🎬 映画『ジェーン・ドゥの解剖』の作品情報
- 原題:The Autopsy of Jane Doe
- 監督:アンドレ・ウーヴレダル
- 脚本:イアン・ゴールドバーグ、リチャード・ナイン
- 出演:エミール・ハーシュ、ブライアン・コックス 他
- 配給:42、IM Global、Impostor Pictures
- 公開:2016年9月
- 上映時間:86分
- 製作国:アメリカ
- ジャンル:ホラー、スリラー、ミステリー
- 視聴ツール:U-NEXT(吹替)、自室モニター
👥 キャスト
- トミー・ティルデン:ブライアン・コックス 代表作『ボーン・スプレマシー』(2004年)
- オースティン・ティルデン:エミール・ハーシュ 代表作『イントゥ・ザ・ワイルド』(2007年)
- エマ:オフィリア・ラヴィボンド 代表作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)
- 保安官バーク:マイケル・マケルハットン 代表作『ゲーム・オブ・スローンズ』(2012年〜)
- ウェイド巡査:ジェーン・ペリー 代表作『スペクター』(2015年)
📖 あらすじ(ネタバレなし)
バージニア州の民家で惨殺事件が発生し、地下室で発見された謎の若い女性の遺体が検死所に運ばれてきます。外傷がまったく見当たらないその遺体は、“ジェーン・ドゥ”と名付けられます。検視官のトミーとその息子オースティンは、死因を探るべく解剖を始めますが、外見とは裏腹に、体内には驚くべき異常が潜んでいました。肺にスス、内臓の損傷、切られた舌、砕かれた骨……。科学では説明のつかない異常の数々が、彼女がただの死体ではないことを物語り始めます。検死所内で不可解な現象が次々と起こり、やがて恐怖は現実を侵食し始めるのです。
💭 考察と感想
『ジェーン・ドゥの解剖』は、俺にとって久々に「怖い」と素直に思えたホラーだった。暗闇の中に何かがいるとか、ド派手なジャンプスケアで驚かすタイプじゃない。音と沈黙、閉鎖された空間、そして“理屈が通じないもの”が忍び寄ってくる。まさに理性の崩壊を静かに描いた、じわじわ来るタイプの知的ホラーだった。
舞台は検死所。親子の検死官が“身元不明の遺体”ジェーン・ドゥを解剖していくうちに、奇妙な現象が起き始める。最初は科学で説明しようとするんだけど、次第に理屈じゃどうにもならないことが積み重なっていく。その過程が本当に丁寧で、俺も「これはもう、逃げられないな」と画面に釘付けになった。
特に印象に残ってるのは、遺体の内臓は焼け焦げてるのに外見は傷一つないって描写。もうその時点で完全に“おかしい”んだけど、主人公たちがそれを分析しようとする姿勢が逆にリアリティを増してる。俺たち観客も「もしかしたら理由があるのかも」と思ってしまう。その期待が裏切られる瞬間が、怖さとして一番効くんだよな。
ジェーン・ドゥの正体が、魔女裁判で無実のまま犠牲になった女性だという示唆が出てきた時、単なる幽霊話から一気に社会的テーマに深まった感じがした。拷問、羊皮紙、呪文──それらは単なるオカルトじゃなくて、人間がかつて犯した罪、歴史そのものなんだっていう視点。彼女は悪霊なんかじゃなく、被害者だった。その怒りがずっとこの世界に残ってる。そう思うと背筋が凍った。
演出もすごい。BGMに頼らず、静寂の使い方が抜群。足音、金属音、扉の軋み。音がするだけで恐怖が立ち上がる。下手にモンスター出すより、ずっと怖い。映像もシンプルだけど美しく、光と影のコントラストが妙に印象的で、あの検死室の空気感が忘れられない。
そして、トミーとオースティンの親子関係。ホラー映画にしては珍しく、しっかり描かれてる。父が息子を守ろうとする姿勢に、自然と感情移入してしまった。ラスト、トミーが自分の命を差し出してジェーン・ドゥの怒りを鎮めようとするくだりは、ただのホラーじゃない、家族の物語としてもグッとくる。俺は思わず息をのんだ。
最後、ジェーン・ドゥの遺体がまた静かに運ばれていく。この世に怒りを残したまま、また次の場所へ向かう。何も終わっていない。それがわかってるからこそ、余韻がすごい。ゾッとするけど、どこか切なさもある。これが本当のホラーなんだなと思わされた。観終わってしばらく、静かな部屋にひとりでいるのが怖くなった。そんな体験、久しぶりだった。
📚 教訓・学び
人は理解できないものに出会ったとき、理性も科学も無力になることがある。
コメント