◆映画『望み』(2020年)の作品情報
- 【監督】堤幸彦
- 【脚本】奥寺佐渡子
- 【原作】雫井脩介
- 【出演】堤真一、石田ゆり子、岡田健史、竜雷太 他
- 【主題歌】森山直太朗「落日」
- 【配給】KADOKAWA
- 【公開】2020年
- 【上映時間】108分
- 【製作国】日本
- 【ジャンル】社会派サスペンス、ヒューマンドラマ
- 【視聴ツール】U-NEXT、自室モニター、WI-1000XM2
※本記事は映画『望み』(2020年)のネタバレなし/ネタバレありのあらすじ、考察・感想、教訓、似ている作品までをまとめています。
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◆キャスト
- 石川一登:堤真一 代表作『クライマーズ・ハイ』(2008年)
- 石川貴代美:石田ゆり子 代表作『マチネの終わりに』(2019年)
- 石川規士:岡田健史 代表作『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』(2020年)
- 石川雅:清原果耶 代表作『護られなかった者たちへ』(2021年)
- 内藤重彦:松田翔太 代表作『イニシエーション・ラブ』(2015年)
家族の中心にいる父母の芝居の熱量が作品の重さを支え、周囲の大人たちが「社会の視線」を具体化していきます。
ここが本作の“社会派サスペンス”としての説得力につながっています。
◆ネタバレあらすじ
【映画】『望み』(2020年)あらすじ(ネタバレなし)
一級建築士の石川一登は、妻の貴代美、息子の規士、娘の雅とともに、自ら設計した家で穏やかな生活を送っていました。しかし高校生の息子・規士が怪我をきっかけにサッカー部を辞めてから、家族の日常は少しずつ歪み始めます。外泊が増え、何を考えているのかわからない息子の変化に、両親は不安を募らせていきます。
そんなある日、規士と連絡が取れなくなった直後、彼と関係のあった同級生が殺害され遺体で発見されたというニュースが流れます。警察は規士の関与を疑い、石川家には事情聴取とマスコミの取材が押し寄せます。確かな事実が何一つ明らかにならない中、世間は息子を「犯人」と決めつけ、家族までもが加害者のような視線にさらされていきます。
父・一登は「息子は被害者ではないか」と無実を信じ、母・貴代美は「たとえ罪を犯していても、生きていてほしい」と願います。同じ息子を思うはずの両親の願いは、皮肉にも正反対の方向へと向かっていきます。息子は加害者なのか、それとも被害者なのか――真実が見えない時間の中で、家族それぞれの「望み」が静かに引き裂かれていく、重厚な社会派サスペンスです。
ここからネタバレありです。
ネタバレありを開く
物語が進むにつれ、規士が同級生たちの間で起きていたトラブルの中心にいたことが明らかになっていきます。被害者となった少年は、仲間内でのいじめや対立の末に追い詰められ、暴力は取り返しのつかない一線を越えていました。規士は主導的な加害者ではなく、むしろ事態を止めようとする立場に近かったものの、結果的に現場から逃げ出してしまいます。
逃走する少年たちの一部は逮捕され、事件の輪郭が少しずつ見えてきます。しかし、家族が待ち続けた「息子の帰宅」は叶いません。規士は事件後に命を落とし、遺体として発見されるのです。父が望んだ「息子の無実」と、母が望んだ「生きていてほしい」という願いは、どちらも完全な形では報われませんでした。
終盤、一登は規士のリハビリを担当していた宮崎から、息子が将来や仲間への思いを語っていたことを知らされます。家族が知らなかった規士の内面が明かされることで、彼が抱えていた弱さと優しさが浮かび上がります。事件が解決しても、石川家に残るのは喪失と後悔、そして「もし別の選択ができていたら」という消えない問いです。本作は、真相よりもその過程で壊れていく家族の心を描き切り、観る者に重い余韻を残します。
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◆俺の考察&感想
【映画】『望み』(2020年)
俺の考察&感想
この映画を観てまず思ったのは、「これは犯人探しの映画じゃない」ということだ。
物語の軸にあるのは事件の真相ではなく、真実が分からない時間に、人は何を信じ、何を望むのかという問いだ。だから『望み』はサスペンスの皮を被った、極めて残酷な家族映画だと言える。
息子・規士が行方不明になり、同級生が殺害される。
この時点で観客は自然と「息子は犯人か?被害者か?」という二択に立たされる。だがこの二択こそが、この映画の罠だ。

父・一登は息子の無実を信じ、母・貴代美は罪を犯していても生きていてほしいと願う。ここに優劣はない。どちらも“親として自然な感情”だ。だが、同時には成立しない。
このズレが家族を静かに壊していく。
一登の理屈は正しい。「加害者である証拠はない」「息子はそんな人間じゃない」。だが、理屈は息子を生き返らせない。一方で貴代美の感情は切実だ。「生きてさえいれば、それでいい」。だが、その願いは、息子が誰かを殺した可能性を受け入れることでもある。
この映画の怖さは、どちらの立場にも“逃げ”がない点だ。

正しさを選んでも地獄。生を選んでも地獄。
だからこそ『望み』というタイトルは残酷だ。希望ではなく、人が追い詰められた末にすがる、最後の感情だからだ。
世間とマスコミの描かれ方も容赦がない。
息子が犯人かどうか分からない段階で、家族は「加害者家族」として扱われる。正義の顔をした暴力が、遠慮なく日常を踏みにじる。ここに誇張はない。むしろ現実の方がもっと酷いだろう。
この映画は、「世間は真実を待たない」という事実を突きつけてくる。
終盤、息子・規士が亡くなっていたことが明らかになる。
ここでようやく、すべての“可能性”が閉じる。
無実であったかもしれない息子。
罪を背負って生き直す未来。
その両方が、一瞬で消える。
残された家族にあるのは、答えではない。
「あの時、もっと話していれば」
「あの時、気づけていれば」
そんな、取り返しのつかない“もしも”だけだ。
個人的に刺さったのは、規士が決して完璧な善人として描かれていない点だ。
弱く、流され、未熟だった。だが同時に、誰かを守ろうとする優しさもあった。つまり彼は「普通の少年」だった。その普通さこそが、この映画を現実に引き寄せる。
『望み』は観終わってもスッキリしない。
カタルシスも救いもない。
だが、それでいいと思う。
人生には、答えの出ない出来事がある。
この映画は、それを誠実に描いている。
そして最後に思う。
もし自分が親だったら、俺はどちらを望むだろうか。
無実か、生存か。
その問いを、観客自身に突き返してくる時点で、この映画は十分に残酷で、十分に誠実だ。
もて男の考察&感想
この映画が教えてくれるのは、「正しさより、想像力を持て」ということだ。
世間はすぐに白黒をつけたがる。でも人の人生はそんなに単純じゃない。
もてる男は、結論を急がない。相手が何を背負っているか、分からないままでも寄り添える余白を持っている。
『望み』は、判断を保留する強さ、沈黙を受け止める覚悟を教えてくれる。
それは恋愛でも、人間関係でも、確実に“深み”になる態度だ。
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◆教訓、学び
人をすぐに裁かず、分からない時間に寄り添える男ほど、信頼も魅力も静かに積み上げていく。
◆似ているテイストの作品
-
空白(2021年/日本)
リンク度:★★★★★
子どもが起こした(かもしれない)事件によって、
家族が社会から断罪されていく過程を描いた社会派ヒューマンドラマ。
真実が曖昧なまま、
「世間の正義」と「家族の感情」が乖離していく構図は『望み』と極めて近い。
事件よりも、その後に続く“生き地獄の時間”を描く点で強く共鳴する一本。 -
ひとよ(2019年/日本)
リンク度:★★★★☆
ある事件をきっかけに、
家族それぞれが「背負ってしまった時間」を生き続ける姿を描くヒューマンドラマ。
加害か被害かという単純な構図ではなく、
「あの夜が人生をどう歪めたか」に焦点を当てる視点が『望み』と重なる。
誰も救われきらないまま、それでも家族であろうとする姿が胸に残る。
◆評価
| 項目 | 点数 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー | 19 / 20 |
事件の真相で引っ張るのではなく、 「真実が分からない時間」が家族を削っていく構造が緻密だ。 息子は加害者か被害者か――という二択が、 観客の倫理と感情まで巻き込んでくるのが強い。 サスペンスの形を借りた“家族の心理劇”として完成度が高い。 |
| 演技 | 19 / 20 |
堤真一は「理屈で守ろうとする父」の強がりと脆さを、 目線と間合いで説得力に変えている。 石田ゆり子は“生きていてほしい”という母の祈りが、 同時に恐怖でもある矛盾を丁寧に背負う。 清原果耶の静かな熱と、岡田健史の“不在の存在感”が効いている。 |
| 映像・演出 | 19 / 20 |
自宅が「守られる場所」から「晒される場所」へ変質していく演出が秀逸だ。 マスコミ、近所、警察――外圧が画面の圧として伝わり、 家族の呼吸が浅くなる感じまで映像で分かる。 派手さより生活の温度で締め上げる、堤幸彦の手つきがハマっている。 |
| 感情の揺さぶり | 20 / 20 |
泣かせに行くより、胸の奥を静かに締め付けてくるタイプだ。 父の「無実を信じたい」と、母の「罪でもいいから生きていて」がぶつかるたび、 どちらも正しいのに同時に叶わない残酷さが刺さる。 観後に残るのは事件の謎ではなく、家族が壊れていく“音のない痛み”だ。 |
| テーマ性 | 19 / 20 |
テーマは「真実不在の時間に、人は誰をどこまで守れるのか」だ。 証拠より先に貼られるレッテル、正義の顔をした断罪、沈黙を許さない世間。 そして最大の残酷さは、親の“望み”が愛ゆえに分裂し、家族を裂く点にある。 タイトルが希望ではなく、追い詰められた人間の最後の感情として響く。 |
| 合計 | 96 / 100 |
サスペンスの形を借りて描かれるのは、 「真実が分からない時間」に家族が摩耗していく現実だ。 息子が加害者か被害者かより、 その問いが家族の関係をどう壊すかを見せ切る。 観たあと、自分が誰かを裁く速度を点検したくなる一本。 |
◆総括:本作のポイントを押さえて
本作の核心は、「息子は加害者か、被害者か」という問いそのものではない。
真実が分からない時間に、人は何を信じ、何を望むのか――そこに焦点を当てた物語だ。
父は無実を信じ、母は生存を願う。
同じ“愛”から生まれたはずの望みが、皮肉にも家族を引き裂いていく。
この構図が示すのは、正しさと感情は必ずしも同時に守れないという現実だ。
また本作は、事件よりも事件後の社会の視線を鋭く描く。
証拠が揃う前に貼られるレッテル、正義の名を借りた暴力、沈黙を許さない世間。
その中で壊れていくのは、犯人像ではなく、普通の家族の日常だ。
ラストで残るのはカタルシスでも救済でもない。
残るのは、「もしも」という取り返しのつかない問いと、
それでも生き続けなければならない現実だけだ。
『望み』は、答えを与える映画ではない。
むしろ観る者に、自分なら何を望むのかを突きつけて終わる。
その問いが胸に残り続ける限り、この映画は静かに、しかし確実に効き続ける。
◆最後に:余韻を言葉で整理したい人へ(Kindle Unlimited)
『望み』を観終わったあと、
すぐに次の映画へ気持ちを切り替えられない人も多いと思います。
それは弱さではなく、この作品が投げかけた問いが深いという証拠です。
そんな時は、同じように
「家族」「罪」「社会の視線」を描いた物語を、
文字でゆっくり辿るのも一つの選択です。



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