【映画】『渇水』(2023年) 水を止める仕事が、心の渇きをあらわにする—— | ネタバレあらすじと感想

サスペンス/スリラー

◆映画『渇水』の作品情報

  • 【監督】高橋正弥
  • 【脚本】及川章太郎
  • 【出演】生田斗真、門脇麦、磯村勇斗、山崎七海 他
  • 【配給】KADOKAWA
  • 【公開】2023年
  • 【上映時間】100分
  • 【製作国】日本
  • 【ジャンル】サスペンス、アクション、ドラマ
  • 【視聴ツール】Netflix、自室モニター

◆キャスト

  • 岩切俊作:生田斗真 代表作『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』(2014年)
  • 吉野:門脇麦 代表作『愛の渦』(2014年)
  • 田所:磯村勇斗 代表作『東京リベンジャーズ』(2021年)
  • 久保:山崎七海 代表作『約束のネバーランド』(2020年)※ドラマ版
  • 久保の母:伊藤歩 代表作『スワロウテイル』(1996年)

◆ネタバレあらすじ

あらすじ(ネタバレなし)

水道局で働く公務員・岩切俊作は、滞納者の家庭に対して水道を停止する「断水執行」の業務に従事しています。日々の仕事は淡々としており、家族との関係も冷え切り、どこか無気力な日常を過ごしていました。そんな彼のもとにある日、児童だけで暮らす久保姉妹の家が断水対象として通知されます。母親の姿がなく、姉妹だけで生活するその現場に直面し、岩切はこれまでとは違う感情を抱き始めます。

子どもたちの孤独や困窮した暮らし、そして社会の無関心に触れた彼は、職務として割り切れない何かを感じ、自らのあり方を見つめ直していきます。水道を止めるという行為の裏にある「人の生活」に、岩切の心は少しずつ動かされていくのです。

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断水を実行しようとした岩切は、久保姉妹の置かれた厳しい現実に直面します。母親は失踪し、姉の史果は妹・美羽を守るために必死に日常を繋ぎ止めていました。水道が止まることは、ただの不便ではなく、子どもたちの命に関わる問題でした。岩切は職務を越えて姉妹に手を差し伸べ、支援団体への相談や食料の差し入れなどを行います。

しかしその行動は、職場内で問題視され、岩切自身の立場が揺らぎます。さらには、姉妹を保護するための児童相談所との調整も進まず、状況は一層困難に。やがて母親が戻らない現実を受け入れた姉妹は、引き離される未来に怯えます。岩切は最後に、心をこめたある決断を下します。渇いていたのは、水ではなく、人々の心だった——。静かな余韻を残して、物語は幕を閉じます。

◆考察と感想

本作、映画『渇水』は、社会の片隅に置かれた人々と、その生活を直視することで自分自身を見つめ直す男の変化を描いた作品だ。主人公・岩切は、ただ水を止めるだけの業務を無機質にこなす日々に疲れ果てていた。家庭でも妻子と距離ができ、会話すら交わさない。そんな中、出会ったのが姉妹だけで暮らす久保家だった。母親が家におらず、水道代も滞納され、ギリギリの生活をしている子どもたち。その姿は、岩切にとって“水を止める相手”ではなく、“見過ごしてはいけない現実”として映るようになる。

本作が秀逸なのは、水道というインフラを切り口に、「止める側」と「止められる側」の人間模様を描いた点にある。水という生命線を管理する立場にある岩切が、次第にその意味を深く考え始める過程は、観客自身にも問いを突きつけてくる。果たして私たちは、誰かの痛みにどれほど想像力を持てているだろうかと。

姉妹の描写も丁寧だ。姉の史果はまだ幼いながらも母親の代わりとなり、妹の世話を懸命にこなしている。一方、妹の美羽はその状況を理解しながらも、子どもらしさをどこかに置き去りにしている。2人の静かな会話や、ぬいぐるみに話しかけるシーンなどは、声を上げないSOSとして胸に響いた。

岩切の変化は急激ではない。むしろ少しずつ揺らぎ、葛藤し、それでも「何かしたい」と願う姿勢がリアルだ。彼の行動が制度や周囲のルールと衝突するのもまた現実的であり、だからこそ観ていて苦しい。だがその苦しさは、この国の“制度の隙間”に落ちていく子どもたちの数と比例する。

演出は静かで抑制が効いている。過度な説明もなく、風景と人物の間に流れる“間”が印象的だ。断水という行為の冷たさに反し、カメラは常に人のぬくもりを探している。背景音も少なく、時折聞こえる水の音や風の音が感情を揺さぶる装置となっているのは秀逸だった。

本作は、ただのヒューマンドラマではない。インフラと行政、制度と個人というテーマを内包しながらも、「小さな優しさが誰かの未来を変えるかもしれない」という希望を描いている。社会問題を取り扱っていながらも説教臭くならず、むしろ観る者の心に静かに染み入ってくる。ラストの決断も、派手さはないが深く考えさせられる。

『渇水』というタイトルが象徴するのは、水だけではない。感情、人とのつながり、そして社会の想像力の枯渇だ。乾いているのは社会そのものなのかもしれない。だが、そこにひとしずくの水=思いやりが注がれれば、少しずつ潤いは戻ってくる。そんなメッセージを、本作は静かに、だが確かに伝えていた。

■もて男視点での考察(200字)

人の痛みに気づける男は、強い。『渇水』で岩切が見せたのは、ただの優しさではなく、「見過ごさない勇気」だった。制度や職務の中でも、目の前の困っている子どもに寄り添える男は、信頼されるし魅力的だ。モテる男は、共感力のある行動を自然に選べる。冷静さと情熱、そのバランスを持つ姿に、人は惹かれる。

◆教訓・学び

本当の“モテる男”とは、目の前の弱さに気づき、さりげなく手を差し伸べられる人間力を持つ者である。

◆評価

項目 点数 コメント
ストーリー 18 / 20 水道局に勤めている主人公。視点が面白い。
演技 18 / 20 生田斗真主演作品は惹かれて観てしまう。演技がうまいからだと思う。
映像・演出 18 / 20 普通。
感情の揺さぶり 15 / 20 日本映画独特の淡々とした時間の流れと共に、感情も淡々と移り行く。
オリジナリティ・テーマ性 18 / 20 作品は、軸がしっかりしていると感じた。
合計 87 / 100 らしい人がちゃんとキャスティングされている。観やすい(ストーリーが分かりやすい)

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