【映画】『ナミビアの砂漠』(2024年) この砂漠には、何もない──ただ、ほんとうの自分だけがいた | ネタバレあらすじと感想

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◆映画『ナミビアの砂漠』の作品情報

【英題】Desert of Namibia
【監督・脚本】山中遥子
【出演】河合優実、金子大地、寛一郎、新谷ゆずみ他
【配給】ハピネットファントム・スタジオ
【公開】2024年
【上映時間】137分
【製作国】日本
【ジャンル】社会派ドラマ、ヒューマンドラマ
【視聴ツール】Netflix、自室モニター

◆キャスト

  • カナ:河合優実 代表作『あんのこと』(2024年)
  • ハヤシ:金子大地 代表作『猿楽町で会いましょう』(2021年)
  • ホンダ:寛一郎 代表作『由宇子の天秤』(2021年)
  • イチカ:新谷ゆづみ 代表作『麻希のいる世界』(2022年)
  • 東高明:中島歩 代表作『あのこは貴族』(2021年)

◆あらすじ

21歳のカナは、都内の小さな会社で働きながら、淡々とした日々を過ごしています。昇給もない仕事に埋もれ、自分の将来や夢に向き合うこともせず、どこか投げやりな毎日です。穏やかな恋人・ホンダと同棲し、彼に生活の多くを支えてもらいながらも、カナはどこか心の空虚さを抱え続けています。
そんなある日、カナは映像制作に関わるクリエイター・ハヤシと出会います。彼は自信家で皮肉屋という対照的な存在でありながら、どこかカナの心を刺激するものを持っていました。次第にカナは彼との距離を縮め、今まで見ようとしなかった“感情のざわめき”と向き合い始めます。
この映画は、都会で生きる若者の倦怠感や、自己喪失、そして新たな刺激への欲望を繊細に描いた人間ドラマです。タイトルにある“ナミビアの砂漠”は、実在の場所ではあるものの、作中では比喩的な意味を持ち、主人公の内面世界を象徴する存在として機能しています。

▼ 此処からネタバレありです

カナは次第にハヤシとの関係にのめり込み、ホンダとの平穏な日常が息苦しく感じられるようになります。家を出る決断をしたカナは、ハヤシの制作現場を手伝う日々を送りますが、彼の自己中心的な振る舞いに疲れ、理想と現実のギャップに戸惑っていきます。
一方、ホンダはカナを責めることもなく、自身の気持ちを封じたまま距離を置きます。カナは次第に自分の“居場所”とは何か、自分が何者であるかという問いに直面します。物語の終盤、カナはひとりでナミビアへ向かう旅に出ます。そこには、過去も未来もないただの“今”が広がっていました。
映画のラストは、荒涼とした砂漠でカナがただ静かに風を感じるシーンで幕を閉じます。その姿には、自分の選択を受け入れた者だけが持つ、わずかな確かさが宿っているようでした。

◆考察と感想

本作、『ナミビアの砂漠』を観てまず思ったのは、「これは心が静かに削られていく映画だな」ということだった。特に強烈な展開があるわけじゃない。大事件もなければ、誰かが劇的に変わるわけでもない。それでも観終わったあとに胸に残る“ざらつき”のような感覚は、今の時代に生きる俺たちのどこかに確実に引っかかるものがある。

主人公のカナは、最初からすでに人生に興味を失っているような存在だった。夢も目標も語らない。働いてはいるけど、何のためにやっているのか自分でもわかっていない。そんな彼女の姿に、俺自身の過去の一部が重なった。何かを目指すことがめんどくさくなって、流されるように働いて、日常に埋もれていく自分。誰にも怒られないし、特に困ってるわけでもない。でもどこか虚しい。その感覚が、この映画では見事に“空気感”として描かれていた。

対照的に、ホンダはまさに「理想のパートナー像」だった。優しくて献身的で、カナのわがままにも文句を言わず支えてくれる。普通なら「これ以上何を望むんだ?」と思うような存在だ。けど、カナはそんな安定を手放して、より自分を揺さぶってくれるハヤシに惹かれていく。この流れが本当にリアルだった。刺激を求めてしまう気持ちは誰にでもあるし、「いい人」が必ずしも「一緒にいたい人」じゃないというのは、恋愛における残酷な真実の一つだと思う。

ハヤシとの関係もまた、期待と失望の連続だ。自信家で刺激的だった彼は、結局自分のことしか見ていないタイプで、カナに寄り添うことはない。それでも彼の世界に触れることで、カナは“自分”を強く意識し始める。ホンダといたときは、心地よさの中で眠っていた自我が、ハヤシといることで無理やり目覚めさせられた感じだ。

後半、カナがナミビアの砂漠に向かう展開は意表を突かれたが、それがまさに彼女の内面の象徴だったのだと思う。何もない場所に行くことで、逆に「何が欲しかったのか」を見つめ直す。周囲の人間関係から一度切り離されて、自分の足で立ってみる。その旅路は、社会に疲れた現代人にとって“救い”のようにも感じられた。

この映画は誰かに感情移入して観るというより、自分自身を見つめ直させられる作品だった。カナの選択は正解でも失敗でもない。ただ、「自分で決めた」という一点に価値がある。それがこの映画の一番のメッセージなんじゃないかと思う。

映像も美しかった。無機質な都会と、広大な砂漠。どちらもカナの心を反映していて、言葉がなくても物語る力があった。終盤の静けさは、台詞よりも重く響いた。

『ナミビアの砂漠』は、行動を起こすきっかけになる映画ではない。でも、自分が今どこにいるかを知るための“地図”のような作品だった。観終わったあと、なんとも言えない余韻に包まれて、自分の生活の輪郭が少しだけ浮き上がって見えた気がした。

◆教訓・学び

モテるためには、「優しさ」だけでなく、自分の軸と余白のある“揺るがなさ”が必要だ。

◆映画評価

項目 点数(20点満点) コメント
ストーリー 11 / 20 ちょっと、この作品は俺にとってはきつかった。日本的な静かさの機微と言うのか、そう言うの全くないので、結局何だったんだ!
演技 18 / 20 ほんと、華があるのか無いのか分からない、河合優実って。
映像・演出 14 / 20 普通の生活感~~~。
感情の揺さぶり 15 / 20 ん~ネタバレしないように書くのはムズイっす
オリジナリティ・テーマ性 15 / 20 オリジナル性は凄いあると思う。
合計 73 / 100 こう言うテイストの作品は、彼女得意なのだ。様になっていて、時間の経過は気にならない。ある意味凄い。

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