🎬 映画『サリュート7』の作品情報
- 監督・脚本:クリム・シペンコ
- 出演:ルボフ・アクショノーヴァ、イリヤ・アンドリューコフ 他
- 配給:カルチュア・パブリッシャーズ
- 公開:2016年
- 上映時間:118分
- 製作国:ロシア
- ジャンル:ドラマ、サスペンス
- 視聴ツール:U-NEXT、自室モニター
◆キャスト
- ヴィクトル・アリーヒン技師:ヴラディミール・ヴドヴィチェンコフ
代表作『レヴィアタン』(2014年) - スヴェータ(ウラジーミルの妻):ルボフ・アクショノーヴァ
代表作『ホテル・エレナ』(2019年) - アレクセイ(若手技師):イリヤ・アンドリューコフ
代表作『スノー・スイーパー』(2015年) - ターニャ(地上司令センター職員):マリア・ロミノーワ
代表作『クローズド・スクール』(2011年/ドラマ) - ナターリヤ(ヴィクトルの妻):オクサナ・ファンデラ
代表作『ザ・メソッド』(2015年/ドラマシリーズ)
◆あらすじ
1985年、ソ連の無人宇宙ステーション「サリュート7号」が地上との通信を断ち、姿勢制御も不能になります。このままでは予測不能な軌道で地球へ落下し、機密技術の流出や人的被害の恐れがあるため、当局は緊急ミッションを決定します。計画の初期から携わる冷静な技師と、現役を退いたものの操縦に長けたベテラン宇宙飛行士の二人が招集され、危険な“手動ドッキング”での接近と修理を命じられます。限られた準備時間、原因不明の障害、政治的思惑が重くのしかかるなか、彼らは旧式の計器と経験を頼りに、凍てつく軌道上へ向かいます。船外活動の訓練、家族の不安、地上管制の緊迫が交錯し、成功か断念かの選択が次第に迫っていきます。果たして二人はステーションを立て直し、無事に帰還できるのでしょうか。
ここからネタバレアリです(クリックで開閉)
◆あらすじ
二人は回転するサリュート7号への手動ドッキングに挑み、緊迫の末に接続に成功します。船内は氷に覆われ機器は沈黙しており、主因は電源系の停止と循環系の凍結でした。彼らは船外と船内を往復し、バッテリー再接続、太陽電池の受光調整、姿勢制御の初期復旧を進めます。復電の兆しと同時に漏電から火花が発生し、酸素残量も逼迫しますが、冷静な消火と系統切替で鎮圧します。さらに他国のシャトルが接近する可能性が示され、任務は「修理」から「守る」段階へと移行します。二人は最低限の機能を回復させてステーションを安定軌道へ導き、地上との交信を回復します。最後は帰還を賭けた決断を下し、限界のエネルギー配分で再突入手順を成立させます。極限の操作をやり切った二人は、凍てついた軌道上で掴んだ希望を胸に、地球へと生還します。
◆考察と感想
『サリュート7』を観てまず感じたのは、ハリウッド的な派手さやテンプレ的なドラマ展開とはまったく違う、「静かに熱い映画」だということだ。舞台は宇宙。だが、そこで描かれているのは未知の宇宙というよりも、人間の根性と誇りの物語だった。
物語の前半は、通信を失ったサリュート7号を救うために二人の宇宙飛行士が選ばれるまでの過程がテンポよく進む。選ばれたのは、退役したベテランパイロットのウラジーミルと、技術者あがりの実直な男ヴィクトル。二人とも一癖あるタイプだが、互いを信頼しているというより、同じ方向を向いているだけの“仕事仲間”といった関係が妙にリアルだ。宇宙開発という名のロマンを支えるのは、こういう地味で無骨な職人たちなのだと改めて思う。
この作品が面白いのは、宇宙ステーションの描写がやたらと“現実的”なこと。氷に覆われた船内、壊れた機器、焦げ臭い酸素タンク。どれもピカピカしたSFとは無縁だ。宇宙が神秘的なものではなく、“過酷な職場”として描かれている。冷戦期のソ連らしい、理想よりも結果を求める現実主義の空気が漂っていて、それが妙に生々しい。
そして、地上の司令室の人間たちも熱い。アメリカに先を越されるわけにはいかない、失敗は国家の恥だ——そんなプレッシャーの中でも、彼らは粘り強く作戦を支える。黒板にチョークで軌道計算をする場面には笑ってしまった。デジタルが主流の現代から見ると滑稽に見えるが、そのアナログな努力がむしろ人間臭くて良い。
物語の核心は、サリュートへの手動ドッキングの場面だ。宇宙空間での回転、通信断絶、緊迫したブリーフィング。まるで息をするのも忘れるほどの緊張感だった。ハリウッド映画ならここにBGMとスローモーションが入るが、『サリュート7』は違う。音を絞り、息づかいと機械音だけで勝負する。その“静寂の演出”が逆にリアリティを倍増させている。
そして、彼らが氷のステーションにたどり着いた瞬間、画面が一気に広がる。無重力の空間で漂う氷の粒、沈黙する金属のきしみ。まるで宇宙の墓場に取り残されたような光景だ。ここで一瞬、映画はSFを超えて“人間の孤独”を描く。文明の象徴である宇宙ステーションが、氷漬けになっているという比喩は強烈だ。
修理の過程も見どころだ。知恵と経験を駆使して壊れた機器を再生させていく彼らの姿には、職人魂を感じる。火災や酸素漏れといった危機の連続の中で、彼らは互いの言葉を交わさなくても信頼を築いていく。言葉よりも“行動”で通じ合う。まるで無口な職人のバディムービーを観ているようだった。
さらに印象的なのは、終盤でアメリカのシャトルが接近するシーン。冷戦時代の政治的緊張が背後にあるが、この映画はそこに過剰な敵対心を描かない。むしろ「宇宙に国境はない」というメッセージをにじませている。敵国であっても、宇宙で同じ空を見ている。今の時代に観ると、その穏やかな思想が切なくも温かい。
ラスト、無事に帰還する二人の姿に涙が出た。派手な演出も感動の押し売りもない。ただ、疲れ切った笑顔がすべてを物語っていた。この映画の良さは、“勝った”とか“成功した”ではなく、“やり遂げた”という感情にある。宇宙で生き延びたというより、信念を貫いた。それが観る者の心に静かに火を灯す。
CGや爆発で盛り上げる作品が多い中、『サリュート7』は人間の“芯の強さ”だけで見せる。だからこそ、観終わったあとに残るのは「すごい」ではなく「尊い」だ。ハリウッドの英雄物語に慣れた目には、地味で遅く感じるかもしれないが、この誠実なテンポこそが本作の美点だ。ソ連の宇宙船、古臭い機材、無骨な男たち。全部が泥臭くて美しい。こういう映画を観ると、人間ってやっぱりすごいなと思う。そして、どんな時代でも“あきらめない気持ち”が世界を動かすのだと、心から感じた。
💘 モテ男視点の考察
『サリュート7』は、恋愛ドラマではないけれど、男の「覚悟」が滲む作品だ。地上の妻を想いながらも任務に挑む姿は、まさに“ブレない男”の象徴。どんな危機でも感情に流されず、ただ目の前の使命に集中する。そういう男は結局モテる。見た目や洒落た言葉じゃなく、信頼される覚悟があるかどうか。宇宙よりも深い魅力は、そういう生き方に宿るんだと思う。

momoko
「実話ってところがなんてったって大きいですね。この難しい仕事を成し遂げたってすごい。」

yoribou
「今度、実話をベースにした作品のランキングとかしようか。面白そう。」
◆教訓、学び
どんなに冷えた宇宙でも、覚悟を貫く男は心で燃えていて、それが一番モテる。
◆似ているテイストの作品
- 『892 ~命をかけた叫び~』(2022年/アメリカ)
元海兵隊員が社会から見捨てられ、銀行に立てこもる実話をもとにした社会派サスペンス。
孤立した状況で自分の信念を貫こうとする姿が、『サリュート7』の宇宙で闘う男たちと重なる。 - 『タイタン』(2018年/イギリス)
人類の存続を賭けて人体改造実験に挑む科学者と兵士たちを描くSFスリラー。
科学への信頼と人間の限界をテーマにした構成が、『サリュート7』の“科学と精神力のせめぎ合い”と共鳴する。
◆評価
項目 | 点数 | コメント |
---|---|---|
ストーリー | 18 / 20 | 実話をベースにしながらもドラマ性を損なわず、冷戦下の緊張と人間ドラマを融合させた構成が秀逸。宇宙と地上、個人と国家の対比が鮮やか。 |
演技 | 17 / 20 | ヴィクトル役ヴドヴィチェンコフの沈着冷静さと、ウラジーミル役デレヴィヤンコの情熱的な対照が見事。無駄な感情表現を排した演技がリアル。 |
映像・演出 | 19 / 20 | 氷に覆われた無人ステーションや無重力空間の質感表現が圧倒的。静寂を生かした音響設計と、手触りのあるVFXが作品のリアリティを高めている。 |
感情の揺さぶり | 18 / 20 | 極限の中で見せる人間の意地と絆に胸が熱くなる。祖国への忠誠や家族への想いが静かに交錯し、“生きる意味”を問いかけてくる。 |
オリジナリティ・テーマ性 | 17 / 20 | 「宇宙=ロマン」ではなく、「宇宙=職場」という視点が斬新。科学と信念、国家と個人の狭間で生きる人間の誇りを描き切った。 |
合計 | 89 / 100 | 派手さより誠実さ。根性と信念で宇宙を動かす男たちの生き様が、静かに心を燃やすロシア発の傑作。 |

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