【映画】『デスノート』(2006年)レビュー&考察
原作の緊張感を映像化したサスペンス×心理戦。月とL、揺れる「正義」をどう観る?
◆映画『デスノート』の作品情報
英題 | DEATH NOTE |
---|---|
監督 | 金子修介 |
脚本 | 大石哲也 |
原作 | 大場つぐみ、小畑健「DEATH NOTE」 |
出演 | 藤原竜也、松山ケンイチ、瀬戸朝香、鹿賀丈史、藤村俊二 他 |
配給 | ワーナー・ブラザース映画 |
公開 | 2006年 |
上映時間 | 126分 |
製作国 | 日本 |
ジャンル | アクション、スリラー、心理サバイバル |
視聴ツール | U-NEXT、自室モニター |
◆キャスト
- 夜神月:藤原竜也 代表作『バトル・ロワイアル』(2000年)
- L / 竜崎:松山ケンイチ 代表作『ノルウェイの森』(2010年)
- 弥海砂:戸田恵梨香 代表作『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』(2010年)
- 南空ナオミ:瀬戸朝香 代表作『卒業旅行 ニホンから来ました』(1993年)
- 夜神総一郎:鹿賀丈史 代表作『帰ってきた若大将』(1981年)
◆ネタバレあらすじ
あらすじ(ネタバレなし)
夜神月(やがみライト)は、将来を嘱望される優秀な大学生です。法律を学びながらも、現実の司法制度には限界を感じ、犯罪者が堂々と生き残る社会に憤りを抱いていました。そんなある日、彼の前に一冊の黒いノートが現れます。それは死神リュークが人間界に落とした「デスノート」で、名前を書かれた人間は必ず死に至るという恐るべき力を秘めていました。半信半疑ながらも月が試しに使ってみると、現実に効果が発動し、その力が本物であると知ります。
月は「世界から犯罪者を消し去り、新しい秩序をつくるのは自分だ」と考え、次々と凶悪犯に裁きを下していきます。やがて世間は、この正体不明の存在を「キラ(Killer)」と呼び始め、彼を神のように崇拝する者まで現れるようになります。しかし同時に、世界規模で警察も動き出し、犯罪者の大量死をただの偶然ではなく「連続殺人」として捜査を開始します。そして、事件解決のために送り込まれたのが、これまで数々の難事件を解決してきた天才探偵Lでした。社会を変革しようとする月と、正義を守ろうとするL。二人の思惑が交錯する時、かつてない心理戦が幕を開けるのです。
▼ ここからネタバレありです
月は警察官である父・総一郎の動きをも利用しながら、巧妙に捜査の手をかいくぐっていきます。そんな中、FBI捜査官レイとその婚約者で元捜査官の南空ナオミが登場。彼らはキラの正体に迫りつつありましたが、月はデスノートの能力を駆使し、彼らを次々と排除していきます。冷静沈着な判断と残酷なまでの策略で、追跡者を逆に追い詰める姿は、正義の名を借りた「神」ではなく、もはや連続殺人犯そのものでした。
一方で、Lは独特の推理力と観察眼を駆使して月を容疑者と疑い始めます。彼は大胆にも自ら日本に入り、警察庁と連携を取りながら捜査を進め、月の行動を監視下に置きます。表向きは模範的な青年としてふるまいながら、裏で死神の力を操る月。互いに正体を探り合う攻防戦は、次第に周囲をも巻き込み、命懸けの心理戦へと発展していきます。やがて、月の計算を超えた「予測不能の出来事」が、二人の戦いに大きな転機をもたらしていくのです。
◆考察と感想
本作、『デスノート』は、2006年公開の日本映画の中でも圧倒的に印象に残る作品だ。原作漫画を知っていた人も多かったが、実写化となったときに一番気になったのは「天才同士の心理戦をどう映像で見せるのか?」という部分だったと思う。漫画ならではの思考の駆け引きや、セリフでの細かい心理描写をそのまま映像にするのは難しい。だが、この映画版『デスノート』は、そのハードルを意外なほど軽やかに越えていた。
まず藤原竜也演じる夜神月。彼の演技は正統派の好青年から狂気の色を帯びていく過程をしっかりと表現していた。初めてデスノートの効果を確信するシーン、犯罪者を次々に裁き始めるシーン、その冷徹さの裏にある「正義」という言葉への執着。藤原竜也の表情の変化がとてもわかりやすく、観ている側に「もし自分がこのノートを持ったらどうするだろう」と考えさせてくれる。単なるフィクションとして消費されずに、観客に自己投影を促すところがこの映画の魅力だと思う。
そして、松山ケンイチのL。このキャスティングが大当たりだった。姿勢や癖、独特なイントネーション、無表情でお菓子を食べる姿。アニメや漫画で親しまれていたLを、まさかここまで実写で再現できるとは正直驚いた。原作ファンの期待を裏切らないどころか、映画から入った人にとっても「L=松山ケンイチ」という図式が成立してしまうほどのハマり役だった。彼の存在感があったからこそ、月との対立が一層スリリングになったと思う。
物語の核は「正義とは何か?」に尽きる。月は犯罪者を裁き、世界から悪を消そうとする。表面的には正しいことをしているようにも見えるが、それは法律や民主的手続きとは相容れない。結局は「自分の裁量で人を裁く」という恐ろしい独善だ。逆にLは法を守り、連続殺人としてキラを追い詰める。観客はどちらの理屈にも一理あると感じながら、二人の対立をハラハラしながら見守ることになる。
さらにこの映画版が面白いのは、テンポの良さだ。漫画だとじっくり読ませる心理戦が続くところを、映画は120分強の中でテンポよく展開させている。無駄な説明が少なく、観客が「もう一歩踏み込んで考えたい」と思ったときにすっと次の展開に進む。その軽快さが心地よかった。
音楽も忘れてはいけない。川井憲次のスコアは緊張感を高め、ラストに向けて観客の集中を途切れさせない。さらに主題歌にレッド・ホット・チリ・ペッパーズの「ダニー・カリフォルニア」を持ってきたセンスも絶妙だった。当時の邦画としてはかなり挑戦的な選曲で、映画全体に国際的なムードを与えていたと思う。
印象に残るのは、やはり月が「神になる」と宣言する場面だ。人間が絶対的な力を持ったとき、必ずしも幸せな世界になるわけではない。その姿は滑稽でもあり恐ろしくもある。観客は彼の野望に魅了されつつ、同時にその危うさに気づく。これが『デスノート』という作品の二面性であり、ただのサスペンス映画以上のテーマ性を生み出している。
また、映画ならではのアレンジとして、月の恋人・秋野詩織を登場させた点も面白かった。原作にはいないキャラクターを投入することで、月の人間らしい側面や弱さを浮き彫りにしている。彼が完全な悪でも完全な善でもなく、一人の青年として迷いながらも突き進む姿にリアリティを感じた。
総じてこの映画版『デスノート』は、原作ファンにも初見の観客にも訴える力を持っている作品だと感じた。テンポの良い展開、役者の演技、音楽の効果、どれを取ってもレベルが高い。もし原作を知らない人が観ても、十分に楽しめる作りになっている。今観返しても、当時の空気感や映画界の勢いを感じられるし、日本映画の実写化作品の中でも成功例の一つとして語られる理由がよくわかる。俺自身、観終わったあとに「もしノートが目の前に落ちていたら…」とつい想像してしまった。そんなふうに観客の思考を揺さぶる力を持った映画だった。
◆モテ男視点
『デスノート』をモテの観点から語るなら、やはり「選択の重さ」をどう受け止めるかだと思う。夜神月は絶対的な力を持ちながらも、それをコントロールできずに破滅へと近づいていく。一方で、モテる男は自分の魅力をどう使うかを冷静に判断できる。力を誇示するよりも、相手を安心させるバランス感覚こそが大事だ。この映画を観て学ぶべきは「力の使い方が人間性を映す」ということだ。日常でそれを意識できる男は、自然と信頼を集めていく。
◆教訓
力を誇示するよりも、冷静にコントロールして信頼を得る男がモテる。
◆評価
項目 | 点数 | コメント |
---|---|---|
ストーリー | 18 / 20 | 娯楽作品としては最高に丁度良いくらいの作品だ。原作がしっかりしていて、観ていてストーリーとして引っかかるところは無い。 |
演技 | 19 / 20 | 藤原竜也も松山ケンイチもぴか一であら捜しをする意味もない。 |
映像・演出 | 18 / 20 | 今でこそ当たり前になったCGが功を奏している。リュークがいなかったらというのは考えられない。 |
感情の揺さぶり | 18 / 20 | 藤原竜也が捕まるか捕まらないかがワクワクしたが、感情が高ぶったのはそれくらいか。 |
オリジナリティ・テーマ性 | 17 / 20 | 本作品が出たころはかなりなデスノートの情報が入ってきて、おそらく皆観ていたかと思う。オリジナリティは十二分にある。 |
合計 | 94 / 100 | 続編が観たくなる設定。楽しみだ。 |
コメント