◆映画『マイ・インターン』(2015年)の作品情報
- 【監督・脚本・製作】ナンシー・マイヤーズ
- 【出演】ロバート・デ・ニーロ、アン・ハサウェイ 他
- 【配給】ワーナー・ブラザース
- 【公開】2015年
- 【上映時間】121分
- 【製作国】アメリカ
- 【ジャンル】コメディ、ヒューマンドラマ
- 【視聴ツール】U-NEXT、吹替、自室モニター、WI-1000XM2
◆キャスト
- ベン・ウィテカー:ロバート・デ・ニーロ 代表作『タクシードライバー』(1976年)
- ジュールズ・オースティン:アン・ハサウェイ 代表作『プラダを着た悪魔』(2006年)
- フィオナ:レネ・ルッソ 代表作『リーサル・ウェポン』(1987年)
- マット:アンダーズ・ホーム 代表作『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年)
- キャメロン:アンドリュー・ラネルズ 代表作『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(2019年)
◆ネタバレあらすじ
映画『マイ・インターン』は、70歳の新人インターンと若き女性CEOの交流を描いたヒューマンコメディです。主人公のベン・ウィテカーは、長年勤めた会社を定年退職し、妻にも先立たれ、穏やかだが退屈な日々を送っていました。そんなある日、彼はファッション通販会社「アバウト・ザ・フィット」が募集するシニアインターン制度を知り、新たな挑戦として応募します。
一方、会社を率いるジュールズ・オースティンは、創業からわずか数年で企業を急成長させた敏腕経営者です。仕事への情熱は誰にも負けませんが、家庭との両立や会社の将来に悩み、常に時間に追われています。年齢も価値観も異なるベンを最初は警戒するジュールズでしたが、ベンは決して出しゃばらず、必要なときにそっと支える姿勢を貫きます。
ベンの丁寧な仕事ぶりと人生経験は、職場に少しずつ変化をもたらしていきます。世代や立場を超えた関係の中で、仕事とは何か、人生をどう生きるのかが静かに問いかけられていく物語です。
ここからネタバレありです。
ネタバレあり:結末までの詳細(クリックで開く)
ジュールズは会社の急成長に伴い、投資家から「経営経験豊富な外部CEOを迎えるべきだ」と強く迫られていました。仕事に追われる中で家庭との距離も広がり、夫マットは専業主夫としての生活に不満を抱え、夫婦関係は次第にぎくしゃくしていきます。
そんな中、ベンは運転手の異変に気づいて代役を務めたり、散らかったデスクを黙って整えたりと、言葉より行動で信頼を積み重ねていきます。彼は社員たちの相談役となり、社内の空気を和らげる存在になります。さらに、ジュールズが誤って母親に送ってしまった悪口メールを消すため、仲間とともに母の家へ忍び込む騒動を通じて、社員との距離も縮まっていきます。
ベンは偶然、マットの浮気現場を目撃し、後にジュールズから相談を受けた際、真実を誠実に伝えます。ジュールズは家庭を守るためCEO交代を受け入れようとしますが、ベンから「あなた自身が築いた会社でしょう」と背中を押され、考え直します。マットも過ちを認め、夫婦は向き合う決意をします。
最終的にジュールズはCEOの座を手放さず、自分らしい働き方と人生のバランスを選びます。ラストではベンと共に太極拳をする姿が描かれ、世代を超えた友情と再出発を象徴して物語は幕を閉じます。
◆俺の考察&感想
この映画を一言で言うなら、「余白の美しさを描いた映画」だ。派手な事件も、命の危機もない。それなのに、観終わったあとに心がじんわり温かくなる。理由は明確で、この映画が“できる人間の振る舞い”を徹底して描いているからだ。
主人公のベンは70歳のシニアインターンだが、彼の価値は年齢ではなく姿勢にある。彼は決して自分の経験をひけらかさないし、「昔はこうだった」と若者を否定もしない。求められた時にだけ助言し、必要とあらば黙って裏方に回る。その姿は、仕事ができる人間の完成形に近い。多くの映画では「年長者=説教役」になりがちだが、ベンは違う。彼は“空気を読む”のではなく、“空気を整える”人間だ。
父と子ほど年の離れた上司と部下の関係が、出来事を通じて少しずつ近づいていく。
一方のジュールズは、仕事は完璧だが人生が不器用な人物として描かれる。創業者として会社を急成長させ、誰よりも努力している。しかし、何でも自分で抱え込み、他人に任せられない。その結果、家庭も仕事も綱渡りになる。彼女は決して弱いわけではない。むしろ強すぎるがゆえに、周囲が見えなくなっている。この「強さの副作用」が、この映画の大きなテーマだ。
忙しさで周囲が見えなくなっていたジュールズが、少しずつ心を軽くしていく過程。
印象的なのは、ベンがジュールズに対して一度も「こうすべきだ」と命令しない点だ。ただ事実を伝え、選択肢を提示し、最終判断は必ず本人に委ねる。これは簡単なようで非常に難しい。多くの人は善意のつもりで他人の人生に踏み込み、結果的に支配してしまう。ベンはそれをしない。だからこそ、彼の言葉は重く、刺さる。
また、この映画は“仕事ができる人”と“信頼される人”の違いをはっきり描いている。ジュールズは前者で、ベンは後者だ。仕事のスピードや能力だけでは、人はついてこない。安心感、安定感、礼儀、気配り。そういった数値化できない要素こそが、長く人を支える。この映画は、その価値を全編を通して肯定している。
夫マットの描写も興味深い。彼は「理解ある夫」でありながら、どこか被害者意識を持っている。妻の成功を支えているつもりで、自分の人生を犠牲にしているという感覚。その歪みが浮気につながるが、映画は彼を完全な悪者にはしない。ここがナンシー・マイヤーズ作品らしいところだ。誰もが未熟で、誰もが間違える。ただ、どう向き合うかが問われる。
終盤、ジュールズがCEOを外部に任せるかどうかで揺れる場面は、この映画の核心だ。家庭か、仕事か。多くの映画なら二者択一を迫るが、本作は違う。「本当にそれしか選択肢はないのか?」と問い直す。ベンの「これはあなたの会社だ」という一言は、彼女の背中を押すだけでなく、責任を返す言葉でもある。守ることと逃げることは違う。その境界線を、この映画は静かに示す。
ラストの太極拳のシーンは象徴的だ。力を抜き、流れに身を任せ、呼吸を整える。人生も仕事も同じだと言わんばかりの締め方で、非常に美しい。ベンは教える側から、共に楽しむ側へと役割を変え、ジュールズもようやく自分を緩めることができた。成長とは、足すことではなく、手放すことなのだと気づかされる。
この映画は派手さはないが、人生経験を重ねた人ほど刺さる。若さやスピードだけが正義ではない。誠実であること、礼を忘れないこと、人を尊重すること。それらがいかに強い武器になるかを、ベンという人物を通して丁寧に描いた良作だ。
◆もて男の考察&感想
この映画のベンは、間違いなく“もてる男”の完成形だ。理由はシンプルで、彼は奪わない。支配しない。焦らせない。女性が弱っている時に解決策を押し付けず、安心できる場所になる。清潔感、礼儀、余裕、聞く力。この4つが揃えば、年齢は関係ないと証明している。
女性は「すごい男」より「安心できる男」を選ぶ。ベンはそれを体現した存在だ。この映画は、年齢を言い訳にしない男の生き方を教えてくれる。
◆教訓、学び
モテる男とは、正解を語る男ではなく、相手が自分らしくいられる「余白」を差し出せる男だ。
◆似ているテイストの作品
『グリーンブック』(2018年)
立場も年齢も価値観も違う二人が、時間をかけて信頼を築いていくロードムービー。
説教ではなく「振る舞い」で相手を変えていく関係性は、
ベンとジュールズの距離の縮まり方と非常に近い温度を持つ。
『最強の二人』(2011年)
人生に行き詰まった者同士が出会い、対等な友情によって再生していくヒューマンドラマ。
年齢や社会的立場を超えた関係性が、
『マイ・インターン』の核心である「人生は何度でも始め直せる」という思想と重なる。
◆評価
| 項目 | 点数 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー | 19 / 20 | 大事件を起こさず、 日常の積み重ねだけで人の心を動かす構成が秀逸。 「年齢差」「立場の違い」というズレを対立ではなく、 補完関係として描いた点に誠実さがある。 静かだが芯の太い物語だ。 |
| 演技 | 20 / 20 | ロバート・デ・ニーロは、 抑制された所作と間の使い方だけで「信頼」を体現。 アン・ハサウェイも、 強さと脆さを同時に抱える女性像を自然体で演じている。 二人の化学反応が作品の完成度を一段引き上げている。 |
| 映像・演出 | 20 / 20 | 派手な演出に頼らず、 仕草・距離感・視線で感情を語るナンシー・マイヤーズ節。 オフィスや家庭の空気感も心地よく、 観る側を疲れさせない演出設計が徹底されている。 |
| 感情の揺さぶり | 20 / 20 | 泣かせに来ないのに、 ふとした一言や行動で胸を締めつけてくる。 ベンの存在が周囲を変えていく過程が、 押しつけがましくなく、じわじわと心に染みる。 観後の余韻が非常に長い。 |
| テーマ性 | 19 / 20 | テーマは「年齢ではなく、姿勢が人を評価する」。 若さやスピードが正義とされがちな社会に対し、 礼儀・誠実さ・余白の価値を静かに提示する。 今の時代だからこそ刺さるテーマだ。 |
| 合計 | 98 / 100 | 人生経験は、武器にも優しさにもなる。 年齢や立場を超えた信頼関係を、 これほど心地よく描いた作品は稀。 大人こそ観るべき、極上のヒューマンコメディ。 |
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◆総括|映画『マイ・インターン』が今も愛される理由
『マイ・インターン』は、世代間ギャップや働き方改革といった現代的なテーマを扱いながら、決して声高に主張しない映画だ。本作が描くのは、「どう生きるか」「どう人と関わるか」という、時代が変わっても色あせない問いである。
70歳の新人インターン・ベンは、知識や経験を武器に人を導くのではなく、礼儀・気配り・距離感といった“姿勢”で周囲の信頼を勝ち取っていく。一方、若きCEOジュールズは、能力と努力で突き進んできたがゆえに、任せること、弱さを見せることができずにいた。二人は対立することなく、不足を補い合う関係として描かれる点が本作の最大の魅力だ。
派手な展開や劇的なカタルシスはない。だが、観終わった後に背筋が少し伸び、明日からの振る舞いを見直したくなる。『マイ・インターン』は、年齢や立場に関係なく、「信頼される人間であること」の価値を静かに教えてくれる一本である。

今回の視聴環境メモ
ベンの声の落ち着きや、オフィスの空気感を静かに味わいたくて、
Anker Soundcore Liberty 5を使用。
ノイズキャンセリングを効かせると、
余計な音が消えてセリフの「間」がよく伝わる。

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