【映画】『サンセット・サンライズ』(2025年) 終わりは始まりへ。沈んだ心が、朝焼けと共に動き出す── | ネタバレあらすじと感想

ドラマ
ドラマ動画配信邦画

🎥 作品情報

  • 作品名:サンセット・サンライズ
  • 原作:楡周平『サンセット・サンライズ』(講談社文庫)
  • 監督:岸善幸
  • 脚本:宮藤官九郎
  • 主演:菅田将暉
  • 公開日:2025年1月17日
  • 上映時間:139分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ/コメディ
  • 制作国:日本
  • 配給:東映

◆ネタバレあらすじ

映画『サンセット・サンライズ』(2025年1月17日公開)は、楡周平の同名小説を原作に、岸善幸監督と宮藤官九郎脚本によるヒューマン・コメディです。主演の菅田将暉が演じるのは、東京の大企業に勤める釣り好きのサラリーマン・西尾晋作。コロナ禍でリモートワークが普及した2020年、彼は宮城県南三陸の海辺にある4LDK・家賃6万円の物件に一目惚れし、“お試し移住”を決意します。

地元住民との距離感に戸惑いながらも、持ち前のポジティブさで次第に町に溶け込んでいく晋作。彼の新たな人生が、思いもよらぬ展開を迎えることになります。

⚠️ ここからネタバレあり(クリックで開閉)

晋作が移住した町・宇田濱で出会ったのは、大家であり町役場の職員でもある関野百香(井上真央)。彼女は、東日本大震災で夫を亡くし、地元の有志による「百香の幸せを祈る会」に支えられながら生きていました。晋作と百香は、最初はぎこちない関係でしたが、共に過ごす時間を重ねるうちに心を通わせていきます。

地元の漁師で百香の義父・関野章男(中村雅俊)や、居酒屋の大将・倉部健介(竹原ピストル)ら、個性豊かな町の人々との交流を通じて、晋作は地域の課題や人々の想いに触れていきます。特に、震災や過疎化、空き家問題といった社会的なテーマが、ユーモアを交えながら描かれています。

物語のクライマックスでは、晋作が空き家をリフォームし、町の人々と共に「芋煮会」を開催。このイベントを通じて、彼は町の一員として受け入れられ、百香との関係も新たな一歩を踏み出します。沈みゆく夕日と新しく昇る朝日を通して、“再生”と“希望”のメッセージが静かに胸に響いてきます。

◆考察と感想

映画『サンセット・サンライズ』を観て、素直に「こんな映画がもっと増えてほしい」と思った。大きな事件が起こるわけじゃない。でも、移住した男と震災を生き抜いた女、そして海辺の町の人々の静かなやりとりが、心に深く残る。派手な演出や感動の押し売りじゃない。なのに、俺の胸のどこかをしっかり掴んでくる。

主人公の西尾晋作は、東京で働く普通のサラリーマン。そんな男が、南三陸の海辺にある6万円の空き家に一目惚れして移住する。俺も東京で生きてるから分かるけど、「じゃあ地方に住めば?」って口で言うほど簡単なことじゃない。仕事、生活、空気、人間関係。全部変わる。けど、晋作はやってのけた。逃げたんじゃない。“選び直した”んだ。

その土地で出会った百香という女性。震災で夫を亡くし、周囲の支えを受けながら淡々と生きている。彼女の強さと静けさがすごく印象的だった。晋作との距離が縮まっていく描写も、静かで、でもすごくリアル。派手な恋愛じゃないけど、言葉の奥に信頼が積み上がっていく感覚が心地よかった。

地元の漁師や居酒屋の大将、リフォーム仲間たちも、それぞれ背景があって、それでも日々をちゃんと生きてる。特に震災や過疎、空き家問題を扱っていながら、決して重くなりすぎないのがいい。ユーモアと哀しみのバランスが絶妙で、観ていて自然と前を向けるような気持ちになる。

一番心に残ったのは、晋作が空き家をリフォームして、町のみんなと芋煮会を開く場面。たった一杯の汁物に、いろんな人の想いが集まってる。笑ってる顔の裏に、それぞれの過去がある。それでも、今を楽しもうとしてる姿にグッときた。あれは泣くシーンじゃないけど、なんだか胸が熱くなった。

「人生は何度でもやり直せる」って言葉は簡単だけど、それを実感させてくれる映画は少ない。この作品は、その“実感”をちゃんと描いてた。やり直すって、何かを捨てることでもある。でも、それ以上に何かを受け取ることでもある。晋作の選んだ生き方を見て、俺も「もう一回、自分の舵を取りたい」と思った。

『サンセット・サンライズ』は、今の時代に必要な映画だと思う。大きな夢じゃなくてもいい。遠くに行かなくてもいい。誰かと一緒に笑って、一緒に鍋を囲む。そんな日常の中に、本当の再生がある。あの夕陽と朝日の風景が、ずっと目に焼きついている。

◆教訓・学び

自分の人生に向き合い、一歩を踏み出す勇気が、新しい出会いと心の再生を導いてくれる。

評価
項目 点数 コメント
ストーリー 18 / 20 大企業サラリーマンが南三陸の空き家に一目惚れし、“お試し移住”から人生を選び直していく物語。
移住ロマンだけでなく、震災の記憶や過疎、空き家問題といった現実も丁寧に織り込み、
芋煮会へとつながる再生のドラマとして気持ちよくまとまっている。
演技 19 / 20 菅田将暉が“どこにでもいそうなサラリーマン”の等身大さと、人生をもう一度舵取りしようとする覚悟を自然体で体現。
井上真央演じる百香の静かな強さと脆さのバランスも見事で、
中村雅俊や竹原ピストルら、町の人々を演じるキャストの存在感が作品全体の温度を決めている。
映像・演出 18 / 20 南三陸の海や夕陽・朝陽の風景を、過度に観光的に見せず生活の背景として切り取るカメラが心地いい。
日常会話とユーモアを積み重ねながら、ふとした瞬間に震災の影や登場人物の喪失感を滲ませる演出も巧みで、
139分を通して穏やかな余白を保っている。
感情の揺さぶり 17 / 20 号泣を狙うような場面は少ないが、移住者と町の人々が少しずつ距離を縮め、
芋煮会のシーンで「ここに居場所ができた」と感じる流れにはじんわり胸が熱くなる。
大きなドラマではなく、日々の積み重ねの中にある感情の揺れを大切に描いた作品。
オリジナリティ・テーマ性 17 / 20 コロナ禍のリモートワーク、地方移住ブーム、震災からの復興、空き家問題といった現代的テーマを、
あくまで一人の男と一つの町の物語として落とし込んだバランス感覚が秀逸。
社会派になりすぎず、生活者目線で“やり直し”と“共に生きること”を描く切り口が新鮮だ。
合計 89 / 100
派手な事件ではなく、地方移住と出会いを通して人生を選び直す過程を描いた、温度の高いヒューマン・ドラマ。
菅田将暉と井上真央を中心にしたキャストの芝居と、南三陸の風景が持つリアルな時間の流れが重なり、
「人生はまだ変えられる」と静かに背中を押してくれる一本に仕上がっている。


コメント