でもある。
弓子は聖良の罪を知りながら、彼女を断罪するだけの存在ではない。
むしろ彼女の葛藤は、「正義とは何か」「守るべきものは何か」という問いを、
視聴者の足元に置いていく。
娘を守るためなら真実を曲げてもいいのか。
職業倫理と母性は、どちらが上位なのか。
弓子は終始、その狭間で引き裂かれている。
本作が優れているのは、犯人と目撃者を単なる対立構造にしなかった点だ。
二人は敵でありながら、どこかで深く共鳴している。
社会からの視線、ネットの暴力、過去から逃れられない恐怖。
それらを共有する存在として描かれるからこそ、
ラストで弓子が「弁護します」と告げる場面は、
単なる職業的判断ではなく、人間としての選択に見える。
また、暴露系配信者やSNS炎上の描写も、ただの時事ネタに終わっていない。
ここでは“悪意ある個人”というより、“止まらない構造”として描かれているのがポイントだ。
誰かが拡散し、誰かが消費し、誰かが裁いた気になる。
そこには責任の所在がない。
だからこそ恐ろしい。
清張が描いた「世間」という怪物が、
令和ではアルゴリズムという形を取っているだけなのだ。
結末についても評価が高い。
聖良は逃げ切らない。
だが、完全な破滅でもない。
罪は罪として引き受けた上で、それでも生き直す余地が示される。
この「赦しではなく、覚悟」で終わるラストがいい。
顔を隠して生きてきた聖良が、
最後に“見られること”を引き受ける。
その瞬間、彼女はようやく主体になる。
ここに救いがある。
総じて本作は、「顔を出す=自己実現」という幻想を、冷静に解体するドラマだ。
目立つこと、評価されること、バズること。
それらは祝福ではなく、時に刑罰になる。
そんな時代に生きる俺たちにとって、
この『顔』は他人事ではない。
観終わったあと、自分のSNSアイコンや過去の投稿を見返したくなる。
そんな後味の悪さこそが、このドラマ最大の成功だと思う。
◆モテ男の考察&感想
モテる男の視点で見ると、この作品の教訓は明確だ。「顔が売れる前に、中身を整えろ」だ。
注目される男ほど、過去・言動・人間関係を見られる。
勢いだけで生きてきた男は、必ずどこかで足元をすくわれる。
逆に言えば、静かに信頼を積み重ねてきた男は、いざ表舞台に立っても崩れない。
聖良が苦しんだのは、才能ではなく“生き方”だ。
モテるとは、顔の良さではない。見られた時に、逃げなくていい人生を歩いているかどうかだ。
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◆教訓、学び
モテる男とは、顔が売れても過去を隠さずに立っていられる、生き方まで整えた男だ。
◆似ているテイストの作品
-
『白ゆき姫殺人事件』(2014年)
SNSとメディアによる印象操作が個人を追い詰める社会派ミステリー。
「真実よりも拡散された顔が裁かれる」という構図が、
『顔』(2024年)のテーマと強く共鳴する。 -
『正体』(2024年)
正体を隠して生きる人間が、
社会の視線と善意に削られていく心理劇。
顔を知られた瞬間に人生が崩れる恐怖が、
本作と同質の緊張感を生んでいる。
◆評価
| 項目 | 点数 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー | 17 / 20 | 清張原作の骨格を保ったまま、SNS時代の恐怖へ自然にアップデート。 |
| 演技 | 17 / 20 | 武井咲と後藤久美子の心理戦が物語を成立させている。 |
| 映像・演出 | 18 / 20 | 「見られる装置」を恐怖に変える演出が秀逸。 |
| 感情の揺さぶり | 17 / 20 | 同情と拒絶が同時に残る、後味の悪さが強い。 |
| テーマ性 | 18 / 20 | 顔を出す社会の暴力を、真正面から描いた現代的清張。 |
| 合計 | 87 / 100 | 派手さより本質で勝負した社会派サスペンスの良作。 |
◆総括
『顔』(2024年)は、松本清張の原作が持つ「成功と露呈の恐怖」を、SNSと監視の時代に正確に移植した社会派サスペンスだ。
覆面で得た名声は守りではなく罠であり、注目は祝福ではなく裁きへと反転する。
犯人と目撃者を同時に“見られる側”として描いた点が、本作を単なるリメイクに終わらせていない。
逃げ切りでも爽快な断罪でもない結末は、罪と向き合う覚悟だけを残す。
だからこそ、この物語は今の時代に強く刺さる。
派手さよりも本質で勝負した、清張リメイクの到達点だ。
◆視聴環境の話:最近はこれで観ている
最近の動画配信は、ソニーのワイヤレスノイズキャンセリングイヤホン「WI-1000XM2」を使って観ている。
音質が良いのはもちろんだが、何より気に入っているのは耳から外したときに肩からぶら下げておける点。
長時間ドラマを観るときでもストレスが少なく、
ノイズキャンセリングのおかげで作品の空気感に集中できる。
深夜の社会派ドラマや心理サスペンスとの相性はかなりいい。


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