【映画】『エレクトリック・ステイト』(2025年)失われた絆を求めて、少女とロボットが荒廃した未来を旅する | ネタバレあらすじと感想

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映画『エレクトリック・ステイト』の作品情報

  • 原題:The Electric State
  • 監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ
  • 脚本:Christopher Markus、Stephen McFeely
  • 原作:シモン・ストーレンハーグ『The Electric State』
  • 出演:ミリー・ボビー・ブラウン、クリス・プラット 他
  • 配給:Netflix
  • 公開:2025年3月
  • 上映時間:128分
  • 製作国:アメリカ
  • ジャンル:SFアクション、アドベンチャー、ディストピア
  • 視聴方法:Netflix(吹替版、自室モニター視聴)

キャスト

  • ミシェル:ミリー・ボビー・ブラウン(『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(2016年))
  • キーツ:クリス・プラット(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年))
  • ドクター・アマースト:キー・ホイ・クァン(『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022年))
  • ブラッドベリ大佐:ジャンカルロ・エスポジート(『ブレイキング・バッド』(2009年))
  • イーサン・スケート:スタンリー・トゥッチ(『プラダを着た悪魔』(2006年))

ネタバレあらすじ

本作『エレクトリック・ステイト』は、スウェーデンのアーティスト、シモン・ストーレンハーグのグラフィックノベルを原作としたSFアドベンチャー作品である。舞台は1990年代のアメリカ。技術の暴走によって人類とロボットの戦争が勃発し、世界は荒廃した。主人公ミシェルは、消息を絶った弟クリストファーを探して旅に出る。彼女のもとには、かつて弟が大切にしていたキャラクターに似た黄色いロボット・コスモが現れ、ミシェルと行動を共にするようになる。コスモには明確な言語はないが、まるでクリストファーの意志が宿っているかのような行動を見せる。やがて、元軍人キーツとその相棒ロボット・ハーマンと出会い、彼らとともに西部の「エレクトリック・ステイト」と呼ばれる廃墟都市を目指す。この旅の中でミシェルは、現実と記憶のあいだを彷徨いながら、弟の手がかりを求めて進んでいく。


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考察と感想

『エレクトリック・ステイト』を観終えたあと、俺が最初に思ったのは「この物語の本質は、選択の物語だ」ということだ。廃墟と化した未来を旅する少女、彼女を守るロボット、そしてその傍らで過去と未来を引き受けながら行動する大人たち。
誰もが誰かのために決断を下す──それがこの作品の根幹にある。

主人公ミシェルの選択には、心をえぐられるような重みがあった。弟クリストファーを救う旅だと思っていたのに、最後に彼女が下した決断は「手放すこと」だった。
多くの人は、自分の感情を正当化するために「助けたい」「繋がりたい」と言う。けれど、もてる男──つまり他者を惹きつける男ってのは、時に「見送る覚悟」も持っているんだよな。

感情に流されない優しさ、背中で示す強さ、それがこの映画に出てくるキャラたちにもあった。特に元軍人キーツの在り方が象徴的だった。
彼はミシェルにとって父親のような存在になるわけだが、彼女を支配することなく、黙って隣を歩く。それでいて、いざという時には戦う。
「守る」とはどういうことかを、台詞ではなく態度で教えてくれる男だった。

それは恋愛にも似ている。口先ばかりのやつが信頼されないように、本当にモテる男ってのは、言葉以上に「選び方」や「諦め方」が大事なんだと思う。
自分の欲望を抑えてでも、相手の望む未来を優先できるか。『エレクトリック・ステイト』は、そんな問いを観る者に投げかけてくる。

そして何より印象的だったのは、コスモという黄色いロボットだ。無言の存在でありながら、彼の仕草や存在感が、誰よりも雄弁に語っていた。
「言葉を使わずに通じ合う」という関係は、どこか理想の恋愛像にも重なる。相手を見つめる姿勢、そばにいるという事実。それだけで心が救われることもある。

終盤、ミシェルが仮想空間で弟に再会し、そして彼の願いを叶える形で「さよなら」を選ぶシーン。これはもう、美談なんかじゃない。
彼女の選択には、痛みも未練もある。ただ、その上で踏み出す決断こそが、人を大人にするし、他人を惹きつける魅力にも繋がる。

俺はこの映画を観ながら、ただのSFアドベンチャーだとは思わなかった。むしろ、人間関係における“美しい距離感”を描いた物語だと感じた。
奪わず、過剰に与えず、見守る。そんなふるまいができる男に、やっぱり人は惹かれるんだろう。

『エレクトリック・ステイト』は、映像美もキャラクターも優れているが、それ以上に、「どうあるべきか?」という倫理と感情のバランスにこそ見応えがある。
派手なアクションの裏で、静かに人間性を描いていたこの映画に、俺は心から拍手を送りたい。

教訓・学び

『本当に大切なものは、失われた後に初めて気づくものである』




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