【映画】『トーナメント』(2018年) 嘘と金と死が交差する――たった一夜の、裏切りトーナメントが始まる | ネタバレあらすじと感想

サスペンス/スリラー





映画『トーナメント』(2018)レビュー


◆映画『トーナメント』の作品情報

  • 【原題】Midnighters
  • 【監督・脚本】ジュリアス・ラムゼイ
  • 【出演】アレックス・エッソー、パーラ・ヘイニー=ジャーディン 他
  • 【配給】ライオンズゲート・ピクチャーズ・エンターテインメント
  • 【公開】2018年
  • 【上映時間】93分
  • 【製作国】アメリカ
  • 【ジャンル】サスペンス、スリラー、クライム
  • 【視聴ツール】U-NEXT、吹替、自室モニター

◆キャスト

  • ジェフ:アレックス・エッソー 代表作『ネイバーズ』(2014年)
  • ハンナ:パーラ・ヘイニー=ジャーディン 代表作『スパイダーマン3』(2007年)
  • スミス(刑事):ウォード・ホートン 代表作『アナベル 死霊館の人形』(2014年)
  • ディラン・マクティー:ディラン・マクティー 代表作『(情報なし)』
  • アンドリュー・ローゼンバーグ:アンドリュー・ローゼンバーグ 代表作『(情報なし)』

◆ネタバレあらすじ

ある年の大晦日、若い夫婦ジェフとリンジーは、パーティーの帰り道で悲劇的な出来事に巻き込まれます。仕事を失って不安定なジェフは、飲酒運転のまま帰路につきますが、突如道路に現れた謎の男をはねてしまいます。パニック状態に陥った二人は、事故を通報せず、自宅のガレージへ男の遺体を運ぶという選択をしてしまいます。
そこから、隠蔽と嘘が重なり、夫婦は次第に追い詰められていきます。遺体のポケットから見つかった自宅住所のメモや、不可解な車の損傷など、状況は不穏さを増していきます。さらにリンジーの妹ハンナの存在が、事件の過去と現在を結びつけ、次々と予測不能な事態を引き起こします。
『トーナメント』は、ある“偶然の事故”をきっかけに、人々の過去・欲望・裏切りが暴かれていくクライム・スリラーです。密室のような家の中で展開するサスペンスと、心理的な緊張感が最後まで観る者を引きつけます。

ここからネタバレありです。

ガレージの男は実はまだ生きており、リンジーの妹ハンナによって射殺されます。3人はその死体を秘密にしようと決意しますが、物語はさらに予期せぬ展開を迎えます。翌日、警察が落とし物のナンバープレートを返しに訪れ、緊張が走ります。そしてハンナが昔付き合っていた資産家の男と、今回の事件のつながりが明らかになっていきます。
ハンナは過去に、恋人が詐欺に巻き込まれ殺される現場を目撃し、チケットと大金を持って逃げていたのです。現れた刑事スミスは実はその資産家であり、ハンナの持つ金を取り戻すためにリンジーを襲います。ジェフとリンジーはスミスを拷問し、彼の正体と目的を突き止めますが、事態はさらに混迷を深めます。
最終的に裏切りと欲望が交錯し、ジェフはスミスに殺され、リンジーも窮地に陥ります。だが最後には警察が突入し、スミスを射殺。すべてが終わった後、リンジーは隠されていた大金を受け取り、安堵と達成感の入り混じる表情で物語は幕を閉じます。

◆考察と感想

この映画、最初はよくある事故隠蔽系のサスペンスかと思ったけど、見ていくうちに予想以上に濃くてエグい展開に引き込まれていった。『トーナメント』というタイトルからは想像しにくいけど、中身は“善人を装った人間たちが追い詰められて本性を剥き出しにする心理サスペンス”って感じだ。
まず、ジェフの酒気帯び運転から全てが狂っていく流れは、ある意味リアルだ。善人ではないけど、特別悪人でもない男が、追い詰められた結果どんどん間違った選択を重ねていく。この“ちょっとズルくて小心者な一般人”の姿に、どこか自分の中の弱さが重なる気がした。
リンジーも最初は被害者的なポジションに見えるけど、話が進むにつれて彼女の冷静さと行動力が際立ってくる。特に、スミスに拷問を加えるシーンでは、あまりの暴力性にゾッとした。最初は動揺してた彼女が、終盤では自らの意志で釘を打ち込み、全てを仕切っていく姿に、「この人が本当に一番怖いのかも」と思わせられた。
でも、この作品の肝はハンナだと思う。過去のトラウマ、死んだ恋人との因縁、そして金に関する秘密。彼女の存在が、ただの隠蔽劇を一気に裏社会の血なまぐさい物語に変えていく。最初は頼りない妹ポジションだったのに、実は全ての火種を抱えていたというのが、上手い構造だった。
さらに驚いたのは、スミスの正体がハンナの元恋人だったという点。愛と裏切り、過去と現在が一気に交差して、感情がグチャグチャになる。しかも、ただの“悪役”ではなく、スミス自身にも金や復讐への執着、過去の未練があって、それがまた物語に陰影を与えていた。
クライマックスでは、それぞれの人間が限界まで追い詰められ、暴力と嘘、そして生への執着がむき出しになる。愛してると言いながらも、裏切りが先に立ってしまうジェフ。信じた相手に殺されるハンナ。そして最後に全てを奪い取って生き残るリンジー。結局、“一番冷静で割り切れる人間”が勝つという現実を突きつけられたようで、後味は重いけど妙に納得感があった。
この映画、サスペンスというよりも“人間の化けの皮が剥がれていく様”を描いた心理ドラマに近い。誰が正義で、誰が悪かなんて単純に線引きできない。だけど、それぞれの選択の積み重ねが、最終的に誰を生かし、誰を滅ぼすかを決める。ある意味でフェアだけど、恐ろしくもある構図だ。
終盤、リンジーが静かに金を受け取り、ベッドで微笑むラストシーン。あれには鳥肌が立った。やりきった女の顔だった。もはや罪悪感も後悔もない、ただ自分の意思で生き抜いた者の勝利。それが怖いけど、同時にどこか美しさすら感じてしまった。

■考察(もて男)

モテる男から見ると、この映画は「信用の本質」がテーマだと思った。ジェフは“いい人”を演じながら、土壇場で信頼を失う。一方スミスは過去の恋人を裏切り、結局破滅する。モテる男は、危機のときにこそ誠実で、ブレない信頼感を示す。リンジーが最後に生き残るのは、誰にも依存せず、自分の意思で動いたから。つまり、恋愛でも人生でも、生き残るのは“自立した本物”だけだってことを見せてくれる作品だった。

■教訓・学び

モテる男は、極限の状況でも信頼を裏切らず、真実と向き合う覚悟を持っている。



映画『トーナメント』のような緊張感のある心理サスペンスを観ながら、カクテル片手に夜を楽しむのもアリかもしれません。
“静かな狂気”が漂うこの作品の空気を、自宅バー風の演出で味わってみては?

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