レビュー / 韓国映画 / 2024年
映画『ロ・ギワン』(2024)レビュー&考察
監督・脚本:キム・ヒジン|出演:ソン・ジュンギ、チェ・ソンウン 他
作品情報
- 監督・脚本:キム・ヒジン
- 配給:Netflix
- 公開:2024年
- 上映時間:133分
- 製作国:韓国
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 視聴ツール:Netflix、吹替、自室モニター
キャスト
- ロ・ギワン:ソン・ジュンギ 代表作『太陽の末裔』(2016年)
- マリー・リー:チェ・ソンウン 代表作『サムジンカンパニー1995』(2020年)
- オクヒ(ギワンの母):キム・ソンリョン 代表作『相続者たち』(2013年)
- リ・ウンチョル(ギワンの叔父):ソ・ヒョヌ 代表作『秘密の森』(2017年)
- ソンジュ(ベルギーの工場で出会う移民):イ・サンヒ 代表作『次の朝は他人』(2017年)
あらすじ
脱北者のロ・ギワンは、母と共に生まれ故郷を離れ、新しい生活を求めて中国へと逃れます。しかし、そこで待っていたのは、自由とは程遠い過酷な現実でした。母との絆を胸に、彼はさらに遠い異国の地、ベルギー・ブリュッセルへたどり着きます。異国での生活は決して安定したものではなく、言葉も文化も異なる環境で彼は居場所を探し続けます。日々の生活は困難に満ち、時にはホームレス同然の生活を余儀なくされますが、それでも彼の心の奥には「母の願いを叶えたい」という強い思いが燃え続けています。そんな中、過去に大きな挫折を抱えた元射撃選手の女性マリーと出会うことで、キワンの人生に変化が訪れます。孤独と絶望を抱えていた二人は、次第に互いの存在に救いを見出し、少しずつ未来への希望を見いだしていきます。
ここからネタバレありです
クリックして展開
キワンは中国で母を亡くした後、ベルギーでの難民申請に挑むことになります。しかし、厳しい審査や社会からの孤立が彼を待ち受けていました。生活のために工場で働く中で、彼は同じ境遇の移民ソンジュと出会い、互いの苦悩を分かち合います。一方、心に深い傷を抱えたマリーは父親との関係に悩み、自暴自棄な日々を送っていました。二人の出会いは偶然ではなく、共に「生きる意味」を探す旅の始まりでした。やがて彼らは過酷な現実に立ち向かいながらも、少しずつ互いを支え合うようになります。亡き母の願いを胸にキワンは前に進み、マリーもまた未来を選び取ろうとします。物語は、生き延びることの苦しみと、それでも希望を見出そうとする人間の強さを描き出し、国境を越えた「再生の物語」として観る者に深い余韻を残します。
考察と感想(俺目線)
キワンの姿を観ながら、自分が日常で「自由」をどう扱っているかを考えさせられた。例えば、仕事に文句を言ったり、人間関係で疲れたりすることは誰にでもある。でもキワンの立場からすれば、それは贅沢な悩みかもしれない。彼が直面したのは「今日をどう生き延びるか」という現実であり、それを積み重ねた先にしか未来はない。その切実さは、俺が普段忘れている「生きることの根源」を突きつけてきた。
また、マリーとの関係性も深く心に残った。彼女もまた人生に躓き、希望を失った人間だ。だからこそ、二人が出会った瞬間に生まれた共鳴には説得力があった。互いに救いを求め、支え合う姿は恋愛というより「共犯者」とでも呼ぶべきものに近い。人は孤独では生きられない。誰かと痛みを分かち合うことでしか、未来に進む力は得られないのだと痛感した。俺自身、落ち込んだ時に友人や恋人の一言に救われた経験があるから、この描写には強く共感した。
映画全体の雰囲気は重苦しいが、そこで描かれるのは単なる絶望ではない。むしろ「希望を見つけようとする人間の強さ」だった。キワンは母の死を背負いながらも、彼女の願いに応えたいという気持ちを支えに前に進んだ。その姿に俺は胸を打たれた。母親との約束は単なる家族の情ではなく、彼の人生を突き動かすエンジンになっていたのだ。家族の絆が、国境や文化の違いを越えて人を生かす力になることをこの映画は見事に描いていた。
演出面でも評価できる点が多い。ベルギーの寒々しい街並みは、彼の孤立を象徴する舞台装置のように機能していた。灰色の空、冷たい風、薄暗い部屋。そこに映し出されるキワンの姿は、常に小さく、弱々しく見えた。それでも彼の目には光が宿っていた。監督は映像を通して「人間は逆境の中でこそ輝く」というメッセージを伝えていたように思う。
さらに、作品が提示する「移民」や「難民」のテーマは現代社会に直結している。日本に住む俺からすると、遠い問題のように感じることもあるが、実際には世界の至る所で起きている現実だ。ニュースで耳にするだけでは実感が湧かないが、この映画を観ると個人の物語として迫ってくる。顔や名前を持つ一人の人間の物語として描かれることで、問題が「数字」ではなく「感情」に変わるのだ。俺はそれを体感した。
ただ一方で、観終わったあとに残るのは決して説教臭さではなかった。むしろ、キワンやマリーと同じように「生きる」ことに悩み、もがいている自分の姿を映し出された感覚だった。俺にとっては、この映画は自己投影を促す鏡のような作品だったと言える。自分がどう生きるのか、どう人と向き合うのか。その問いを突きつけられたのだ。
総じて、『ロ・ギワン』は重いテーマを扱いながらも、人間の希望や絆を強調したバランスの取れた作品だった。ソン・ジュンギの演技は繊細で、弱さと強さを同時に体現していたし、チェ・ソンウンもまた痛みを抱えた女性の複雑な感情を丁寧に表現していた。キャスト陣の存在感が作品のリアリティを支えていた。俺は観終わったあと、しばらく余韻から抜け出せなかった。それは映画が成功している証拠だと思う。
モテ男視点での考察
『ロ・ギワン』を観て感じたのは、人は誰かと痛みを共有することで強くなれるということだ。モテる男は強がらず、時に弱さを見せて相手と繋がる。キワンがマリーに心を開いたように、自分も素直に相手を信じることが大事だと気づいた。守るだけでなく、支え合う姿勢こそが魅力に繋がる。
◆評価
項目 | 点数 | コメント |
---|---|---|
ストーリー | 17 / 20 | 何か特別なことが有ったり、ドンパチが有ったりはしないが、どんどんロ・ギワンに自分がインスパイヤしていく。海外作品もこうしたおとなしめなものだと変なもんで安心する。 |
演技 | 18 / 20 | ソン・ジュンギは、どこの国の人?と思ってしまうくらい特徴がある顔をしているのが、一つの売りになると思う。 |
映像・演出 | 17 / 20 | 真剣に観てても、悲しいことに、舞台がブリュッセルだと最後の方まで思っていなかった。言われてみたら…と言うのは沢山あったが。 |
感情の揺さぶり | 17 / 20 | どこに共感して、どう感じれば正解なのか分からない。「で?」と言いたくなるようなENDだったかと思う。 |
オリジナリティ・テーマ性 | 18 / 20 | オリジナリティは有ったと思うが、作品のテーマが今一つ伝わって来なかった。 |
合計 | 86 / 100 | 同国の人を大事に思う韓国の人の根の部分を観たような気がする。ロ・ギワンのように、何も自分に関係が無い場所から始めて、他と結びついてその地に馴染んでいける適応力は凄いと思う。 |
🎬 長時間視聴におすすめの人間工学チェア
『ロ・ギワン』のような133分の長編映画を観るときに大切なのが座り心地。
長時間でも快適に楽しめる人間工学チェアなら、自宅シネマ環境が格段にアップします。
コメント