◆映画『ラストマイル』の作品情報
- 監督:塚原あゆ子
- 脚本:野木亜紀子
- 出演:満島ひかり、岡田将生、ディーン・フジオカ、大倉孝二 他
- 主題歌:米津玄師「がらくた」
- 配給:東宝
- 公開:2024年
- 上映時間:128分
- 製作国:日本
- ジャンル:サスペンス/社会派ドラマ/ヒューマンドラマ
- 視聴ツール:U-NEXT/自室モニター/Anker Soundcore Liberty 5
◆キャスト
- 舟渡エレナ:満島ひかり 代表作『悪人』(2010年)
- 梨本孔:岡田将生 代表作『ドライブ・マイ・カー』(2021年)
- 五十嵐道元:ディーン・フジオカ 代表作『空飛ぶタイヤ』(2018年)
- 山崎佑:中村倫也 代表作『凪のお暇』(2019年)
- 八木竜平:阿部サダヲ 代表作『舞妓Haaaan!!!』(2007年)
◆あらすじ(ネタバレなし)
ブラックフライデー直前の日本。巨大ショッピングサイト「DAILY FAST」の物流センターから配送された荷物が、受け取った瞬間に爆発するという前代未聞の事件が発生します。社会インフラの一角を担う物流が突如“凶器”へと変貌し、人々の日常は一気に不安と混乱に包まれていきます。
その最前線に立たされるのが、西武蔵野ロジスティクスセンターの新センター長・舟渡エレナです。出荷停止を求める警察、迫るセール本番、現場の疲弊。止めれば社会が混乱し、動かせば被害が拡大する――究極の板挟みの中で、彼女は決断を迫られます。
本作は、スピード感あるサスペンスでありながら、「便利さの裏側で誰が犠牲になっているのか」という問いを突きつける社会派ドラマです。
ここからネタバレありです。
▶ ネタバレあり:詳細あらすじを開く
調査の結果、爆弾は物流センター内部から持ち込まれたものではないと判明します。背後に浮かび上がるのは、過去にセンターで働いていた元社員・山崎佑の存在。彼は過重労働の末に職場で飛び降り、現在は植物状態にありました。
事件の実行犯は山崎の恋人・筧まりか。彼女は、会社が責任を回避し問題を隠蔽してきた事実を知り、物流システムの“盲点”を突く形で犯行に及んでいたのです。
最後の爆弾は配達員親子の機転によって防がれますが、エレナは責任を取る形で会社を去ります。事件は終わっても、社会の構造は変わらない――その余韻を残して物語は幕を閉じます。
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◆俺の考察&感想
■ 怖いのは爆弾ではなく、止められない構造だ
この映画を観て最初に突き刺さったのは、「爆弾が怖い」のではなく、「止められない構造が怖い」という感覚だ。荷物が爆発するというショッキングな事件は、物語の導火線にすぎない。本当に描かれているのは、その爆発に至るまで誰も止められなかった“日常の延長線”だ。

■ ラストマイル=責任が押し付けられる最終地点
ラストマイルとは物流用語として「最終拠点から顧客の手元までの最後の区間」。だが本作では、それがそのまま「責任が押し付けられる最後の地点」として機能している。
本社は遠く、経営判断は見えない場所で下される。だが、トラブルが起きた瞬間に矢面に立つのは現場だ。立場が下に行くほど裁量は減り、責任だけが増えていく。この構造は物流に限らず、今の日本社会そのものだ。

■ 舟渡エレナは「正義のヒーロー」ではない
舟渡エレナが秀逸なのは、決してヒーローではない点にある。能力は高いし誠実でもある。だが彼女は、過去に山崎の件を知りながら、結果的に何もできなかった側の人間だ。
その事実から逃げずに描いているからこそ、この映画は安易な正義譚にならない。彼女が背負っているのは個人的な罪悪感であると同時に、「組織の中で生きる人間なら誰もが持ち得る後ろめたさ」だ。
■ 「悪者を一人にしない」という残酷な誠実さ
本作が鋭いのは「悪者を一人にしない」姿勢だ。犯人の筧まりかは単純なテロリストではない。許される行為ではないが、その動機は突発的な狂気ではなく、蓄積された無力感の果てにある。
■ 「何もしなかった」ことも、行為である
誰かを直接傷つけなくても、見て見ぬふりをした瞬間に構造の一部になる。この映画はその現実を、説明台詞ではなく積み重ねられた状況として体感させてくる。
■ 美談化される現場と、消えていく責任
称賛される“優秀なドライバー”の物語は、過労死という現実と背中合わせだ。頑張った人間を称えることで、「なぜそこまで頑張らせたのか」という問いが消えてしまう。静かだが残酷だ。
■ 事件は終わるが、問題は終わらない
事件は解決しても、構造は残る。終わったのは事件であって問題ではない。この割り切りこそが本作を社会派として一段上に引き上げている。
■ この映画が観客に突きつける問い
ラストマイルとは物理的な距離の話ではない。責任と現実の間に横たわる最後の距離だ。そこから目を逸らすのか、踏み出すのか。その選択を観客に委ねている。
◆【モテ男の考察&感想】
立場に逃げず、見えない負担を想像できる男は強い。静かに責任を引き受ける姿勢は、仕事でも人間関係でも信頼を生む。
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◆教訓・学び
都合のいい立場に逃げず、見えない負担まで想像して行動できる男は、
仕事でも恋愛でも自然と信頼を集める。
◆評価
| 項目 | 点数 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー | 18 / 20 |
連続爆破事件という強烈なフックから、物流・労働・企業倫理へと収束させていく構成が見事。 犯人探しに終始せず、「なぜ起きたのか」「なぜ止められなかったのか」を描き切った点が評価できる。 |
| 演技 | 19 / 20 |
満島ひかりの抑制された演技が、現場責任者の孤独と重圧をリアルに伝える。 岡田将生をはじめ、脇を固める俳優陣も全員が「現実にいそう」な説得力を持っている。 |
| 映像・演出 | 18 / 20 |
派手な爆発よりも、時間制限と現場の緊張感で圧を作る演出が秀逸。 巨大物流センターの無機質さが、人間の感情を際立たせている。 |
| 感情の揺さぶり | 18 / 20 |
勧善懲悪では終わらず、「解決しても何も終わっていない」という後味を残す。 観客自身の立場を考えさせる、静かだが強い感情設計。 |
| オリジナリティ・テーマ性 | 18 / 20 |
“ラストマイル”という言葉を、責任の最終地点として使い切ったテーマ性が鋭い。 誰か一人の悪ではなく、「構造」を描いた点に現代性がある。 |
| 合計 | 91 / 100 |
爆弾事件を描きながら、本当に恐ろしいのは“止まらない仕組み”だと突きつける社会派サスペンス。 現場・企業・消費者すべてが当事者であるという視点が、観後も重く残る。 |
◆総評
『ラストマイル』は、連続爆破事件という刺激的な題材を使いながら、
本当に描いているのは「誰もが加担してしまう社会の構造」だ。
犯人探しや正義の勝利に回収せず、
事件が起きた理由、そして止められなかった理由を最後まで手放さない。
物流、企業論理、労働、責任の所在。
どれも私たちの日常と地続きのテーマであり、
観客自身が便利さの受益者であることを静かに突きつけてくる。
だからこの映画は「観て終わり」にならない。
正義のヒーローは現れず、問題も完全には解決しない。
それでも、現場で踏みとどまった小さな選択や、
人としての誠実さが確かに希望として描かれている。
これは「爆弾の映画」ではない。
責任から目を逸らさない覚悟を、観る側に問い返す映画だ。
◆余韻を深める、俺の視聴環境
『ラストマイル』のように観終わったあとも考えが止まらない映画は、
明るすぎない照明で余韻に浸るのがちょうどいい。
このテーブルランプは、コードレス・タッチ操作・無段階調光で、
夜のレビュー執筆や考察タイムにかなり相性がいい。
ゴールドの質感も安っぽさがなく、
デスクやベッドサイドに置いても雰囲気を壊さない。



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