作品情報
- 英題:The Match
- 監督・脚本:キム・ヒョンジュ
- 脚本:ユン・ジョンビン
- 出演:キム・スヒョン: イ・ビョンホン。
代表作『インサイド・メン』(2015年)
、ユ・アイン、コ・チャンソク 他 - 配給:BY4M STUDIO、ギャガ
- 公開:2025年
- 上映時間:116分
- 製作国:韓国
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 視聴ツール:Netflix(吹替、自室モニター)
キャスト
- チョ・フンヒョン:キム・スヒョン: イ・ビョンホン。
代表作『インサイド・メン』(2015年)
代表作『甘い人生』(2005年) - イ・チャンホ:ユ・アイン 代表作『バーニング 劇場版』(2018年)
- イ・チャンホの父:コ・チャンソク 代表作『国家が破産する日』(2018年)
- チョ・フンヒョンの妻:ムン・ジョンヒ 代表作『ハウスメイド』(2010年)
- 若き日のイ・チャンホ:キム・ガンフン 代表作『椿の花咲く頃』(2019年)
あらすじ
韓国囲碁界のレジェンド、チョ・フンヒョン(イ・ビョンホン)は、卓越した読みと胆力で時代を切り拓いた棋士。ある日、非凡な才能を持つ少年イ・チャンホ(キム・ガンフン)と出会い、内弟子として迎え入れる。礼節と鍛錬、盤上の“呼吸”を叩き込みながら、師弟は強い絆で結ばれていく。やがて青年となったチャンホ(ユ・アイン)は、師とは対照的な“静の囲碁”で頭角を現し、ついに公式戦で師と相対する。
考察と感想
『スンブ:二人の棋士』を観終えたとき、なんとも言えない静かな感動がじわじわと胸に広がっていた。派手な展開もBGMの煽りもない。でも、あれは確かに“魂のぶつかり合い”だった。囲碁のことなんて詳しくない俺ですら、盤上に込められた感情や緊張が肌に伝わってきた。言葉が少ない分だけ、目線や沈黙が雄弁に語っていた。
一番グッときたのは、師弟関係の描かれ方だ。イ・ビョンホン演じる師匠は、ただ厳しいだけじゃない。厳しさの奥に、弟子に“勝ってほしい”という願いがある。だからこそ苦しいし、だからこそ美しい。弟子が師を越えるのは、ある意味では別れの始まりでもある。だけどそれを受け止めるのが師匠の覚悟。そこに、言葉にできない愛情があった。
ユ・アインの演技もすごかった。控えめで内に秘めた闘志を持つチャンホ役にぴったりで、一手に込めた決意とか、師を見つめるまなざしとか、そのすべてにリアリティがあった。勝負の世界で「勝ってしまう」ことの重さ。そこに罪悪感すらにじませる彼の演技は、本当に見応えがあった。
対局のシーンは静かで地味なんだけど、緊張感はむしろアクション映画以上。盤上の石を置く音、呼吸、視線の交差──それだけで成立する映画って、そうそうない。目の前の石を打つかどうかで、人生が変わる。そんな世界を描いているからこそ、逆にドラマの熱量が凄まじい。
囲碁の外の話も良かった。家族のこと、社会の期待、勝負に負けた時の重圧。師匠にも弟子にも、それぞれの人生があって、でも“勝負”がすべてを貫いている。ああ、これが本物のプロなんだなと感じさせてくれた。特に、勝ち続けることが逆に孤独を生むという描写は胸に刺さった。
結局この映画が描いていたのは、囲碁じゃなくて「人間」だったと思う。受け継がれる技術、超えられる存在、それでも失われない敬意と感謝。勝ったから終わりじゃない。負けたから価値がないわけでもない。盤上を挟んだふたりの男の関係は、人生そのものだった。俺も誰かに教わって、いつかは越えていく側に立つのかもしれない。そう思わせてくれる映画だった。
教訓・学び
越えることは裏切りではなく、継承である。
◆評価
項目 | 点数 | コメント |
---|---|---|
ストーリー | 19 / 20 | 師弟の絆と世代交代という普遍的なテーマを、囲碁という静謐な世界を通して描いた脚本が秀逸。勝負の裏に潜む「継承」と「孤独」を繊細に表現しており、静かに心を揺さぶる。 |
演技 | 18 / 20 | イ・ビョンホンの重厚な存在感とユ・アインの内に燃える闘志が完璧な対比。無言の中にも師弟の想いが伝わる。わずかな視線や手の動きに込められた感情の演技力は圧巻。 |
映像・演出 | 17 / 20 | 静寂の中で張り詰める緊張感を極限まで高める映像演出。盤上を見つめる目線の動きや一手を打つ音の使い方など、細部へのこだわりが作品全体の格調を上げている。 |
感情の揺さぶり | 18 / 20 | 勝つこと、負けること、そして越えられることの意味を真正面から描き、観る者の胸を熱くさせる。淡々とした展開の中で、込み上げる涙と余韻が長く残る。 |
オリジナリティ・テーマ性 | 17 / 20 | 師弟ドラマという定番テーマながら、「勝負の静寂」を通じて人生哲学を語る独自のアプローチ。囲碁という題材をここまで人間ドラマとして昇華させた手腕は見事。 |
合計 | 89 / 100 | 静かながら魂がぶつかり合う傑作。派手さはないが、演技・演出・構成すべてが緻密にかみ合い、観る者の心に深い余韻を残す。 |
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