【映画】『空飛ぶタイヤ』(2018年) 巨大企業の闇に挑む町工場。奪われた真実と誇りを取り戻すため、男は命を賭けて走り続ける | ネタバレあらすじと感想

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◆映画『空飛ぶタイヤ』(2018年)の作品情報

  • 【監督】元木克英
  • 【脚本】林民夫
  • 【原作】池井戸潤「空飛ぶタイヤ」
  • 【出演】長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生、深田恭子 他
  • 【主題歌】サザンオールスターズ「戦う戦士たちへ愛を込めて」
  • 【配給】松竹
  • 【公開】2018年
  • 【上映時間】120分
  • 【製作国】日本
  • 【ジャンル】社会派ドラマ、ヒューマンドラマ
  • 【視聴ツール】Netflix/自室モニター/WI-1000XM2

◆キャスト

  • 赤松徳郎:長瀬智也 代表作『真夜中の弥次さん喜多さん』(2005年)
  • 沢田悠太:ディーン・フジオカ 代表作『空から降る一億の星』(2018年)
  • 井崎一亮:高橋一生 代表作『シン・ゴジラ』(2016年)
  • 宮代直吉:笹野高史 代表作『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年)
  • 榎本優子:深田恭子 代表作『下妻物語』(2004年)


◆ネタバレあらすじ

中小運送会社「赤松運送」のトレーラーが走行中に脱輪事故を起こし、歩行者が亡くなります。
整備不良を疑われた社長の赤松徳郎は、警察の執拗な捜査と世間のバッシング、
メインバンクや取引先からの取引停止の示唆で会社が崖っぷちに追い込まれていく中でも、
現場の整備士たちを信じ、原因を自ら確かめようとします。

事故車両の部品返還を求め、過去の整備記録や同型車の情報を洗い直し、
同業者の証言にも当たる赤松ですが、調べれば調べるほど
「運送会社の落ち度」で片づけられる流れに違和感が募ります。
資金繰りは厳しくなり、社員の家族にも影響が及び、
赤松自身も追い詰められていきます。

それでも赤松は、事故原因に関わる部品を独自に解析しようとし、
周囲の協力を得ながら“証拠”に近づこうとします。
製造元の大企業「ホープ自動車」に再調査を求めても、
企業側の対応は鈍く、情報も十分に開示されません。

一方で、ホープ自動車の社内では若手社員が違和感を抱き、
銀行や週刊誌の記者もそれぞれの立場で
“何かがおかしい”と感じ始めます。
やがて、事故の背後にある組織の論理と、
声を上げることの重さが浮かび上がっていきます。
真相は簡単には見えませんでしたが。

ここからネタバレありです。

ネタバレを開く(詳細あらすじ)

赤松は過去にも同型車で脱輪事故が起きていた事実を掘り起こし、
事故原因が車両側の欠陥にある可能性を突き止めます。
事故部品の解析に協力者を得て、
整備不良という筋書きに反証を積み上げていきますが、
捜査を進める高幡刑事はなかなか疑いを変えず、
赤松運送は家宅捜索と風評に疲弊します。

ホープ自動車では品質問題を握りつぶす秘密会議が動き、
データの改ざんや報告の握り潰しが進められます。
沢田は社内の不正に気づきながらも組織の圧力に苦しみ、
ついに「隠す側」に加担している現実と向き合います。

週刊誌記者・榎本優子の取材と、
銀行員・井崎一亮の融資調査が重なり、
リコール隠しの線が外へ漏れ始めます。
赤松は解析結果を武器に再調査を迫り、
沢田もまた決定的な情報を握って告発へ動きます。

関係者の良心が連鎖して会社ぐるみの不正が露見し、
ホープ自動車は会見で欠陥を認めてリコールに踏み切ります。
赤松運送は汚名を晴らし、社員たちも胸を張って仕事に戻ります。
失われた命は戻りませんが、
赤松は「声を上げることは無駄ではない」と確かめ、前へ進みます。
事件後、高幡も真相を受け止め、
捜査のあり方を省みます。
家族も少し日常を取り戻していきます。


◆俺の考察&感想

『空飛ぶタイヤ』は、単なる企業不祥事を描いた社会派映画ではない。これは「責任とは何か」「正しさを貫くとはどういうことか」を、立場の弱い者の視点から徹底的に突きつけてくる物語だ。主人公・赤松徳郎は、カリスマでも英雄でもない。ただ社員と家族を守りたい一介の中小企業経営者だ。その平凡さこそが、この作品の最大のリアリティになっている。

映画『空飛ぶタイヤ』赤松運送の社長・赤松徳郎を演じる長瀬智也
赤松運送の社長・赤松徳郎(長瀬智也)。大企業につぶされてなるかと意気込むが、現実は容赦なくのしかかる。

事故が起きた瞬間から、赤松運送は“悪者”として扱われる。警察、マスコミ、銀行、世論――すべてが「弱い方」に責任を押し付ける。ここで描かれるのは、日本社会に深く根付いた「空気」の怖さだ。事実よりも都合、真実よりも前例、正義よりも保身。ホープ自動車という巨大企業は、悪意よりも「組織の論理」によって罪を重ねていく。

印象的なのは、ホープ自動車側の人物たちが決して分かりやすい悪役ではない点だ。沢田をはじめ、多くは「会社のため」「家族のため」「立場を守るため」という理由で沈黙を選ぶ。その選択は理解できてしまうからこそ恐ろしい。正義を貫くことは、往々にして合理的ではない。この映画はそこから逃げない。

映画『空飛ぶタイヤ』沢田悠太を演じるディーン・フジオカ
ディーン・フジオカ演じる沢田。正義感あふれる男でありながら、組織の論理に押し潰されていく。

赤松の戦いは、終始孤独だ。証拠を集めても信じてもらえない。正しいことをしているはずなのに、会社は傾き、社員の生活を脅かしてしまう。そのたびに赤松は迷い、揺れ、それでも踏みとどまる。ここに描かれるのは「正義のヒーロー」ではなく、「覚悟を選び続ける人間」の姿だ。

また、銀行員・井崎や記者・榎本といった周辺人物が、それぞれの立場で少しずつ動き出す描写も重要だ。社会は一人では変えられない。しかし、誰か一人が声を上げなければ、誰も動かない。この連鎖の描き方が非常に丁寧で、現実的だ。

終盤、真実が明るみに出たからといって、すべてがハッピーエンドになるわけではない。失われた命は戻らないし、赤松の心に残る傷も消えない。それでも彼は前を向く。なぜなら、黙っていたら「なかったこと」にされていたからだ。勝利とは、完全な救済ではなく、「嘘を嘘のまま終わらせなかったこと」にある。

この映画が重いのは、観客自身にも問いを投げてくるからだ。もし自分が沢田の立場だったら? 井崎だったら? 赤松だったら? 正しさを選べるか。沈黙を選ばない覚悟があるか。観終わったあとに残るのは爽快感ではなく、静かな自己反省だ。

『空飛ぶタイヤ』は、社会の構造そのものを変える話ではない。しかし、「声を上げる人間が一人でもいる限り、完全には腐らない」という希望を、確かな重みで提示する。だからこそ、この作品は今観ても古びないし、むしろ年齢を重ねるほど刺さってくる映画だと思う。


◆もて男の考察&感想

この映画が教えてくれる“もて男”の本質は、強さではなく姿勢だ。赤松は口がうまいわけでも、要領がいいわけでもない。それでも人が離れないのは、逃げないからだ。都合が悪くなった瞬間に責任から目を背けない男は、信頼を積み上げる。恋愛も同じで、誠実さは短期的には損に見えても、長期的には必ず評価される。正しさを選び続ける覚悟こそ、大人の色気だと思う。

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◆教訓、学び

都合が悪くなった瞬間に逃げず、正しさと責任から目を背けない男は、結果的に一番信頼され、一番モテる。


◆似ているテイストの作品



  • 『それでもボクはやってない』(2007年)



    痴漢冤罪という「否定する側が不利になる制度」の恐怖を描いた社会派ドラマ。
    真実よりも前例や空気が優先される構造は、
    中小企業が一方的に責任を押し付けられる『空飛ぶタイヤ』と強く重なる。


  • 『評決のとき』(1996年)



    巨大な権力と司法制度に、一人の人間が挑む法廷ドラマ
    勝つためではなく「黙らないために戦う」という姿勢が、
    赤松徳郎の覚悟と同じ温度を持つ。


◆評価

項目 点数 コメント
ストーリー 18 / 20 巨大企業と中小企業という力関係の中で、
「誰が責任を取らされるのか」という現実を真正面から描く構成。
派手な展開に逃げず、調査と対話の積み重ねで物語を進める点に説得力がある。
社会の理不尽さが静かに、しかし確実に伝わってくる。
演技 19 / 20 長瀬智也は、
正義感と不安を同時に抱える経営者像を力みなく体現。
ディーン・フジオカ、高橋一生らも、
「組織に属する人間の迷い」を繊細に表現している。
群像劇としての完成度が非常に高い。
映像・演出 19 / 20 派手なカメラワークに頼らず、
会議室、工場、取調室といった閉じた空間で緊張感を積み上げる演出。
無機質な企業空間と、
赤松運送の人間味ある現場との対比が明確で、テーマを視覚的に補強している。
感情の揺さぶり 18 / 20 大きく泣かせる場面は少ないが、
理不尽さが積み重なる過程そのものが感情を削ってくる。
社員や家族の表情ひとつで胸が詰まり、
「自分だったらどうするか」を考えさせられる余韻が残る。
テーマ性 18 / 20 テーマは「正しさは、声を上げなければ存在しない」。
組織の論理、世論、保身が重なったとき、
誰が犠牲になるのかを明確に突きつける。
今の社会にも通じる普遍性を持ったテーマだ。
合計 92 / 100
派手さはないが、
理不尽な社会構造と真正面から向き合う誠実さが際立つ。
正しさを貫くことの重さと価値を、
大人の観客に深く突き刺す社会派ドラマの秀作。

◆総評

  • 『空飛ぶタイヤ』は、巨大な悪に立ち向かう痛快劇ではなく、
    理不尽な構造の中で「正しさを手放さなかった人間の物語」だ。
  • 本作が優れているのは、
    悪を単純化せず、正義を美化しすぎない点にある。
    企業は怪物ではなく、無数の「保身する普通の人間」の集合体として描かれ、
    主人公・赤松もまた、迷い、恐れ、追い詰められる等身大の存在だ。
    だからこそ、この物語は現実に近く、観る側に突き刺さる。
  • 声を上げることは、決してスマートではない。
    むしろ損をし、孤立し、何も得られない可能性の方が高い。
    それでも黙らなかったからこそ、
    嘘は嘘のまま終わらず、責任の所在が可視化された。
    この「結果より姿勢」を描いた点に、本作の芯がある。
  • 派手な演出や感情の爆発に頼らず、
    調査・対話・沈黙の積み重ねで緊張感を作り上げた演出も秀逸だ。
    観終わったあとに残るのは爽快感ではなく、
    「自分ならどうするか」という問いである。
  • 『空飛ぶタイヤ』は、
    社会派映画であると同時に、
    生き方そのものを問う作品だ。
    年齢を重ね、責任が増えた今だからこそ、
    静かに、しかし確実に響く一本だと思う。

◆映画の余韻を、静かに整える

シダーウッド精油と天然石アロマストーンのディフューザーセット

『空飛ぶタイヤ』のような社会派映画を観たあとは、
気持ちを切り替えるというより、一度ゆっくり落ち着かせる時間があるといい。

シダーウッドの落ち着いた香りと、
天然石ストーンの静かな存在感は、
思考を邪魔せず、余韻だけを残してくれる。


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