◆映画『THE GUILTY/ギルティ』の作品情報
◆キャスト
- ジョー・ベイラー:ジェイク・ギレンホール(代表作『ナイトクローラー』2014)
- エミリー・ライトン:ライリー・キーオ(代表作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』2015)
- ヘンリー・フィッシャー:ピーター・サースガード(代表作『ボーイズ・ドント・クライ』1999)
- ビル・ミラー(声):イーサン・ホーク(代表作『トレーニング デイ』2001)
- デニーズ・ウェイド:クリスティナ・ヴィダル(代表作『クイーン・オブ・ザ・サウス』2016)
◆ネタバレあらすじ
『THE GUILTY/ギルティ』(2021年)は、裁判を控えたLAPD警官ジョー・ベイラーが、
911コールセンターの夜勤に就く一夜を描く心理スリラーです。
外へ出られない“密室”の中で、彼は通話だけを武器に緊急事態へ介入していきます。
ある晩、「誘拐されている」と怯える女性エミリーからの通報が入り、
ジョーは限られた手掛かりをつなぎ合わせて救出の糸口を探します。
同僚オペレーターや警察無線、現場に向かう部隊との連携で包囲網を組み立てる一方、
情報不足の苛立ちと時間の焦りが彼を追い詰めます。
観客はジョーと同じく、断片的な言葉から状況を想像し続け、
正解のない選択の重さを突きつけられます。
緊張は最後まで途切れません。息も詰まります。
ここからネタバレありです。
ネタバレ(開く)
ジョーはエミリーの通話を頼りに、元夫ヘンリーによる誘拐だと決めつけ、
部隊を動かして車両を追わせます。
一方で彼は、エミリーの子どもたちの安否確認にも踏み込み、
現場到着した警官から衝撃的な状況を告げられます。
焦ったジョーは、命令系統を無視してまで介入を強めますが、
やがてヘンリーが暴力的な加害者ではなく、
精神的に不安定なエミリーを施設へ戻そうとしていた可能性が浮上します。
真相が反転した瞬間、ジョーは自分の“正義”が事態を悪化させたことを痛感し、
過去の発砲事件も正当化できないものだったと吐露します。
エミリーは罪悪感で自死を図ろうとしますが、
ジョーは電話越しに踏みとどまらせ、彼女は最終的に保護されます。
ラスト、ジョーは偽証で逃げる道を捨て、自ら責任を取る決意を固めます。
◆俺目線の考察&感想
この映画の怖さは、銃も刃物もほとんど映らないのに、
終始こちらの呼吸を浅くさせる点にある。
舞台は911コールセンター。
主人公ジョー・ベイラーは、現場に出られない苛立ちと、
裁判を控える焦燥を抱えたまま、
一本の電話に全神経を注ぐ。
観客は彼の視界=通話の情報に縛られ、
同時に彼の先入観にも縛られる。
ここがまず巧妙だ。

声だけで緊急事態と向き合うことを強いられる。
序盤、ジョーは「誘拐」という言葉に即座に反応し、
女性エミリーを“被害者”、元夫ヘンリーを“加害者”と決めつける。
警官としての経験と正義感が、その判断を後押しする。
しかしその正義は、事実確認よりも感情のスピードが勝った正義だ。
情報は断片的で、沈黙や雑音が多い。
それでもジョーは穴を都合よく埋めてしまう。
人は見たい物語を見る、という人間の癖が、
ここで露骨に露呈する。
中盤で明かされる真実――
被害者だと思われていた人物が、
実は取り返しのつかない過ちを犯していた可能性――は、
単なるどんでん返しではない。
重要なのは、その誤認を作ったのが
“状況の悪意”ではなく、
ジョー自身の判断である点だ。
彼は職務の範囲を越え、
命令系統を無視し、
善意で介入する。
だが善意は、
検証されなければ暴力に変わる。
この映画は、
その瞬間を静かに、
しかし容赦なく突きつける。

この夜ずっと向き合い続けている。
ジョーの過去――
正当防衛を装った発砲事件――もまた、
同じ構造を持つ。
彼は「守るために撃った」と信じたい。
しかし、真実はもっと曖昧で、
もっと汚い。
だからこそ彼は、
目の前の事件に“救済”を投影する。
自分が正しかった証明を、
他人の救出に求めてしまう。
これは警官に限らない。
俺たちも日常で、
過去の選択を肯定するために、
都合のいい判断を重ねていないか。
映画はそこまで射程に入れてくる。
音だけで進む演出も見事だ。
映像がない分、
想像力が勝手に補完し、
恐怖は増幅される。
赤ん坊の部屋、
貨物室、
橋の上。
何も見えないのに、
頭の中には鮮明な光景が浮かぶ。
これは“見せない”という演出の勝利であり、
同時に観客をジョーと同罪にする装置でもある。
俺たちも彼と同じ情報で、
同じ誤解をするからだ。
終盤、
エミリーが罪を自覚し、
ジョーが自分の罪を告白する場面は、
この映画の核心だ。
ここで初めて、
二人は“真実の重さ”を共有する。
救いはない。
あるのは責任だけだ。
ラストでジョーが選ぶのは、
逃げ切る未来ではなく、
裁かれる未来。
ヒーロー的カタルシスは一切ない。
だが、
この不器用な選択こそが、
唯一の再生だと映画は示す。
『THE GUILTY/ギルティ』は、
正義を疑う映画であり、
同時に「聞く」という行為の危うさを描いた映画だ。
声は真実を語るとは限らない。
聞き手が勝手に意味を与えるからだ。
俺は観終わって、
誰かの話を“分かったつもり”で遮る癖を思い出した。
最も危険なのは悪意ではなく、
善意に裏打ちされた思い込みなのだと、
この映画は静かに断言している。
◆もて男目線の考察
この映画が教える“もて”の本質は、決めつけない力だ。
ジョーは正義感が強いが、相手の話を最後まで聞く前に答えを出してしまう。
結果、事態を悪化させた。
もてる男は、早く結論を出さない。
相手の沈黙や言葉の揺れも含めて受け止める。
助けるとは、主導権を握ることじゃない。
相手が自分で立つ余白を残すことだ。
この映画は、その距離感を間違えた男の物語でもある。
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◆教訓、学び
もてる男は、正義感で相手を救おうと急がず、
最後まで話を聞き、決めつけずに寄り添える男だ。
◆似ているテイストの作品
-
search/サーチ(2018年/アメリカ)
リンク度:★★★★★
パソコン画面越しの情報だけで事件の真相に迫るサスペンス。
観客が得られる情報が制限され、
「見えている事実が真実とは限らない」という構造が『THE GUILTY』と完全に重なる。
親の思い込みと判断が、事態を左右していく点も共通項。 -
892 ~命をかけた叫び~(2022年/アメリカ)
リンク度:★★★★☆
警察との対話と交渉が中心となるワンシチュエーション寄りの実話サスペンス。
主人公の「正しさ」と警察側の「正義」がすれ違い、
会話と判断の積み重ねが悲劇へ向かう構造は『THE GUILTY』と非常に近い。
声と言葉が命運を分ける重苦しさが共通している。
◆評価
| 項目 | 点数 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー | 19 / 20 |
たった一本の通話から始まる事件を、 観客の思い込みごと裏返していく構成が秀逸。 誘拐サスペンスと思わせて、 実は「判断の過ち」と「贖罪」を描く物語へ転化する。 物語の反転がテーマと直結している点が非常に強い。 |
| 演技 | 19 / 20 |
ジェイク・ギレンホールの独壇場。 声色、呼吸、沈黙だけで感情の振れ幅を表現している。 正義感・焦燥・後悔が、 表情の微細な変化として積み重なっていく。 ワンシチュエーション映画の理想形。 |
| 映像・演出 | 19 / 20 |
画面はほぼ一室だが、 音とカット、照明だけで世界の広がりを感じさせる。 「見せない」ことで観客の想像力を暴走させ、 恐怖と緊張を増幅させる演出が一貫している。 ミニマル演出の完成度が極めて高い。 |
| 感情の揺さぶり | 19 / 20 |
派手な感動はないが、 自分の判断が誰かを追い詰めていたと気づく瞬間が重い。 主人公の告白と沈黙が、 観る側の胸にも静かに刺さる。 観後に感情が遅れて効いてくるタイプの作品。 |
| テーマ性 | 19 / 20 |
本作の核心は「正義は時に暴力になる」という点。 善意・使命感・経験が、 誤った判断を正当化してしまう危うさを描く。 タイトル通り、“GUILTY”は誰のことかを突きつける。 |
| 合計 | 95 / 100 |
会話だけでここまで人間の罪と正義を描き切った異色作。 サスペンスでありながら、 本質は「思い込み」と向き合う心理劇。 観る側もまた、判断する立場に立たされる一本。 |
◆総括
『THE GUILTY/ギルティ』は、
「見えている情報だけで判断することの危うさ」を、
徹底的に体感させる作品だ。
- 舞台は911コールセンターという一室のみ
- 武器は銃ではなく、声と言葉
- 敵は明確な悪ではなく、思い込みと焦り
主人公ジョーは正義感が強く、有能な警官だ。
だがその正義感こそが、
断片的な情報を“物語”に仕立て、
誤った判断へと彼自身を追い込んでいく。
本作が巧みなのは、
観客もまたジョーと同じ情報しか与えられず、
同じ勘違いをする共犯者にされる点にある。
真実が反転した瞬間、突き刺さるのは驚きではなく自己嫌悪だ。
そしてラストで描かれるのは、
ヒーロー的な勝利ではなく、
「逃げずに責任を引き受ける」という静かな選択。
派手な演出も、分かりやすいカタルシスもない。
だが観終わったあと、
「自分は本当に人の話を聞けているか?」
という問いだけが、ずっと残り続ける。
この映画はサスペンスの皮をかぶった、
判断と贖罪の心理劇だ。
そしてその問いは、観客一人ひとりに向けられている。
◆最後に:判断に疲れた夜に、シンプルな選択を
『THE GUILTY/ギルティ』を観終えたあと、
頭の中がざわついたまま、スマホを手に取っている人も多いはずだ。
この映画が突きつけてくるのは、
「情報が多いほど、判断は鈍る」という現実。
日常でも同じで、
通信や料金体系が複雑だと、
それだけで思考のノイズが増えてしまう。
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判断を減らすことは、
自分を守ることでもある。



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