【映画】『スオミの話をしよう』(2024年) 笑って泣けて、最後にじんわり。三谷幸喜が描く“さよなら”と“ありがとう”の物語 | ネタバレあらすじと感想

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映画『スオミの話をしよう』(2024)レビュー。
長澤まさみを中心に“記憶と存在”をめぐる会話劇を、作品情報・キャスト・あらすじ・考察・評価で解説します。

◆ 作品情報

監督・脚本
三谷幸喜
出演
長澤まさみ、西島秀俊、松坂桃李、瀬戸康史、遠藤憲一 他
配給
東宝
公開
2024年
上映時間
114分
製作国
日本
ジャンル
ヒューマンドラマ、コメディ
視聴ツール
Netflix、自室モニター、Anker Soundcore AeroClip

◆ キャスト

  • スオミ:長澤まさみ 代表作『コンフィデンスマンJP』(2019年)
  • 草野圭吾:西島秀俊 代表作『ドライブ・マイ・カー』(2021年)
  • 十勝左衛門:松坂桃李 代表作『流浪の月』(2022年)
  • 魚山大吉:遠藤憲一 代表作『ラジエーションハウスII』(2021年)
  • 小磯杜夫:瀬戸康史 代表作『劇場版 ルパンの娘』(2021年)


◆ あらすじ

三谷幸喜監督が5年ぶりに手がけた本作『スオミの話をしよう』は、ある女性の失踪をきっかけに、彼女を取り巻く男たちの視点から“スオミ”という人物像を描き出していく群像ドラマです。
物語の中心にいるのは、長澤まさみ演じるスオミ。著名な詩人・寒川しずおの新妻である彼女が、ある日忽然と姿を消してしまいます。刑事であり元夫でもある草野圭吾(西島秀俊)は、彼女の行方を追うことになりますが、寒川は「捜索など必要ない」と冷たく言い放ちます。
やがてスオミを知る男たちが次々と現れ、それぞれが語る彼女の姿はまるで別人のよう。誰にとっても“違うスオミ”が存在していたのです。彼女はいったい何者なのか、なぜ消えたのか。謎めいた構成と独特の会話劇が、観る者を不思議な余韻へと誘います。

ここからネタバレありです

スオミの失踪を追ううちに、刑事・草野は、彼女がかつて関係を持っていた男性たち——庭師の魚山(遠藤憲一)、動画配信者の十勝(松坂桃李)、そして医師の小磯(瀬戸康史)——の存在を知ります。
それぞれが語るスオミ像は、知的で優しい女性、奔放で情熱的な恋人、静かで影を持つ女性と、まるで別人。やがて浮かび上がるのは、彼女が彼らの心に残した“嘘と真実”の断片です。
物語が進むにつれ、スオミという人物がひとりの女性ではなく、誰かの創作や幻想の産物である可能性が示唆されていきます。
最後に明かされる「スオミの正体」は、愛や記憶、そして人が他者の中で生き続けるというテーマに繋がり、観る者に静かな感動と余韻を残して幕を閉じます。

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momoko
「スオミって言うのがカタカナで、最初名前だって知らなかったわ。」

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yoribou
「僕も知らなかった。三谷幸喜らしいと言えばらしいね。この笑いの質も。」

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◆ 考察と感想

『スオミの話をしよう』は、三谷幸喜監督が仕掛けた一見シンプルでいて、実はかなり奥深い人間劇だ。スオミという女性が失踪するところから物語が始まるが、焦点は彼女の行方ではなく、「人は他者の中でどう記憶され、どう再構築されるのか」というテーマにある。

長澤まさみ演じるスオミは、登場人物たちが語るたびにまるで違う顔を見せる。知的な女、奔放な恋人、寂しげな妻、自由人——どれも本当のようで嘘のようでもある。観客はいつの間にか、“スオミとは何者か”を推理しながら、自分自身の中の「他人の記憶に生きる自分」を意識させられる。これは、単なる失踪ミステリーではなく、三谷流の“記憶の迷宮”劇だと思った。

三谷幸喜作品にしてはテンポが落ち着いていて、笑いよりも静けさが印象に残る。いつもの軽妙な会話の裏に、どこか人生の終盤を見据えたような寂寥感が漂っている。登場人物たちのやり取りには三谷節が健在で、皮肉と優しさが同居しているが、今回はそれがユーモアというより“余韻”に変わっている。

特に、西島秀俊演じる元夫・草野の存在が大きい。彼の冷静な語り口や、スオミに対する感情の残り香が、物語に奥行きを与えている。彼は彼女を理解しようとするが、同時に彼女を過去の中に閉じ込めようとしている。その葛藤が非常に人間的で、観客の共感を呼ぶ。松坂桃李や瀬戸康史、遠藤憲一らの男たちもそれぞれ違う“スオミ像”を抱えていて、まるで複数の鏡に一人の女性を映したような構成になっているのが面白い。

ラストにかけて、スオミという存在が現実と幻想の境界をまたぐように描かれる。もしかすると、スオミは誰かにとっての「記憶の集合体」であり、すでにこの世にいないのかもしれない。だが、それを明言せずに曖昧なまま終わらせるのが三谷らしい。観客の想像力に委ねる余韻が、なんとも心地よい。

長澤まさみの演技は見事だった。彼女は役柄によって声色、表情、立ち姿までも変化させ、五人の男の語るスオミをそれぞれ“別の女性”として成立させている。その表現の幅と精度は圧巻だ。三谷監督が彼女を中心に映画を組み立てた理由がよくわかる。いわば本作は「長澤まさみという俳優の多面性をフィクションの形で検証する実験」でもある。

音楽や構成も控えめながら印象的だ。余白を生かした演出、時間のズレを利用した語り口、そして静かなユーモア——どれも成熟した作家の呼吸を感じる。観終わった後、派手なカタルシスはないが、心の奥に小さな火が灯るような感覚が残った。三谷幸喜の映画は「笑わせる」ものから「噛みしめる」ものへと変化しているように感じた。

個人的には、もっとも印象的だったのは「誰もスオミを完全には知らない」という一点だ。これは人間関係の真理でもある。誰かを本当に理解することなどできないし、私たちは常に“記憶の中の誰か”を愛しているのかもしれない。三谷作品の中でも、最も“静かな哲学”を宿した一本だったと思う。派手さはないが、長く記憶に残るタイプの映画だ。

◆ モテ男目線

スオミという女性は、男たちにとって“理想と現実のはざま”を生きていた。彼女を完全に理解しようとする男ほど、結局は自分の幻想を押しつけていたんだと思う。モテる男ってのは、相手をコントロールしない。理解しようと焦らず、相手の変化を受け入れる余裕を持つこと。スオミを失った男たちは、その余裕を持てなかった。恋も人生も、“分からなさ”を抱きしめられるかどうかで決まるんだ。

◆ 教訓・学び

相手を理解しようと焦らず、“分からないまま愛せる余裕”がある男が、ほんとうにモテる。

◆ 似ているテイストの作品

  • 『ブリック』(2005年/アメリカ)
    高校を舞台に、失踪した元恋人の真相を追う青年の物語。
    記憶と真実の境界が曖昧な語り口や、会話で進むミステリー構成が『スオミの話をしよう』の知的で静かなサスペンス性と共鳴する。
  • 『PLAN 75』(2022年/日本)
    「生きるとは何か」を問う静かな群像劇。
    現実と内面の境を丁寧に描き、人間の尊厳や記憶の継承をテーマにする点で、『スオミの話をしよう』の哲学的な余韻と響き合う。

◆ 評価

項目 点数 コメント
ストーリー 17 / 20 失踪した女性をめぐる語りが次第に“記憶の迷宮”へと変わっていく構成が秀逸。ミステリーと人間ドラマの融合が巧みだ。
演技 18 / 20 長澤まさみが複数の顔を持つ女性を見事に演じ分ける。西島秀俊ら共演陣の静かな熱演も印象的で、余韻が深い。
映像・演出 17 / 20 派手さを抑えた構図と間の使い方に三谷幸喜の円熟を感じる。光と影のバランスが“存在と不在”を巧みに表現している。
感情の揺さぶり 16 / 20 笑いと哀しみが絶妙に混ざり合い、観る者の心を静かに揺さぶる。スオミの“記憶”に触れるたびに切なさが増していく。
オリジナリティ・テーマ性 18 / 20 「人は他者の記憶の中で生き続ける」という普遍的テーマを、軽妙な会話劇の中に溶け込ませた構成が秀逸。
合計 86 / 100 三谷幸喜が“記憶と存在”を語る静かな傑作。笑いよりも余韻で心に残る、大人の群像劇。


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