映画『FREAKS フリークス 能力者たち』(2018年)レビュー&考察
閉ざされた空間に育つ少女と、その背後に隠された“能力者”たちの真実。インディーズらしい制約を逆手にとったSFスリラーを考察レビューします。
◆映画『FREAKS フリークス 能力者たち』の作品情報
監督・脚本・製作 | ザック・リポフスキー |
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出演 | エミール・ハーシュ、ブルース・ダーン、レクシー・コルカー 他 |
配給 | Well Go USA Entertainment、ハーク |
公開 | 2020年 |
上映時間 | 105分 |
製作国 | アメリカ、カナダ |
ジャンル | SF、スリラー |
視聴ツール | Prime Video、吹替、自室モニター、AirPods 4 |
◆キャスト
- クロエ:レクシー・コルカー 代表作『レジェンド・オブ・トゥモロー』(2016年~)
- ヘンリー(父):エミール・ハーシュ 代表作『イントゥ・ザ・ワイルド』(2007年)
- アラン・ルイス(祖父/アイスクリームトラックの男):ブルース・ダーン 代表作『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(2013年)
- ナンシー・リード:アマンダ・クルー 代表作『シリコンバレー』(2014年~2019年)
- メアリー・ルイス(母):グレース・パーク 代表作『HAWAII FIVE-0』(2010年~2020年)
◆あらすじ
あらすじ(ネタバレなし)
7歳の少女クロエは、父ヘンリーと二人だけで家に閉じこもるように暮らしています。父からは「外の世界は危険だから決して出てはいけない」と言い聞かされ、窓は厚いカーテンで閉ざされ、近所の人とも関わることなく過ごす毎日です。クロエは嘘の名前や家族構成を暗唱するなど、奇妙な訓練を課されながらも、退屈と孤独を抱えていました。そんな中、家の前に停まるアイスクリームトラックに心を奪われ、父の忠告に背いて外の世界に触れたいという衝動が抑えられなくなっていきます。やがて彼女は父が目を離した隙に家を抜け出し、そこで出会った老人とのやりとりをきっかけに、自分自身に隠された特別な力、そして「フリークス」と呼ばれる存在が社会から恐れられている現実を知ることになるのです。
▼ここからネタバレ有です
ネタバレあらすじを開く
クロエは人の心を操り、空間を共有できるという特殊な能力を持っていました。父ヘンリーは時間を止める力を持ち、祖父には姿を消す能力があり、さらに母メアリーは空を飛ぶ力を秘めていました。しかし母は政府の特殊部隊に囚われ、家族は引き裂かれていたのです。クロエが外に出たことで隠された秘密は一気に表面化し、捜査官レイ率いる部隊が家を急襲します。父は時間停止の力で必死に抗いますが次第に限界に追い込まれます。クロエは自らの力を覚醒させ、遠く離れた母と精神を共有しながら脱出を助け、同時に侵入してくる兵士たちを操って応戦します。やがて母と再会を果たしたクロエは、自分が「フリーク」と蔑まれても力を否定せず、受け入れる道を選びます。ラストでは母とともに空へと飛び立ち、隠れるだけの生から、未来へ挑む存在へと歩みを進めるのです。
◆考察と感想
本作、『FREAKS フリークス 能力者たち』を観てまず思ったのは、低予算インディーズ作品とは思えないほどの巧妙な設計の映画だということだ。舞台はほとんど家の中に限られ、外の描写もわずかしかないのに、観ている側は閉塞感と同時に“この外に何があるのか”という期待感に引っ張られる。窓の隙間から見える住宅街や、アイスクリームトラックの老人、そして妙に静止して見える鳥の姿。こうした断片的なヒントを少しずつ積み重ねることで、観客はクロエと同じように世界の“違和感”を感じ取り、真実を知りたい欲求に突き動かされる。演出としてはとてもオーソドックスだが、無駄を極限まで削り、観客を一点に集中させることで緊張感が高まっていく。
この映画の魅力はやはり主人公クロエの存在感だ。彼女は幼い少女でありながら、無垢さと残酷さを同時にまとっている。アイスクリームが食べたいというただの欲望から行動を起こし、父親の抑圧を乗り越えて外の世界に踏み出す。その動機があまりに子どもらしいからこそ、逆に彼女の特異性が際立つのだ。彼女には人を操る力があり、さらに空間を共有できる能力がある。純真な欲望が危険な力と結びついたとき、何が起きるのか――その危うさが観ている側を不安にさせる。だが同時に、彼女が持つ強さは羨ましさすら覚える。俺自身も子どもの頃、親からの制約や大人社会の理不尽に反発した経験がある。クロエが父の言葉を無視して突き進む姿に、自分が叶えられなかった“自由への衝動”を重ねてしまった。
一方で、この物語の背景には社会的なテーマが潜んでいる。特殊能力を持つ人々は「フリークス」と呼ばれ、危険視され、排除される存在として描かれる。つまりマイノリティのメタファーだ。異能を持つがゆえに差別され、隠れて生きざるを得ない人々。その状況は現実社会にも重なる。LGBTQや移民、障害を持つ人々など、周囲に“普通と違う”と見なされただけで排除されてしまう構造がある。クロエの家族は能力を持っているからこそ、ひたすら隠れるしかなかった。しかし物語の最後、クロエは隠れる生き方をやめ、自分の力を堂々と受け入れる決意をする。この流れは単なるSFの枠を超えて、現代社会に対する強烈なメッセージになっていると思う。
父ヘンリーの存在も重要だ。彼は時間を止める能力を持つが、それを使って娘を守ることに必死だった。しかし結果として、クロエを家の中に閉じ込め、彼女の成長を妨げる形になってしまう。彼の愛情は確かに本物だが、やり方を間違えれば愛は束縛になる。これは現実の親子関係にも通じる。俺自身、子どもの頃に親から「勉強しろ」「外は危ない」と言われ続けた経験がある。もちろんそれは愛情から来る言葉なのだろうが、時に重く、息苦しく感じた。この映画を観て、あの頃の自分の苛立ちや閉塞感を思い出した。愛しているからこそ制約するのではなく、信じて解き放つこと。それが本当の意味での“守る”なのだと痛感した。
そして忘れてはいけないのが、政府の捜査官レイの存在感だ。彼は明確に悪役の立場にあるが、ただの悪人ではなく、どこか説得力のある威厳を漂わせている。もし相手がただの子どもでなければ、彼の言い分もある程度理解できてしまう。能力者という脅威を管理しようとする側と、生きるために隠れる側。どちらが正しいとも言い切れない構図があるからこそ、物語に奥行きが生まれている。俺は最後まで「このレイも実は能力者なのでは?」と疑っていたが、そういう不確かさもまた魅力だと感じた。
映画としては、終盤の展開はやや駆け足に感じた部分もあった。家族が能力を合わせれば、ほとんど無敵のチームになってしまうので、緊張感がやや削がれるのも事実だ。だがそれでも、ラストでクロエが母と共に空へ飛び立つシーンは象徴的で胸に残る。もはや「フリーク」と蔑まれても隠れはしない、普通であることを自ら証明してやるという意志が感じられたからだ。低予算ながらもアイデアとテーマ性で勝負した本作は、インディーズ映画の力を存分に見せつけてくれる。俺にとっては「制約があるからこそ創意工夫が生まれる」という映画作りの原点を思い出させてくれる作品だった。
◆モテ男目線の考察
モテる男は、相手を「守る」のと「閉じ込める」のを混同しない。父ヘンリーは愛情ゆえにクロエを家に閉じ込めたが、それは恐怖を植えつけただけだった。結局クロエは自ら力を受け入れ、世界へ飛び出す。恋愛でも同じで、相手を束縛せず、選択肢を与えた上で信じることができる男こそ魅力的だ。力で縛るより、信頼で支える。クロエを解き放った瞬間の父の姿勢こそ、モテ男が学ぶべき生き方だ。
◆教訓・学び
モテるには、相手を力で縛るのではなく、信じて解き放つ勇気を持つことだ。
◆あわせて観てほしい
あわせて観てほしい:映画『アイ・アム・マザー』(2019年)の紹介はこちら
地下施設でAIに育てられる少女が外の真実に触れるSFスリラー。
『FREAKS』同様、“閉ざされた空間で育つ子ども”の不安と発見が描かれる。
あわせて観てほしい:映画『タイタン』(2018年)の紹介はこちら
人類存続のために兵士が改造され、想像を超える進化と代償に直面する。
『FREAKS』の“能力と人間性のはざま”をより生々しく映す異色作。
◆評価
項目 | 点数 | コメント |
---|---|---|
ストーリー | 19 / 20 | ストーリーとしてはぞくぞくして面白い発想だったと思う。 |
演技 | 18 / 20 | クロエ、可愛いし、演技上手で言うこと無しだ。 |
映像・演出 | 17 / 20 | 近所の人との接点がない割には皆、クロエの名前を知っていたり、ちょっとだが「あれ?」と思うところが有った。 |
感情の揺さぶり | 17 / 20 | 父はいつでも一人だ。男って、子供に好かれたいけれど、育てた母親程、大事にされないのはきつい。 |
オリジナリティ・テーマ性 | 18 / 20 | 作者は隔離肯定派なのか否定派なのか。 |
合計 | 91 / 100 | そんなに話題に立ったわけではない作品だが掘り出し物に当たったような気がした。 |
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