◆作品情報
【監督】岸善幸
【脚本】宮藤官九郎
【原案】楡周平『サンセット・サンライズ』(講談社文庫)
【出演】菅田将暉、井上真央、竹原ピストル、中村雅俊 他
【配給】ワーナー・ブラザース映画
【公開】2025年1月
【上映時間】139分
【製作国】日本
【ジャンル】ヒューマンドラマ、コメディ
【視聴ツール】Netflix、自室モニター
◆キャスト
- 西尾晋作:菅田将暉(代表作『糸』(2020年))
- 関野百香:井上真央(代表作『八日目の蝉』(2011年))
- 関野章男:中村雅俊(代表作『夜逃げ屋本舗』(1992年))
- 大友大地:三宅健(代表作『親指さがし』(2006年))
- 及川冴子:池脇千鶴(代表作『ジョゼと虎と魚たち』(2003年))
◆ネタバレあらすじ
映画『サンセット・サンライズ』(2025年1月17日公開)は、楡周平の同名小説を原作に、岸善幸監督と宮藤官九郎脚本によるヒューマン・コメディです。主演の菅田将暉が演じるのは、東京の大企業に勤める釣り好きのサラリーマン・西尾晋作。コロナ禍でリモートワークが普及した2020年、彼は宮城県南三陸の海辺にある4LDK・家賃6万円の物件に一目惚れし、“お試し移住”を決意します。
地元住民との距離感に戸惑いながらも、持ち前のポジティブさで次第に町に溶け込んでいく晋作。彼の新たな人生が、思いもよらぬ展開を迎えることになります。
ここからネタバレありです。
晋作が移住した町・宇田濱で出会ったのは、大家であり町役場の職員でもある関野百香(井上真央)。彼女は、東日本大震災で夫を亡くし、地元の有志による「百香の幸せを祈る会」に支えられながら生きていました。晋作と百香は、最初はぎこちない関係でしたが、共に過ごす時間を重ねるうちに心を通わせていきます。
地元の漁師で百香の義父・関野章男(中村雅俊)や、居酒屋の大将・倉部健介(竹原ピストル)ら、個性豊かな町の人々との交流を通じて、晋作は地域の課題や人々の想いに触れていきます。特に、震災や過疎化、空き家問題といった社会的なテーマが、ユーモアを交えながら描かれています。
物語のクライマックスでは、晋作が空き家をリフォームし、町の人々と共に「芋煮会」を開催。このイベントを通じて、彼は町の一員として受け入れられ、百香との関係も新たな一歩を踏み出します。沈みゆく夕日と新しく昇る朝日を通して、“再生”と“希望”のメッセージが静かに胸に響いてきます。
◆考察と感想(淀川長治風)
みなさん、こんばんは。 今宵ご紹介いたしますのは──映画『サンセット・サンライズ』でございます。えぇ、タイトルの“夕陽と朝陽”という言葉の通り、これはまさに「終わりと始まり」を描いた、静かながらも力強い再生の物語でございました。
主人公・西尾晋作さん。東京で働くサラリーマンが、ふとしたきっかけで海辺の町へ移住する。これだけ聞くと、皆さん、「現実逃避では?」と思われるかもしれません。でも違うんですねぇ、これは“挑戦”なんです。人生の大きな舵を切る、そんな男の姿に、わたくしは心打たれました。
そしてそこで出会うのが百香さん。東日本大震災で夫を失い、静かに暮らす女性。この二人が出会い、最初はぎこちなく、少しずつ、少しずつ心が重なっていく。この丁寧な描写がなんとも味わい深い。涙腺が緩みました。
町の人々もいい。漁師の義父、居酒屋の大将、リフォーム仲間──それぞれが抱えるものがあって、それでも前を向いて生きている。その姿に、観ているわたしたちも「もう少し頑張ってみよう」と思わされるんです。
中でも印象的だったのが、晋作さんが空き家をリフォームし、町の人たちと芋煮会を開く場面。あれはねぇ、涙じゃなくて、あたたかさがにじみ出るような名シーンでしたよ。
この映画、押しつけがましいところがひとつもない。「これが正しい」とは言わない。ただ「あなたの人生にも、朝日は昇る」と、そう語りかけてくる。これが映画の持つ力なんですな。
画面に映る宮城の海岸線、朝焼けの淡い光。セリフがなくても、空気が語ってくる。百香さんと晋作さんが黙って海を見つめるシーン、わたし、しばらく言葉を失いました。
若い方が観れば「将来のヒント」に、年配の方が観れば「人生の回顧」に。中学生からお年寄りまで、どんな世代にも届くメッセージが、そっと優しく包んでくれる──そんな一本でございます。
『サンセット・サンライズ』──これはねぇ、まさに「希望の映画」なんです。笑って、泣いて、そしてスクリーンを後にする時、心に小さな勇気が残っている。わたしは、そんな映画に久しぶりに出会えた気がいたしました。
みなさん、ぜひご覧になってください。そして映画を観終わったあとは、空を見上げてください。どんな夜にも、きっと新しい朝日がやってきます。
それではみなさん、ごきげんよう。
──さよなら、さよなら、さよなら。
◆教訓・学び
自分の人生に向き合い、一歩を踏み出す勇気が、新しい出会いと心の再生を導いてくれる。
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